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劇症型溶血性レンサ球菌感染症

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、主にA群溶血レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)による細菌感染症です。「A群」とは、菌の細胞壁に存在する、糖の種類による分類で、他にB群、C群、F群、G群という分類の菌がこの病気の原因になります。通常のA群溶血レンサ球菌による感染症は、のどの炎症の原因となり、小児に多くみられますが、劇症型は通常菌の検出されない筋肉や脂肪組織、血液などに菌が侵入し、多くの臓器(肝臓、腎臓、肺、血液、脂肪・筋肉、中枢神経など)の機能が急速に低下するものをいい、大人に多いのが特徴です。
1987年に米国で初めて報告があり、日本では1992年に最初の発症者が報告されました。1999年に感染症法の全数把握疾患5類感染症に指定されてからは、毎年100~200人の報告があり、このうち約30%が死亡しています。メディア等では「人喰いバクテリア」ともいわれています。

神奈川県の届出状況(2024年8月29日時点)

神奈川県では、2024年第34週までに102件の届出がありました。2006年以降で最も多い届出数となっています。

感染経路

皮膚や粘膜から、通常は菌の存在しない筋肉、脂肪組織や血液に溶血レンサ球菌が侵入することによって病気を起こします。実際の感染経路は明らかにならない場合が多いですが、がんや糖尿病のある方、ステロイドなど免疫を低下させる薬剤を使用している方は発症する危険性が高いとされています。

症状

最初にみられるのは手足の強い痛みで、続いて発熱や悪寒、筋肉痛などのインフルエンザに似た症状が現れます。また、めまいや錯乱状態を伴うことがあります。症状が進行すると、筋肉や脂肪における炎症、呼吸障害や意識障害が進行して死に至ることもまれではありません。
A群溶血レンサ球菌による重症感染症は、その症状によって以下の2つに分けられます。

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診断について

症状(ショック症状かつ多臓器不全)に加えて、通常では菌の検出されないところ(血液や脳脊髄液、胸水、腹水など)からβ溶血を認める溶血レンサ球菌を検出することで診断されます。

※ショック症状
全身に十分な血液がまわらなくなった結果、からだの組織に必要な分の酸素を運ぶことができなくなった状態をショックといい、その際に現れる症状をいいます。具体的には、血圧の低下、皮膚の蒼白や冷や汗、意識障害などです。

※多臓器不全
生命維持に必要な臓器である、腎臓、呼吸器、肝臓、血液系、心血管系、消化器、神経系の臓器のうち、2つ以上の機能が悪くなった場合をいいます。

※β溶血
血液寒天培地という培地で細菌を培養したとき、培地に含まれる赤血球を破壊(溶血)する細菌があります。このうち、溶血によって細菌の周りの培地が完全な透明に変わる場合をβ溶血といいます。


β溶血(神奈川県衛生研究所)

治療・予防について

入院による全身の治療が必要になります。治療の主役は抗菌薬で、ペニシリン系といわれる抗菌薬が使用されます。加えて、血圧の低下に対する大量の点滴や感染によって死滅した組織の切除などが必要となります。近年、薬剤が効きにくい耐性菌が増加しています。2006年から2011年にかけて分離された、劇症型溶血性レンサ球菌感染症311例の調査では、アンピシリン、ペニシリンG、セファゾリン、セフォタキシム、イミペネム、パニペネム、リネゾリドという7つの薬剤に感受性がありましたが、クリンダマイシンという薬剤に対しては毎年5%前後(2009年は15%)の耐性菌が分離されています。劇症型溶血性レンサ球菌感染症に対する特別な予防法はありません。

参考リンク

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