初期公開日:2023年8月25日更新日:2024年3月15日

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震災写真から見る神奈川県の今・昔

神奈川県内に所在する関東大震災に関する被害の様子を撮影した写真を紹介します。

1.震災写真から見る神奈川県の今・昔(70地点)

 関東大震災被災写真(70箇所)

 関東大震災被災写真の選定にあたっては、次の考え方に沿って県内 70 地点の震災写真を選定しました。

1)関東大震災の被害により、(一般的に多く報道される火災以外にも)多様な自然現象が引き起こされた被害

2)現在の神奈川県で次に大規模な地震が生じた場合、再び起こりうる事象

3)地域の象徴的な施設や場所が撮影されている写真

4)県内のできる限り広範な地点から選定

 なお、撮影機器が広く流通していない時代背景において、関東大震災直後に写真が撮影された地域は限定的であるという前提条件がある中で、可能な限り県内の広範囲かつ多様な被害様相となる現場を選定しました。
 震災当時の被害の状況と現在の状況を比較して、過去の歴史を知り、将来の災害に備えた防災・減災対策に取り組むきっかけとしましょう。
 選定した震災写真の現場の分布図は、下図のとおりです。

地図
選定した70の震災写真の位置図

※ 地理院タイルに市町村境界、遺構の位置を追記して掲載
※ 市町村境界は、「国土数値情報(行政区域デー タ)」(国土交通省)
 https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-N03-v3_1.html を活用

 

アクセス性については、以下の基準で評価を行いました。

  • 写真の撮影場所が、鉄道駅から500m以内なら「A」
  • 写真の撮影場所が、バス停から500m以内なら「B」
  • 写真の撮影場所が、鉄道駅・バス停どちらからも500m~1km離れている場合は、「C」
  • 写真の撮影場所が、鉄道駅・バス停どちらからも1km以上離れている場合は、「D」

 震災当時の写真については、以下の資料から引用しています。一部の資料は神奈川県立図書館にて閲覧・借用可能です。

(1) 大正十二年九月一日
大震災記念写真帖

大正十二年九月一日大震災記念写真帖

【8月24日 現在、貸出不可】
著者:桝井照蔵 編
出版者:神奈川県震災写真帖
頒布事務所
出版年:1925

(2) 関東大震大火記念写真帖(復刻版)

関東大震大火記念写真帖

【8月24日 現在、貸出不可】
著者: 岡田紅陽 著
出版者: 斉藤猪一郎
出版年:1986

(3) 神奈川県震災誌

神奈川県震災誌

【8月24日 現在、貸出不可】
著者: 神奈川県
出版者: 神奈川県
出版年:1927

 (4) 関東大震災写真帖

関東大震災写真帖

【川崎市立図書館蔵書】
著者: 日本聯合通信社 編
出版者: 日本聯合通信社出版部
出版年:1923

(5) 鎌倉震災誌

鎌倉震災誌

著者: 鎌倉町 編
出版者: 鎌倉町
出版年:1930

(6) 大正大震火災誌

大正大震火災誌

【8月24日 現在、貸出不可】
著者: 神奈川県警察部 編
出版者: 神奈川県警察部
出版年:1926

 また、震災当時と現在を比較する位置図は、時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」(©谷謙二)113により作成したものです。

113時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」(○c 谷 謙二)(2023年8月17日 閲覧)  https://ktgis.net/kjmapw/

目次

市町村 名称(所在地) 被害 アクセス性 出典
横浜市 (1)鶴見橋(横浜市鶴見区鶴見中央地先) 橋梁被害 B (1)
(2)横濱市戸部尋常小学校(横浜市西区御所山) 避難 C (1)
(3)井伊掃部頭銅像(横浜市西区紅葉ケ丘) 地盤変動 B (1)
(4)神奈川県庁(横浜市中区日本大通) 火災 A (1)
(5)横浜市本町通(横浜市中区本町) 建物倒壊 A (1)
(6)地蔵坂より亀の橋方面を望む(横浜市中区石川町) 火災 A (2)
(7)横浜港桟橋(横浜市中区海岸通) 港湾被害 A (1)
(8)豊国橋(横浜市中区港町) 橋梁被害 A (1)
(9)野毛坂(横浜市中区野毛町周辺) 土砂災害 A (1)
(10)関東学院(横浜市南区三春台) 建物倒壊・火災 A (1)
(11)富士瓦斯紡績株式会社工場(横浜市保土ケ谷区川辺町) 建物倒壊 A (1)
(12)高島橋(横浜市戸塚区上倉田町地先) 橋梁被害 B (1)
(13)戸塚町の隧道(横浜市戸塚区戸塚町) 土砂災害 A (1)
川崎市 (14)川崎小学校(川崎市川崎区宮本町) 建物倒壊 A (1)
(15)六郷橋(川崎市川崎区旭町) 橋梁被害 C (1)
(16)東京電気株式会社(川崎市幸区堀川町) 建物倒壊 A (1)
横須賀市 (17)横須賀市諏訪公園より見たる全市の惨状(横須賀市大滝町周辺) 火災 B (3)
(18)横須賀停車場前の山崩れ(横須賀市東逸見町) 土砂災害 A (4)
平塚市 (19)馬入川鉄道橋(平塚市馬入地先) 鉄道被害 C (1)
(20)馬入橋(平塚市馬入地先) 橋梁被害 C (1)
(21)平塚町(平塚停車場前)(平塚市宝町) 建物倒壊 A (1)
鎌倉市 (22)鎌倉大仏(鎌倉市長谷) 宗教施設被害 B (1)
(23)鶴岡八幡宮(鎌倉市雪ノ下) 宗教施設被害 B (1)
(24)建長寺(鎌倉市山ノ内) 宗教施設被害 B (1)
(25)円覚寺(鎌倉市山ノ内) 宗教施設被害 A (1)
(26)停車場前の焼跡(鎌倉市小町) 火災 A (5)
(27)七里ケ濱(鎌倉市七里ガ浜) 道路被害 A (1)
(28)倒潰せる七里ヶ浜(鎌倉市七里ガ浜周辺) 津波 A (4)
藤沢市 (29)遊行寺中雀門(藤沢市西富) 宗教施設被害 C (1)
(30)遊行寺本堂(藤沢市西富) 宗教施設被害 C (1)
(31)大鋸橋(藤沢市西富) 橋梁被害 B (1)
(32)江の嶋(藤沢市江の島) 津波 B (1)
小田原市 (33)国府津海岸(小田原市国府津) 津波 B (1)
(34)酒匂川(小田原市東町周辺) 堤防被害 B (1)
(35)酒匂川鉄道橋(小田原市酒匂地先) 鉄道被害 C (1)
(36)酒匂橋(小田原市東町地先) 橋梁被害 B (1)
(37)山王橋(小田原市浜町地先) 橋梁被害 B (1)
(38)下曽我停車場(周辺)(小田原市曽我別所) 建物倒壊 A (1)
(39)下曽我停車場(構内)(小田原市曽我別所) 鉄道被害 A (1)
(40)小田原警察署(小田原市本町) 建物倒壊 B (1)
(41)小田原停車場前(小田原市栄町) 建物倒壊 A (1)
(42)小田原町(小田原市本町) 地盤変動 B (1)
(43)小田原町(小田原市城内) 建物倒壊 B (1)
(44)小田原町(小田原通商銀行)(小田原市本町) 火災 B (1)
(45)早川橋(小田原市早川地先) 橋梁被害 B (1)
(46)石橋鉄橋(小田原市石橋) 鉄道被害 B (1)
(47)根府川停車場(小田原市根府川周辺) 土砂災害 A (1)
(48)被害列車(小田原市根府川) 鉄道被害 A (1)
(49)白糸川鉄橋(小田原市根府川) 鉄道被害 B (1)
(50)根府川(小田原市根府川周辺) 土砂災害 B (1)
(51)被害列車(小田原市根府川) 鉄道被害 B (1)
(52)根府川の釈迦像(小田原市根府川) 土砂災害 B (1)
(53)根府川(小田原市根府川周辺) 土砂災害 B (1)
(54)倒壊せる小田原幸町の鐘楼(小田原市本町) 建物倒壊 B (3)
茅ヶ崎市 (55)震災に因りて出現したる古相模橋の橋脚(茅ヶ崎市下町屋) 液状化被害 B (6)
逗子市 (56)逗子町田越橋の破壊(逗子市桜山地先) 橋梁被害 B (6)
三浦市 (57)城ケ島灯台(三浦市三崎町城ケ島字西山) 建物倒壊 B (1)
(58)三崎町(三浦市三崎) 建物倒壊 B (1)
秦野市 (59)秦野町曾屋神社(秦野市曽屋) 宗教施設被害 B (1)
厚木市 (60)厚木町堤防(厚木市東町地先) 堤防被害 B (1)
海老名市 (61)相模橋(海老名市河原口地先) 橋梁被害 B (1)
葉山町 (62)森戸橋(葉山町堀内) 橋梁被害 B (1)
大磯町 (63)大磯海岸(大磯町大磯) 地盤変動 B (1)
山北町 (64)安戸墜道(山北町山北) 道路被害 B (1)
箱根町 (65)箱根国道(箱根町湯本) 道路被害 A (1)
(66)塔の澤(箱根町塔之澤) 土砂災害 A (1)
(67)箱根ホテル(箱根町箱根) 建物倒壊 B (1)
(68)箱根町(箱根町元箱根) 建物倒壊 B (1)
真鶴町 (69)真鶴停車場(真鶴町真鶴) 鉄道被害 A (1)
湯河原町 (70)湯河原停車場(湯河原町宮下) 鉄道被害 A (1)

2.調査対象写真の考え方

(1)調査対象

 神奈川県内に所在する関東大震災に関する被害の様子を撮影した写真を対象としました。

(2)専門家による監修

 本資料の取りまとめにあたっては、名古屋大学減災連携研究センターの武村雅之特任教授(以下、武村教授)の監修を受けています。
 武村教授は、関東大震災の本震・余震のメカニズムの解明、被害データの整理分析による詳細震度分布の評価5,6,7、関東大震災を構成する個々の大惨事の実態解明による教訓の整理8、関東大震災当時の日記の分析9,10に加え、東京都23区内11や神奈川県内12,13,14の震災遺構の調査など、長年にわたり関東大震災に関連する調査研究に携わってこられた当分野の第一人者です。本資料の取りまとめにあたっても神奈川県内の震災遺構の調査報告書12,13,14を参考としています。

5武村雅之,「1923 年関東地震の本震・余震の強震動に関する最近の研究:強震記録・住家被害・体験談 の解析」東大地震研究所彙報 第 73 号,1998 年

6武村雅之,「1923 年関東地震の強震動と被害」1995 年兵庫県南部地震 5 周年特別企画,日本、地震、あれ から、これから(土木学会),2000 年

7武村雅之,「関東大震災-大東京圏の揺れを知る」鹿島出版会,2003 年

8武村雅之,「未曾有の大災害と地震学-関東大震災(シリーズ繰り返す自然災害を知る・防ぐ)」,2009 年

9武村雅之,「手記で読む関東大震災(シリーズ日本の歴史災害)」古今書院,2005 年

10武村雅之,「天災日記-鹿島龍蔵と関東大震災」鹿島出版会,2008 年

11武村雅之,「関東大震災を歩く-現代に生きる災害の記憶」吉川弘文館,2012 年

12武村雅之・都築充雄・虎谷健司,「神奈川県における関東大震災の慰霊碑・記念碑・遺構(その1(県 中部編)」,2014 年

13武村雅之・都築充雄・虎谷健司,「神奈川県における関東大震災の慰霊碑・記念碑・遺構(その2 県西 部編(熱海・伊東も含む))」,2015 年

14武村雅之・都築充雄・虎谷健司,「神奈川県における関東大震災の慰霊碑・記念碑・遺構(その3 県東 部編)」,2016 年

このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。