初期公開日:2024年8月26日更新日:2024年8月26日
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自主防災組織取材
今回、大和市の推薦を受け、同市の中央にあるコスモ大和自主防災会に取材させていただきました。
コスモ大和自主防災会は、マンション「コスモ大和スターアベニュー」の住民で組織されている自主防災会です。消防部隊を呼ばず、自分たちで定期的に初期消火訓練や避難誘導訓練等を実施するとともに、マンション独自で防災マニュアルを作成するなど、精力的に自主防災活動を行っています。
非常に参考になる内容となっていますので、ぜひご一読ください。
コスモ大和自主防災会 福島 勇 様、ほか役員の皆様
自主防災組織自体は昔からありまして、結成されたのは平成10年です。その頃市から要請がありまして、自主防災会を結成しました。ただし活動が本格化したのは10年ほど前からです。
東日本大震災を受けまして、これは真剣に防災について考えていかなければならないと思いました。
最初は備蓄から始めました。実態がないと住民の意識も根付かないだろうという狙いです。一般的な食料や水に加えて、ガスボンベや発電機なども備蓄しています。
また、防災マニュアルもこの時点で作成に取り掛かりました。我々の中には、防災に詳しい人も、マニュアル作成について知見がある人もいませんでしたが、インターネットで調べたら参考となる防災マニュアルがたくさん見つかりました。
「これなら我々でもできる!」と思ってさっそく取り掛かったわけです。
特に参考になったのは仙台市消防のマニュアルです。どの係が、どのタイミングで、何をするべきか、全部載っているので、それを我々の設備と規模に合わせているわけです。
また、町内会の諮問委員会や住民アンケートを随時行いながら、内容の充実化に努めています。
防災訓練には力を入れています。自治会で様々なシチュエーションを想定した訓練計画を作成して、避難訓練や資機材の使用訓練などを行っています。
当マンションでは、訓練に消防の方を呼んで、基本的なことを言われたとおりにやるだけでは不十分だと考え、あえて消防組織等を呼ばず、自主的に訓練を行っています。自主的に計画を立て、実行することで、発災時の真の課題が見えてきます。夜間の訓練を実施した際には、暗闇の中で具体的に何が危険なのか、そういったことが共通認識として見えてきました。
あえて平日の昼間に訓練を行ったこともありました。もちろんお仕事に行かれている方が多かったので、主婦の方々がメインになりました。いざという時のためにということで実施しましたが、非常にテキパキと動いていただいて、スムーズに訓練ができました。
他には、私(福島会長)の前職が設計施工であることを活かして水つり上げ装置を作成し、その使用訓練なども実施しました。当マンションは10階建てですが、住民の高齢化の影響で下から物資を運ぶのにも一苦労だということ作成しました。
この装置(写真参照)を屋上に設置したことで、滑車を活用して高齢者でも簡単に物資を上まで運べるようになりました。
また、災害時に子供の安否を確認するため、アンケートによる共働き世帯の子供の把握にも取り組んでいます。日中の学校にいるうちは教師の方など大人がいて安心できますが、問題は帰宅後です。子供だけで留守番や外出している時などに発災した場合、子供達が自分で最低限の身を護れるように、アンケートをきっかけにご家族で話し合って欲しいと思い企画しました。
安否確認ステッカー
やはりどこもそうだと思いますが、訓練の参加率やアンケート回答率など住民の意識は課題に感じているところです。我々としても少しでも住民の方々に協力していただけるよう、様々な工夫をして取り組んでいます。例えば、訓練に参加したらLED照明や備蓄食料を配布するなどしています。
また、各家庭に配布している「安否確認ステッカー」が、意外にも意識啓発の点でも有効でした。
当マンションは在宅避難をメインに想定しているので、住民にこのステッカーを玄関先に掲示をお願いして、我々が各世帯の安否情報を整理し、必要な支援を行います。訓練においても活用することがありますが、このステッカーの掲示に関しては住民の大部分の方に協力いただいています。
常日頃から玄関ドアの裏側に貼っておいて、訓練時にこのステッカーを表側に張り出すだけなので、手軽に参加できるのが高い参加率の理由だと思います。普段はなかなか活動に参加されない世帯でも、ステッカーの掲示は協力いただけるため、住民の方々も防災活動は必要なことだと意識されていると実感できます。
難しい質問ですが、我々が思うに、大事なのは「子供」と「女性」だと思います。
まず子供が重要な理由として、今の子供たちが大きくなって町を守る立場になったとき、力を発揮するため、ということもありますが、より大きな要素は「大人より活動に呼び込みやすい」ということと「親子参加が狙える」ということです。
自治会・町内会が人を集められる最大の武器は「お祭り」です。関心の薄い大人を地域の集まりに呼ぶのはだいぶハードルが高いですが、お祭りを開催すれば子供は喜んで参加してくれます。そういった場で地域の交流を深めることで、防災にもつながっていくと思います。
また、子供が参加すると、親もついてきて活動に参加してくれるようになるため、一挙両得というわけです。
次に、女性についてです。現在、防災・消防分野における女性の活躍推進が話題になっていますが、まだまだ防災は男性がメインというイメージがあります。
例えば避難所運営1つにしても、女性目線の配慮が欠けているのが現状です。
だからこそ、より多くの女性にご参加いただいて、活発な意見交換ができれば、さらに質の高い防災体制の構築に繋がっていくと思います。
また、女性は輪を生み出すのが男性よりも得意ですから、コミュニティの活性化にも貢献してくれます。
まず初めに、我々は行政に頼りすぎないということを心がけています。先ほどもお話しましたとおり我々は消防組織等を呼ばず独自で防災訓練を行っています。やはりこの地域については我々のほうが熟知していますし、当事者である私たち一人ひとりが考えながら防災活動をすることが大事だと思うからです。なので、行政には我々を引っ張っていくというより、後ろから支援していただきたいです。
例えば、ここ大和市は水源が豊富だから被災時でも飲用水の確保などは容易であると言われていますが、神奈川県全体だとそうもいかないと思います。そこで、マンション受水槽の耐震化に補助金を出すなど、そういった支援をしていただきたい。「こうしろああしろ」と押し付けるのではなく、「こういったことも出来ますよ」と選択肢の幅を広げていただけるとありがたいと思います。
防災は他人任せで成り立つものではありません。いざという時、自分を守れるのは自分だけ。
「あなたがやらなくてはいけないんですよ!」と当事者意識を持ってもらうことが重要です。
そして住民全員が一丸となって取り組むことで、自助だけでなく地域全体の防災力が向上します。
今後も住民同士、一蓮托生の気持ちで取り組んでいきたいと考えています。
今回の取材を通じて、実際の消防のマニュアルを取り入れながらも、あえて消防の力を借りずに自主的に訓練を行うとともに、自分たちでなにが必要か考えて行動している姿を目の当りにし、とても心強く感じました。
また、会長ご自身の前職の経験を生かして自作の装置を作ったこともとても印象的で、住民一人一人の経験や得意分野などを地域の防災に活かす良い先行事例であると思いました。
コスモ大和自主防災会の皆様、この度は取材にご協力いただきありがとうございました。
以上
このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。