更新日:2024年3月19日

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所有地から始める山林の健全化構想

経営コンサルティングの会社を経営する泉本保彦さんが、鎌倉・山北の二拠点生活を始めたのは2021年。山北町のお試し移住体験を経て、山間部の空き家を購入。リノベーションした古民家で、自然と共生し、環境と調和する働き方、生き方を追求している。

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ツーリングで訪れ、ひとめぼれした山北町

山北町との出会いは、趣味の自転車がきっかけだ。鎌倉の自転車仲間にツーリングで案内されて一目で気に入り、それ以来、たびたび自転車で訪れていた。「町の大半が山岳地帯なので近隣市町村と比べても特に山が深く、雄大な景色が広がっています。はじめて来たとき、わー、いいところだな、とすっかり魅了されました」
二拠点生活を始めたのは、コロナ禍で閉塞した状況の中、自然に囲まれた場所に身を置きたいと思うようになったからだ。拠点探しは、山北町一択。選択肢を広げず、“憧れの山北に住みたい”という想いに素直に従った。「酒匂川周辺の景色も大好きです。生まれは大阪ですが、少年時代に和歌山に住んでいた時期があり、当時、家族でよく遊びに行った紀ノ川とよく似ています。広い河原や自然に囲まれた風景が当時の記憶と重なり、非常にノスタルジーを感じますね」

あえて不便な場所を求めて出会った人里離れた一軒家

古民家を取得し、2021年の5月、二拠点生活がスタートした。立地は、隣家まで直線距離で約500m、車で約10分かかるという山深い場所だ。「不便な場所を探しています、と伝えておいたら、たまたま紹介していただいた物件です。ここまで人里離れた場所にある住宅は、山北でもさほど多くはありません。川の上流から生活用水を引き、風呂は薪で焚く五右衛門風呂。こんなに不便なところはなかなか見つけられないので、大変満足しています。美しく連なる山々がすぐ目の前に迫り、我が家の空間だけがぽっかりと開けて、まるでエアポケットのよう──ボーッと景色を眺めているのが至福のひとときです」
平日は仕事で都心へ出向くことが多いため鎌倉を拠点とするが、山北にクライアントを呼び寄せることもしばしば。クライアントには自然との共生、環境との調和のありのままを見てもらいながら企業の長期戦略やビジョンについて議論する。週末が中心の二拠点生活を通じた山北暮らしでも、地域の人との交流は盛んだ。家の前の林の中に生まれたばかりの子鹿が隠れていたときは、プロの猟師が駆けつけてきて生態を教えてくれた。生活用水に砂が混ざり込んだときは隣家の人が「ちょっと見てやるよ」とすぐにバイクで駆けつけてくれる。借りた農地の植え付けには、農家の人たちが手を貸してくれる。「一番印象深いのは、共和地区に古くから伝わる伝統行事で、ユネスコ無形文化遺産にも登録された『お峰入り』に参加したことです。6年ぶりの開催という貴重な機会に呼んでいただき、衣装を着て『供物』の役を演じました。練習の合間のお喋りが楽しくて、一気に友達も増えました。練習場だった『共和のもりセンター』は、ふらっと立ち寄ればいつでもだれかに会える“止まり木”のような場所です」

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環境先進国ドイツで気づかされた自然との共生

“不便に満足”と笑顔で話す先に見据えるのは「自然との共生」。長年、ビジネスの最前線で働き、世界各地を飛び回る生活を送りながらも、心の奥で温め続けていたテーマだ。原点は、約40年前、バックパッカーで訪れたドイツでの出来事。共同生活をしている一軒家に1週間滞在させてもらっていたある晩、長い夕食で話が盛り上がる中、一人の男性が“明日の朝早いから"とダイニングを出て行こうとする。目を丸くする仲間を前に“雨の日は、カエルが幹線道路を横断するから車に轢かれないようにみんなでカエルを移動させて保護するんだ”と説明を受け、その環境意識の高さに大きな衝撃を受けた。「世界の中でいち早く産業が興ったヨーロッパでは、40年以上も前から環境問題と真剣に向き合っていたのです。日本の何歩も先へ進んでいる、と気づかされ、社会を見る目が大きく変わりました。それ以来、いつかはヨーロッパにと心に決め、留学先も勤務地もできる限り自分の身をヨーロッパに置いて、社会的価値追求と経済的価値追求を両立する暮らしぶりに触れてきました」

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環境保全の原点は山林の健全化

今、泉本さんには大きな夢がある。それは、所有地となった1000坪の山林を、針葉樹と広葉樹が混ざり合う混交林につくり直し、豊かな土壌を育むこと。「古民家を取得したら、予期せず広大な山林もついてきちゃいました(笑)。自然に囲まれた日々を過ごしていると、サステナビリティの観点から自分にできることってなんだろうと今まで以上に考えるようになりました。いろいろと自分なりに研究してたどりついた答えが、“環境保全の出発点は山林の健全化”ということ。まずは自分の土地から“多種共存の森”を目指し、それが神奈川全域、日本全国、そして世界へと広がるきっかけになったら、と夢を描いています」
山北へ越してから、企業のサステナビリティ経営の案件を手がける機会が増えたという泉本さん。「山暮らしを通して得た新たな気づきや視野の広がりが仕事にも役立ち、山北町には本当に感謝しています」

質問コーナー

Q 山北町のおすすめスポットは?
見晴らしの良い「山北つぶらの公園」です。晴れた日は、丹沢山地から富士山、足柄平野、相模湾まで一望でき、絶景を楽しめます。
Q 二拠点生活について、周囲の人の反応は?
クライアントやビジネスパートナーを招待すると、大変喜ばれます。訪ねてくださった方には、山北町の酒蔵「川西酒造店」のお酒をおすすめしています。丹沢山系の水でつくられた銘酒を、ぜひご賞味あれ!
Q 暮らしの中での困りごとはありますか?

お酒を飲んだときの移動手段です。タクシーの運転手さんが足りていないらしく、断られてしまうんです。友達やお客様を招いて家で食事をすることも多いのですが、私がお酒を飲むと車を出せなくなるため、何か良い手段はないものかと頭を悩ませています。

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泉本保彦さん

大阪府大阪市生まれ。日本法人(株)日仏経済戦略研究所代表取締役社長。大学卒業後、自動車メーカー、留学を経て、外資系2社・日系1社のコンサルティング会社に勤務。5年間のパリ勤務でコンサルティング会社の経営に従事し、帰任後の2014年、日本・フランスを拠点に経営コンサルタントとして独立。企業の中長期計画・ビジョン策定などの戦略を専門とし、企業向けコンサルティングならびにマネジメント教育を行う。

移住時の年代

50代

家族構成

夫、妻、娘(東京でひとり暮らし)

移住スタイル

2拠点

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