2025年12月16日更新
風しん
風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹を特徴とする風しんウイルス(Rubella virus)による感染症です。2012年から2013年および2018年から2019年にかけて、日本国内で成人男性を中心とする風しんの流行がみられました。その後、2020年以降は報告数が減少し、2025年7月、日本は世界保健機関西太平洋地域事務局により風しんの排除が認定されました。
妊娠20週頃までの妊婦さんが風しんウイルスに感染すると、白内障、先天性心疾患、難聴などを主症状とする先天性風しん症候群の赤ちゃんが生まれることがあり、女性は妊娠前に子どもの頃を含めて合計2回の風しん含有ワクチン注1接種による予防が大切です。
風しんは、先天性風しん症候群とともに感染症法に基づく感染症発生動向調査では5類感染症全数把握対象疾患注2に定められています。また、学校保健安全法では第2種学校感染症に指定されており、風しんと診断された場合は「発疹が消失するまでは出席停止」となります。
| 注1 | 風しん含有ワクチン:弱毒生風しんワクチン;1977年から定期接種、弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン); 2006年から定期接種、弱毒生麻しんおたふくかぜ風しん混合ワクチン(MMRワクチン);1989年4月~1993年4月まで麻しんワクチンの定期接種の時にMMRワクチンの選択が可能でした。 |
| 注2 | 全数把握対象疾患:診断したすべての医師が管轄の保健所に届けなければならない疾患を指し、感染症法という法律で1類から5類までが定められています。 |
感染経路
風しんウイルスに感染した人の咳やくしゃみ、会話の時に飛び散る飛まつを吸い込むこと(飛まつ感染)や、ウイルスが付着した手で口や鼻に触ること(接触感染)で感染します。他人へウイルスを感染させる可能性のある期間は、発疹が現れる前1週間と、後1週間程度です。
症状
風しんウイルスに感染して14~21日後に症状が現れます。主な症状は発熱、発疹、リンパ節腫脹で、他に結膜の充血、関節痛、のどの痛みや咳、鼻汁などを伴うことがあります。発熱は、3日程度続きます。発疹は顔から体幹にかけて全身に広がる淡紅色の小紅斑で、3日程度で消失します。リンパ節腫脹は耳の後ろや後頭部のリンパ節の腫れが特徴で、発疹の数日前から現れ3~6週間でなくなります。これらの症状が全て揃わない場合もあること、またウイルスに感染しても症状が現れない場合(不顕性感染)があることから、症状のみからの風しんの診断は難しいとされています。そのため2018年から、原則として全員のPCR検査が求められています。
また、稀に、血液の成分の一つである血小板が減少して紫斑病を起こしたり、脳炎を合併することがあります。
先天性風しん症候群
風しんに対して免疫の不十分な女性が妊娠20週頃までに風しんウイルスに感染すると、風しんウイルスがおなかの赤ちゃんにも感染し、白内障、先天性心疾患、難聴などを主な症状とする先天性風しん症候群と呼ばれる病気を起こすことがあります。特に、妊娠の初期(妊娠1か月で50%以上、妊娠2か月で35%、妊娠3カ月で18%、妊娠4か月で8%程度:先天性風疹症候群(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト)
より引用)に感染した場合は高い確率で発生します。
予防にはワクチン接種によって妊娠時の風しんウイルス感染を防ぐことが重要ですが、妊娠中にはワクチン接種ができません。そのため女性は妊娠前に子どもの頃を含めて1歳以上で合計2回のワクチンを受けることと、妊婦の感染を予防するために配偶者や周囲の方がワクチンを受けて、風しんにかからないようにすることが大切です。
診断について
症状と検査所見を併せて診断します。
症状としては、3つの症状(発熱、発疹、リンパ節腫脹)が揃っていることは約半数しかありませんので、検査診断が必要です。
検査診断の方法には、血液、尿、のどのぬぐい液などから直接ウイルスを分離する方法、風しんウイルス遺伝子を検出する方法、また血清中の風しん抗体の検出による方法(風しんウイルスに対するIgMと呼ばれる抗体が陽性であることを確認する、あるいは風しんの急性期と回復期で、IgGと呼ばれる抗体価が陽転(陰性から陽性に転じること)するか、あるいは有意に上昇(HI抗体価なら4倍以上、その他、EIA抗体価なら2倍以上)していることを確認する)方法があります。わが国は、早期に先天性風しん症候群の発生をなくすとともに、2020年度までに風しんの排除を達成することを目標としてきました。ウイルスを分離する方法は一般には実施されておらず、IgM抗体価は発疹が出てから4日以上経たないと陽性にならないため、早期診断ができません。そのため厚生労働省は2018年から、風しんと臨床診断した時点で直ちに保健所に届出を行い、原則として全例にウイルス遺伝子検査(例:PCR検査)の実施を求めています。
治療について
風しんにかかってしまうと、特別な治療法がありません。発熱に対する解熱鎮痛剤の使用など、それぞれの症状を和らげる対症療法が行われます。多くは自然に治癒する病気ですが、脳炎や血小板減少性紫斑病など重い合併症を起こして、入院が必要になることがあります。
予防のために
風しんは、ワクチン接種による予防がとても大切です。定期予防接種の第1期(生後12カ月以上24カ月未満の者)と第2期(5歳以上7歳未満の者であって、小学校入学前の1年間)にそれぞれ1回ずつ、2回の弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の接種が行われています。ワクチン接種の回数が1回では、免疫の獲得が不十分となる場合や、年数の経過とともに免疫が低下することがあるため、2回のワクチン接種をきちんと受けることが大切です。
- 風しんの追加的対策について
風しんの追加的対策は令和7年3月31日をもって終了いたしました。
なお、令和7年3月31日までに抗体検査を受検し抗体価が低かった(HI法で1:8以下相当の抗体価)方のうち、「ワクチンの偏在等に起因して接種対象期間内に定期の予防接種を受けられなかった」と考えられる方は特例措置の対象となりますので、詳細はお住まいの市町村にお問い合せください。
- 風しん無料クーポン券特設ページ(神奈川県衛生研究所)
- 風しんの追加的対策について(厚生労働省)
厚生労働省において、風しんワクチンの定期接種の機会がなかった、昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性を対象として、2025年3月末まで、風しんの抗体検査と予防接種を原則無料で実施していました。 - リーフレット
日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業
「ライフコース予防接種時代のワクチンの有効性と安全性評価に関する研究」

厚生労働行政推進調査事業(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)
「風しん第5期定期接種の対策期間延長における風しん予防接種促進に関する研究」
