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更新日:2024年3月6日

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令和5年度黒岩知事との"対話の広場"地域版横須賀三浦会場実施結果

令和5年度黒岩知事との“対話の広場”地域版横須賀三浦会場実施結果

令和5年度対話の広場横須賀三浦会場の様子

横須賀三浦会場の概要

開催日時

令和6年1月9日(火曜日)18時30分から20時

会場

逗子文化プラザホールなぎさホール

地域テーマ

ブルーカーボンin三浦半島~脱炭素社会の実現に向けて〜

内容

1 知事あいさつ

2 総合計画の紹介

3 事例発表

【事例発表者】

山木克則さん(葉山アマモ協議会副代表・鹿島建設株式会社葉山水域環境実験場上席研究員)

小野寺愛さん(一般社団法人そっか共同代表)及び海藻キッズ

4 会場の皆様との意見交換

5 知事によるまとめ

参加者数 198人

知事あいさつ

黒岩知事こんばんは。神奈川県知事の黒岩祐治です。
新年早々本当に大変な出来事がありました。能登半島での大きな地震、神奈川県も一生懸命、今支援をしております。今日も緊急消防援助隊神奈川県大隊78隊、283人の大きなチームが、朝から能登半島に向かって進みました。一生懸命みんなで助けていこうとそんな流れができているところであります。
お亡くなりなった方には心から哀悼の意を表したい、そして被害に遭われた方には心からお見舞いを申し上げたい、そう思っているところであります。
そんな中で、この対話の広場にようこそお越しくださいました。これは私が知事になってからずっと続けているもので、今回が90回目になるそうでありまして、今まで1万4000人ぐらいの方と直接こうやってお話をして参りました。
そしてその都度テーマを決めて、会場の皆さんと様々な形で直接議論をして参ります。今回のテーマはブルーカーボンということですね。去年の夏もめちゃくちゃ暑かったですね。11月12月になってもまだ暑い、そんな時代。
やっぱりこれ地球はどうかなっているな、地球温暖化っていうのはもう本当に大変なことになっているのだな、何とかしなければいけないという、そんな状況になっているその中で、脱炭素といったものを、本当に真剣に取り組まないと、人類の先はなくなってしまうかもしれない、そんな危機感を持っているところであります。
そんなテーマを設定したところ、今日は大変たくさんの200人近くの皆さんにご応募いただきました。
そしてここにはたくさんの高校生、そして今日は何と小学生まで来てくださっているということで、みんなで世代を超えて議論をしたいと、そう考えているところであります。
冒頭、お2人の方からプレゼンテーションいただきまして、そのあと議論を展開していきますけども、シナリオはありません。皆さんのご意見のもとに、シナリオを紡いで参りますので、最後までどうぞおつき合いいただきますようよろしくお願いします。本日は誠にありがとうござました。

(司会)

黒岩知事ありがとうございました。

本日は、横須賀三浦地域の市町から、市長、町長、副市長、県議会議員、市議会議員の皆様がお見えになっておりますので、ここでご紹介させていただきます。はじめに、開催地である逗子市、市長、桐ケ谷覚様です。逗子市議会議長の菊池俊一様です。葉山町長、山梨崇仁様。鎌倉市副市長、千田勝一郎様。神奈川県議会議員、近藤大輔様。本日はご多忙のところお越しいただきありがとうございます。

それでは次に、神奈川県の総合計画についてご説明いたします。今年度の対話の広場は、2040年の神奈川を展望する新たな総合計画の策定に向けて開催しております。県の総合計画について、神奈川県の山崎政策部長よりご説明申し上げます。

総合計画の紹介

総合計画ご紹介いただきました県の政策部長の山崎と申します。司会からお話がありましたとおり、今年度、県では新たな総合計画の策定作業を進めております。冒頭、お時間をお借りしまして、その基本的な考え方について、簡単ですがご説明をさせていただきたいと思います。併せて、今日のテーマ、ブルーカーボンに関する県の取り組みについても、ご紹介をさせていただきたいと思います。

総合計画まず基本理念、これは一番大切な考え方になりますけれども、「いのち輝くマグネット神奈川」を実現するということでこれまでの総合計画と同様にしております。これは県民一人一人が、生きている喜びを実感して、生まれてよかった、長生きしてよかったと思えること、それから、人や物を引きつけるマグネットの力を持って、住んでみたい、何度も訪れてみたい、と思う魅力にあふれた地域にしていくということを表しているものでございます。こうした理念のもとで2024年、2040年を展望して、誰もが安心して暮らし、誰もが自らの力を発揮して活躍、そして持続的に発展する神奈川、これを目指していきたいと考えております。

総合計画4年後の目指すべき姿として「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」としております。コロナ禍を経まして、社会全体でデジタル化が加速度的に進んでいます。そこでこのデジタルの力を積極的に活用して、当事者の目線に立って県民の皆様の不安を解消することで、やさしい社会を実現していきたいと、そういう考えを込めたものです。現在新たな総合計画、これは素案まで作っておりまして、パブリックコメントを実施しております。今日お話した大きな考え方に基づいて、具体的にどのような政策を実施していくのかということが書かれております。皆様からのご意見ご提案をお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ここから本日のテーマ、ブルーカーボンin三浦半島、脱炭素社会の実現に関する、県の取り組み事例を紹介させていただきたいと思います。相模湾の海域には大型の海藻でありますカジメなどが生い茂った藻場が広がっています。これがアワビやサザエ、イセエビなど、様々な水産資源を育んで参りました。しかし近年、地球温暖化・気候変動によって海水温が上昇し、海藻を食べるウニやアイゴなどの魚が増えて海藻を食べ尽くしてしまうということで、藻場が急速に失われています。県水産技術センターでは、通常よりも早く成熟する早熟カジメ、この種苗を大量に生産しまして、海へ移植して増やす技術の開発に取り組むことで、藻場の再生を進めています。また藻場光合成により、地球温暖化の原因でありますCO2を吸収することから、藻場再生によるブルーカーボンの取り組みもあわせて推進しているというものです。そうした中、マリーナ事業者であります株式会社リビエラリゾート様から、マリーナを起点とした藻場を再生し、相模湾一帯に広がるブルーカーボンベルト構想、これについての提案がありました。県は同社と協定を締結いたしまして、連携協力して藻場の再生に取り組んでいるところです。以上私から簡単でございますがご説明とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。

県のブルーカーボンの取組県のブルーカーボンの取組県のブルーカーボンの取組

事例発表

(司会)

それでは続いて本日の地域テーマである、ブルーカーボンについて活動されている方、お2人に、事例発表をしていただきます。はじめに、山木克則様をご紹介します。山木様は、鹿島建設株式会社葉山水域環境実験場上席研究員として活躍されています。30年間ダイバー・研究者として葉山の海に潜り、海洋生物や藻場の変遷の記録に取り組まれてきました。また、副代表を務める葉山アマモ協議会の活動では、最新の藻場再生技術を導入し、2000年に、磯焼け状態となった海域での藻場再生に成功されました。それでは山木様どうぞよろしくお願いいたします。

山木克則氏(葉山アマモ協議会副代表・鹿島建設株式会社葉山水域環境実験場上席研究員)

皆さん、こんばんは。山木氏事例発表
葉山アマモ協議会の山木と申します。本日はよろしくお願いいたします。
本日は、「逗子・葉山の豊かな海を作る活動」というタイトルで、地域の藻場再生に関するお話をさせていただきます。
私は今から20年近く前、地域の漁業者さん、学校、ダイバーの皆さんと葉山アマモ協議会を結成し、海域の保全活動を行っています。
私は葉山の海で30年くらい前から潜っているダイバーであり、ふだんの仕事は、葉山の芝崎にある鹿島建設の海洋研究を行う施設で、海藻やサンゴの再生に関する研究開発を行っています。

今日の話題ですが、まずはじめに、最近の逗子や葉山の海中はどんな状況になっているのか?という内容で、藻場が少し病んで、その原因が何かというお話。
そして、海草(うみくさ)や海藻(うみも)が密集する藻場(もば)を効率よく作るためにはどうすればよいか、再生の状況についての話。
そして、今回のキーワードとしても挙げられております、「ブルーカーボン」をつくる取組、そして将来展望についてお話したいと思います。

この写真は僕が30年前に葉山の海に潜って撮影したものです。当時、葉山の海中では、このような昆布のような大きくて厚みのある海藻が海底にビッシリと生えていたのです。そして、この写真の通り、海の色が透明ではなくて、少し緑がかった色をしていますよね。 毎日、こんな色をしているわけではないのですが、当時、特に春先にはこのように濁っている日が多かったのです。僕たちは、このように海藻がたくさん生えて、濁って視界の悪い葉山の海を「味噌汁」だなんて冗談で言っていました。 実は、今から思うと、このような濁った海こそ、栄養分がたくさんあって、魚の餌になるプランクトンがたくさん沸いている海だったのです。 専門的には、海の「基礎生産力」と言って、沿岸生態系の一番底辺にある植物プランクトン、そしてそれを持続させる基盤となるのが健全な藻場なんです。もちろん、当時はそんなことは考えずに、緑色に濁った海で潜っていました。
その当時の藻場を構成する海藻として、こういったホンダワラの仲間が海水面に漂うくらいの浅い場所で生えていました。この写真は15年くらい前に葉山の芝崎で撮影したものですが、僕の背丈以上あるようなホンダワラが密生して、体に絡まって困った経験もあります。その仲間のアカモクというのを皆さん知っていると思いますが、ここ数年間でどんどん減ってしまい、逗子や葉山では珍しくなってしまった海藻の一種です。漁師さんも船のプロペラにこういった海藻が絡まってしまい、海藻のことを「ジャマモ」なんて呼んでいた時代もありました。 
続いて、昔の海の写真を紹介します。こちらの写真は、30年くらい前の葉山の海水浴場の写真です。当時は、こんな風に海岸に昔から海藻類がたくさん打ち上がって、磯臭いのが当たり前の事だったのです。つい、10年ほど前までは台風明けの浜ではこのように大量の海藻が打ちあがる風景がありましたが、今はそれがほとんどなくなって、海藻が打ちあがらない綺麗な浜になってしまいました。皮肉なことに、海藻が少なくなってしまった結果、以前より浜がきれいになったということなのですが、これは寂しい事ですよね。
繰り返しますが、逗子や葉山の海中の浅場では、この写真の様に海藻群落がありました。ちょうど7-8年ぐらい前の写真です。背丈が1.5メートル以上にもなる海藻がたくさん生えていました。この海藻群落、どんな種類かというと、これは「アラメ」という海藻で、茎が途中から二股に分かれているのが特徴です。
この写真のアラメ場は2015年に撮影したものですが、水深2-3mくらいの浅い処にたくさん生えていました。当時、潜りの漁師さんは、この比較的浅いところで形成されている「アラメ場」でサザエやアワビをたくさん獲っていて、僕も当時、一緒に潜って潜り漁の写真をたくさん撮りました。葉山の海では、2015年くらいから、アラメはこのようにだんだんと少なくなりました。2017年ぐらい、7年ぐらい前からこのように岩肌が見えていますが、確実にアラメが少なくなってきたのです。これを見て、これは少しおかしいなぁと思いました。当時、相模湾の湾奥の小田原辺りではすでに磯焼けの話も聞いていて、まさか葉山の海が・・と思い心配になりました。そして海藻は何かの原因がなければ減りませんから、その原因が何かを知りたいと考えました。
海藻が無くなった直接的な原因は、このように魚に食べられて茎だけになってしまった現象もあります。最近では、藻場の消失の犯人はウニが食べてしまったという説が有力になっています。たしかに、地域によってはそうなのかもしれませんが、葉山では、昔も今もウニがたくさんいて、このように岩に自分で穴をあけて暮らしています。30年くらい前の海藻がたくさんあった時もたくさんのウニがいました。当時は、海藻と生き物たちのバランスが上手くとれていたのです。海藻が他の要因で衰退してしまい、海藻の陰で生活していたウニが少し目立つようになったとも私は考えています。この写真は、ウニが海藻を食べている様子です。ウニが自分の巣穴に海藻を引っ張り込んでいます。僕は、普段から、地域のウニの駆除活動にも参加するのですが、このような光景を見ると、このウニを駆除しようとは思わないです。やっぱりウニも一生懸命に生きるために海藻を食べているのですからそのままにしてあげたいです。
次に、この映像は、サザエがカジメの茎を登って葉っぱを食べているところです。こういった生物の生態を海中でまじかに見ると、海藻って、やっぱり大事なのだなと実感しますし、もっと海藻を殖やしてウニやサザエの楽園にしたいという気持ちになります。
山木克則氏そして、海藻が消失したのは、ウニや魚が海藻を食べ尽くしたのではなくて、もっと根本的な原因があることを説明します。その証拠となるのがこの写真です。藻場が消失する数年前、大きなアラメしか生えなくなっており、次の世代に引き継がれる子どものアラメが見られなくなっていたのです。これは、子どもの海藻が育ちにくい海の環境になってしまったのだと考えています。そして、遂に、今から3-4年前の2020年にアラメは葉山の海から消滅してしまい、未だに復活していません。もう本当に驚きました。このような状況を「磯焼け」と呼んでいますが、20年前にはこのような事態は想像もしませんでした。「磯焼け」は、日本特有の呼び方で、海外では「砂漠化」と呼びます。「磯焼け」という言葉の由来は、海藻が無くなった後に、無節サンゴ藻というピンク色の紅藻類が岩肌を覆ってしまう現象がまるで焼け野原のように見えたからだと言われています。
海藻が育たない影響が、子どもの海藻が育ちにくい環境となったのですが、この原因には、温暖化による地球規模の影響と、地域特有のローカルな影響の二つが複合していると考えています。
まず、地球規模の影響なのですけども、地球温暖化で海水温が上昇していることは間違いないです。逗子・葉山など太平洋沿岸域の場合は、最近の「黒潮蛇行」の影響があります。これは、真冬でも暖かい海になってしまうことが問題なのです。このグラフのように、最近の冬は、10年前よりも温度が3度以上高く、12月末でも18℃もある年がありました。これによって、アイゴやメジナなどの魚類やウニがいつまでも食欲があり、芽生えた海藻を食べてしまうことがあるかもしれません。さらには、秋から冬にかけての海温度が高いと海藻の芽生えや生長にも大きく影響するんです。近年、養殖ワカメの生育が悪いのもこの海水温が高いことが影響していると考えられます。相模湾だけでははく、太平洋沿岸の四国や近畿地方も冬場の海水温が高くなっていますし、東北の海も同様の傾向があり、全国で藻場が衰退しているのは海の温度上昇が関係しているのです。
そして、もう一つのローカル、すなわち地域的な影響についてですが、これはかなり複雑なのですが、やはり逗子・葉山の様な都市域の沿岸域の場合は近年の人口増加やライフスタイルの変化、沿岸開発に伴う地盤の改変などがあるでしょう。また、下水道の普及による海水の質の変化もあると思います。昔は、家庭からのリンや窒素が直接海に入り、それが海藻や植物プランクトンの増殖につながっていました。現代は、海の透明度は良くなりましたが、陸からの栄養分の供給という点ではもしかすると課題があるかもしれません。また、山林が荒廃すると、雨水が地下に浸透せずに表土と共に直接海に入り込んで、海底に浮泥が堆積して、アマモや海藻への生育に影響します。よく、「山と海は恋人」と言われるように、かつて、葉山の沿岸では、所々で背後の山で浸透した清水が海に沸く沿岸の浅場があり、そこではアマモが増えて、なんとウナギがたくさん獲れていたという話を古老漁師から聞いています。最近、僕の周りでは、海の保全活動だけではなく、山の保全活動の重要性が高まっていて、若い人達と定期的な山の活動もしようという話で盛り上がっているところです。

では、今日の本題でもある藻場の再生はどうすればよいかという話です。海の温度を下げたりすることはなかなか難しいですよね。
この絵は、海藻の生活史ですが、カジメやアラメなどの海藻類は、秋に遊走子(ゆうそうし)とよばれる胞子を出します。この胞子は海藻のタネのことですね。胞子は、すぐに海底に定着して配偶体(はいぐうたい)となり、それが海藻の赤ちゃんとして春先にかけて芽が大きくなっていきます。この海藻は、普通なら4~5年ぐらいの寿命があり、1.5mクラスの大型の海藻に成長するのです。たいていは、2-3年目くらいからこの胞子を出すのですが、最近は1年目に胞子を出すという早熟化が進んでいます。これは海水温が高いことが原因だと思いますが、さらに近年は、この写真のように春先から胞子を出してしまう早熟性のカジメもあり、とても驚いています。これは多分、温暖化の影響で、まだ春なのに海藻がもう秋が来たと勘違いしちゃっているのだと思います。桜の早咲きと同じ原理だと思います。そして、春先に出た胞子は、実は夏場の高水温を乗り越えることが出来ずに、結局は次世代につながっておらず、これが藻場の衰退の一因になっていると私は考えています。

 最後に、少し将来に希望のある話もしたいと思います。
このスライドは、2016年から毎年、葉山の藻場のモニタリングポイントの記録です。このように、海藻は、常に同じ量ではなく、季節変動があり、年によっても増えたり減ったり、変動することがわかります。そして場所や海の深さによってもこの変動量はかわるのです。藻場が衰退してしまい、ほとんどゼロになってしまうところも増えています。消失した場所では、海藻の胞子を撒くスポアバックを入れると、回復する年もありますし、その効果がない場合もあります。こういった活動を持続することが重要です。
葉山では少しずつですけれども、藻場が回復しています。2020年、このように、磯焼け状態だった場所が2023年には少しずつですが復活をしています。このような復活をしているカジメの場所は、海底5から10メートルくらいの深い場所、約10ヘクタールほどです。このカジメを増やす活動には3つほどのポイントがあります。

ポイントその1は、「活動の持続性」です。
この活動は葉山で18年間、地域連携で実施しています。漁業者、ダイバー、学校、企業、こういった体制で構築しております。あきらめずに活動することが何よりです。これはスポアバックという海藻の胞子を海底にばらまくための活動です。最近はこういった自然分解をする袋に海藻の種を入れてまいたり、あるいは陸上で作った苗を海底に設置します。これもダイバーさんや、漁業者の協力が必要です。
そしてポイントその2は「再生技術」です。鹿島建設で開発した地域固有のカジメ・アラメの種苗をたくさん作る技術、こういった技術を使って、再生をさせています。このように、葉山の芝崎にある、私の研究所で海藻の種を用いて、1年間いつでも提供できるような体制を整えております。母藻まで養殖して、それを海底のカジメが無くなってしまった場所に設置して胞子を放出させます。その再生場所の選定にも技術が必要です。浅い処では高水温の影響もあると考え、なるべく深い処で生育させます。もちろん、光量のチェックも行い海藻が光合成できるところを決めます。

ポイントその3は、自然の回復力と再生場所です。実はここが一番重要でなところですね。海水温の変動、潮流の変化などでなかなか海藻が育たない現状がある中、自然の回復力を活かせる場所の選定が必要です。良い技術であっても、最後は自然任せですので、その年の水温変動が藻場の再生に大きく影響するのです。

これは、漁業者さんにはこういった、カジメ・アラメの養殖をしてもらっている状況です。養殖したカジメを海底に設置する、そして胞子をまくということもやっています。さらに子どもたちやダイバーも参加して、サザエやアワビの稚貝を撒く活動も行っています。
これは直近の葉山の海の状況です。去年の12月29日に潜って再生している海を撮影してきました。葉山の水深5メートルから8メートルぐらいのところです。再生しているカジメは食害も少ないうえ、とても感動したのはこういった小魚がこのカジメの再生した場所に群がっていたのですね、これはイワシの赤ちゃんです。こういった岩肌には海藻のカジメが、順調に自然再生をしています。
イワシがたくさん、海藻の森に来る理由は、沢山の餌があるからです。海藻があると有機物などの栄養も多く、プランクトンも湧きます。さらに海藻の葉には小型の甲殻類であるワレカラなどの動物もたくさんいて、これもメバルやタイなどの餌になります。30分以上潜っている間、ずっと僕の周りをイワシの大群がグルグル回っており、時折それを食べるクロダイも見られました。このような状況をみると藻場が回復して、昔の海に戻るかもしれないという実感が出てきました。まだこの藻場が再生して3年足らずで、草丈は40センチから50センチでまだ小さい海藻です。これが順調に育ち、1メートル以上のサイズとなり、「海中林」になって、もっとたくさんの魚たちが集まる場所になるとよいです。

葉山の一色小学校では今年で19年目となるアマモの苗作りを行っております。この写真は15年ぐらい前の子供たちの写真です。もう大学生や社会人になっているのですね。当時の子どもたち、一色小の子供たちがアマモの植えつけをした場所があります。
そしてここで、昨年、発見がありました。順調にアマモが育っている場所が発見されたのですね。これは地域のダイバーさん、いつも協力をいただいているリトルブルーの武藤さんが見つけてくださったのです。なかなか我々の活動ではアマモを植えつけても、定着して増えなかったのですが、子供たちが植えてくれたところが、きちんとした藻場になっていたのです。とても奇跡的で嬉しい報告でした。やはりこういった結果がでることが、地域活動の盛り上がりにもつながり、とても重要なんです。
最後のスライドは、山と川と海の繋がりが、ものすごく重要ということです。なかなかこのつながりを形にすることが難しいのですが、教育・啓発として地域に広めていきたいです。
そして、葉山ではブルーカーボンを昨年度に創出しました。この葉山のブルーカーボンモデルでは、このように吸収された二酸化炭素をJブルークレジットとして認めていただいて、多くの企業様にクレジットを買ってもらう、そういった取り組みをしています。ブルーカーボンは、多くの企業様に購入していただきました。逗子でいうと高幸建設さんや逗子メディスタイルクリニックさんにご購入していただきました。葉山では、STAR HOME(スターホーム)さん、Cadenza(カデンツァ)さんをはじめ,神奈川県の多くの企業さん、全国の方にこのブルーカーボンクレジットを購入していただいています。
2022年度は、46t-CO2、杉の大木でいうと3300本。今年、2023年度は少し増えて49t-CO2、杉の木3500本相当です。

葉山のブルーカーボンクレジットは、カジメ、ワカメ、そしてヒジキですね、今年初めてヒジキを認定いただきました。そして、この認定は、親子で参加する「ひじきDAY」、「さざえDAY」、「わかめDAY」などの啓発イベントにつなげています。「ひじきDAY」は今年も5月に開催予定です。ヒジキを見て、ミシェランシェフによる食の会、海藻を学ぶ企画です。
そしてブルーカーボンを購入していただいた企業さんにも、お礼として実際の藻場を見ていただき、地元でとれた魚介をおいしく食べる企画などもやっています。

最後、に将来展望ですが、少しずつ場所によっては藻場が増えている一方、まだまだ、生きものは増えていない状況です。やはり藻場の生態系の回復により、漁業者さんの漁獲につながるような海にしていきたいです。海、ブルーカーボンを基点として、地域経済の活性化につながるまでが重要だと考えています。
そして、地域連携による、相模湾の磯焼け回復です。逗子、葉山だけではなくて鎌倉や横須賀、そして相模湾全体のブルーカーボンの創出につながるような取り組みに展開して行きたいです。そして、山林の整備です。先ほどから申しているようにやはり海だけでなく山、川との繋がりが必要です。まずは啓発からでもと考えて、今活動していますが、今後も重要な課題になると思います。

ご清聴ありがとうございました。

 

(司会)

山木さん事例発表ありがとうございました。続いて、小野寺愛様をご紹介いたします。小野寺様は一般社団法人そっか共同代表、日本スローフード協会理事、エディブルスクールヤード・ジャパンのアンバサダーとして活躍されています。NGOピースボードに16年間勤務され、世界中を旅する中で、グローバルな課題の答えはローカルにあると気づきました。その後、逗子市にて保育施設、「うみのこ」や小学生放課後の自然学校「黒門とびうおクラブ」の運営に情熱を注がれていらっしゃいます。それでは小野寺様、よろしくお願いいたします。

小野寺愛氏(一般社団法人そっか共同代表)

 まず最初に私が話をさせていただくのですが、後半、小学生たちにも登場してもらいますね。神奈川県の逗子市で、一般社団法人「そっか」として仲間たちと活動しています、小野寺愛と申します。小野寺氏事例発表
 今日は、ブルーカーボンがテーマだと言われましたが、山木さんの発表タイトルには「海を豊かにするために」とおつけになっていました。私も、「ブルーカーボン」はあえてつけませんでした。今、「サステナビリティ=持続可能な」という言葉はいろんなところで使われますけれども、サステナブルなだけ、つまり、維持しているだけではもう間に合いません。そのくらい、人間の活動が皆の共有財でありコモンである自然、海や山を破壊してきてしまった。その結果がいろんなところに歪みとして現れている時代ですから、サステナブルであることを超えて、「リジェネラティブ=再生」をはじめる必要があります。それを、子どもたちと遊びながら皆で体感できるように、というのが、私たちの活動です。
 県知事も震災の話から始められていましたけれども、神奈川県からもたくさんの人手が能登半島に向かったと伺って救われた気持ちでいます。雪も降り始めた中で、今も安否不明の方が300人以上、避難している方も3万人以上いる。その方々が一刻も早く安心できる暮らしに戻れるように、ということがもちろん最優先ですが、もう1つ、気になっていることがあります。それは、最近、液状化や土砂崩れが余りに多くないかということです。これまでは地震があっても、何百年もずっと持ってきた建物が、今、液状化によって足元から崩れている。私たちの地盤は、どうしてそんなに緩くなってしまったのか。これもやはり、土中の空気や水の循環を無視して過開発してきた人間の活動に原因があるのではと思うのです。
 開発が悪いということではありません。自然の循環に寄り添った形での開発を、これから人間はしていかなくちゃいけない。サステナブルだけじゃない、リジェネラティブな発展をしていくためにも、自然の循環について子ども時代から体験的にわかっている、海と山が大好きな人たちが増えることが大事だと思っています。
 随分前ですけれども、1999年、エクアドルのバイーア・デ・カラケスという町で大きな震災があった後の復興は、素晴らしかったです。「元通りに復興」しようというのではなくて、「エコシティとして再建しよう」ということを法整備までしてやった、そういう都市がありました。日本でも、これから再建を進めるのであれば、循環に沿った形でどんな開発が可能なのか、そういう視点が持ち込まれるといいなと思います。そのためには、ブルーカーボンのことにも、大人だけで取り組むのではなくて、子どもたちと一緒にやっていきたいなと思っています。
 そんなわけで、一般社団法人「そっか」を仲間たちとはじめました。海辺で「うみのこ」という保育園をやっています。30人規模の小さな園ですが今日も園長先生とスタッフの何人かも来てくれていますし、小学生放課後の「黒門とびうおクラブ」には、毎日35人ぐらいかな。160人の子どもたちと大人も思いっきり海山で遊んでいます。
 皆で毎日楽しく過ごしている中で大事だと思っているのが、ここで私たちがしているのは環境教育ではないということ。すでに起こってしまった「問題を教える」というよりも、まずは、日常の中で海と山で思いっきり遊ぶこと、皆が海と山が大好きになることを大事にしています。だって、大好きになっちゃえば、それが仮に損なわれたときに、どうやったって守りたいって心が動きますからね。そうすると、大人たちが小さな脳みそから捻り出す解決策よりも、ずっとちゃんと地に足の着いたものを、20年後に子どもたちが返してくれるんじゃないかなと思っています。

 「うみのこ」の園長は春、山に食べられる野草がたくさんある時期には、スライドに出ているような、お鍋とか、米粉とか、ゴマ油とか、リュックの中にしょって散歩に出かけます。子どもたちと一緒に食べられるものを見つけては、採って食べたらおいしいね、自然ってすごいねっていうのをやっています。採って食べることを大事にすることで、感謝の気持ちが生まれたらいいなとか、この町の自然が豊かでありますようにという思いを共有できたらいいな、そんな流れの中で、ワカメの養殖もはじめました。今日、会場にも来てもらっている小坪漁港の漁師、植原和馬さんをはじめ、漁協のいろんな方に教えていただきながら、6年前に始め、今に至ります。
 今日、登壇を引き受けさせていただいたのは、「とびうおクラブ」の子どもたちだけでなくて、逗子の子どもたち皆が、漁師さんに教わりながらワカメの養殖や磯焼け対策に取り組めたらいいという願いがあったからでした。逗子には5つの小学校があります。たとえば、5つの小学校すべての子どもたちが6年生になったら、環境教育の一環で、地元の漁師さんと一緒に、地元の海を豊かにする海藻を育てられたらどうでしょう。もしかして、私たちが私設のクラブでやっている活動を学校にも取り入れていきたいなという方がいたら、後で漁師さんを紹介しますから、ぜひ声をかけていただけたらと思います。
 冬の季節、子どもたちと一緒にどんなふうにワカメを養殖しているか、写真でご紹介しますね。まずは11月末、養殖ワカメの筏をこんなふうに海に入れます。
 12月頭になると、苗づけです。小指の先ぐらいの長さですかね、小さな小さなワカメの赤ちゃんを、海の筏に出します。海に沈めるロープを1度開いて、開いたところにワカメの赤ちゃんを挟んで、もう一度締め直して、海に入れる。ものすごくシンプルな作業なのですが、ちゃんとロープを締め直さないと、強い冬の西風でワカメが流れてしまったりするので大事です。
 苗づけは12月頭って言いましたけど、私たちが6年前に始めたときは、11月末に苗づけをしました。ワカメって、冷たい海で育ちます。海水温が21度以下に下がらないと、赤ちゃんのワカメが溶けちゃったり、うまく育たなかったりするんですね。海水が安定して21度以下になるのを待って苗付けをすると、最近では11月の末には苗付けができなくて、12月の頭になっています。
 1月は、寒い海でワカメが成長するのを子どもたちと一緒に見守ります。逗子と浪子の沖辺りに長さ40メートルのワカメ養殖ロープが数十本、浮かんでいるんですけれども、この前はアウトリガーカヌーとSUP(サップ)で、子どもたちも自分でパドルを漕いで見に行きました。今、このぐらい(長さ30-40cm)の大きさですかね。小指の先ぐらいしかなかった赤ちゃんが、1ヶ月もするとこうやって少しずつ大きくなります。

 陸の畑は大変ですよね、いろいろ手入れをしなくちゃいけないですが、海はすごいです。海の小さな生き物たち、微生物たち、太陽の光、ミネラル、そういったものが、ワカメを育ててくれます。
 2月の頭になるともう少しワカメが大きくなるので、こうやってカヌーで出て行って、子どもたちと一緒に間引きをします。上級生のお兄さんお姉さんたちがカヌーを漕いで、間引いて取ってきたものを、浜で小さな子どもたちが、たき火をして、お湯を沸かして待っている。海の中では茶色かったワカメは、沸騰したお湯の中に入れると、一瞬で、パーッと緑になるんですね。今、もしかしたら買ってきた緑色のワカメしか見たことがない子も多いかもしれないですが、「とびうおクラブ」の子どもたちは、魔法のように色が変わるワカメの美しさと、茹でたての採れたてのおいしさをよく知っています。
 これも、今日来ているカメラマンの松永勉さんが撮ってくれた映像をスクリーンショットしたものですけども、養殖場は上から見ると、こんなふうですね。ここにいるアウトリガーカヌーが長さ20メートルぐらいなので、大体大きさがわかっていただけるでしょうか。 
 3月の頭、海があったかくなる前に収穫の時期を迎えます。海水温がまた温かくなってしまうとワカメの先に白いひげみたいなのが生えてきちゃって食感も良くなくなってしまうので。だから、逗子湾でワカメが育つことができるのは、12月半ばから3月上旬、ほんの11週〜12週間だけです。今、冬がどんどん短くなっています。
 私たちも素人ですし、漁師さんたちに教わりながらやっているだけですが、たった6年の間にも、海の状況が変わってきていることは体感値として持っています。1年目、6年前に初めて養殖を教えてもらったときは、何グラムパックが幾つっていう、ざっくりとした数え方ですがゆうに500キロ以上、40メートルのロープ一本で500キロ以上のワカメが収穫できたんです。
 仕組みとしては、ワカメサポーター制度っていって、採れても採れなくても、みんなで出資をして、収穫分を山分けしようというのをクラブ内の親子でやっています。30-40家族で3500円ずつ出して、漁師さんに経費をお渡しして、さあ、あとは皆で山分けという感じです。6年前は、食べきれないほど採れて、干したり塩蔵したりと大変でしたが、一昨年が一番悪かったのかな、漁師さんに分けていただかないと皆の取り分なんかありませんでした。6年前に500キロ収穫できたものが100キロ以下、5分の1以下になってしまったんです。
 養殖ワカメが育たなくなったことには、いろんな要因があると思います。海水温の上昇か、それに伴って海藻を食べるアイゴが北上しているからか、森から海に入る養分が減っているからか… とにかく収穫量は右肩下がりでだんだん減って、一昨年100キロ以下になったのが、去年はちょっと、いいところに戻ったので、さあ、今年またどうかなという感じです。

 収穫してからは、楽しい時間です。こんなふうに漁師さんに教わりながら、まずは、根元についているメカブとワカメを子どもたちがスパッとナイフで切り離します。漁港にある大きなドラム缶で、釜茹でをします。横にはバケツが3つ並んでいて、まずは、茹でたワカメを冷ます係、真ん中の子は、また冷ましながら洗う係、最後の子は綺麗に洗って、脱水して袋詰めをして、みんなでとれた分を美味しくいただいています。
 これが「とびうおクラブ」の30-40家族で続けているワカメの養殖活動です。ワカメを通して冬の海を知ることができるし、食卓にワカメが並んだら春が来たねと、旬の美味しさもわかるようになる。これをできれば、逗子中の子どもたちと一緒にやりたいなと思っています。

 だってこんなことをしているとですね、自然と、自由研究の対象に海を選ぶ子が出てきます。海は楽しくて大事な場所だし、海藻もおいしいし大好きだしということで、今日、最前列に座ってくれている、もかちゃん、そよちゃん、それから今日来れていないけれども、しんのすけ君。去年小学校5年生だった3人が、海藻の自由研究を夏休みに選びました。
 毎日のようにビーチクリーンをする3人ですが、ある時、ビーチクリーンをするときのビニール袋もできればプラスチックじゃなくて、浜にたくさん落ちている海藻で作れないものかなと考えて、自由研究を始めたんです。いろんな試行錯誤を経て、ビニール袋は難しかったけど、おかずカップができちゃった…!という彼らの努力、後ほど映像でご覧いただこうと思っています。
 それから、ワカメを使って商品化したいと動き出した子たちもいまして…、今日も会場に来てくれているね。ラーメン屋さんとか、おにぎり屋さんとか、こちらもどう食べたら一番美味しいのかをたくさん試行錯誤。みんなで調味料をズラリと並べて「味の冒険」をして、試作して、クラブ内の子どもたちに販売したり、海沿いのおにぎり屋さんを1日借りて、「逗子ワカメのおにぎり屋さんでーす」と展開してみたり、楽しかったです。
 ワカメを育てるだけではなくて、こんな遊びや探求も絡めながらずっと続けていると、みんな自然と、さっき山木さんもおっしゃっていた「海と山の繋がり」が気になるようになってきます。現場で体感する、って大事なんですね。
 子どもたちのワカメ養殖場がある海のすぐ上には披露山が見えるのですが、その披露山の下、大崎で放置されてしまっていた竹林を保全する活動も、2年前に始めました。神奈川県の森林トラストを仕事にしている方が「黒門とびうおクラブ」の保護者でいて、その方を中心に、地主さんに土地を託してもらって竹林を整備しながら、みんなで遊び場を作ろうと。もちろん、子どもたちとしては、まずはただただ、楽しい自分たちの秘密基地作りのようになっています。それでいい。一方で、大人たちが意識をしているのは、ここに光を通して水と空気の流れを良くすること。冒頭に土砂災害の写真も載せましたけれども、「水と空気が循環する強い地盤ができるように」「生きた土壌に戻るように」「少しでも生き物の種類が増えるように」というようなことを少しだけ意識しながら、素人仕事ですけれども、みんなで、自分たちのワカメ養殖場と大好きな海に、豊かな水の流れが注いでいくことを願って整備をしています。
 最後にキーワードとして、サステナブルから、もう1歩先の「リジェネレーション」へ、というのを、皆さんに残したいと思います。
 ブルーカーボンは、手段としては素晴らしい。でも、そこだけを目的にしていては、お金が動くだけで、環境の再生にはなりません。人間活動で出してしまった二酸化炭素をオフセットしたらそれでいいと思っているうちは劣化が進む一方で、生態系は回復しないんです。なので、遊びながらでもできれば再生の側に関わりたい、そう思う人が増えるように、子どもたちと一緒に海と山で活動を続けたいなと思っています。
 冒頭お話したエクアドルの話ですけれども、バイーア・デ・カラケスを「エコシティとして復興しよう」と決めたとき、カリフォルニアのシンクタンクがコンサルタントになりました。「プラネット・ドラム・ファンデーション」のピーター・バーグさんというコンサルタントですが、彼らは、津波で全部流されてしまった森をもとに戻すときに、植える木々は絶対に固有種にしようと言って譲らなかったそうです。生態系が豊かだった頃の植生を学び、種として元々この土地にあったとか、こんな植物があればマングローブの森がもう一度豊かになるんじゃないかとか、20年後30年後の環境再生を意識した復興に力を入れたのですね。それが実って、今では、エコツアーの観光地として賑わう場所になっていますけれども、そのピーター・バーグが「バイオ・リージョナリズム」という言葉を作りました。直訳すると、「生命地域」というような意味です。
 日本中の子どもたちが小学校3年生になると、社会科で地図の学習をしますよね。そこで習うのは、学校がどこにあって、駅がどこにあって、郵便局がどこにあってっていう人工物の地図です。昔はほっといても、子どもたちは勝手に野山で遊んでいたから、その学習が始まる前に、自分の中に何となく「生命の地図」があった。水源はどこにあって、どこに行けばどんな食べ物が生えていて、どんな季節にどんな魚を捕まえられてっていうのをそれぞれが体験的にわかっていたと思うんです。そんな知恵を持った上で、それを整えるために3年生で地図学習をしていたのでしょう。一方で、今の子どもたちは、自然から遠くなってしまった。3年生で人工物の地図を勉強し始める前に、自分なりの生命地域地図を持つ時間を奪われてしまっている。地域の大人がちょっとしたきっかけを作らなくては、海にも山にも親しむなんて難しくなってしまった。
 それじゃ大変だということで、大人も子どもも皆で一緒に、思いきり地域の自然の

思いきり地域の自然の中で遊ぶ活動をしています。皆で助け合いながら作って、食べて、遊んでいればきっと、自分は1人で生きてるのではなくて、地域の自然があって、地域社会があって初めて生かされている、つながりの中に自分がいると思えるんじゃないかなと考えています。それはとても幸せな感覚だし、それこそがリジェネラティブ思考を生むはずなので、そう思える子どもを増やしたいなと活動しています。 
 さて、まさにそんなつながりの中から、小学校5年生がはじめた素晴らしい活動、映像でご覧いただこうと思います。映像を見てもらった後に、実際にこの活動した2人から一言ずつコメントをもらいますね。映像4分半、ご覧ください。


【海藻キッズ映像】

みんなでビーチクリーンしない?いいね、ビーチクリーンしよう!
打ち上げられた海藻ってゴミなんだっけ。
現在神奈川県では、打ち上げられた海藻は砂浜に埋められたり、ごみと一緒に焼却されているんだって、なかなかいい使い道がないみたいだよ。でも海藻って自然のものだし、邪魔者扱いってかわいそう。海藻を使って何かできないかなあ。
そんなわけで、僕たちは海藻について調べてみることにしました。
まず、海藻の役割から説明するね、海藻は海で暮らす生き物のすみかとなり、産卵の場となり、エサにもなる。陸から汚れた水が流れ込んできたら、それを吸収し浄化もしてくれる。そして、陸上の植物と同じように光合成をし、酸素を作り出してくれる。その中でもホンダワラは一番酸素を作ってくれるらしいよ。
私は海藻の食べ方を紹介するよ。逗子・葉山で採れる海藻は84種類ほど、その中で私たちが親しみのある海藻を紹介するよ。上からワカメ、ヒジキ、アオサ、テングサ、そしてこちらはアカモク、現在は、磯焼けによって減少、養殖が成功するかが大きな鍵となっているよ。
次に3人が好きな食べ方について紹介するね。メカブ卵かけご飯。ヒジキとシソのパスタ、青さの味噌汁、あんみつ、今度天草から寒天を作って、あんみつを作りたいな。
私は海藻を使った製品について説明するね。
今、プラスチックを減らすために海藻を原料とした色々な製品が開発されているよ。これは持ち運べる水、Ooho!(オウホウ)。ロンドンマラソンでコップを減らすために利用されている。中身はドレッシングとしても使えるね。食べられるコップ、食べられるラップ、食べられる包装紙、これはすべて海藻由来。
最近、海藻を使ったビニール袋も研究されているんだって。
私達も海藻を使ってビニール袋を作ってみない?いいね。やってみよう!

(映像:実験の様子)

というわけで、海藻おかずカップ作り成功!
未来の地球のための1歩としては、かなり小さい1歩だったね。でもさ、小さな1歩でも積み重ねていけば、大きなアクションになるかもしれないよ。私たちの大好きな海のためだもんね。やれること一つ一つやってみよう。
未来の海は、私たちがきれいにする!

(以上映像ナレーション)

 

小野寺愛氏と海藻キッズのお二人(小野寺愛氏)

3人は、去年小学校5年生の夏休みにこの映像を作りました。そのうちの2人に今日は来てもらったので一言ずつコメントをもらって、私の発表の時間をおしまいにしたいと思います。もかとそよ、ステージにお願いします。

 

(そよさん)
皆さんにご覧いただいた動画は、私たちが5年生のとき、授業でSDGsについて学んだことをきっかけに、友達3人で、自分たちには何ができるかなって考えて、調べてみたり実験してみたり「とびうおクラブ」のコーチに教えてもらったりしたことを、まとめた動画です。この後も海藻カップは改良を重ねて、安定したものをつくれるようになりました。
そして、この動画を作ったことをきっかけに、私たちは、藻場の再生活動に参加したり、環境についての勉強会に参加したりして、学びを深めていきました。

現在、私達は6年生になり、それぞれやっていることが忙しくなって、3人で活動するということが、難しくなってきました。なので、この1年、私はその藻場の再生活動に参加する、環境の勉強会に参加するなど、参加するということをメインに活動してきました。1人で学んでいると、時々、3人で活動していたときのような、3人だからこそできるというようなパワーが、なかなか出てこなくて、少し寂しいなあって感じることがあります。
でも、ある環境の勉強会に参加したとき、講師の先生に、「知ることは希望なんだよ」って教えてもらいました。なので、私も、これからは、学ぶことだけは絶対に続けていきたいなと思っています。ありがとうございます。

(もかさん)
そよと、似たようなこと考えているんですけど、私たちはラッキーなことに、海の近くに住んでいるから、磯焼け問題もウニが大量にいることも、海に潜ればわかります。
自分たちの目で見て感じたり、漁師さんたちや町の人たちが何をしているか見に行ったり、一緒にやってみたりすれば、興味を持ってくれる子供たちもいるはずなので、どんどん自分で海をのぞき込むような授業を小学校とかでも、やってくれたらいいなって思います。逗子・葉山では、ウニの駆除、ウニの堆肥、キャベツウニ、ワカメの養殖、カキの養殖、アマモの苗を育てて植えつけたり、サザエの稚貝放流など、ブルーカーボンに向かって、対策をたくさんしているので、そういった活動も、もっと子供たちも、関わったらすごく良いなって思います。逗子の藻場が再生できたら最高だなって思います。ありがとうございます。


(小野寺愛氏)
そよちゃんはサーフィンがとっても上手で、もしかしたら将来オリンピックでテレビ越しにまた会えるかもしれないですね。もかちゃんは本当にいろいろ頑張っていて、潜るだけじゃなく、トレイルランニング、山を走るのも頑張っています。海と山が大好きなことがまず、二人の原動力なんだろうと思って、まぶしく見ています。

もう一度、そよちゃんともかちゃんに拍手をお願いします。この後のご質問を2人に対しても、もしかしたら受け付けてもらえるかもしれませんので何かあったらお願いします。

そうそう、先ほどの映像は、雑誌FRaU(フラウ)のSDGsプレゼン大賞を受賞しまして、副賞として3人で西表島に行ったりもして、逗子だけでない、いろんな海を知り始めていて、頼もしい限りなんですよ。これで一般社団法人「そっか」の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

 

(司会)

すばらしい発表ありがとうございました。海の近くで育ったからこそ、できる活動、これはここで終わらせてはいけませんね。大人たちが頑張って広げて行きたいなと思いました。本当にすばらしい発表をありがとうございました。
改めて小野寺さんと海草キッズの皆さんでした。ありがとうございました。

意見交換

(司会)
それでは、ここからは黒岩知事に進行をお任せいたします。知事、よろしくお願いいたします。

(知事)
ありがとうございました。何か圧倒されましたね。我々が予定した進行とは全く違う展開になっておりまして、7時にはプレゼンが終わって議論を始める予定だったのですけれども、もう30分近くが過ぎておりました。でもなんかすごく満足感がありましたね、既にね。素晴らしいですよね。逗子の子供たちが海にこんなに親しんでっていうのは、みんなそうなんですかね。彼女たちは特殊なのですかね。
(事例発表者:小野寺氏)

彼女たちは素晴らしいですが、特別ではなくて、海で思いきり遊んでいれば、こんな風になる子どもは多いと思います。ただ、せっかく海がある町でも「海は危ないから1人で行っちゃ駄目だよ」っていう家庭も増えています。楽しさだけでなく、リスクも含めて海をよく知っている人が増えたらいいなと思って活動していますが、私設のクラブのキャパシティーはせいぜい、160人くらいまでなんです。だから、公教育が大事。 市長、ぜひ「逗子では、市内の小学校6年生はみんな、地元の漁師さんたちと一緒に海藻の養殖しているよ」と言えるようにしてください。できれば、一回だけの「体験学習」じゃなくて、継続的に海に通ったり、海を再生しようと働く人たちの話を聞くところまで、「逗子ならではの環境教育」ができたらいいなと、ずっと、思っています。
(知事)
ちょっと市長に聞いてみましょうね。逗子市長がいらっしゃいますからね。誰でもすぐ直に聞いちゃうっていうのが、この会の一番いいところですから、市長どうですか、逗子の小学校でみんなやったらどうだって、どうですか。
(逗子市長)
はい、すばらしい。そうしたいと思います。
どうやったらできるかは、これから考えなきゃいけない。
(知事)
いきなり約束しましたね。
(逗子市長)
どうやったらできるか考えたいと思います。
(知事)
はい。葉山町長いますか、葉山町長どうですか。
(葉山町長)
はい。そうですね葉山も、そっかさんと同じように、オーシャンファミリーとかですね、学童で色々と頑張っているメンバーもいますので、一緒に盛り上げていけたらいいなとは思っています。
(知事)
やりましょう、学校で。
(葉山町長)
そうですね、はい。ちなみに山の方にある学校では、例えば山の畑だとかタケノコ掘りとか、もうみんなが体験しているのが当然のことなので、それぞれの学校の地域によるカラーがあってもいいなとは思っています。
(知事)
なるほどね、選挙終わったばっかりだけども、ご当選おめでとうございます。
(葉山町長)
ありがとうございます。
(知事)
選挙の前だったら公約にしちゃったんだけどね。でも約束しますね。
(葉山町長)
そうですね。
(知事)
逗子、葉山はもうOKでしょう、というようなことで、もうこれで、公立学校でもやると言ってますからね。
でも皆さんどうですかね、前にこのテーマで、この地域で話をしたときにね、意外に地元の方が海のことを知らなかったですね。この中でちょっと聞いてみましょうかね。
この中で、葉山とか逗子の海に潜ったことがある人。(知事:手をあげるジェスチャー)
ほう、結構、割といらっしゃいますね。意見交換
(事例発表者:小野寺氏)

(手をあげている)前の団体席は一般社団法人そっかのメンバーです。
(知事)
そうか、その人たちが来てらっしゃるわけですよね。
一般の方どうですかね。山木さんどうですか一般の方って。
(事例発表者:山木氏)
そうですね最近では海への親しみとして、SUP(サップ)が流行っていますね。うちの近所の森戸海岸も、結構ご近所の方は、ヨットスクールなど子どもたちを含めて海に親しんでいる方は多いですね。ただ潜るってなると、ちょっとハードルは上がるかもしれないけど、最近は海の透明度が上がっていて、水面からでも海の中が見えるのですよ。ただ海藻がないので、浅い処にも海藻を殖やして、子どもや町民の方が観察できるような藻場を創りたいと思っています。
(知事)
私自身も潜ったことあるのですよね。13年前に知事になって、神奈川の海が潜れるかどうかよく知らなかったのでね、「神奈川の海って潜れるの?」って言ったら、「潜れますよ」って言われて、一番先に潜ったのが葉山だったのですよね。潜ってね、ビーチダイビングっていってね、海へ浜からこう歩いていって、ボートダイブと違って、歩いて潜っていくのだけども、その時に、潜って水に顔を付けた瞬間に、「ワーッ!」と叫んだのです自分が。何を叫んだかっていうとね。森ですね、森。なんかうわーっと海藻が生い茂って、最初僕が行ったときに、こんなところ潜ったら絡みついちゃうじゃないかと思って、ちょっと怖いなと思ったのだけど、入ってみると全然そうじゃなくて、何か森の中を遊泳しているような、そんな感覚があって感動した覚えがあって、これをあちこちで言いまくっていたのですよ。神奈川の海はすごいですよ、しかも神奈川の海には四季があるってね。季節によって全部色合いも違うし何も違うという。だから南方の方に行って潜ると、いつも夏みたいなものだからあんまり変化ないのだけど、神奈川の海は四季があって森の中を遊泳するようなそんなダイビングもできるのですよって言って、僕は結構アピールをしていたら、ふっと気がついたら、なくなっていると聞いて、これは大変だなって思ったのも、つい最近のことですよね。だから、コロナでちょっと潜ってなかったのですがコロナぐらいのところからもうワーッと消えちゃったというのが、今の現状のようでありますね。
さあそんな中で今日は実際に活動されている方もいらっしゃるし、興味を持ってここに来られた方もいらっしゃいますので、皆さんと議論を重ねながらやるのがこの対応の広場ですからね、どんどんご自由に意見をいただきたいと思います。それでは、参ります。はいどうぞ。すぐ手が上がりましたね。どうぞ、マイク持っていきます。
(参加者1)
こんばんは。湘南学院高校の2年生です。私は、先ほどの小学生のお二方が、その海に小さい頃から関わっているっていうことで、私は山の方で、小学校の近くに山があって、小さい頃から自然に関わってきていたんですけど、やっぱり中学生とか高校生になると、そういうことがほとんどなくて、私たち高校生だったら何ができるのかなって思います。何ができるのでしょうか。
(知事)
そうですね。何ができるか、ちょっと聞いてみましょうかね。いかがですか。これから先ですが、高校生だったら何ができますか、小野寺さん。
(事例発表者:小野寺氏)

とびうおクラブは創設14年目で、一番大きな卒業生はもう大学生だったり、働いていたりです。中学生の間は皆一度部活で忙しくなって、離れちゃう子も多いのですけど、高校生になってアルバイトでアシスタントコーチとして関わり直してくれる子もいます。もし関わりたいなと思ったら、とびうおクラブに遊びに来てください。
 とびうおクラブの卒業生の子たちの中には走るのが好きで、走ることを通して山に関わり直している人もいたりとか、写真を撮るのが好きでそれを通して自然にもう一度出会い直す人もいたりとか。クラブの他にも、関わり方はいろいろあるのじゃないかなとは思います。
 「黒門とびうおクラブ」の代表で、一般社団法人「そっか」を一緒にやっている永井巧さんも今日会場に来ていますので、彼の声もぜひ聞きたいです。

(知事)
とびうおクラブの代表の方いらっしゃいますね。よろしいですか。
(参加者1)
大丈夫です。
(知事)
ありがとう。永井さん一言お願いします。
(そっか永井氏)
ご指名にあずかりました永井と申します。本日はありがとうございます。そうですね、中学生高校生はいろいろと学校に部活に忙しいと思うのですけども、実は逗子もそうですし葉山も結構三浦半島の中では、ちょこちょこ海に関わるような、開かれた場があるのじゃないかなと思います。私たちも、実は自分たちだけが、やっているわけじゃないのですね、多くのやはり地域の方だったり、もちろんそれは逗子だけでなく、今日お話いただいた山木さんですとか、葉山の町は山の上にもよく僕に行きますし、小さな枠に収まらず、いろんなアンテナを立てて自分の好きなアンテナを立てていくと、例えば、逗子であれば、浪子スタイルというところがやっているウニ拾いだとか、ビーチクリーンとかって定期的にあるのですね。それ以外でも葉山でもダイビングショップと一緒に連携しながら、ウニだとか藻場保全に係るいろんなものがありますので、もう1つ、こういった若い子たちが、気軽に三浦半島或いは相模湾といった単位で、海に関われることが、いろんなものが集約されたところがどこかで見られるといいかもしれないですよね。そんなことをお話を伺っていて思いました。たくさんいろんなすてきな活動を、想いを持ってされている方がいるので、ぜひそんなところと出会いがあるといいと思っています。
(知事)
はいありがとう。今日こういう場で、いろんなきっかけが生まれたら、それで自分でいろいろとやってみようという事が始まると、いろんな展開になっていくのじゃないかと思いますね。はい。それでは他にいかがですか。はいどうぞ。
(参加者2)
私は2年前から、海藻についてのドキュメンタリー映画を撮影しています。逗子に住んでいるんですけど、先ほどお話が出た浪子スタイルさんのウニ駆除を始めとして、逗子に限らず、北は九州から北海道まで2年間ずっと取材を続けてきました。
全国の海に潜らせてもらって感じたのは、これは三浦半島の問題だけではなくて、本当に全国各地で起きていることだなということを感じました。
特に北海道ではもう、天然昆布がほぼ絶滅状態になっていたり、長崎の方でも、もう囲いをしないと、網を張らないと海藻は再生しないぐらいのレベルにまでなっていて、多分その状態は、そんなに遠くない未来、三浦半島でも起こるのだろうと思っています。
私がこの映画を作ったきっかけは、やはりこの地域の皆さんは、よく知ってらっしゃると思うのですね、海が身近なので、これだけの海藻がなくなっているということが、ただ全国的にはまだまだ認知が非常に進んでいないと感じています。加えてその最たる原因がやはり温暖化であるということ。根本的に解決するには、やはり温暖化を解決しない限りは、海も元には戻らないというのが、2年間取材をしていて一番感じたところであります。なので、今後その映画を広めていくこともそうなのですけど、まず皆さんに、この海の状況っていうのを知っていただくためには、個人的な活動やローカルの活動だけでやはり足りないっていうのを非常に感じているので、例えば神奈川県というのは、先ほど知事もおっしゃったように、海が非常に豊かな場所でありつつも、都市と非常に近い、東京と非常に近い地域でもあるので、その利点を生かして、都市部の皆さんに、もっとこの状況を知っていただいて、ブルーカーボンという形なのか、様々な形で再生支援をしていただけるような活動をぜひ、神奈川県単位、地域単位でやっていただければなと思っています。
(知事)
はいありがとうございます。そのドキュメント映画はもう完成したのですか。
(参加者2)
はい。完成して、今年の5月にできれば逗子映画祭で流して欲しいなと思っています。
(知事)
ちなみに、せっかくですからタイトルを教えてください。
(参加者2)
「ここにいる生きている-失われた海藻の森を求めて」というタイトルになります。
(知事)
おお、そうですか。ちょっと見てみたいですね。それ私も非常に関心があったのは、神奈川、三浦半島だけの話ではなくて日本全体の話だっていう、日本全体の話、もしかしたら世界全体の話かもしれない。
(参加者2)
その通りですね。日本だけではなくて、今カリフォルニアでも、サンフランシスコの辺りでいっぱいいたジャイアントケルプがウニによって食害でなくなっているっていう状況もあって、世界的に注目しなければいけない解決しなければいけない問題だと感じています。

(知事)

はいありがとうございます。ぜひね、この映画が見たいですね。
こういうので、何かみんながね、こういうふうに取り組みをすると実はこんなふうに解決するのだっていう、何か神奈川でモデルを作っていきたいと思いませんかね。
やっぱり地域とみんな一体となって子供たちも一体となってやっていく中で、実はこの再生してこうなってきたのというモデルをぜひ作っていきたいと思いますので、また取材していただいて、また次なるパート2に作っていただければと思います。ありがとうございました。はい。それでは、どうぞ。黒いマスクの女性。
(参加者3)
聖和学院高校1年生です。本日はとても勉強になるお話をありがとうございました。私がお聞きしたいことは、今後私たちの生活にどのような影響があるのか、また海があまり近くにない地域に住んでいるのですけれども、それでも少しでも海に貢献して協力できることはあるのかどうかお聞きしたいです。
(知事)
はい。山木さんいかがでしょうか。
(事例発表者:山木氏)
皆さんの生活に影響があることですね。やはり、おいしいお魚や貝が、国内で獲れなくなってしまうと、本当に寂しいことですよね。やはり、そのためにも藻場を増やして、魚を増やす活動は重要だと思っております。今日は活動を一緒に行っている葉山の漁師さんもいらしていただいています。漁師さんが毎日毎日、網を入れても、魚や貝が獲れないのですよね。刺網かけてもサザエが3つ4つしか獲れない日がある話も聞いていて、本当に海が大変な事になっています。
そのためにはまずは海の中に畑を作らなければいけないです。それが藻場なのですね。海藻の森を作って、そこで貝を育成したり、魚を増やしたりして人の手もかけなければいけないのですが、自然の再生力を元に戻さないと持続できないのです。人の力と自然の再生力、両方合わせることが必要なのですね。
高校生の皆さんがどうやって貢献をしていったらいいのか、やっぱりそれは、海に来ていただいて漁師さんの話を聞いたり、活動に参加するなどして色々な現状を知ってもらいたい。皆さん友達同士で、どうしたらいいか、話し合って、勉強して欲しいなとは思います。まずはそこからですね。そして本当に、海の環境に興味があって、私は海を再生したいって思ったら、海洋学者になってください。今は地元の海だけでなく、世界中の海がフィールドになりますよ。ぜひ、よろしくお願いします。
(参加者3)

はい。ありがとうございます。海洋学者、頑張ってみます。
(知事)
おお、頑張ってみますか。はい、ありがとうございます。はい他にいかがでしょうか。はいどうぞ。真ん中の男性いかがですか。
(参加者4)

ありがとうございます。横浜市に住んでいます。本日はブルーカーボンと脱炭素社会の実現を本当に実現してもらいたくて知事を応援しに参りました。というのも先日のCOP(国連気候変動枠組条約締結国会議)でこのままだと、(パリ協定の気温上昇目標の)1.5度目標達成できない、2030年までに再生可能エネルギーを世界全体で3倍に増やさないといけないっていうことが合意されました。1.5度、このままだと、2100年までに世界の平均気温は3度上昇すると言われていますけれど、実は、海水温の上昇というのは大気よりも2倍以上の速度で温暖化すると言われていて、ここに来ている皆さん、子供たちの未来を守るためにも、私たちはまずブルーカーボンを守るためにも、まず大気の温暖化を止めないといけないって思っています。そこで合意されたのが世界全体で3倍。この神奈川県の計画をそこで読んでみたのですけど、神奈川県の再生可能エネルギー、追加可能な再生可能エネルギーのポテンシャルの9割は屋根置き太陽光だっていうことを、書いていまして、これ知事が2011年に当選されたときに掲げていた目標だなって思って、それでもう一度これを頑張ってもらいたいと思って今日来ました。で、会場にいる皆さんも脱炭素社会の実現に関心があると思っているのですけども、僕が今から言うことに賛成というか、その通りだと思ってもらえたら、ぜひ拍手をしてください。黒岩知事が、温暖化を止めてブルーカーボンを守り、脱炭素社会を実現するために、2030年までに再生可能エネルギーを可能な限り普及させることに、全力を尽くす、こういった政策を応援できる、応援したいと思う人は、ぜひ拍手していただけませんか、お願いします。(会場:拍手)
(知事)
ありがとうございます。はい。ぜひ頑張っていきたいと思いますので、本当に私も立候補したときに、ちょうど東日本大震災直後だったので、福島第1原発があんなことになっていると、これじゃエネルギーの革命を起こさなきゃ、これは乗り越えていけないぞということで、ソーラーパネルをどんどん普及させようと言ってきたのです。なかなか容易ではなかったというのが、正直なところですけれども、今度新しい薄膜太陽電池のペロブスカイトって出てきてですね、これによってどこでも太陽光になる可能性が出てきたのでね、これで一気に行けるのじゃないかなと思っていますね。
(参加者4)
実は屋根置き太陽光、ペロブスカイトじゃなくても、屋根置き太陽光は神奈川県はチャンスで、東京都と川崎市が2025年から新築の戸建住宅に設置義務化をするのですけれど、その時義務の対象になるのが大手ハウスメーカーで、実はこの東京都と川崎市の義務化の対象になっている大手ハウスメーカーの9割が、神奈川県にも戸建住宅を提供しているのですね。なので、ぜひ知事、新築の戸建住宅から、太陽光パネル普及させるっていう政策を進めていただけないかというのをお願いしたいのですけどいかがでしょうか。
(知事)
この問題について義務化については、もうずっと県庁の中でも議論をしているところでありましてね。我々は0円ソーラーなんて言ってですね、0円でもお金を全くかけなくても、ソーラーパネルをつけるっていうそんなプログラムを作っていきますので、そのあらゆるものを組み合わせながら、やっていきたいと思いますね。そしてペロブスカイトっていうのも屋根だけじゃなくて、どこでも太陽光発電になるという状況なので、これにちょっとかけたいなという思いが強いですね。
(参加者4)
あと1つだけいいですか、知事。ペロブスカイトの実証実験は、今始まっている段階で、ただ再エネを増やすためには、2030年までが鍵って言われています。今ここにいる高校生ですとか先ほど出ていた小学生が30代になる前に温暖化の未来が、決まってしまうのですね。なので、今、確実に普及できる太陽光パネルを設置して可能な限り、再生可能エネルギーを増やしていくっていうことを、今ここで約束していただけると、僕もここにいる子供たちの未来も、少しでも安心な社会になるかなと思うのですけども、いかがでしょうか。
(知事)
それはもう13年前から約束をし続けてきていることでありまして、1丁目1番地ですから、そのために何が一番ふさわしいのか、新しい技術をどんどん進化しているので、ありとあることを総動員しながらやっていきたいと思っています。ありがとうございます。
今日のテーマはソーラーパネルの話じゃなくて、ブルーカーボンということですけども、何かちょっと混乱されている方もいらっしゃるかもしれないですね、海藻を再生するのが大事なことなのだって言って、そうだそうだって話をずっと言っているけれど、あれ?ちょっと待って、ブルーカーボンの話がどう繋がっていたのかなっていうのを、ちょっとわかんなくなっちゃっている方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれないけれども、ブルーカーボンと似たような言葉、グリーンカーボン、これは森ですね。樹をいっぱい植えると、二酸化炭素を吸収してくれるって言って、そしてこれが地球温暖化に役に立つということで、森をどんどん作っていこう、陸上で森を作るということですね。これの海版がブルーカーボンということですね。海に海藻がありますね。その海藻が実は二酸化炭素を吸ってくれているということによって、地球温暖化っていうのも防止されてくるだろうって言っていたときに、その地球温暖化によって暖かくなって海の海藻が死滅し始めているということで、二酸化炭素を吸収する力がどんどん落ちている。今、我々が気がついたから、この海の森、これを復活させていこうという話をしているということなのですね。ですから、この地球温暖化を止めるという流れの中で海がいかに大事か、海藻がいかに鍵を握っているかという話をしていて、さっきの太陽光発電というものも、地球温暖化を止めるために非常に重要な要素であって、ありとあらゆることをやっていこうという流れだということを、ちょっとここで整理をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。はい。それでは他に。そのグリーンのジャンパーを着てらっしゃる方。
(参加者5)
大変参考になる話、面白く聞かせていただきました。横須賀工業高校のグリーンボランティア部の顧問をしています。磯焼けについてお聞きしたいのですけれども、先ほど山木さんの方から、海は綺麗だよ、透明だよって話がありまして、その前に、緑色の水があったと思うのですが、私は平作川の方で生徒たちとCOD(科学的酸素要求量)の測定をしているのですけど、非常に綺麗なのですよ。逆に言うと、綺麗すぎて、栄養がなくなっているのではないかなとすごく感じるのですよ。実は、川には支流がたくさんあって、支流の汚いところは、藻がたくさん生えているのですよ。で、綺麗なところ、CODが低いところは、藻が生えていないのです。横須賀市って結構、上下水道がきちんとしているので、綺麗な水が流れてきていて、どうも最近なんか逆に赤潮なんていうのは出てないってことは、富栄養化の逆で、栄養がなさすぎなんじゃないかなとすごく感じていて、先ほどの山木さんが途中で、海が綺麗だよって言ったときに、やっぱりそうなのかなって思ったのですけども、その緑色の部分、リンだとか窒素なんか少ないのではないかなって思うのですけど、どうなのでしょう。
(事例発表者:山木氏)
30年前に潜るともう本当に海が濁っていて緑色だと言ったのはまさにあれは植物プランクトンですね。植物プランクトンが増えるのはリンや窒素という栄養分があるからです。植物プランクトンが増えると動物プランクトンが増えてそれを魚が食べるという、食物連鎖があるわけですけども、最近はやはり昔ほど垂れ流しがないのですよね。昔は浄化槽だったのが、今は下水道になって、陸からの栄養供給が少なくなっています。ただ海藻がその影響で育たないのかっていうと、なかなかそこは難しい問題でして、海藻が育つくらいの栄養はまだありそうです。鉄分も不足しているかどうか地域により違いますが、地球は鉄でできていますので、海の鉄分を測るとそれなりに鉄イオンは含まれています。どちらかというと、水質だけでなくて、高水温も含めた複合的な影響がある気がします。複合的な影響というのは都合のよい言葉なのですが、栄養塩などの水質は日や時間によっても変化し、評価が難しいと言われています。川の水質や沿岸の水質を長期間、詳しく測り、評価するにはお金と時間がかかります。瀬戸内海では、海の栄養を監視しながら、少し栄養を出してあげようとか止めようとか、そういう制御を自治体が行う仕組みがあります。そういう取組を行政が始めていくという手がありますが、相模湾では瀬戸内海ほど、閉鎖的ではないのでなかなかすぐに結果が出るかどうかもわかりませんが、行政として手始めにいまの現状、ベースラインとしての栄養塩計測・分析などをしてもらうのがよいのではないかと思っております。
(知事)
海のやっぱり綺麗な海のバランスっていうかね、それが微妙なところなのでしょうね。はい。ありがとうございました。では、どうぞ、真正面の後ろの方。
(参加者6)
聖和学院中学校3年生です。今回はご講演いただきありがとうございます。活動していく中で、ブルーカーボンの課題はいろいろあると思うのですが、その課題は、一番の課題は何でしょうか。またその課題の対策をお伺いできると嬉しいです。
(知事)
はい、ありがとうございます。小野寺さんいかがですか。
(事例発表者:小野寺氏)
ありがとうございます。言おうかどうか迷っていたことだったんですけれど、一番の課題は、ブルーカーボンという言葉が上っ面だけで、独り歩きしちゃうことかなと思っています。 先ほど知事が説明してくださったように、グリーンカーボンは一般化しましたよね。「植樹をすると、木はCO2(二酸化炭素)を固定してくれるらしい、じゃ植樹をしよう」というのはみんなの常識になった。一方で、海にその能力があるというのはまだそんなに知られていない。ブルーカーボンは、炭素を固定した分だけお金を発生させることで「炭素を固定すると同時に、海の生態系を回復させよう」という仕組みであるべきだと私は理解しています。仕組みがあることは絶対に悪いことじゃないし、オフセット分で発生するお金が、海を豊かにする活動を進めていく人の原動力になるならいいと思いますが、まず大事なのは生態系の回復ですよね。 本当に大事なこと、本当に未来をつなげていくために必要なことは、生態系の回復です。「CO2を出した分だけオフセットすればいいんでしょ」という話じゃない。「オフセットした分だけ、お金が儲かるらしい」という話でもない。生態系自体がどれだけ大事か、その循環に自分たちが生かされているっていうことを、皆さんたちのような若い世代に「自分ごと」として捉えてもらうこと、仕組みとしてのブルーカーボンをそこまで持っていけるかどうかが、私個人としては一番の課題だと思っています。
(知事)
はい、ありがとうございます。
ブルーカーボンという言葉って、そんなにまだなじみのある言葉じゃないですよね。こういう言葉に抵抗感を示される方もいらっしゃるかもしれない、何かよくわかんないねって。それで気持ちが入っていかないという方もいらっしゃるかもしれないけれども、言葉って面白いもので、ブルーカーボン、それ何だろうって、そこから逆に興味を示して入ってくるって方ってたくさんいらっしゃるのですよね。だから、さっき言ったように、グリーンカーボンに対してブルーカーボン、海の中の森の話だ。海の中の森が死滅しようとしているのだ、これを何とかしようよ、そのことによって地球全体を救えるのだよって、こういうふうにみんなでこう共通認識を持っていくということ。これがやっぱり一番大事なことだというふうに思いますね。はい。ありがとうございました。
じゃどうぞ。高校生中学生がガンガン発言してくれますよね。頼もしいですよね。はい。
(参加者7)
神奈川県立海洋科学高校の生徒です。現在、神奈川県の漁業っていうのは環境の変化とか、そういう水温の変化でちょっと衰退傾向にありますけれど、そういう最近の漁業はブルーカーボンとかと関連付けて先進的な取り組みをして、立ち直っていったり利益の向上を図ったりしていますけれど、知事さんが思う今後の神奈川県の漁業の形を、教えていただけると嬉しいです。
(知事)
はい、ありがとうございます。やっぱり、今、漁業に携わろうとする人がだんだん少なくなってきているのですよね。後継者不足、なんでだといったら、儲からないと。一生懸命魚を獲っても、儲からないっていう話でどんどん後継者がなくなってきてっていう状況になっているということを直接聞きましたね。その時にやっぱり漁業というものがやっぱりその生活を成り立たせる、そういったレベルに持っていかなきゃいけないですね。そのときでも、その海の変化の中で、最近漁業者の方から聞くけど、魚がいなくなっちゃったとか、どんどん減っちゃったとか、魚種が今まで獲れた魚が全然違ってきちゃったという話はよく聞きますよね。だからそういうのをどう乗り越えていくのかっていう中では、今日は養殖という海藻の養殖って話がありましたけども、そういう養殖っていうので育てていく、それを産業としていくっていう、そういったことなんかも1つの方向かなというように思っていますね。養殖っていうのも巨大な養殖というのも実はあるのじゃないのかな、そんなことで我々は研究もしているところであります。ぜひ皆さんの将来が本当に、魅力溢れる職業として輝くよう一生懸命頑張っていきたいと思いますので、しっかり頑張っていただきたいと思います。
はい、ありがとうございました。あっという間にもう時間が来てしまいましたね。手がたくさんあがったので、本当は皆さんに答えていただきたかったのですけれども、残念ながら時間となって参りました。

知事によるまとめ

本当に今日はたくさんの中学生高校生そして小学生が来てくださって、こういう議論をすることができた、本当にありがたいことだなと思っています。やっぱりこれ今、地球の危機なのですよね。地球の温暖化ってこの間、国連の事務総長が「地球は沸騰している」と言いましたね。これは人類の危機が迫っているという、それをどうするのかって言った中で今日皆さんと議論した、海からそれを救う1つのアイデアがブルーカーボン、これ、海藻が海の中の森が死滅しようとしているぞ。これを救うことによって、我々地球を救うことに繋がるかもしれない。それはどうやって、やっていけばいいのかと言ったらば、海に子供たちが親しんで遊んで、そしてその海の魅力をみんな体の芯で捕まえて、そしてそれをみんなでやっていこうという、ローカルな場でこう繋がっていって子供たち多世代が交わり合ってやっていくという流れを作ることによって、この地域の海を守っていく、育つ海の森を復活させる、そういったことを今世界中が求めている。
この神奈川、三浦半島、逗子、葉山でそれができれば、これがまさに神奈川モデルとして、世界の地球温暖化を救う、そんな流れにもなってくるのじゃないのかな、ということを信じながら、今日は皆様とお別れしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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