初期公開日:2022年8月12日更新日:2023年9月13日

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相模原市・久保原自治会(チームくぼはら)

自主防災組織取材

取材概要

 今回、相模原市からの推薦を受け、発足から日の浅い自主防災組織の課題やそれに対する工夫について話を伺うため、相模原市中央区小山地区の久保原自治会を拠点に活動する自主防災組織「チームくぼはら」を取材させていただきました。
 久保原自治会は、JR横浜線相模原駅の西側に位置する小山地区自治会(全9自治会)を構成する自治会で、小山地区の南西側に位置します。戸建て住宅が中心の地域で、大規模な集合住宅もないことから、住民の入れ替わりは比較的緩やかな特徴があります。自治会への加入世帯136戸(加入率90.7%)です。
 久保原自治会を拠点に活動する自主防災組織「チームくぼはら」はメンバー11名(男性7名、女性4名)で構成されており、代表の丸山和加恵様を中心に40代から80代までの幅広い住民の方々が活動されています。

取材の相手方

チームくぼはら 代表 丸山 和加恵 様

 

Q1 組織発足の経緯や、活動に参加された理由について教えてください。

 私たちが暮らす久保原地区は、約150戸の小さな地区であるため、以前から住民同士のやりとりは活発でしたが、自治会組織内の防災担当者は、他の役員と同様に輪番制で機械的に割り振っていました。
 そのため、防災担当者が高齢であったり、介護を必要とする家族がいたりと、発災時に救護活動の中心となることが難しい状況でした。
 このことに危機感を抱き、3年前に有志メンバーを集めて自主防災組織を立ち上げました。

会議風景

 相模原市の定める避難所(市立向陽小学校)まではJR横浜線の線路を超えて移動する必要があるため、高齢者や負傷者等、支援を必要とする方々が避難することは容易ではありません。

 また、避難所の収容可能人数も200名と限りがあり、久保原地区の住民が避難するのは、現実的ではありません。そのため、地域の中で災害に備える必要があると考え、活動しています。

防災マップ

 活動するメンバーの多くは、久保原地域で生まれ育ってきましたが、子ども会の集まりや夏祭りがなくなるなど、地域で集まる場所や機会が減ってきたように感じています。地域への恩返しの意味から、防災活動に参加するメンバーも少なくありません。

 大規模災害に見舞われた他県の事例をみると、発災初期は地域の消防団員も被災するため、平時のような救命活動が期待できないケースもあるようです。地域内で防災力を高め、初期対応する必要があると感じています。

会議風景2

Q2 久保原地区で想定される災害や危険なポイントなどがあれば教えてください。

 近くには大きな河川もなく、地理的に水害の危険性は低いと考えています。令和元年の台風19号など、近年の大雨でも目立った被害はありませんでした。

 一方で、大きな工場とJR横浜線の線路で3方向を囲まれる周辺環境から、火災発生時の避難の危険性を多くの住民が感じています。

 また、久保原地区の高齢化率は30%と、周辺地区に比べて高い特徴があります。大規模地震の際には、屋内家具の転倒などによる被害も心配です。

Q3 これまでの具体的な活動や力を入れている活動、工夫している点などあれば教えてください。

 自主防災組織を立ち上げるにあたり、まずはこれまで錠前式であった防災倉庫の鍵を、ナンバー式に取り換えました。これにより、メンバー間での鍵の受け渡しが不要となり、発災時は誰でも資材が利用できるようになりました。
 また防災活動以外への効果として、これまで自治会の役員は、鍵の受け渡しに常時対応できる必要がありましたが、ナンバー式に変えたことでそのような制約もなくなり、平時の負担が減るとともに、自治会役員になるハードルも下がったと感じています。

防災倉庫

 防災活動を行うには、地域の中にいる高齢者の方や障害を持つ方など、社会的弱者の存在を肌で感じる必要があります。

 チームくぼはらでは、2年前に個人カードを作成し、各世帯にどのような方いるのか、可能な限り提出していただき、データベース化しました。

Q4 多くの住民が不安に感じておられる火災の対応として、何か取り組んでいることはありますか。

 これまで自治会が管理していた消火器に加え、台車で迅速に火災現場まで持ち運べる消火器具を配備しました。
 消火栓を利用する本格的な器具でありながらも、女性でも簡単に持ち運べる大きさで、地域内をカバーするため2か所に設置しています。
 昨年11月には、相模原市消防局にも参加していただき、消火訓練を実施しました。実際に触って、操作を覚えてもらうためにも、毎年1回は消火訓練を実施しようと考えています。

 メンバー同士の連絡方法を工夫し、これまでの電話連絡から、メッセージアプリを利用するように改めました。電話の場合は個々の対応になるため、全体で情報の共有が取りづらいですが、グループトークを導入したことで情報共有がスムーズになり、定例的な会議に諮っていた時よりも意思決定が早くなったと感じています。

 コロナ禍の影響で、当初考えていたような活動ができていない現実もありますが、今後もこれまで練っていた案に、順次取り組んでいきたいと思います。

消火訓練

Q5 活動をするにあたってどのような課題がありますか。

 地域内には、防災のために活用できる土地が少ないということが、活動のネックになっています。
これまで一時避難場所として利用していた場所も、民有地のため使用ができなくなりました。

 今は相模原市に確認を取ったうえで、地域内にある幅員の広い道路を一時避難場所に指定しています。
 小さい頃、消防士に憧れた男性は少なくないはずです。消火訓練なども機会があればやってみたいという住民もまだいらっしゃると思いますが、回覧版に情報を載せるだけでは、なかなか見ていただけません。
 防災活動の取り組みや、メンバー募集の呼びかけをするためにも広報媒体があればよいのですが、まだ手が付けられていなく、今後の課題となっています。

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Q6 自主防災組織を活性化するためには、どのようなことが必要だとお考えですか。

 新たに転居された住民などは、防災活動に参加したい意欲があっても、どこに連絡すればいいのか分からないのではないでしょうか。

 個人情報の取扱いという観点から、メンバーの連絡先をあちこちに張り出すわけにもいかないため、市役所等で取次ができる仕組みなどがあるといいと思います。

 どこの自治体も、発災時に何をすべきかのガイドライン等は作成していると思いますが、平時において、防災組織をどのように運営、継続していくのか。ノウハウを共有する仕組みがほしいです。

 自主防災組織は熱意のあるメンバーが多いですが、仕事や家庭を抱えるなかで、どうしても活動が疎かになる時期もあります。活動を活性化し、自主防災組織の組織率を底上げするには、やはり表彰などといった、外部からのインセンティブも必要であると感じています。

Q7 自主防災組織を活性化するため、県や市町村に期待することがあれば教えてください。

 地域内の企業、事業所には自治会の賛助会員にもなっていただいており、良好な関係を築いてきましたが、防災面では具体的な協働関係が図れていない現状があります。

 行政から広く地域防災活動の意義を知らせ、地域と企業との橋渡しをお願いしたいです。

Q8 これから自主防災組織に参加してみたいと考えている一般の方向けに、何かアドバイス等があれば教えてください。

 防災は自治会の担当役員だけが知っていればよいものではありません。いざという時に自身を守れるよう、普段から地域ぐるみでの取り組みが必要です。

 防災活動をすることで地域の親睦も深まりますし、地域の親睦が防災上の助けにもなります。自治会未加入の方は、まずは加入の検討をされてはいかがでしょうか。

 防災活動を通して住民の交流が深まり、若い人からお年寄りまで、久保原に住んでよかったと思える街にすることが私たちの目標です。

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取材を終えて

 今回の取材を通して、防災活動が地域づくりの一環であることを再認識しました。自主防災組織の立ち上げも、新たに組織を作るというよりは、現在地域にある関係性を発展させていくことが近道になるように思われます。

 また、多くの地域では、防災に活用できる資源が必ずしも十分ではないなか、地域の特性を踏まえ、もっとも危険性を感じる火災への対応に注力されていたチームくぼはらの活動は、他の自主防災組織にも、参考になるところが多いのかと感じています。

 一方で、自主防災組織の活動は、メンバーの熱意によって支えられている部分も多く、行政としてはこのような熱意のある団体をどのように支援し、平時の活動継続を後押ししていくかが課題であると感じました。

 丸山代表をはじめ、チームくぼはらの皆さん、このたびは取材へのご協力ありがとうございました。

このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。