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2023年8月16日更新

麻しん

麻しんは、「はしか」とも呼ばれる麻しんウイルス(Measles virus)による感染症です。近年、麻しんの予防接種を受けていない人や予防接種による免疫の獲得が不十分な人々の麻しん報告例が増加したため、2008年頃から麻しん排除に向けた取り組みが進められ、2015年、世界保健機関(WHO)により日本は麻しんの排除状態にある(国内由来の麻しんウイルスによる感染が3年間確認されない)と認定されました。麻しんは、感染症法において全数把握対象疾患5類感染症に定められています。また、学校保健安全法では第2種感染症に指定されており、麻しんと診断された場合は「解熱した後3日間を経過するまでは出席停止」となります。

※全数把握対象疾患:診断したすべての医師が最寄りの保健所に届けなければならない疾患を指し、感染症法という法律で1類から5類までが定められています。

感染経路

麻しんウイルスに感染した人の咳やくしゃみからの感染(飛まつ感染)、それらの水分が蒸発し、空気中に漂ったウイルスを吸い込むことによる感染(空気感染)、また感染者に接触することによって感染(接触感染)する場合があり、感染力が非常に強いことが特徴です。他人へウイルスを感染させる可能性のある期間は、症状が出現する1日前から発疹が現れた後約4~5日目までで、そのうち最も感染力が強いのは発疹が出現する前のカタル期とされる期間です。

症状

典型的な麻しんの経過は、大きく3つの期間に分類されます。

合併症

麻しんに感染することで免疫が低下し、他の細菌による感染を合併することがあります(二次感染)。主なものは肺炎(およそ20人に1人)と中耳炎(およそ10人に1人)です。通常の経過よりも長く症状が続くときは、これらの合併症が考えられます。他に、喉頭の炎症であるクループ症候群や、稀ではありますが脳炎(およそ1000人に1人)、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)(およそ10万人に1人)などの重篤な脳を合併する場合があります。

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診断について

麻しんは臨床症状のみでは診断を誤ることがあるため、検査所見とあわせた診断(検査診断)が行われるようになりました。
検査結果と、診断に必要な3つの症状(麻しんに特徴的な発疹、発熱、および咳・鼻汁・結膜の充血などのカタル症状)が揃っていれば麻しんと診断されます。
検査法には、血液、尿、のどのぬぐい液などから麻しんウイルスを直接検出する方法、あるいは麻しんウイルスの遺伝子を検出する方法、また血清による方法(麻しんウイルスに対するIgMと呼ばれる抗体が高値であることを確認する、または麻しんの急性期と回復期の抗体価が上昇していることを確認する)があります。
麻しんは他の発疹を伴う疾患との鑑別が難しいことから、国では検査による診断を推奨しています。検査診断はIgMによる検査が一般的でしたが、近年擬陽性例が多くみられることから、ウイルスの遺伝子を検出する方法を推奨しています。
医師から保健所へ届出があった場合には、保健所と衛生研究所が連携して遺伝子検査を実施し、検査診断を行っています。

修飾麻しんについて

過去のワクチン接種の効果が弱まった場合など、麻しんに対する免疫が不十分な状態で麻しんに感染した場合は、より軽い症状や非典型的な症状となる場合があります。この場合を修飾麻しんといいます。感染力は典型的な麻しんに比べて弱いとされていますが、この場合も周囲の人へ感染させる恐れがあり注意が必要です。また感染症法に基づく届出が必要です。

治療について

麻しんに対する特別な治療はありません。それぞれの症状に対しての対症療法が行われます。ただし、中耳炎・肺炎などの合併症があれば抗菌薬による治療が必要です。

予防のために

麻しんは、ワクチン接種による予防がとても大切です。定期予防接種の第1期(生後12カ月以上24カ月未満の者)と第2期(5歳以上7歳未満の者であって、小学校入学前の1年間)に麻しん・風しん混合ワクチンの接種が行われています。ワクチン接種の回数が1回では、免疫の獲得が不十分となる場合や、年数の経過とともに免疫が低下することがあるため、2回のワクチン接種をきちんと受けることが大切です。

参考リンク

神奈川県衛生研究所

国立感染症研究所

厚生労働省

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