平成25年仕事始め式 知事メッセージ

掲載日:2013年1月4日

日時: 平成25年1月4日(金曜) 9時30分~9時50分
場所: 県庁本庁舎 大会議場


年頭に当たって

明けましておめでとうございます。

皆さん、どんな新年を迎えられたでしょうか。私も知事になって二回目の新しい年を迎えました。この年末年始はおかげさまでゆっくりとさせていただきました。けさも初詣に行ってまいりましたけれども、気合い充実、今年もしっかり皆さんと心を一つにして、素晴らしい県政運営をしていきたいと思っているところであります。

昨年は、この神奈川県の財政が危機だということを強く訴えながら、全面的にいろいろなものを見直そうとやってきました。「金がない時は知恵を絞ろう」ということをずっと申し上げてきましたけれども、さすが神奈川県庁の皆さん、ずいぶんいろんな知恵を絞ってくれたなと感謝しています。この危機意識というものは、かなり浸透してきたなと思っています。これからどうやってそれを乗り越えていくかということが、大きな大きな今年からの課題になります。

その中で、何度も繰り返しお話ししてきたことですけれども、この危機を乗り越えるために、さまざまなものを全面的に見直していくと同時に、大事なことは経済のエンジンを回していくことだということをずっと言ってきました。そして、その準備、仕掛けをいろいろな形でしてきたつもりであります。それが、ここにきて、本当にエンジンが回り始める、私は、そんな実感を今、覚えているところであります。皆さんもそんな感じがしませんか。私は小さい頃から、よく父親から言われておりました。「お前は本当についている男だ。『とても困った』という状況になった時に必ず風が吹いてくる」と。その風はどこから来るのか。それはいつも人でした。人が風を起してくれる。そのことによって、危機も何度も何度も乗り越えることができた、そう思っております。私はついてる男だ。そのツキをこの神奈川県庁に持ち込みたい、そんな思いがずっとありました。そういう意味で、「経済のエンジンを回すんだ。必ず明るい未来が待っている」と言い続けてきました。今、2012年から2013年に向かう中で、この国全体に何となく明るい兆しが見えてきているのではないでしょうか。株価も上がり始めました。新しい政権になって、何か、新たな期待感が膨らみ始めている。そんなことではないでしょうか。風が吹いてきた。準備万端だと私は思っています。この風に乗って、神奈川は浮上しましょう。共に力を合わせて浮上していきたい、そう思っているところであります。

県庁の高度情報化を

神奈川県庁の職員の皆さんを見ていると、実によく仕事をする。非常に優秀だと、私はいつも尊敬の念を持って皆さんを見ています。ただ、全体を見てみますと、まだまだ遅れているなと思うことも、正直あります。私は、30年近くフジテレビジョンという民間の会社でサラリーマン生活を送っていました。私がいた30年間のテレビの時代を振り返ってみますと、技術革新というものが仕事の中身を変えるということを生々しく実感した30年でありました。

私が入社したのは1980年、昭和55年でした。当時の報道というものは、フィルムでニュースを撮っていました。フィルムを回して、それを持ち帰ってきて、すぐ現像する作業があり、編集は、はさみでプチンプチン切って張っていました。それが、ニュース製作の最前線だった。ところが、入社してすぐに、ENG(※1)という新しいシステムが出てまいりました。要するに、VTRです。フィルムからVTRへ、これは劇的な変化でした。ENGというカメラを1台回し、フィルムじゃなくてVTRで撮影してくる。それを持ち帰って来ると、それを場合によってはそのまま放送することもできる。現像という作業が要らなくなりました。「画期的なことだ」と、われわれは感動したことをよく覚えています。ただ、このENGというカメラはかなり重かった。そして、このカメラ1台回すために、カメラマンがいて、その横に、VE(※2)といって、テープが入った大きなお弁当箱のようなものを持っている人がいて、そして照明マンがついていました。ENGカメラは3人セットで回すというのが当たり前のことでした。これが現場に出ていく時どうなるかというと、そのENGを回す技術者3人と、ディレクターと、ドライバーと、5人体制で動いていました。場合によっては、そこにプラス記者がついて、6人で動く、なんていうのが当たり前のことでした。

ところが、技術革新がどんどん進みました。このENGカメラも、どんどん小さくなった。そして、今や家庭用の小さなビデオカメラも、性能的にはそんなに変わらなくなりました。今では、極端な話、たった1人でカメラを回し、それを据え付けて記者がしゃべり、そして自分で編集して放送する、こんなことまで可能になりました。5人、6人でやっていた仕事を、1人か2人でできるようになったという劇的な変化を、われわれは目の当たりにしました。その時にどういうことが起きたか。当然のごとく、これまでその重たいお弁当箱を持っていた人、照明を持っていた人は、仕事がなくなりました。圧倒的に少ない人数で、もっと効率の良い仕事ができるようになったのです。

しかしながら、この技術的な革新に、そこにいる社員はなかなかついていけないというのも現実でした。今皆さんがご承知の、お台場にあるあのフジテレビジョンの社屋ビルができたのが、1996年ごろだったと記憶しています。あれができた時に、これからのデジタル放送の時代に備えた、最先端の技術を持ったテレビ局が出来上がったんだということで、私もどんなふうになるのかなと、楽しみにしながら曙橋から移転しました。

しかし、私はすぐ後の97年、ワシントンに赴任しました。2年間たって戻って来て、さあ、どれだけ素晴らしいデジタル技術を駆使し、最先端の放送機器を使いながら、新しいニュースをやっているのか、と思って見てみると、愕然(がくぜん)としました。現場の記者はパソコンで原稿を打つようになりました。昔は電話で原稿を送ったりしていましたが、現場からパソコンで送って、メールでデスクに届いてくる。そのメールをパッと開ける。ところがそこからです。メールで届いたその原稿をデスクはプリントアウトしていました。そして、それを昔ながらの手法で赤で直して、その原稿をコピーしてみんなに回していました。キャスターの目の前には、プロンプターといって原稿が出てくるんです。ぐしゃぐしゃに直された原稿を、大学生のアルバイトがマジックで書き写し、その書き写した原稿を、生放送のスタジオの端でテレビカメラで撮って、それを画面に出していました。私は実はワシントンから帰ってきて、夕方のニュースを担当したんですが、これを見て愕然(がくぜん)としました。

アメリカではどうなっていたかというと、現場で記者がパソコンで原稿を打って、メールで送ります。デスクはその画面を見ながら修正します。その同じ画面をキャスターが見ながら話をします。ニュースを伝えます。それが当たり前のことなのにもかかわらず、いちいちプリントアウトして持ってきて紙に書いて修正しなければできない、つまり技術はそこまでいっているんだけれども体がついていかない。そういうことを生々しく体験しました。デジタルの最先端のテレビ局なのに、紙があふれてあふれて、どれだけたくさんあるのか。一般の民間企業の人が見に来ると、「いまだにこんなにたくさん紙があるんですか」と、いつも驚きの声を上げていました。

私が何を申し上げたいのか、もう賢明な皆さんはお分かりでしょう。ちょうどあの時のフジテレビの感じが、今の神奈川県庁のような気がします。この紙の多さ。圧倒的なる紙の多さ。これは何でしょうか。技術的には、そんなに紙が必要な状況ではなくなっているはずですよね。でも、技術はそこまでいっても、体がついていかない。頭がついていかない。旧態依然のまま残ってる。これが今の神奈川県庁の現状です。それは、しようがない部分もあります。私自身もやっぱりまだまだアナログ的な人間です。紙があった方が安心します。でも、やはりわれわれは、新しい時代に生まれ変わっていかなきゃいけない。しかも、県の財政が厳しいんだということで、いろいろなご負担もお掛けしなければいけないという訴えをしている中で、技術革新にわれわれ自身がついていく、大胆な挑戦をするべき時が来ているのではないでしょうか。

県の財政が非常に厳しい中で、県庁の皆さんにも給与面でそれぞれご負担をお掛けしたということ、本当に心苦しく思っています。でも、この危機をみんなで乗り越える、その先にどうなるか、という中で、切る、切る、切る、だけではなくて、今言ったような、技術革新の波にうまく乗ること、これを今、神奈川県庁の中で実現すれば、高度情報化を本気で進めれば、実は、一人ひとりが痛まないで、大きな改革ができ、経費も削減できる。私は、一人ひとりの人件費は削りたくない。本当の狙いは、一人ひとりの人件費は削らないけれど、人件費総額が減る、そっちに持っていきたい。そのための鍵を握るのは「高度情報革命」、これを神奈川県庁に持ち込みたい。言葉を変えれば「電子化」。言葉を変えれば「ICT」、この力によって、県庁の仕事の流れを変えていきたい、そう思っているところであります。そういう意味で、発想を新たにしながら、全面的に見直し、前へ前へ突き進んで、この危機を乗り越えていただきたいと強く思う次第です。

「3歩先行く神奈川」

私自身、財政の危機ということで全面的見直しを行う中で、さまざまなことも学びました。暮れに、東京駅に行ってまいりました。東京駅の壁面にとてもおもしろい映像を映し出しているということを聞いて、「どんなものだろう、1回見てみたいな」と思って見に行きました。東京駅の前は大混乱でした。何といってもオープンスペース、すごくおもしろい映像ショーが始まる。ただで見られる。どんどん人が来ていました。10分後に始まるというそのショーが全然始まらず、「誘導に従ってくれない場合には中止します」と警察のアナウンスが何度も何度も流れた。結果的に30分後にやっと始まりました。もしかしたらこれは中止になってしまうかもしれないなと私は思いましたが、案の定、次の日からそのショーは中止されてしまいました。しかし、そのショーが始まるまでの30分間、その雑踏の中で、東京駅と丸の内周辺をずっと見ながら、さまざまなものを感じました。東京駅は古い駅舎が見事に復元されています。その東京駅の駅舎そのものが、まさにマグネット効果、あれを見たいと、どんどん人が来るようになってきている。その周りには新丸ビルをはじめ高いビルが建っていました。しかも、丸の内そのもの、全体が生まれ変わっていました。かつての銀座通りのように、素晴らしいお店がいっぱいあって、ショッピングを楽しみながら歩いている。丸の内はこんなに変わったんだと思いながら、ずっと、東京駅、そしてその周辺を見ておりました。そこで気がついたのは、この東京駅の上空であります。これは、県議会でも質問がありましたから、皆さんもうご承知でしょうけれども、この空間の権利を売ったのです。あそこに高層の東京駅を造ることも可能であった。しかし、歴史的建造物を残して、その上の空間の権利を売った。その権利を買って周りが高いビルを建てて、再開発が行われ、見事に丸の内は、マグネット力を持つ素晴らしい街に生まれ変わった。それを生々しく実感いたしました。そのイベントを中止せざるを得ないぐらいのマグネット力を、圧倒的なるマグネット力を持つことになった。これを、この神奈川県庁周辺で何とかして実現したい、そんなふうに思いました。

この立派な神奈川県庁の本庁舎、これを高層に変えることはできません。素晴らしい建物ですし、私も誇りに思っています。これを残すことによって、この上の空間の権利をうまく使うことによって、この辺り全体の再開発ができれば、例えば今、県有施設をどうするんだという話もしていますが、その再開発の中で、今老朽化しているさまざまな県有施設が素晴らしいビルの中に集約されていく、そんなことも出来るんじゃないかなと思った次第です。これはもちろん神奈川県だけでできる話ではない。横浜市としっかりと歩調を合わせて、こういう大規模な取組みも考えながら、この危機を乗り越えていきたい。そんなふうに思っているところであります。

この神奈川県はこれから本当に生まれ変わっていきたい。神奈川県庁はこれまでも、「3歩先行く神奈川」だったと私は思っています。ここで私は改めて、神奈川県庁は「3歩先行く神奈川」だと、職員一人ひとりの皆さんと共に自覚したいと思っています。できない理由をつらつら並べるのではなくて、どうしたらできるか、まずそれを考える。そういう発想法をみんなで身に付けてほしいと思っているところです。

まずはあいさつから

そんな中で、一つだけ苦言を呈しておきたい。私が神奈川県庁に入って一番驚いたこと、それは、職員の皆さんがあいさつをしない。こういうことを、県庁の皆さんに私が言うのは何となく気が引けていました。しかし、やっぱりこれは言わなきゃいけない。何であいさつしないのかな。今も不思議な感覚がしています。私はこの県庁の中を歩いている時に、すれ違う全員に声を掛けながらあいさつをしています。県庁職員で、私とすれ違う時に、私より先に声を出してあいさつをする人は5パーセントしかいません。私が「おはようございます」と言って、「おはようございます」と声を出して返してくれる人も1割しかいません。あとは、ほとんどの人があごだけ下げて、ウッって。この光景は、民間の会社では絶対に有り得ません。民間の会社で社長を見つけたら、必ず社員は「おはようございます」、100パーセント言います。万が一社長の方が先に言った場合には、必ず声を出して「おはようございます」と言います。それをしないというのは、異常な光景だということ。これが分かっていない、これは一体何なのか。私は県民の目線に立ってほしい、県民の目線に立てば普通にあいさつできるはずだと思います。こちらは「おはよう」と言っているのに、声を出さないでウッと頭だけ下げるというのは、普通じゃ考えられない。こんな立派な皆さんの前であいさつから始めましょうなんてことは言いたくない。しかし、やっぱり原点に立ち戻り、何とかしてここから変えていかないと、神奈川県庁の本当の生まれ変わりはないんじゃないかなと思います。ぜひ皆さんにお願いしたいと改めて思う次第であります。

厳しい情勢ではありますけれども、今年はどんどん上向きになっていきます。必ず上向きになっていきます。そして、「3歩先行く神奈川」、これによって、20年後もいのち輝くマグネット神奈川を、皆さんと共につくり上げていきたいと思っております。ぜひ、明るい年にしましょう。頑張りましょう。ありがとうございました。

 

※   1 ENG:Electronic News Gatheringの略

※   2 VE:Video Engineerの略

神奈川県

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