更新日:2025年3月4日

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カフェ経営で充実のセカンドライフを構築

2023年より山北町と藤沢市の二拠点生活をスタート。月曜日から木曜日は藤沢市の自宅を拠点にコンサルティング業に従事し、金曜日・土曜日・日曜日は山北町に開いた蔵カフェ「かしわ坂茶寮」で店主を務める。“セミリタイアして二拠点生活へ”

かしわ坂茶寮前のご本人

通勤途中の車窓から眺めていた山北町の風景

中村さんが製薬会社を早期退職し、山北町に「かしわ坂茶寮」をオープンしたのは2023年5月。2019年にセミリタイアをした当初は、会社員時代に培った知識を生かしてコンサルティング業を行いながら、趣味の写真や絵画、陶芸などを楽しむセカンドライフを送るつもりだった。現在、「かしわ坂茶寮」を営業する古い蔵も、気兼ねなく趣味に没頭するためのアトリエを求めて出会った物件だ。
山北町との接点は、約20~30年前までさかのぼる。当時住んでいた伊勢原市から御殿場市まで通勤していたことがあり、毎日、山北町の風景を車窓から眺めていた。「春は桜、初夏は新緑、秋は紅葉と季節ごとに変化していく景色に日々癒されていました」。山から平野に移り変わる地形は故郷の東京・青梅市を思い起こさせ、どことなく親しみも覚えた。「物件を探す際、実は青梅市も候補の一つでした。でも、自宅のある藤沢市からは移動に2時間もかかってしまう。そうかと言って、アクセス重視で二宮町、大磯町、葉山町辺りでは近すぎて気分が変わらない。車で1時間ぐらいの山北町は、私が思い描く二拠点生活を送るうえでちょうどよい距離でした」

地域の方の声に背中を押されてカフェを開業

蔵付きの土地は、2022年にインターネットで見つけた。不動産屋が更地にすることも考えていたというだけあり、古びた蔵の中はボロボロ。そのまま使用できる状態ではなかったため、購入後はDIYでリノベーションに取りかかった。作り付けの木の棚は外して磨き、トイレの壁板に利用。柱は塗り直し、壁は漆喰で塗装した。藤沢から通ってコツコツとリフォームを進める中、聞こえてきたのが「ここカフェができるのかな?」「カフェになるといいね」という地域の方の声。東山北駅に近いエリアは近年どんどん人が増えており、飲食店が不足している。“なるほど。需要があるなら、カフェでもやってみようか”、そう思ったのが「かしわ坂茶寮」誕生のきっかけだ。
「カフェをやってみたい、という気持ちはぼんやりと心の中にありました。いわゆる、“引退したらカフェでも”と男性が憧れるライフスタイルですね」と照れ笑いをする中村さん。好きなインテリアやデザインでまとめられた“心地よい住処を”という基本コンセプトは変えずに、2階をアトリエ、1階はカフェへと方向転換し、リノベーションを完成させた。

外観

カフェを起点にコミュニティを拡大

現在、月曜日から木曜日までは藤沢の自宅を拠点に医薬品の商品化・事業化戦略をサポートするコンサルティング業に従事し、金曜日・土曜日・日曜日は山北町へ通い、カフェを営業する日々を送っている。
趣味人で絵画や焼き物など、美術品を愛する中村さん。「かしわ坂茶寮」には、気に入って購入した若手アーティストの作品とともに、自ら創作した陶芸作品やコンテストで入賞した写真なども飾られ、寛ぎながらアートを楽しめるギャラリーのような空間が広がる。中でも目を引くのが、茶室をイメージした“小上がり”のスペース。黒を基調としたシックでモダンなコーナーは、湘南工科大学総合デザイン学科の学生によってデザインされたものだ。卒業制作として手がけられた空間設計は、藤沢のカフェで知り合った同大教授との縁で実現された。
セミリタイア後、カフェをハブとしてコミュニケーションを大きく広げ、人生の彩りが豊かになったと話す中村さん。「私にとってカフェは、既存のコミュニティだけでは知り合えない人たちと縁をつないでくれる貴重な場です。藤沢ではサーフカルチャーやビーチカルチャーに触れ、山北では登山や狩猟などの山の文化、農家の方とのご縁も生まれ、多方面から刺激をもらっています。青梅で生まれ育ち、海に憧れて藤沢へ。海のそばで暮らしているうちに再び山が恋しくなって山北へ。友人たちには“海と山、両方楽しめて贅沢な環境だね”とうらやましがられます(笑)」

歓談の様子

人と人とをつなげるハブのような場を作りたい

山北町は高齢人口の多い街だ。高齢者の方にはできるだけ家に引きこもらず外の世界とつながり、生き生きとした生活を送ってほしいと願っている。「特に男性は無口な方が多いせいか、一人で過ごしているうちに言葉が出づらくなり、認知機能も弱まっていく傾向があるように感じられます。私がカフェを起点にコミュニティを広げてきたように、地域の皆さんにもどんどん『かしわ坂茶寮』を利用して人とのつながりを増やしてほしいですね」
地域活性のお手伝いをしたいという想いから、現在、「コーヒーフェス」の開催を計画中だ。町内のカフェが一体となり、さらに藤沢のカフェも招致し、桜の開花に合わせて春に開催できるよう企画を推進している。「『かしわ坂茶寮』のアクセス解析をすると、“コーヒー”で検索して他所から訪ねてくださる方が多いことに驚かされます。少しでも地域活性のお役に立てていたらうれしいですが、観光地化して人が押し寄せ、豊かな自然や素朴な街並みが損なわれていく形は望んでいません。おいしいコーヒーを飲める店、人と人をつなぐ店として、地域に根ざした温かな経営を目指し、山北町のカフェ文化を育てていきたいですね」

質問コーナー

Q 山北町の魅力は?

1年中、次から次へと花が咲き、町のあちらこちらで美しい風景が見られます。河津桜、早咲き桜、ソメイヨシノと、桜だけでも多品種が楽しめ、チューリップ、ネモフィラ、ジャカランタ、アジサイ、秋は紅葉も美しい。山北町へ花を見に来た、と言ってカフェに立ち寄ってくださるお客様も多くいらっしゃいます。昭和の面影がそのまま残るレトロな商店街もおすすめ!山中湖や御殿場へも行きやすく、楽しみの広がる街です。

Q 「かしわ坂茶寮」のおすすめメニューは?

東京・清澄白河のカフェ「オールプレス エスプレッソ」の豆を使用して丁寧に淹れるコーヒー、自家製焼き菓子や自家製チーズケーキでおもてなしします。「薫るの牧場」(山北町)の牛乳を使用したプリンもおすすめ。山北産の茶葉を用いた和紅茶など、地元食材を使ったメニューの開発にも取り組んでいます。陶芸家、佐野有子さんとのコラボレーションから生まれたラテボウルをはじめ、こだわりの食器もお楽しみください。

Q 二拠点生活や移住希望者へ伝えたいことは?

気になる街があったら、まずは訪ねてみましょう。いきなり住むのはやっぱりハードルが高いと思います。飲食店やカフェで地元の方とお話しすることから始めてみてはいかがでしょうか。また私見ですが、セカンドライフを楽しみたいなら、雇用延長より早期退職を選ぶ方が次のフェーズに入りやすいとは思います。私は新卒で入社したときから「50歳でやめる」と決めていました。実際に辞めたのは54歳でしたが、自由を満喫できる今の生活は“生きてる感”でいっぱい!肌ツヤが良くなったね、と言われています(笑)

店内の様子

中村光昭さん

東京都青梅市出身。大学卒業後、大手製薬会社へ入社。54歳で早期退職し、2023年5月、山北町に蔵をリノベーションしたカフェ「かしわ坂茶寮」をオープン。コンサルティング業とカフェ経営を掛け持ちしながら、自宅のある藤沢市との二拠点生活を送る。

移住時の年代

50代

家族構成

妻、息子、娘

移住スタイル

2拠点

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活動場所 お名前

関わり方

(移住スタイル)

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