平成24年仕事始め式 知事メッセージ

掲載日:2012年1月4日

日時: 平成24年1月4日(水曜) 9時30分~9時50分
場所: 県庁本庁舎 大会議場


 明けましておめでとうございます。

 新年を迎えました。私もここで皆さんにお話しするのは、初登庁、4月25日以来のことであります。当初は東日本大震災の直後ということもあって、「とにかく公務員魂を見せてくれ」ということで、一生懸命突き進んできた、そんな感じであります。

 今の実感として、本当に皆さんよく公務員魂を見せてくださったと思っております。心から感謝したい。

 私は今回、いろいろなところから年賀状をもらいました。神奈川在住でない友人たちからもたくさんもらいました。神奈川に住んでいないんだけれども「神奈川すごいね」「頑張っているね」とメッセージが添えられていました。「新聞、テレビでよく見るよ」「神奈川だけ何か特別なことをやっているよね」と。それは、太陽光発電のことに触れてあったり、ポリオの不活化ワクチンのことに触れてあったり。神奈川は目立っていると。日本を変えていく、神奈川モデルをつくるんだという、そのスタートは何とか切れたんじゃないかと思っているところであります。それはまさに、皆さんの公務員魂、そのものだと。その勢いをもって、今年も神奈川は日本をリードしていく、そういう思いで頑張っていきたいと思っています。

 そうは言いながらも、去年の暮れには残念ながら、副知事二人を処分せざるを得なかったと、こういうこともありました。やはり、気を緩めてはいけない。これだけの大きな組織になると、なかなか目が行き届かないところがあるかもしれませんが、しかし、気を引き締めて、連絡、相談をきちっとやるように、県民のためにみんなが全力を尽くすように、これからも隅々まで目を配っていただきたいと思っているところであります。

 私が就任してここにやって来た時に、とにかくメッセージ力を高めてほしいという言い方をいたしました。やはり、われわれだけが頑張っても神奈川県全体が動いていかないと。県民の皆さんにどういうふうにメッセージを届けるか、それはとっても大事なことなんです、ということを、繰り返し申し上げてまいりました。メッセージというのは、シンプルでなければ伝わらない。そういう意味で、私自身が、「いのち」という言葉と、「マグネット」と、この言葉を何度も何度も繰り返してまいりました。最初は、何を言っているかよく分からないと言われましたけれども、繰り返し、繰り返し言っている間に、この県庁の皆さんの意識の中にも、その思いがだんだん伝わってきたのではないかなと思っています。これを今度は県民の皆さんに、県庁の皆さんと一丸となって伝えていく、そういう年にしたいと思っているところであります。

 そんな中で、実は、去年の暮れでありますけれども、2回、神奈川フィルハーモニー管弦楽団のコンサートがありました。ご承知の通り、神奈川フィルハーモニー管弦楽団は、この2年間で5億円ものお金を集めなければ解散せざるを得ない、そういう状況に追い込まれています。そんな中で、私が、この神奈フィル応援団の団長になっております。何とかしてこれを救いたい。さて、どうすれば救えるか。この2回の、12月の23日と29日にあった神奈フィルのコンサート。終わった後にロビーで、皆さんに募金を呼び掛けました。何と、23日は62万円が集まりました。29日は70万円が集まりました。コンサートが終わって、興奮して出てきて、帰りにロビーを通り過ぎるそれだけの間に、その2000人くらいのお客さんが、それだけの募金をしてくれました。これは、1回の催しで集まった募金の額としては最高の金額だそうです。考えられますか。そんなわずかな時間、20分程度で、62万円、70万円が一気に集まった。その時に私はどういうメッセージを出したかということです。神奈フィルの皆さんは最初は「神奈フィルをよろしくお願いします。神奈フィルを支援してください」「神奈フィルを支援してください」と言っていました。この神奈フィルの情報紙が、今度新しく発行されましたが、その冒頭に、私のインタビューが出ています。そこの見出し。最初付けられていた見出しは「神奈フィルをみんなで支援しよう」という言葉でありました。私は「それじゃ駄目だ」と強いメッセージを選びました。どういうものが強いメッセージだったのか。ロビーで私は何と叫んだか。「神奈フィルがつぶれます」「神奈フィルは崩壊の危機なんですよ」と言った。この一発のメッセージ、これによって、興奮して出てきたお客さんがそのまま足を止めて、みんな募金箱の方にやって来ました。「神奈フィルを支援してください」だったら、恐らくみんなニコニコしながら帰っていったと思います。「神奈フィル、つぶれるんだ」「これがつぶれていいのか」「そんな状況なのか」と。同じことなんです。同じことだけれども、メッセージ力というのはそういうものじゃないでしょうか。

 神奈フィルのその情報紙も、見出しを変えてもらいました。「神奈フィルが消える寸前の危機だ、ということを知ってもらいたい」と。

 実は、今私が申し上げたいのは、これは神奈川県全体にも言えることではないかということです。私が神奈川県知事になって、神奈川全体をずっと見ておりまして、最も欠けているのは、それはこの県庁の中もそうかもしれませんが、「危機意識」であります。「神奈川が本当につぶれる」、そういう危機意識を、皆さん持っているでしょうか。神奈川は、何となく豊か。何だかんだ言いながら、豊か。比べてみれば、恵まれています。でも、本当に皆さんがデータを見つめたり、資料を整理したりしながら見ている、そこに映っている現実、それは、危機を表してないでしょうか。今、予算をつくる作業に、私も一生懸命取り組んでいますけれども、私はもう、危機感で震えそうな思いであります。これでは神奈川はつぶれてしまうではないかと。でも、そういう意識が、皆さんにあるのか。

 ここでこの間、日本政策投資銀行の藻谷浩介さんがレクチャーしてくれました。人口の動態というものを中心に、彼は話をしました。あの人口の変化、何度も何度も繰り返し彼はそのメッセージを伝えました。あれが物語っているものは「神奈川崩壊の危機」ではないでしょうか。誰が悪いわけでもない。でも、超高齢化の波が、日本の平均よりもはるかにすさまじい勢いでやって来るんだ。どう支えるんだと。これはもちろん日本全体の危機でもあります。その日本全体の危機感を、今の政府が本当に持っているのかどうなのか、今の国会が持っているのかどうなのか、私は疑問に思わざるを得ない。この神奈川はもっと危機なんですよ。もう今や、財政非常事態宣言を出してもおかしくないぐらい、ぎりぎりのところまで来ているわけです。さあこれをどう乗り越えるのか、ということであります。この危機意識に立つところから実は、本当の力が出てくる。これは再生の原理原則であります。

 私が再生のモデルとしてよく紹介している、熊本県の山奥にある黒川温泉。私の「マグネット」という言葉は、その黒川温泉再生話から出た言葉でありました。遠い、空港から2時間半も行った辺ぴな所にある小さな温泉街、そこに人が殺到し続けています。まさにマグネットの力、磁力を持った温泉です。しかしその再生をさかのぼってみれば、黒川温泉はつぶれかけの温泉だった。でも、つぶれかけの温泉なんだけれども、なぜそれがそういうふうになるかといった時に、「それは国が悪いんだ」と言って、「政府が悪いんだ、景気対策しっかりやらないからこんなことになるんだ」と言って、「ちゃんとした道路を造らないからこういうことになるんだ」と言って、みんな文句を言っていました。後から考えれば、文句を言っている間は、まだ余力があったんです。ところが本当に客が来なくなった。その時からみんなの意識が変わりました。このままだと、この黒川温泉はつぶれてしまうと。黒川温泉が地図からなくなってしまうぞ、と。そこから実は再生モードが始まった。「人のせいにしている状態じゃない。自分たちは何ができるか」「こんな辺ぴな田舎の、こんな山の中の、こんなさびれた、ひなびた、こんな所に誰が来るんだ。道路も良くないし」と。しかし、道路を造って、出来上がるまで待っている余力も、もうなくなった。その時に「じゃあ、徹底して山の中の田舎の温泉にしよう」というところから、みんなの気持ちが一つになって、そこから再生がスタートした、ということであります。

 その再生モデルを、神奈川でやらなきゃいけない時に、実は来ているんじゃないのかな、と思っています。

 私は「いのち輝くマグネット神奈川」、それを今年は皆さんに実感してもらえる、そんな年にしていきたいと思っています。しかし、それを動かしていく原動力は何なのか。ただ単に普通に、「そのマグネットの力をどうするか」「いのち輝く、そんな神奈川にするにはどうすればいいか」と、いろいろ従来型の延長線上で発想していたら、間に合わないですよ。本当の危機感に立てば、「神奈川がつぶれる」と思えば、何とかして、今すぐにでも目に見える形をつくっていかなきゃいけないだろうと、そういうことになってくるのではないでしょうか。その意識こそが、何といっても大事なのであります。

 私は、今策定作業を進めています総合計画の冒頭に、このグラフを入れてくれと、強く指示したことがありました。それはまさに、人口動態のグラフであります。口ではいつもみんなでしゃべっています。知らない人は誰もいません。ところが、そのグラフを改めて見た瞬間に、ぞっとします。われわれは本当の現実を見て見ぬふりをしているかもしれない。本当は見えているのだけれども、いつもいつも見ているから、まひしていて分からなくなっているのかもしれない。しかし、改めて総合計画を開いた時に、どーんと出てくるグラフ、1970年のグラフは、今から考えれば信じられないくらい、きれいなピラミッド型の人口構成でありました。それが今や、もう上がどんどん大きくなってきている。団塊の世代がドカーンと増えている、第2次ベビーブーム世代がドーンと増えている。これが、そのまま高齢者の中に入っていく。この絵を見た瞬間に、1970年の時の医療の在り方で済むはずがない、それは一瞬にして分かります。

 実は、この間、川崎の国際戦略総合特区、ライフイノベーションの総合特区を、何とか勝ち取ることができました。私は選挙の公約の時から言っていました。ライフイノベーションの特区をつくって、日本の医療を変える起爆剤にしたいんだと。だから何とかして取りたかった。私は、3度そのプレゼンテーションに自ら行きました。そして、私に与えられた時間は、わずか1分15秒です。1分15秒の中で、どうやってこの川崎、横浜、神奈川の意欲を示すか。要するに何をしようとしているのか、1分15秒でしゃべれることは限りがあります。その1分15秒の中で示したのが、あの人口のグラフでありました。1970年代のグラフはこれです。今はこれです。このままで通用するわけないじゃないですか。だから根本的に変える。その変えるモデルを、この国際戦略総合特区でつくるんだと言った。この1分15秒の中で、委員の皆さんが大きくうなずいてくれているのがよく分かりました。これを、この神奈川で実践していきたい、ということであります。危機だということは、それだけの課題が分かっている。本来ならば、いろいろなお金を使って、税金を使って、何とか支えていこう、と。しかし、肝心の財政が、もう破たん直前の状態になっている。「どうするんだ、ぎりぎりのところまで来ている」という、そこを乗り切るのは、知恵でしかないです。金がなければ知恵でいこう。どうやって知恵を出すんだ。日本社会はよく「たこつぼ型社会」と言われます。われわれのこういう組織も、ともすれば、たこつぼ型になりがちであります。たこつぼというのを頭の中でイメージしてください。たこのつぼがあります。みんなその中に入っている。みんなその中に入っていると、全体が見えない。隣が何をやっているかも分からない。これが、たこつぼ型社会。官僚社会というのは特にそうなりがちであります。これだと問題は解決できない。たこつぼからちょっと顔を出して上を見れば、全然違う世界が見えてくることが分かると思います。この危機を乗り越えて行くために、たこつぼから出てくる。こういうふうな県政の運営、やり方を、ぜひやってほしいと思っています。これが去年の末から私が言い始めている「クロス・ファンクション」という考え方です。「部局横断的にいきましょう」ということです。皆さんが専門性を高めて、そして高度な知識を持って、それを基に一生懸命県民のために頑張ろうと、その気持ちはとっても素晴らしいことだと思います。それを何も否定するものではありません。それはそれとしながら、たこつぼからひゅっと顔を出すということも同時にやってほしい。クロス・ファンクションというのは、部局横断的にいこうということであります。一つの大きなゴールに向かって、自分の部局をふっと離れて、一緒にクロスしながら考えてみよう、そうしたら、そこには全く違ったアイデアが出てくるに違いない、と思っているところであります。

 日産、アサヒビール、みんな、このクロス・ファンクションによって再生した。駄目な時、業績が悪い時は、みんなほかの部局のせいにしていました。日産が倒産寸前の時、社長として、カルロス・ゴーンさんがやって来た。「日産の車はなぜ売れないんだ」と営業マンに聞いたら、「あれはうちのデザインの奴らが、いい車をデザインしないからですよ」と言った。デザインの人間に聞いたらば、「われわれがせっかくいい車を造っているのに、営業マンがちゃんと売る気がないからですよ」。みんな人のせいにしていた。「これが危機だ」これがゴーンさんの診断でした。だから出てきたのが、「デザインのせいだとか、営業マンのせいだとかそんなことを言っているな」と。「営業マンが考えたデザインはどうなのか。デザイナーが売れる車を造れ」ということで、クロス・ファンクション、そこから日産が再生したということであります。

 今年は、そういうふうな県政の運営を、ぜひやっていただきたいと思っています。

 最大の危機は何でしょうか。危機であるにもかかわらず、危機であることを認識していない。それが最大の危機です。新年に当たって、今年は危機意識、そこから皆さんと共に県政を始めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました
神奈川県

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