初期公開日:2022年12月26日更新日:2025年2月14日
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自主防災組織取材
今回は、日頃から積極的に防災啓発の活動をされている「女性防災クラブ平塚パワーズ(代表:菅野由美子会長)」に取材をさせていただきました。
女性防災クラブ平塚パワーズは、平成7年の阪神淡路大震災を契機に、有志の女性約30名で立ち上げられたボランティア団体で、活動場所は平塚市内にとどまらず、神奈川県内外でさまざまな防災啓発を行っています。
令和2年度には、「防災功労者内閣総理大臣表彰」と「防災まちづくり大賞」を受賞しており、他の自主防災活動を行っている方にも、非常に参考になる取組みもありますので、ぜひご一読ください。
女性防災クラブ平塚パワーズ 会長 菅野 由美子 様、他メンバーの皆様
「女性防災クラブ平塚パワーズ(以下、「パワーズ」といいます。)」は、平塚市が、平成7年の阪神淡路大震災を契機に開いた防災講習会を受講した女性約30名により、平成8年5月に結成されました。大規模災害が昼間に発生した際、男性が仕事で家にいない場合は、女性が地域を守っていかなければなりません。強力な指導力を持った女性たちに参加をお願いし、チームワークを育てる目的で、今までやったことのない消火器の訓練など、1年間のカリキュラムが実施されました。
1年間の活動だけで終わってしまうのはもったいないので、その後も活動を継続する形でボランティア団体を設立しました。基礎を深く学んでいるメンバーがいて、プラスアルファ自分たち流に変えていったのは、それから7~8年が経過してからです。その後、市から切り離され、自分たちで運営してから15年程経ちます。自主運営になり縛りがないので、依頼があればどこでも行きます。東日本大震災が起きた2011年3月11日の5日前は仙台にいました。パワーズが考案した段ボールトイレには、見学者の長蛇の列ができ、用意した資料が全部なくなってしまうほど大盛況でした。
段ボールトイレ
設立から約10年間は、市や消防本部からご指導いただき、その後は、市の訓練に参加を依頼されるようになりました。それから何年か経過し、パワーズが市から切り離されてからは、自分たちの考え方で活動するようになりました。それは、今のパワーズの基本となっている「家庭の中からの防災」です。家庭の中で荷物をまとめやすくする、防災頭巾を作る、段ボールトイレを作る、食生活を考えるなど、パワーズのメンバーが自分たちの意見をどんどん出してくれています。
パワーズは設立当初平塚市を6ブロックに分けて担当していましたが、現在は会員数の減少により5つのブロックに分かれて活動しています。各ブロックにブロック長、副ブロック長がいて、各ブロックから様々なアイディアが出るようになり、ものすごく活性化しました。
メンバーは皆、非常に熱心で、活動予定や外部からの依頼に対して、どう対応すればよいか話し合います。そして、各ブロックに持ち帰り、参加メンバーが決まります。一回話し合った内容はメンバー全員に伝わりますので、現場に行った際は非常にスムーズです。今日、誰が、何を行うのかが決まっているので、活動はシンプルですが、内容を濃くできますし、個人の発想もそこに生かしてもらいます。
例えば、応急手当では、三角巾が持ち回りの品なので、コロナを考えて使用しないようにし、参加者にバンダナを持参してもらうことにしました。誰かにやってもらう形をやめて、自分が自分を手当できることを学んでもらう形にしました。
それから、ラップを使って応急手当を行います。市販のラップは箱から引き出した部分だけ空気に触れるので、自分に使ってもらいます。ラップで腕の包帯ができ、腕を釣る行為ができます。参加者から使用方法について聞かれた際、知らないことがないように、メンバーが統一した方法を学ぶことにし、そこから自分が工夫して卓越したものを習得した際に、こんなやり方もあるということがあれば、メンバーが集まる場でみんながそれを習う。誰かに聞いて分からないことがないよう、同一レベルで話ができるように工夫しています。
パワーズには、平塚市の広報を見て入った人、友人や近所のメンバーから誘われて入った人、公民館でお手伝いをしていた際に話があって入った人など、色々なきっかけでメンバーになった人がいます。また、3.11の東日本大震災の際、近くにいたのは子ども、高齢者、女性しかおらず、男性は仕事でいない状態で、女性がなんとかしないといけないと感じたことや、市が開催した女性防災講座を受講した際、男性も一緒だと力仕事などのハードなイメージがあったが、「女性」というワードに安心感があったことなどを通じて、縁があって入る人もいて、現在の参加人数は計31人です。年齢層は60代~80代で、パワーズ設立当初から皆継続して参加しています。若い世代の女性にも入って欲しいですが、働いていて子育て真っ最中な場合が多いので厳しいものがあります。活動に興味を持たれる方は多いので、今後は市内に限らず、地域を超えて、ネットなどで参加いただく形を考えています。
パワーズは、一緒に活動した方たちとはできるだけ長くお付き合いしたいと思っています。例えば、開成町に「たんぽぽ」という団体がありますが、団体立ち上げの際に色々ご協力させていただいたことがきっかけで、ずっと相互のお付き合いが続いています。このような方たちとつながっていくことが大事だと思います。
金目川の下流の河内川(こうちがわ)が特に危険だと感じています。昔田んぼで排水の場所だった箇所を道路にしているところもあり、大雨でマンションのエレベーターの中にまで雨水が入り、そのマンションのエレベーターが半年以上使えない状態になったり、車が雨水で浮いてしまったりしたこともありました。
また、市西部の湘南平周辺で小さな丘が大雨で崩れて、坂に沿って樹木ごと流れてきてしまったことがあります。現在は、開発されて住宅が建設されています。
私たちは、それぞれ色々な場所に住んでいるので、風水害が起きたときは、リアルタイムで撮影した写真など、どんどんネットで情報を流しています。各人それぞれが安全かどうかは、それで確認ができます。地震が発生したときも同じで、停電の情報など、メールで連絡してくださるので、とても助かっています。
県庁へ表敬訪問された際の様子
パワーズは、「パワーズブック」という書籍を発行・配布しています。メンバーでアイディアを出したものを収録しています。私たちが作成する資料はとても多く、搬送や応急手当などの多くの資料を大人数に配るのはとても大変で、資料を一つにまとめたいと思っていました。通常の印刷業者に頼むと費用が嵩むので、どこか安く印刷していただけるところはないか探していたところ、市民活動センターに相談してパワーズブックが出来上がりました。イラストなどは有志の方に無償で描いていただきました。今は、それぞれの自治会の役員の方々に配るという需要があります。その際、値段の設定は行っていませんが、ご寄付を頂戴しています。寄付でいただいたお金でパワーズブックを増刷しており、これまで3回増刷しています。
パワーズブックは、色々な地域に行き渡っています。例えば、パワーズブックが新聞記事に掲載されると、冊子がほしいという連絡を受けて、県内に限らず、いろいろな地域にパワーズブックをお送りしています。目の不自由な方のために点字本も作り、また、点字本には音声としてCDを付けました。身体の不自由な方々から依頼をいただくことも多く、これが大いに役に立っています。
令和4年10月に、平塚市立太洋中学校の中学生に対して、災害時における応急手当などの講習を行い、バンダナやラップを使った応急手当のやり方や、段ボールトイレの作り方、防護服の作り方などをご紹介しました。パワーズの防護服は、誰でもビニール袋で簡単に作ることができ、90リットルでも70リットルでもどちらでも作れます。災害時は物差しがないので、自分の指の長さ等をあらかじめ測って覚えておくと、物差しがなくてもだいたい自分で長さを測ることができるという話をしました。
講習終了後のアンケートでは、「優しくわかりやすく教えてもらって、防護服を楽しく作れました」、「子どもでも人を救うためにできることがあることを知り、学んだことを生かそうと思いました」などの感想をいただきました。
パワーズは年齢層が高齢なので、若い世代を増やしたいと思っています。昔は、拡大家族が多く、おじいちゃんやおばあちゃんに子どもを預けることができたので活動に参加しやすかったのですが、今の40代~50代は働いているので難しいかもしれません。
あと、パワーズ専用の拠点があるといいと思います。活動していくうちに、いろいろな材料などが増えていきますので、それを管理するための拠点などがあるとよいのではないかと思います。どのように管理するかも課題だと思います。
とにかく無理しないことです。パワーズが長く続いている点については、強要されない、自分ができるときにできることをする、ということを皆が思っているところが大きいと思います。参加できない場合も問題はなく、参加できるときに一生懸命参加し、そして楽しんで取り組むことが大切だと思います。参加すると、とても楽しくて元気が出ますし、自分たちが楽しく伝えないと、周りにも伝わらないのではないかと思います。楽しんで参加している人が多いことが、長く続いている秘訣かなと思いますので、無理せず楽しんで参加していただきたいです。
それから、知識を豊富にして、色々なことを覚えておくと良いと思います。何かやるにも、自分たちの知識が豊富でないと、団体等の運営はできないと思います。パワーズのメンバーは、自分が今やっている以上のことをたくさん体験しているので、一人でどこに行っても対応できます。パワーズのメンバーは、人に説明できる余裕を持っています。パワーズブックをボロボロになるまで読めば知識として身につきますし、そうすれば命が助かると思いますので、いろいろな災害の知識を持つことが大事だと考えています。
Q4でもお話ししたとおり、ボランティアを行っている団体の拠点が欲しいと思っています。拠点がないと、アイディアを共有したくても、先に進むことが難しくなってしまいます。パソコンなどの機材も用意できず、zoomを使うことができない団体も増えてきます。個人でもzoomに参加できないといけないので、携帯電話での参加等、色々なことを勉強している最中ですが、そうしたことを共同で勉強するための拠点があると良いと思います。今の時代の流れについていくためには、インターネットを駆使できないといけないと思います。
資金面は、公募に対してエントリーして資金が入ってくるような場がもっとあれば良いと思います。何をするにも資金は必要です。皆さんのご協力のおかげで、パワーズはある程度の資金が工面できているので、防護服を作るためのビニールなども買うことができます。
今後もパワーズの基本である「家庭の中からの防災」を大事にしながら、引き続き活動を続けていきたいと思います。
女性防災クラブ平塚パワーズへの取材を通じて感じたことは、パワーズの皆様がとても温かみのある方々で、楽しく生き生きと防災活動に参加されている点です。楽しんで参加できているからこそ、いろいろなアイディアを出し合うことができ、かつ長く継続できるのだと感じました。
平塚市立太洋中学校における災害時の応急手当などの講習も見学させていただきましたが、パワーズの皆様は丁寧に生徒に説明されていて、とても分かりやすいと感じました。パワーズの皆様から教わったことを通じて、生徒の防災への関心が高まったのではないかと思います。
「家庭の中からの防災」という視点もとても重要だと思いますので、今後もぜひ積極的に防災の啓発活動に取り組んでいただきたいと思います。
パワーズの皆様、取材にご協力いただき、ありがとうございました。
以上
このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。