キラリと光る☆就職氷河期世代を採用しよう! 第4回

就職氷河期世代支援が本格的に開始されるはずだった令和2年度は、年度がはじまって間もない4月に新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、筆者も含め就労支援機関や労働局等の取り組みも出鼻をくじかれるスタートとなりました。

夏を過ぎ秋の気配を感じる季節になって、就職氷河期世代支援の動きも徐々に活発となり、筆者も神奈川県や東京都、千葉県のほか関西地方において、セミナー講師に登壇するなどしてきました。またいくつかの地方自治体ではアドバイザーとして、就職氷河期世代支援に携わりました。

その中で、企業側、求職者側の双方の課題が見えてきました。集中支援期間2年目を迎える今年度、さらに就職氷河期世代支援を加速化するために、どういった課題感があるかをまとめたいと思います。その上で、次回と次々回で、事例を紹介する中で就職氷河期世代の採用について検討を深めていこうと思います。

なぜマッチングイベントはうまくいかなかったのか

失敗は成功の基。なぜうまくいかなかったのか、成功につなげるための課題を把握できたと考えるならば、失敗はよい経験です。今回とりあげるのは、ある地方自治体での事例です。

就職氷河期世代支援の一環で、企業と求職者のマッチングイベントを開催しました。しかしながら、20名余りの参加者のうち面接まで至ったのは8名、内定を獲得したのは3名でした。正社員を目指している非正規就労中の方や無業の方が3名も正社員就職を実現できたのですから、素晴らしい結果なのですが、支援機関が当初設定していた目標(5割の採用決定)からみると少し残念な結果です。なぜこのような結果になったのでしょうか。

一つめは、就職氷河期世代を対象に採用活動をしようとする企業が少なく、就職氷河期世代の求職者側からすると選択肢が少なかった点です。
多くの就労支援機関では、企業に就職氷河期世代採用のメリットや活用策について伝えるために様々な企画を立てて取り組んできましたが、コロナ禍で現状の雇用維持を優先したことも相まって、就職氷河期世代採用にチャレンジする企業が、思った以上に増えなかったことが挙げられます。求職者視点に立てば、自分の興味や経験がない業種や職種には、やはり目が行きにくいもので、マッチングイベントでの面接回設定数の少なさにつながりました。

二つめは、企業側の採用や受け入れの体制が十分整っていなかったことです。
イベントに参加した企業は、従業員数が10名から数百人規模の地域の中堅・中小企業が大半でした。なかにはハローワークを通じた求人活動から長く離れていたり、就職氷河期世代など40代前後の社員採用を前提とした給与制度がなかったり、または経営者と採用担当者の就職氷河期世代採用に対する考え方が違っていたりするなど、せっかく求職者と出会えたのに採用に至らなかったケースもありました。

三つめは、就職氷河期世代の当事者にまだ十分に支援施策の周知が進んでいないという実感です。
就労支援機関に相談に来られる方の中には、非正規就労ながらそれなりの収入で働いている人がいました。例えば、製造現場で働いている方は月平均30万円程度稼いでいました。半年ごとや1年ごとの契約更新制で不安定な生活基盤であることに変わりありませんが、地方のまちで月に30万円の収入があれば、それほど生活に苦労することはありません。また、数は少ないものの、マッチングイベントの後、面接当日になってドタキャンする人もいました。企業の採用担当者からは「本当に就職氷河期世代って、仕事に困っているの?」という感想を頂戴しました。
もちろんここで取り上げるのは一例であって、社会には仕事や生活に本当に困っている就職氷河期世代の方人が大勢います。つまり、就労支援機関がアプローチできている支援対象者以外にも、世の中にはもっと多くの就職困難者等が潜在的にいるということです。
それではなぜそうした就職困難者にまで支援が届きにくいのでしょうか。私の実感となりますが、基本的に支援が届く人は、自発的にハローワークや地域若者サポートステーション(サポステ)などの就労支援機関に来る人であって、それ以外の非正規で就労中の方や、無業状態の方などには情報が届いていないからだと考えています。

課題をざっくりまとめると・・・

上で述べたことを全体的に整理すると、「就職氷河期世代そのもの」や「採用のメリット」などについて、企業側が納得できるレベルまで理解が深まっていないこと。そして就職氷河期世代の採用にチャレンジしようと動いてみたものの、企業の体制整備が追い付いていないこと。さらに就職氷河期世代の採用意欲がある求人企業へ入りたいと考える求職者を拾いきれていないこと。以上が挙げられるのではないでしょうか。

国の政策はこれからどう動く?

それでは、「キラリと光る就職氷河期世代」の支援は今後、どのように進むのでしょうか。国の動向を見ていきたいと思います。

ざっくりと今後の国の動向を述べると、今年度と来年度は引き続き、就職氷河期世代支援に取り組むことが明らかになっています。「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)は、来年度(令和4年度)の施策の方向性や予算編成の指針となりますが、こちらで就職氷河期世代については引き続き、力を入れて取り組むことが記載されています。

何に力を入れるのかといえば、市町村の取り組みを支援していくことや社会人インターンシップの充実、さらに厚生労働省の本年度予算では、企業に対する採用成功事例のシェアや、福祉と就労の連携による自立支援、そのほかSNS等を用いた支援などが挙げられています。

企業はどう取り組めばいい?

新型コロナウイルス感染症の影響も、ワクチン接種率の上昇に合わせて、今年度後半から(業種によっては既に始まっておりますが)コロナ禍以前のような採用難の基調になってくるものと考えられます。そうした中で、国は引き続き、就職氷河期世代の集中支援に取り組む姿勢です。採用難の時代に、多様な経験を積んできた「キラリと光る就職氷河期世代」を活用することは、企業の持続的な発展を考える上でも重要な施策となってくるはずです。

ざっくりと課題をまとめましたが、就職氷河期世代のことをよりよく知り、さらに彼ら彼女らを受け入れる体制を整備していくことが求められます。また、都道府県と市町村の連携、都道府県と労働局との連携がより一層進むと考えられることから、これまで拾いきれていなかった支援対象者が求人市場に参入してくることが考えられます。より積極的に就労支援機関が実施するイベントに参加したり、情報収集に取り組んだりしてでいただきたいと考えています。

「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
常用雇用への移行のきっかけとなることを目的に、ハローワーク等の紹介により一定期間試行雇用した場合の企業への助成金。
「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)」
就職氷河期世代で、正社員経験のない方や少ない方を正社員で雇い、定着につなげた場合の企業への助成金。
「人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)」
非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換することを目的として、雇用型訓練(有期実習型訓練)を実施する場合の企業への助成金。
「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」
企業内の非正規雇用労働者を正規雇用労働者等に転換等させた場合の企業への助成金

藤井 哲也(ふじい・てつや)

株式会社パブリックX代表取締役。1978年生まれ。大学卒業後、規制緩和により市場が急拡大していた人材派遣会社に就職。問題意識を覚えて2年間で辞め、2003年に当時の若年者(現在の就職氷河期世代に相当)の就労支援会社を設立。国・自治体の事業の受託のほか、求人サイト運営、人材紹介、職業訓練校の運営、人事組織コンサルティングなどに従事。2019年度の1年間は、東京永田町で就職氷河期世代支援プランの企画立案に関わる。2020年から現職。しがジョブパーク就職氷河期世代支援担当も兼ねる。日本労務学会所属。