初期公開日:2026年3月31日更新日:2026年3月31日
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自主防災組織取材
今回、逗子市の推薦を受け、同市にある亀が岡自主防災組織を取材させていただきました。
亀が岡自主防災組織は、亀が岡自治会を中心とした住民で組織されている自主防災組織です。独自で避難行動要支援者リストやマップの作成を行っており、安否確認訓練の実施、防犯カメラの積極的な設置など、精力的に地域防災に取り組んでおられます。
非常に参考になる内容となっていますので、ぜひご一読ください。
亀が岡自主防災組織 吉田 三郎 様 他 役員の皆様

平成26年に、自治会全体に「何に困っていますか、自治体活動に何を期待していますか」というアンケートをとった結果、60%近くの方から「防災活動」という回答がありました。また、従前から自治会に防災組織はあったのですが、自治会を中心に組織を構成していたため、1年という任期でメンバーが変わってしまい、継続した活動ができないということで、改めて組織を作りました。
現在は、防災対策実行委員会を中心に、自治会役員と自治会内に28ある班の各班長の約70名で活動をしております。防災対策実行委員会のメンバーは、防災に対して強い思いのある方や、自治会の会長、副会長、防災担当の3名と民生委員で構成されています。また、各班長には、「消火班」「救出救助班」「避難・誘導班」「物資・生活班」「通行確保班」とそれぞれに役割を付与し、役割毎のマニュアルを渡して有事に備えています。
私たちが自主防災組織を立ち上げた当時、逗子市には、組織立って活動している団体が他になかったため、自治会内で最初に防災士を取った方を中心に一から作り上げてきました。
また、防災に対する知識の習得は極めて重要であると考え、防災士の資格取得者を増やす取組を進めており、2年前からは逗子市の補助が出るようになりましたが、それまでは、資格取得費用を全額自治会で負担してでも、資格取得に取り組んでいました。この取組の結果、現在は私を含めて11人の防災士が活動をしています。

安否確認訓練、災害時飲料水保存庫水交換、発電機の起動訓練や市民消火栓を使用した消火訓練など様々な防災訓練を行っております。
安否確認訓練では、事前に住民の方に回覧板(紙回覧とLINEによる電子回覧)の回覧だけでなく、全戸に安否確認訓練の資料を配布して周知を徹底しています。配布時期にも工夫しており、訓練実施日の1週間前に配布することで参加への意識を高め、令和7年度では自治会員の65.6%の方に参加をしていただきました。
災害時飲料水保存庫の水交換では、災害時に支援が必要な方のための飲用水等として約630ℓの水を抗菌タンクで備蓄しており、夏場は3か月に一度、冬場は6か月に一度、メンテナンスのために水の全交換作業を行っています。
また、発電機の起動訓練も行っています。自治会の夏祭りの際に、発電機をかき氷機や綿あめ機の電力に活用するとともに、活動に興味を持ってもらえるよう様々な防災備品を展示・紹介しています。
市民消火訓練では、所管消防署の指導の下、市民消火栓というスタンドパイプを用いて、災害時の火災に自主的に備えられるよう訓練を行っています。


課題という点では、「人的」「制度的」「財政的」など、様々な問題があります。
人的な課題としては、担い手不足です。定年延長のほか、様々な理由から70代でも現役で働いている方が増えているため、これまで地域活動を主体的に担っていたシニア世代の参加者が減少しています。また、共働き世帯が多く平日の活動が困難なうえ、休日に地域活動に時間を割いてくれるような高いモチベーションを持った人材を見つけ出すことも非常に難しいのが実情です。自治会の夏祭りや餅つきなどのイベントで、防災備品の展示場を作り、太陽光パネルとポータブル蓄電池を用いて、「これでスマホが何台充電できるんですよ」といったデモンストレーションを行うなど、防災のために揃えた機材を紹介して、防災や自治会に興味を持ってもらう工夫をして、参加の協力をお願いしています。
制度的な課題でいえば、自主防災組織としてどこまで、県や市町村から期待されているのか、どこまでできるのか、やるべきなのかといった役割分担の難しさが挙げられます。例えば、災害時の初動対応の救出救助があります。私たちの組織では、安否確認、テントを立ててその中の照明器具を用意し対策本部を立ち上げる準備、ジャッキやチェーンソーなど防災の資機材の準備はしてあるものの、実際に倒壊した家屋から救出、救命をするのはある程度資機材の使い方のトレーニングや、救命の訓練を受けた人間でないと難しいのではないかといった問題があります。防災士の資格を勉強するだけでなく、赤十字の救命講座など+αで積極的にそういった訓練を受けに行くことが必要だと思っています。
財政的な問題でいうと、自治会費のほか逗子市からの自主防災組織強化事業費補助金や、コミュニティ助成金などを使って備蓄品や防災機器などの購入をしています。それでも、金額に上限はあり、住民全員分の備蓄分は賄えないため、要支援者への支援分に留めるなどの対応をしています。住民の方には、基本的に「自助」という形で備蓄をお願いしています。

県や市町村、国などが自主防災組織の立ち上げマニュアルのような「ひな型」を作成すると防災への意識が強い人が動きやすくなるのではないかなと思います。私たちの組織は、元々阪神淡路大震災や東日本大震災の時に、災害ボランティアに行かれた方が、経験から自主防災組織が必要だと強い意識を持ってこの組織を立ち上げました。ただその際、組織の構成、マニュアルや水の備蓄などを一から考え、個人で相当な時間をかけて今の組織の基礎を作りました。そのため、マニュアルのようなものがあれば、そういった苦労が軽減され、防災意識が強い人が動きやすくなるのではないかと思います。
あとは、複数の自治会が連携して自主防災組織を作ることなどにより、人的にも財政的にも動きやすくなるような工夫が必要だと思います。例えば、逗子市の補助金などは1世帯当たりいくらといった形で支給されます。たまたま私たちの組織は760世帯あるので、まとまった額がもらえるのですが、近隣には世帯数が少ないため、十分な活動資金が賄えず必要な活動が出来ない自治会も多いです。また、世帯数が少ないということは、活動に必要な「人」が集まらないといった問題もあり、地理的に近い複数の自治会で、まとめて1つの自主防災組織として活動するといったことが認められれば、活発化するのではないかと思います。
神奈川県や逗子市などが自治会向けのデジタルツール等を無償で公開してくれればと思います。 現在、当自治会では、会員への情報共有にLINEを活用しています。同一世帯の中で複数人が登録している場合もあるので明確な登録率は示せませんが、自治会員数760世帯に対し、650人ほどの登録があり、既読率も高く情報共有に寄与していると考えています。先日の大雨では、土砂崩れが起きた影響でバスのルートが通行止めになったことなど、地域に根付いた情報をタイムリーに共有する事ができました。このようにデジタルツールは非常に便利ではありますが、無料サービスで利用可能な範囲には限度があるため、ある程度の規模をもった自治会でなければ、月額費用を賄えないといった可能性があります。当自治会でも、よりよい情報提供に向け、有料サービスを利用して送信可能数を増やしていますが、発信する情報を取捨選択する状況は既に生じており、機能拡充には更なる利用料が発生することから必要性を慎重に検討しています。そのため、自治会のデジタルツールの導入に関して、自治体からのサポートがあると助かります。
また、当自治会の地理的特性上、災害時の物資運搬に大きな不安を抱えているという課題があります。周辺を土砂災害警戒区域に囲まれており、災害時の土砂崩れ等によって孤立化する危険性が高い地域となっているため、周辺道路や急傾斜地の早急な整備といった、いわゆるハード対策はもとより、災害時の物資運搬方法などのソフト対策についても検討してほしいと考えています。直近では、近隣にある県有地を市が買い取り、災害時に柔軟に対応できる公園として整備するという話がありましたので、物資運搬の拠点にも活用できるような整備を要望したところです。
短期的な目標として、安否確認訓練の参加率が7割を超えられるよう何年か前から目指していますが、まだ超えられない壁となっているので、継続的な努力が必要と考えています。また、資機材も揃ってきており、様々な訓練に取り組んでいるという実績はあるものの、現在の自主防災組織のメンバーには、本当の災害を経験している人間がいないので、いざという時にどこまで動けるのかという不安は絶えず存在しています。救助をしなければいけない場面になったとき、持っている資機材を実際に扱えるよう訓練を行う必要がありますし、特に、災害時要支援者の方達を避難させるシミュレーションがまだできてないので取り組んでいきたいと考えています。

今回の取材を通じて、亀が岡自主防災組織は防災士の方を中心に一から組織を作り、市の補助金が出る前から自治会負担で防災士の資格取得を促進するなど、結成当初から現在まで防災に対するモチベーションが非常に高いことが印象的でした。世帯数の規模により、亀が岡自主防災組織のように多くの資機材の整備や、自治会単位でのLINEアカウントの運営などは難しいかもしれませんが、安否・安全確認訓練は玄関にカードを掲げるだけで各世帯の安否確認ができるので、専門の知識や資機材を使わない自主防災活動として他の自治会、自主防災組織にとって参考になる取組かと思います。
吉田様、亀が岡自主防災組織の皆様、この度は取材に御協力いただきありがとうございました。
以上
このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。