初期公開日:2024年8月26日更新日:2024年8月26日

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古里住宅自主防災会(藤沢市)

自主防災組織取材

取材概要

 今回、藤沢市の推薦を受け、同市の御所見地区にある古里(ふるさと)住宅自主防災会に取材させていただきました。
 古里住宅は1棟当たり4階から5階建ての全16棟からなる集合住宅であり、現在は約260世帯が入居しています。
 古里住宅自主防災会は市の防災組織連絡協議会からも高い評価を受けていて、古里住宅が位置する藤沢市御所見地区の自主防災組織で唯一、防災活動に絞った年間計画を立て、地域性に則した活動を行っているとのことです。
 その取組には、高い専門性を必要とするものばかりでなく、防災に対する意識を持つことで取り組むことができるものが多くあります。

 非常に参考になる内容となっていますので、ぜひご一読ください。

取材の相手方

古里住宅自主防災会 会長 池上 弓子 様 ほか2人

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Q1 自主防災組織の概要と活動を始めることになった経緯について教えてください。

 古里住宅は市営住宅のため、私も含め住民全員は、何でも市がやってくれるというように初めは考えていました。しかし、現実は自分たちでやらなければならないことの方が多く、防災についてもそうでした。

 私は平成4年度に初めて自治会の副会長を務め、当時の会長と防災の必要性について漠然と意識はしていましたが、運営が忙しく具体的な取組は始められずに任期が終わってしまいました。その後、平成7年1月に発生した阪神淡路大震災が私にとって非常に衝撃的で、本格的に取組をしなければならないと思ったきっかけになりました。

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 それから、平成11年度に私は副会長に再任し、平成4年度に一緒に会長をした方も会長に再任したことで、前回できなかった防災活動を始めようということになり、まず、自治会に防災部を設立しました。防災部には自治会役員とは別枠の自主防災リーダーを設置し、自治会役員が年度ごとで変わってしまうところ、リーダーは変わらずに務められるようにしました。

 私はこの年から今まで自主防災リーダーとして務めていますが、当初から、市や御所見地区の連絡協議会に積極的に参加し、そこで得た知識や情報を総会や集会で住民に伝えていき、防災知識の普及に努めました。中には「防災なんていらない」といった否定的な声もありましたが、対話を重ねていくことで、だんだんと皆さまから協力してもらえるようになっていきました。

 ですが、平成18年まではあくまで自治会の防災部だったため、自治会役員の熱量によって防災に協力的であったり、そうでないときがあったりしました。防災は継続的な取組が必要で、年によって波があってはだめだよねということで、平成19年度に自治会から独立した自主防災会としてスタートしました。今まで自治会、民生委員やPTAは完全に縦割りで、防災のときはこれらをすべて集約する必要がありましたが、この自主防災会はそれらを組織の中に全部入れ込んで一緒に活動できる組織にしました。

 現在、自主防災会は、全16棟から1名ずつの棟リーダーや自治会長などのほか、民生委員やPTAを協力員として置いた「給食・給水班」「避難誘導班」「情報収集班」「救出救護班」「消火班」の5つの班で組織されています。

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Q2 具体的にどのような自主防災活動に取り組まれていますか。

 私たちの主な取組は、まず、年に3回大きな訓練を行っていて、春と秋に古里住宅で実施する訓練、もう一つは御所見地区で行われる総合防災訓練へ参加しています。春と秋の訓練は、住民が参加しやすいように自治会が行う全員参加の大掃除と同日に行うようにしていて、90%以上の住民が訓練に参加しています。一時避難場所までの一斉避難訓練や炊き出し訓練、安否確認訓練、シェイクアウトなど様々なバリエーションで訓練を行っています。

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 当会は、白いタオルを家の決められた方角の窓の手すりに掛けて、外から一目で棟全体の安否を確認できるようにしています。震度5以上の地震が発生したときに、白いタオルを出し、それを棟のリーダーが確認する、という仕組みにしています。
 このほかに、日頃から安否確認用の名簿を作成しています。平成13年から始めて、家族構成や緊急連絡先を書いてもらっていたのですが、平成15年にアップグレードして、そこに趣味や特技などを記載してもらうようにしました。趣味や特技を書くことで、災害時の様々な活動の中で得意な人を配置できるかなと思っていたのですが、なかなか皆さん書いてくれず、惜しみつつも内容を見直し、現在は世帯主、家族構成、連絡先と高齢者や要配慮者がいるかいないかを書いてもらうようにしています。

 他には、市や地区の防災協議会が実施する防災講習会や防災リーダー研修会への参加、備蓄品の管理を兼ねた防災倉庫の点検整備、消火器や三角巾を使った細かな訓練、使わなくなってしまった寝具などを使って担架やガーゼなどの防災資機材を手作りするなど、年間を通して防災活動を行っています。

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Q3 自主防災活動を行うにあたって、工夫している点などがあれば教えてください。

 kaityo2まず、活動をするために徹底していることが、自主防災会の意思決定は、必ず自治会の総会で決議する、ということです。防災活動に係る経費についても必ず予算化し、何を買う、何をするなど、当たり前のことかもしれませんが、住民の総意として取り組むため必ず総会で決議しています。総会を通すことで、皆さんの意見を吸い上げられますし、必要なことを伝えることができるので、しっかりと取組を進めることができます。私は、総会などでは伝えたいことは3回言うようにしています。1回や2回では流されてしまうことが多くて、3回まで言うと皆さん覚えていってくれるので、それを私の役目としてずっとやってきています。
 ほかには、炊き出しや安否確認では、棟ごとにリーダーが食料配布数や人数をチェックして集計するようにしているのですが、チェックのための様式は内容によって違う形にするのではなく、全部同じ形にして使い方を分かりやすくするように工夫をしています。棟リーダーは毎年変わるので、だれでも使えるようにしておきます。
 あとは、訓練が終わったらすぐ、その日のうちに役員で反省会をしています。次に生かすため、忘れる前にやることが大事だと思うので、必ず毎回やっています。

Q4 活動を始めたことでどのような効果や変化がありましたか。また、どのような課題がありましたか。

 syuzai2皆さん初めは、誰かが助けてくれるという意識だったと思うのですが、訓練を重ねていくことで、そうではないということに気づいていってくれました。まずは、自分が助からなければいけない、そこで動けるなら、動けないほかの人達を助けていかなければいけない、そういった意識が定着してきて、皆さんに防災訓練は必要だと思っていただいていると感じます。
 課題ですが、年々、高齢化が進んできているのに加え、入居者が少なくなっているので、防災活動ができる人が減ってきてしまい、初期のような活動が思うようにできなくなってきており、新しい体制に切り替えていかなければならないと感じています。そのため、災害時に要配慮者を支援してもらえる制度を市が設けているので、支援が必要な人たちに申し込んでいただけるよう、今は説明会の開催に向けて勉強をしています。

Q5 自主防災組織を活性化するためには、どのようなことが必要だとお考えですか。県や市町村に期待することもあれば教えてください。

 活性化に必要なのは、一緒に取り組んでくれる人がいることだと思います。組織を立ち上げたときの自治会長や、市の防災協議会の椎野会長にも協力していただき、自主防災会を作り上げてきました。また、コミュニケーションも重要で、総会もそうですが集会や懇親会などをたくさん開き、住民が集まって話し合う機会をたくさん作ってきたことで、ここまでうまくやってこられたのだと思います。
 行政の方に求めることとして、大変だとは思いますが、自主防災組織の会議や訓練などの現場に視察に来ていただきたい。そうすれば、直接私たちの要望を伝えられますし、現場で見て感じたことなどを行政の事業にプラスしていただければいいと思います。

Q6 今後の活動や意気込みがあれば教えてください。

 防災の重要性については、1月1日に起きた令和6年能登半島地震により、みなさん改めて認識をしたと思います。防災活動は効果を実感する場面が限られていますが、いざというときに自分の身を守ることになりますので、空振りでもいいので備えることが大事だと思っています。
 私自身、今いるところで暮らしていきたいという気持ちが強いので、今できることにチャレンジングに取り組んで、防災活動をしていきたいと思います。

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取材を終えて

 今回の取材を通じて、池上会長の防災活動に対する情熱と継続的な取組に触れることができました。アグレッシブに活動されていることが印象的で、できそうなことはすぐ取り入れ、うまくいかなければ改善してチャレンジすることもポイントに感じました。
 また、古里住宅のように、自治会から独立した自主防災組織とすることで多様な活動や多方面との連携が可能となり防災の幅が広がるため、自主防災組織とすることの重要性を再認識しました。
 初めから専門知識を持っていたわけではなく、市や地区の防災に関するイベントに参加することで知識を得た組織であり、同じようなスタートラインに立っている自治会や自主防災組織も多いと思います。ぜひ、古里住宅自主防災会の取組を参考にして、自主防災活動を始めていただければと思います。
 池上会長、この度は取材にご協力いただきありがとうございました。

以上

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このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。