現在、どのような菌が流行しているのか、それはどんな特徴を持つのか、今までの菌と変わってきているのかということを調べるために当所では、疫学上必要な血清型別検査、毒素遺伝子型検査、分子疫学解析など様々な検査をしています。そのためには、培養によって菌を分離することが基本です。
分離された菌はどのようにして、A群溶血レンサ球菌と判定するのでしょうか。
①溶血性を観察します。この菌は、菌が産生する毒素のため血液を溶かすことが特徴です。β溶血(完全溶血)、α溶血(不完全溶血)、γ溶血(非溶血)と分類されます。そこで、ウマまたはヒツジの血液を加えた寒天培地に接種して、発育してきたコロニーの周囲にできた溶血環をよく観察し、β溶血のコロニーを選択します(図2)。
②グラム染色を行います。レンサ球菌は紫色に染色されるグラム陽性球菌でネックレスのように繋がって(連鎖して)います(図3)。
③酵素カタラーゼ(catalase)テストを行い、陰性であることを確認します。このテストは、同じグラム陽性球菌であるブドウ球菌等と鑑別するために行います。
レンサ球菌は、C多糖体抗原性という特徴をもとに分類する方法があります。これらの抗原性はランスフィールド抗原(Lancefield antigens)と呼ばれ、古くから用いられており、A~V群(I,Jは除く)とアルファベット名がつけられています。このランスフィールド血清群別方法でA群であることを確認します。
また、A群溶血レンサ球菌の型別には、菌体表層にあるT蛋白とM蛋白による分類もあります。M蛋白による型別は、病原因子として重要ですが、市販血清がないため一部の機関でのみ行われています。T蛋白による型別(T型別)は、疫学調査の手段として用いられています。神奈川県内の経年推移をみると、例年T1、T4およびT12型が高い傾向にありますが、2010年に比べ、検出数および検出率とも2011年はTB3264が増加していました。ここ4年ほどT28型の検出率が高くなっています。2011年は、T1、TB3264、T28の順で全体に占める割合が高かったことがわかります(図4)。
現在ではさらに溶血性、抗原性を調べる血清型に加え、生化学的性状、増殖の特徴、遺伝子検査(emm遺伝子型別、発赤毒素(spe)遺伝子型別)などを組み合わせて分類されています。 |