初期公開日:2023年11月10日更新日:2024年8月26日
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自主防災組織取材
今回、座間市より推薦を受け、独自の避難所設置訓練やマニュアルについて話を伺うため、座間市緑ケ丘地区で活動している「緑ケ丘地区自治会連合会」を取材させていただきました。 緑ケ丘地区自治会連合会は緑ケ丘地区内の8つの自治会で構成されていて、約1,300世帯が加入しています。加入率は、おおよそ4割とのことです。
自治会がそのまま自主防災活動を行う体制をとっており、緑ケ丘地区内にある座間中学校を災害時の避難所として立ち上げや運営を行う、座間中学校避難所運営委員会の主体としても積極的な活動をされています。
地域防災への取組や、自治会への想いなどをお聞きすることができましたので、是非とも自主防災活動等の参考にしてください。
緑ケ丘地区自治会連合会 会長 湯浅 一弘 様
座間市避難所運営委員会の活動が多く、2017年の設立から、避難所開設訓練に注力しています。元々は座間市から「避難所運営委員会」を作ってほしいという依頼があったのが始まりでした。最初は何からやっていいか分からなかったので、市の職員やNPOの方にお話を伺いながら避難所開設訓練を開始しました。翌年からは自分たちの手で避難所開設訓練をやっていこうとなり、徐々に内容を充実させていきました。具体的には貯水型トイレ(通称:マンホールトイレ)の組み立てや、生活スペースでのテント設営練習などをしています。
また、「避難行動計画および座間中学校避難所開設マニュアル」を作成して、毎年の訓練での課題を踏まえて更新を行っています。独自のマニュアルを作ってきちんと機能する組織にしていこうという動きをしている地区はあまりないですね。マニュアルでは、図式化された設営レイアウトやマンホールトイレの設置方法のほか、被災状況チェックシートや安否確認に関する事項まで記載しています。
ほかには、独自の安否確認の仕組みを確立しています。自治会が会員の情報を収集して安否確認名簿を作成し、会員の年代や住所、特に高齢者や要支援者の把握をしています。また、その情報を地図データに反映し、見える化しています。このシステムを取り入れたことで、災害時の安否確認を主たる目的としつつ、一人暮らしや高齢者世帯の方々への日常的な配慮が可能となりました。マップには空き家状況も反映していて、防犯の面でも活用しています。
マニュアル表紙
避難所開設フロー
テント設営手順
やはり、役員の交代により知識の蓄積が困難な点です。訓練を受けた方だけに知識やスキルが残るだけではなく、組織全体にノウハウが蓄積されていく仕組みが必要です。そのために、先ほども触れましたが、避難所開設マニュアルを独自に作成し、毎年更新を行っています。
ただ、マニュアル作成でも課題がたくさんありました。例えば、マンホールトイレの設置に関して、設置できる場所が体育館から非常に離れていることから、砂利道のため車いすの人が来られない点や、夜間女性が使用するのに不安が残るなどの懸念がありました。そのため、当初施設内のトイレは災害時に下水道が機能しているか不明なため使用禁止としていましたが、施設管理者と話し合いを重ねた結果、袋に入れることを前提に施設内のトイレを使用することが認められるなど一歩前進しました。
また、座間中学校で行っている避難所開設訓練に中学校の生徒たちにも参加してほしいと思っています。しかし、普段は部活動で体育館が使えず、使える期間が試験期間と重なるため、なかなか生徒の参加が難しい状況です。そのため、代案として避難訓練の報告会を中学校で行っています。当初は学級委員のみ相手だったものが、校長先生から一部の生徒に留めておくのはもったいないということになり、全生徒の前でお話をさせていただくことになりました。高齢者のみでは重いものの運搬などに懸念があるため、積極的に若者にも関心を持ってもらいたいと思っています。
避難所運営に関わることで、自治会の存在をアピールすることができている点です。普段当たり前だと思っていたことが、自治会が無くては存在しなかったものであることに気付けます。「避難所って、実は自治会が作るんですよ」って言うと皆さん、「そんな大切なことを自治会がやってるんですか!」と驚いてくれます。
ほかにも、避難所運営を行っていく中での発見もたくさんありました。例えば、避難生活となった場合、飲料水や食料など公助で支給されるものなどは基本的に避難所にしか届きません。在宅避難で配給を受け取る場合は、「避難者台帳」への登録が必要になります。そこで、本会が持っている安否確認の仕組みを駆使して、自治会の方が在宅避難名簿を作成し、避難者台帳に一括登録、在宅避難者の自宅へ配布するという仕組みを作りました。こういった発想もこの活動をやっていなければ気がついてなかったと思います。こうした活動を通じて、「やっぱり自治会に入っていてよかったよね」というようなことに繋がるのではないかと思います。
在宅避難者名簿(座間中学校避難所開設マニュアルより)
県あるいは市が、自治会にどこまでの防災活動を期待しているのか、明確にしてもらいたいですね。地域防災は避難所の話だけではないですよね。例えば震災で火災が起きた時、我々がどう動けばいいのか明確ではない。消火栓を使って消火活動を推奨する人もいれば、消火栓は危ないからやめといた方がいいという人もいる。場面ごとに我々にどこまで期待しているのか範囲を示してほしいですね。
ある自治会の区域内には消火栓が10個ほどありますけど、消火栓を利用するための消火栓ボックスは1つしかない。過去の経緯を聞いたところ、「邪魔だから」「使わないから」といった理由で撤去したと聞きました。消防署に確認したところ、「ご希望があれば設置します」と言われて「本当にそれでいいの?」って思いましたね。全部我々で判断するのは無理があるので、初期消火を推奨するなら放水訓練など指導をしてほしいし、危ないからやめましょうというのなら、はっきりと言ってくれたほうが我々もやりやすいですね。
まずは、自治会は面倒くさいというイメージを払拭することが必要だと思います。役員だからあれやりなさい、これやりなさいといったやり方は古いと思います。例えば、何かイベントをやるにしても、希望者を募る方法にするなど、負担感を無くす運営のスタイルに変えていかないと、長続きしません。それぞれが得意なことを任せて、無理強いしないようにしなければならないですね。
本会でも、元々運営の参加率が低かったイベントを、集まった参加者の中で出来ることをやろう、といったスタンスで開催したところ、それを見ていたほかの会員の方々が、「それなら私たちにもできるから参加しよう」と思っていただき、翌年は運営に参加してくれました。それぞれができることをやって運営していくことで、自然と一体感のある組織となり、活性化につながっていくと思います。
自治会があることで、可能になることが多いということです。自治会は、入るメリットよりも、そこに自治会があることのメリットを考えることの方が大切だと思います。自治会があるから、避難所を開設できる。自治会があるから、地域のお祭りができる。ゴミ捨て場の番だけやっているわけではないんだよって(笑)
前回さくら祭というイベントを開催した際に、最後に私が挨拶をしたら、皆さんから「ありがとう!」と声を掛けてくれました。こういった日常の楽しみも自治会がないとできないんだよって、自治会が自分の身の回りにあることのメリットを感じてほしいですね。自治会は加入しなければ生活できなくなるということはないですが、いざというときに自分たちの助けになるはずです。
緑ケ丘地区自治会連合会への取材を通じて、普段は見えづらい自治会のメリットをよりクリアに認識することができました。特に、安否確認の仕組みはかなり進んでいる取組であり、避難時の食料や水の配給や高齢者の見守りなど、まさに会長がおっしゃっていた、自治会があることのメリットが大きく得られるものだと思いました。また、自治会や自主組織では役員の交代によるノウハウの継承が課題となることがしばしばですが、マニュアルを作成し、組織全体の知識となるようにしたことは、後任への引継ぎのほか、活動参加へのハードルを低くする重要な取組であると感じました。地域を守る取組や居心地の良い組織づくりなど、他の自治会の自主防災活動において非常に参考になるものではないでしょうか。湯浅会長、この度は取材へのご協力ありがとうございました。
以上
このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。