取組事例

10年間でCO2排出量60%削減
2030年までに
完全脱炭素化を目指す

日崎工業株式会社
代表取締役 三瓶 修様

川崎市で、各種サイン製作や、イベント造作物・建築金物・什器備品・モニュメントなどの金属加工を行う日崎工業株式会社。国内屈指の金属加工技術を持ち、「神奈川県優良工場」「かわさきマイスター」「かながわ中小企業モデル工場」など、数多くの受賞・認定を持つ日崎工業はまた、脱炭素への取組においても県内屈指の先進企業です。
今までどのような取組を行い、成果を出してきたのか。代表取締役の三瓶 修様にお話を伺いました。

取組をはじめたきっかけを教えてください。

震災で業績が悪化。コスト削減から省エネに取り組む

取組のきっかけは、2011年の東日本大震災でした。当時は計画停電や電力消費量削減が社会問題にもなっていたこともありましたが、なにより弊社の業績が非常に悪化して、経費削減に取り組む必要が出てきたからです。

私どもの製品は、イベントや商業施設などに納めるものが多く、当時の自粛ムードの中では非常に厳しい状況でした。7箇所あった拠点を川崎1箇所に集約し、そのうえでさらに削減できるところはないかと考えていたとき、照明をLED化してはどうかとオフィス設備の会社から提案を受けました。

試算の結果、導入費用と削減した電気代がほぼ同額、もしくは削減の方が大きくなること、5年のリース期間後は費用を回収できると判断できたことで、導入を決定しました。
工場では年間電力消費量が約66%削減され、事務所では年間電力消費量が約70%削減されました。
また、省エネに取り組んだ理由がもう一つあります。それは私の両親が、福島県第一原発に近い地域の出身だったことです。地震をきっかけに福島県に住んでいた親族はバラバラになってしまいました。そこから、原子力発電に頼らない電力自給について考えるようになりました。この思いもまた、行動のモチベーションになっています。

取組の具体的な内容を教えてください。

神奈川県助成金で省エネ型機械と太陽光発電を導入

2013年に東京にオリンピック招致が決定して以降、イベント業界の景気が徐々に回復してきました。弊社にも業績回復の兆しが見えてきたこともあり、2019年にレーザー加工機の更新を決めました。従来のCO2型から、熱伝導率が高くエネルギーロスの少ない省エネ型のファイバーレーザー方式の機械に変えたことで、消費電力は約50%削減され、加工スピードは2倍になりました。
高額な投資ではありますが、電気代だけでなく、修理代などのランニングコストの削減、また生産性の向上にもつながりました。この成果は大きく、翌2020年には「神奈川県ビジネスモデル転換事業費補助金」を利用し、更にもう1台導入し、業務の幅を広げることに成功しました。

また、2020年には太陽光発電の設置も行いました。約1,000万円の導入費用のうち、1/3は神奈川県の「令和元年度自家消費型太陽光発電等導入費補助金※1」を活用し、年間電力消費量の約25%を賄っています。

※1 自家消費型太陽光発電等導入費補助金:令和6年度は、「神奈川県自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金」に名称が変更されております。

神奈川県の補助金・支援を見る

今後の取組や目標について教えてください。

「2030年完全脱炭素化」を宣言。宣言することで目標が明確に

神奈川県の助成を受けるにあたり、弊社のCO2排出量を計算してみたところ、約10年間で半分以下になっていることに気づきました。そうなってくると、なんだか面白くなってきます(笑)。「これなら、あと10年あればCO2排出量をゼロにできるのではないか?」と思い、経営理念に「2030年完全脱炭素化」を掲げるようになりました。

一度言ってしまえば、後には引けません。照明LED化や太陽光発電など、削減幅が大きい対策はやり尽くしてしまったので、ここから先はかなり大変ではありますが、宣言することでメディアにも取り上げていただき、それによって周囲から様々な情報が集まり、行政の方も応援してくださるようになりました。

年間CO2排出量の変化 ピーク時から現在にかけて 60%削減!
年間電気購入量の変化 ピーク時から現在にかけて 購入量48%削減

2023年には、神奈川県の「令和5年度スマートファクトリー促進事業」を活用して、電力使用量の計測を行うEMS※2機器を導入しました。電力使用量の「見える化」は以前から取り組んでいたのですが、EMSではより細かく分析できます。1年間かけて工場内のさまざまな箇所を順次計測し、より効率的な電力消費につながるポイントはどこかを、今後精査していく予定です。

※2 EMS:工場等の施設における、様々なエネルギーの使用状況の「見える化」を図り、設備の管理・分析・制御等により、最適なエネルギー利用を支援するシステム

また2024年に千葉県に新たな工場を建設しました。こちらは「カーボンニュートラルファクトリー」として、生産は独立電源で行います。製造するのは、金属製のアウトドアギアや、太陽光発電で蓄電した電力を動力とする「独立電源トレーラーハウス」などです。生産だけでなく、製品自体もカーボンニュートラルに貢献できるよう、これからさらに取組を進めていきます。

今後、脱炭素に取り組む企業へのアドバイスをお願いします。

環境に配慮する企業に人は集まる。事前の情報収集がカギ

当然ですが、業界によって脱炭素への難易度は異なり、実施できる取組にも違いがあります。今は脱炭素に取り組んでいる企業が多くあり、交流会や勉強会で情報収集をすることもできます。その中から自社に取り入れられるものを選べば、導入のハードルは下がります。特に助成金についてはしっかりと調べてください。

他に効果的なのは、「●%削減」など、具体的な宣言をしてしまうことですね。そうなると後に引けないので、取り組む姿勢が変わります(笑)。そして何より、楽しむことです。どの程度の削減ができたか、数字で見えると社員のモチベーションにもなります。

これからますます環境に配慮した働き方が求められ、またそのような企業に人が集まるようになっていくでしょう。弊社が取り組んできた脱炭素の実績を具体的な数字で発表することで、みなさまの導入へのモチベーションにつながることを願っています。

企業プロフィール

  • 称号
    日崎工業株式会社
    所在地
    〒210-0858 神奈川県川崎市川崎区大川町7-2
    設立
    1967年(昭和42年)7月 13日
    企業HP
    https://www.hizaki.jp

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