初期公開日:2024年8月26日更新日:2024年8月26日
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自主防災組織取材
横須賀市の推薦を受け、同市の平成町にあるソフィアステイシア自主防災会に取材させていただきました。ソフィアステイシアは埋め立てにより整備された「よこすか海辺ニュータウン」の一画で、平成15年に建設され、今年で21年目となりますが、建設直後からマンション全戸に一斉に入居があって以降、現在まで、入れ替わりはあるものの、常に満室であるほど人気のマンションとなっています。
その理由として、非常に高い防災力があります。毎年行われる大規模な防災訓練のほか、平成26年に地区防災計画を策定しており、その計画は内閣府の地区防災計画モデル地区15選に選出され、日本最強のマンション防災と評価されています。
非常に参考になる内容となっていますので、ぜひご一読ください。
ソフィアステイシア自主防災会
会長 和久田 幸志 様 ほか役員3人
ソフィアステイシアは8階建から14階建の免震構造4棟から構成されていて、309世帯・約1,000人が入居しています。平成17年に設立した自治会及び自主防災会には居住者全員が加入しております。
また、当会の呼びかけにより、海辺ニュータウン地区にある7つのマンション自治会で「よこすか海辺ニュータウン連合自治会」を設置し、1,855世帯・約6,000人が加入しています。さらに、連合自治会の呼びかけで、海辺ニュータウン地区に進出した企業など31団体で「まちづくり協議会」を設置し、広域的連携体制を構築しました。31の会員にはデジタル無線機を配備し、災害時の情報伝達や緊急避難誘導等に活用しています。
ソフィアステイシアでは、入居が始まってからは盗難や空巣被害が相次ぎ、防犯対策が課題となっていました。当時は、入居間もないこともあり、居住者同士が近隣の住民情報を認識しておらず、犯罪者が敷地内に侵入しても不審者ということに気づくことができないことが原因でした。
それから、住民同士が顔見知りになるために、近隣住戸で班編成をして住民交流会を開催するようになりました。他にも、横須賀警察署による防犯講習会の開催や、あいさつ運動、声掛け運動をスタートしました。この取組により、マンション全体のコミュニティが醸成され、住民全員がほぼ顔見知りの関係になったため、敷地内に住民でない人が侵入した場合、不審者であると気付けるようになり、防犯対策につながっていきました。
コミュニティの形成とともに、活動に力を入れていくため、市が行うコミュニティ活動支援や防災資機材整備に関する補助を受給できるように、「ソフィアステイシア自治会」と「ソフィアステイシア自主防災会」を設立し、補助の対象団体となったことで、防災活動は加速していきました。
自治会で住民者台帳制度を導入しており、住民の持病やかかりつけ医を把握し、緊急時に適切な対応が行えるよう備えています。導入当初、提出率は7割程度となっていましたが、夏場に住民が重度の熱中症を発症してしまった際に、台帳の医療情報をもとにかかりつけの病院に救急搬送を行い、一命を取り止めるという出来事があってから、台帳の提出率が96%まで跳ね上がりました。
また、当会では地区防災計画(MLCP:Mansion Life Continuity Plan)を策定しており、災害が発生した場合でもマンションにとどまり、居住者が一致団結して在宅で避難生活を継続するための行動を記してします。全編345ページの計画となっていて、住民には、これを要約した「わが家の防災ハンドブック」を配布しています。
毎年12月には総合防災訓練を実施していて、実際に発生し得る災害を想定して、「災害発生直後の過酷事象と二次災害の連鎖から如何にして自分と家族の命を守るのか」をテーマに、災害で死なないための「体で覚える訓練」をしています。令和5年度には「相模トラフ沿いの海溝型地震」の発生と、その直後に大津波警報が発表されたという想定で訓練を行いましたが、訓練を視察に来ていた内閣府や大学の研究者等が、そのレベルの高さに驚いていました。
その他には、6階以上の決められたエレベーターホールに「班別指定避難集合場所」を設置し、災害時には各戸が決められた避難場所に集合し、安否確認や要支援者の避難に協力することにしています。指定避難場所には防災箱を置き、災害対応マニュアルや安否確認表、ヘルメット、避難誘導灯などを収納し、緊急時にすぐに使用できるようにしています。また、東日本大震災の時に、断水と停電が発生しエレベーターが機能しなくなった高層階へ給水支援をしていた際、自発的に非常階段を駆け上がり水の運搬に協力してくれた高校生からヒントを得て、中高生を中心に「ジュニアレスキュー隊」を結成しています。
平成26年4月に内閣府が地域の防災力を高めるべく「地区防災計画制度」を創設しました。さらに、制度を普及するため、地区防災計画の策定に取り組む地区をモデル地区とする働きかけもあったため、ソフィアステイシアは第1期モデル地区に応募するべく計画策定に取り組みました。制度が創設された2カ月後に行った管理組合と自治会の総会において、計画策定に向けた予算付けと住民による地区防災計画策定委員会の設置、モデル地区への応募が承認されました。
策定委員会は防災士3人、横須賀市防災指導員6人、消防職員1人、自衛官3人、看護師長1人、建築・設備の有資格者3人の合計17人で平成26年7月より活動を開始し、延べ20回の会議を経て、平成27年3月に「よこすか海辺ニュータウンソフィアステイシア地区防災計画」が完成しました。地区防災計画の完成直後に横須賀市防災会議に同計画を提出し受理されました。
ソフィアステイシアでは、入居当初より防災・防犯活動には管理組合や自治会、自主防災会の組織を挙げて取り組んでいたため、計画策定にも前向きに取り組めました。
まずは、住民同士の結びつきが一番大事だと思います。日々の挨拶から始まり、イベントを行ったり、時には飲みニケーションもよいと思います。小さなコミュニティから少しずつ輪を広げていって、一緒に活動をする仲間として信頼関係を築いていくことで、大きな課題にも取り組みやすくなっていくと思います。
コミュニティを築いたうえで防災活動において大事なことは、住民全員が当事者意識を共有することだと思います。これだけ防災に取り組んでいるマンションだから「私は安心」と思って欲しくないです。高齢者や避難行動要支援者を除いた健常者は全員がマンション防災の担い手という認識を持ち、「防災にお客様は要らない」を合言葉に取り組んでいます。
ソフィアステイシアの役員は輪番制ではなく立候補制や推薦制で長期運営をしています。人数にも制限をかけていませんので、交流会などで活力のありそうな住民へお声がけして、ヘッドハンティングのような形で役員に参加してもらったりしています。活動には、その人のライフスタイルに合わせて、できるときに力を貸してもらうようにしているため、無理なく活動ができることで辞めていく人はほとんどいません。このような体制で運営しているため、若手にノウハウを伝えていきやすい環境にあります。
そのほか、自主防災会または自治会の主催で、防災講習会や勉強会を頻繁にやっていて、その講習会の都度、災害に対する備えなどを強く伝えています。
ソフィアステイシアでは、管理組合も自治会も自主防災会も、担い手が大勢育っていますが、住民全員への意識啓発は課題に感じています。毎年、訓練を実施していますが、やはり一切関心を示してくれない住民もいるので、その人たちをいかにして防災活動に参加させるか考えていかなければならないな、と感じています。エレベーターに乗る少しの時間でも目を引いてもらえるように、防災情報などをイラストで掲示していますが、普及啓発はまだまだ取り組んでいかないといけないと思っています。
また、災害が発生したとき、我々のようなノウハウを持った役員が必ずしもマンションにいるわけではないので、残されているメンバーで初動対応ができるような体制づくりを今後の課題と考えています。
防災にはゴールがありませんので、これからも持続力を持って走り続けます。
今回の取材を通じて、ソフィアステイシアの皆様は非常に住民同士の仲間意識が強く、それが全ての礎になっているということがわかり、自主防災活動を行う上でコミュニティ形成の重要性を改めて認識しました。また、仲間意識だけではなく防災への意識も非常に高いことから、レベルの高い活動を実現できているのだと感じました。
ソフィアステイシア自主防災会の取組は、他の地域や自治体が簡単に取り入れることができるものではないかもしれませんが、日々の挨拶から始め、地域コミュニティを築いていくことはぜひ取り組んでいただきたいと思います。
ソフィアステイシア自治会役員の皆様、この度は取材にご協力いただきありがとうございました。
以上
このページの所管所属はくらし安全防災局 防災部危機管理防災課です。