オレンジパートナーリリース『かながわオレンジ大使に聞いてみました-動画公開』(令和6年4月号)

 神奈川県では今年4月から、県の公式YouTubeチャンネル『かなチャンTⅤ』で、認知症本人が認知症に対する考えや生き方を語った動画を公開しています。今回登場する4名の方々は、県が令和5年5月に委嘱した第2期『かながわオレンジ大使』の皆さんです。
「とにかく得意なことを1つ2つ持っていると強い」「(何が起きているのか原因が分からなくて)医者から認知症と言われた時はほっとした」「自分でちゃんと考えて少しだけ進んでいけばいい」「(ものを忘れていく等の)怖さを理解して、その部分を他の人に(どう)理解してもらうか」そう率直に話すそれぞれ3分半から8分半のメッセージ動画です。
下記のURLから、生き生きとした表情や思わずはっとさせられる話をぜひともご視聴ください。
メッセージ動画掲載先(県ホームページ)

 なお、かながわオレンジ大使への活動依頼も随時受け付けております。県高齢福祉課までお問い合わせください。
※この件の問合せ先
神奈川県高齢福祉課高齢福祉グループ
【電話】045-210-4846

オレンジパートナーインタビュー『オレンジパートナーに何ができるか、何をしたいのかを皆で集まり話し合う交流の場を=長谷直樹さん』(令和6年3月号)

 オレンジパートナーの長谷直樹さんの心を揺さぶったのは、黄色い表紙の冊子だった。「福祉の世界はやる気があれば広く扉が開かれていて、困っている人の助けになる」と思った長谷さんは、認知症のことは何も知らず、介護経験もないままグループホームで働き始めた。当初、認知症の人とのコミュニケーションや行動・心理症状への対応が思うようにいかず、自分自身の無力さに悩んだという。
 この仕事を続けられるのか不安になっていた時、職場の先輩から読むように薦められたのが『認知症の理解と介護-認知症の人の世界を理解し、よい介護をするために-(杉山孝博川崎幸クリニック院長著)』だった。最初は分からない部分もあったが、ふと表紙の裏を見ると、杉山孝博さん直筆の『おもいやり』という文字が目に入った。「(それからは)どんな時でも相手に対するおもいやりを大事にして、少しずつ認知症のケアに慣れていった」と長谷さんは話す。
 2019年に県が主催したオレンジパートナー研修に、杉山さんの講義があると知った長谷さんは研修に参加。働きながらオレンジパートナーとして、医療従事者向け認知症研修やオレンジカフェの手伝い、認知症の人と家族の会主催の認知症の本人と家族が参加する1泊交流・研修旅行へ同行するなどボランティア活動を実践。同時に介護福祉士、ケアマネジャー、社会福祉士の資格を取得した。コロナ禍という厳しい環境の最中、30代でグループホームの管理者を任された長谷さんは、「グループホームに入る皆さんは、自分の家や住み慣れた地域にいたいという思いが強い」と在宅介護、自立支援や地域共生を考えるようになる。
 「世間一般の認知症のイメージは終末・最重度の症状に偏っていると思う。そこに至るまで生き生きしている人もいる。(目指すのは)認知症の人が自分らしく輝ける、持っている力を引き出し発揮できる社会」そう気づいた長谷さんは、実現のため2023年4月に神奈川県立保健福祉大学実践教育センター教員・教育担当者養成課程介護コースに入校。今年の3月で卒業した。20代から60代まで1クラス15名の仲間は、福祉資格養成学校の教員、特別養護老人ホーム他の介護施設職員・運営者、大学院の研究者など様々な分野の人がいて意見交換もでき、とても勉強になったという。
 この4月から横浜市のケアプラザで社会福祉士職として市民への相談支援、自治体や関係各機関との調整に関わる長谷さんは、オレンジパートナーの活動について「オレンジパートナーには私のように個人で、また様々な団体で活動する人、これから活動をしようと思っている人がいる。オレンジパートナーに何ができるか、何をしたいのかを皆で集まり話し合い、考えるのもいいのではないか」と交流の場の必要性を語った。

※情報発信コーナーの記事についての問い合わせは、このHPの事務局であるオレンジパートナーセンターへ

オレンジパートナーインタビュー『担い手への支援やスキルアップ、人材育成が重要=田中香枝さん』(令和6年2月号)

 「若年性認知症の人たちの中にはなにくそと思って行動しているように見える人がいる。その力が自分たちで見出せたのか、周囲が与えたのかは分からないが、これで私の人生は終わるわけはない。まだ出来ることがあるという思考の展開が出来るといい」そう話すのは、小田原市にある曽我病院で若年性認知症支援コーディネーターを務めるオレンジパートナーの田中香枝さん。福祉系大学で社会福祉士(後に精神保健福祉士)の資格を取得し、同病院で精神科のソーシャルワーカーとして働き始めた田中さんは、同病院が県から認知症疾患医療センターの運営を受託後、若年性認知症支援コーディネーターを任された。県西部地域で若年性認知症の相談支援を担当し7年目となる。
 若年性認知症は高齢者の認知症と違い、本人が現役で働いて生活を営んでいる場合が多く、経済面、配偶者の介護負担、子育てなど家庭への影響は多大だ。また医療関係者、支援団体、地域包括支援センターなどサポートする担い手側の負担も大きい。その現状を目の当たりにしてきた田中さんは「若年性認知症本人家族への心理教育含め担い手に対する支援やスキルアップ、人材育成が重要」「認知症に関心の薄い一般の人たちも自分が認知症になるかもしれないという前提で、今から人生設計を考えた方がいい」と提言する。
 オレンジパートナーのボランティア活動参加については、「期待に応えないといけない、正しいことを言わないといけないと思い過ぎず、受け入れる側は、何かをしてもらうのではなく、いてもらう、話を聴いてもらうという感覚であれば、ハードルは下がるのでは」と話す。
 支援する担い手側の厳しい現状を知る田中さんは、支援する側がされる側を全部抱えるのではなく、共に力を貸し合う関係性の必要も感じている。「認知症の当事者や家族もどうにかしてもらおうと思うのではなく、医療関係者、支援団体、ボランティアらも皆で勉強しましょう、共に学びましょう、がんばりましょう―そう考えるようになった」と語った。

※曽我病院のホームページ、連絡先は以下の通り
【URL】  https://www.soga-hp.com/
【電話】  0465-42-1630
【Mail】  dementia-center@soga-hp.com

オレンジパートナーリリース『第1回湘南オレンジデイ開催(1月26日~27日)』(令和6年1月号)

 『第1回湘南オレンジデイ』(主催:湘南地区チームオレンジ、協力:エムアンドエフ縁側なないろ他多数)が2024年1月26日~27日の2日間、ブランチ茅ヶ崎2の2階サンノイチ(茅ヶ崎市浜見平3―1)で開催されます。認知症の本人や家族、支援団体、ボランティア、市民の皆さんが参加の予定です。
 26日(金)13時~16時には健康相談、介護技術講習、終活アドバイザーによる終活相談。27日(土)10時~13時には、東京パラリンピックで日本が個人金メダルと団体銅メダルを獲得したボッチャが体験できます。ボッチャは、県内各地で既に体験した認知症の人たちが「夢中になってしまい、とても楽しかった」と話す競技で、今回公式ボールを使用します。また両日、脳年齢チェックと骨健康度チェックも行われます。オレンジデイの参加料は無料。オレンジパートナーの皆さん、家族や仲間を誘って、ぜひともご参加ください。

※この件の問い合わせ先
湘南地区 地域包括支援センター すみれ
電話 0467-84-6321

オレンジパートナーインタビュー『きっかけを作れば、認知症の方々がやれることはいっぱいある=西田大輔さん』(令和5年12月号)

 『RUN TOMO+YOKOHAMA』(主体は認知症フレンドシップクラブ横浜=株式会社NGU生活維持向上俱楽部「扉」内)は11月12日に、コロナ禍での中断はあったが4年ぶりに開催された。前回はRUN TOMO神奈川として神奈川県や市町村、企業の協賛を得て参加者は2000名弱だったが、今回は準備期間が短く自治体や企業の協賛も間に合わない中、認知症の本人や家族、事業所スタッフ、ボランティア他300名が参加した。横浜市各区のスタート、ゴール地点を経て、最終ゴールの山下公園に到着したのは約50名。「こんないいイベントがあるとは知らなかった(初参加の横浜市ケアプラザ所長)」との感想や、「寒かったけれども楽しかった(車いすでの参加者他)」という声が多かったと話すのは、事務局担当を務めた生活維持向上倶楽部「匠」管理者・生活相談員の西田大輔さん。
 西田さんは学校卒業後、建設会社に勤務していた。何か資格を取ろうと働きながら日本福祉大学で学び始めた。特に福祉の世界に興味があったわけではないと話す西田さんだが、学ぶにつれて興味がわき、福祉の世界に飛び込んだ。特別養護老人ホームで働きながら、介護福祉士と社会福祉士の資格も取得した。しかしこのままでいいのかと思い悩んでいた西田さんは、技術研修でNGUの山出貴宏代表と出会い、福祉の仕事の奥深さややりがいを知り、共に働くことになる。
 オレンジパートナーへのアドバイスとしては「折り紙やカラオケをするデイサービスは多いが、ここ(生活維持向上倶楽部)では外の活動がメーン。近くの公園の花の整備をNPO法人と連携して行ったり、今の時期は門松づくりをしたりしている。私たちは、認知症の人たちが助け合いながら生活を営むという自立支援を一番の目標としていて、職員がポイントだけサポートすれば、認知症の方々は役割をこなせる」「認知症については、皆さん知識はあると思うが、認知症の方々は十人十色。のびのび活動している中に入ってボランティアを経験するのはいい勉強になる。例えば「匠」では地域のお祭りに参加しているが、準備から出店、進行、後片付けまで認知症の方々に携わってもらっている。すべてお膳立てしてしまうと、スタッフの満足感だけの一過性のイベントになってしまい、後につながらない。サポートする人たちにはそこをしっかり気づいて欲しい」「きっかけを作れば、認知症の方々がやれることはいっぱいある」そう語る西田さん。積み重ねた体験に基づいたその口調は、穏やかだが力強かった。

※(株)NGUのホームページ、西田さんへの問い合わせ先は以下の通り
URL https://ngup.jp/
電話 045-410-7717
Mail takumi@ngup.jp

オレンジパートナーリリース『RUN TOMO+YOKOHAMAが11月12日開催』(令和5年10月号)

「未来のために、今つながろう」をキーワードに『RUN TOMO+YOKOHAMA』(主体はNPO法人認知症フレンドシップクラブ横浜)が、11月12日(日)に開催されます。2011年に北海道で始まり全国に広まったRUN伴は、2020年度から新型コロナウイルス感染症防止のため中断していました。今回の『RUN TOMO+YOKOHAMA』は横浜市の各区をスタートして、午後3時を目標にゴールの山下公園氷川丸前広場を目指します。走っても、歩いても、車いすでも、車いすを押してもと参加方法は多様で、参加する認知症本人や家族、支援者、沿道や事業所から応援するサポーター、大会運営を支えるスタッフやボランティアなど様々な立場からいろいろな形での関わりが可能です。
「認知症になっても安心して暮らせるまちづくりという趣旨に賛同していただける方は、住んでいる地域を問わず誰でも参加できます」と話すのは認知症フレンドシップクラブ横浜事務局長の西田大輔さん。オレンジパートナーの皆さんや認知症に関心のある皆さんの中には既にRUN伴に参加した経験者もいると思いますが、大事な役割を担う裏方として、今回つながってみてはいかがでしょうか。なお申込み締め切りは開催1週間前の11月5日を予定しています。各区のスタート地点や時間などを含め、参加・ボランティアの応募条件・申込み方法他の詳細は下記にお問い合わせください。

※この件の問い合わせ
認知症フレンドシップクラブ横浜事務局(生活維持向上倶楽部「扉」内)
TEL045-800-6231 担当・西田さん

オレンジパートナーリリース『小学生手作りのオレンジランプ・ライトアップ=大和市立図書館』(令和5年9月号)

 毎年9月は「世界アルツハイマー月間」。全国各地で様々な認知症啓発イベントが行われます。県内1の座席数(約990席)を誇る大和市立図書館(大和市文化創造拠点シリウス)と同市中央林間図書館では、3年連続で手作りのオレンジランプのライトアップをアルツハイマー月間に行っています。
 大和市立図書館では8月に大和市人生100年推進課の協力を得て、市内の小学校低学年児童を対象に認知症に関する話や紙芝居、寸劇を通して認知症を知ってもらう『認知症キッズサポーター養成講座』を開催。同時に100年推進課担当、図書館スタッフと共に牛乳パックを利用したオレンジランプを手作りしました。当日参加したのは親子2組、3人の小学生含む合計5人。子供たちは最初、戸惑いながらも側面を切り抜いた牛乳パックにオレンジ色のビニールを張り、絵や文字を描き、飾りを付けて楽しんでランプを作りました。
 今年初めて担当となった図書館のスタッフは、このイベントを行うことで改めて認知症について考えるきっかけになり、続けることが何より大事と思ったと言う。大和市立図書館の取り組みは派手でも大がかりでもありませんが継続することで、小さくて弱い光を灯すオレンジランプのように、子供たちや認知症に普段は縁がない人たちの心に少しずつ染み込んでいます。
※展示は大和市文化創造拠点シリウス4F健康コーナー:大和市大和南1―8―1

オレンジパートナーインタビュー『目指すのは地域共生社会=おれんじあさお』(令和5年8月号)

 「人がつながっていれば幸福になれる。ポジティブに思っていれば全部運が来る」そう話すのはオレンジパートナーの倉石知恵美さん。認知症介護指導者、介護福祉士、保育士などの資格を持つ倉石さんは、これまでに保育園、NPO法人の設立、デイサービスの管理者など、関わってきた仕事や自身に起こった様々な体験を通じて「人は人に助けられ、1人では生きていけない。出来事はうれしいことも悲しいこともすべて必然」と思うようになったという。
 令和4年度に川崎市麻生区認知症支援推進員を1年間務めた倉石さんは、キャラバンメイト仲間や賛同者らの協力を得て、川崎市麻生区を拠点に令和5年2月、オレンジパートナーの大竹明さんと共に共同代表を務める任意団体『おれんじあさお』を設立した。『おれんじあさお』では、①認知症サポーター養成講座などの勉強会開催②賛同者のネットワーク作り③支援団体などへのサポート④地域住民に向けた情報発信や広報活動-を柱として活動を開始している。その一環として8月にイトーヨーカドー新百合ヶ丘店の協力を得て、認知症本人が参加し支援者がサポートする買い物ツアーを行った。普段は車いすで過ごしている認知症の女性は、従業員の8割が認知症サポーターの資格を持つ同店に到着直後から、車いすを使わず店内を歩きだした。その様子を見て「買い物の楽しさや、行動することの刺激の両方の効果を感じた」(本人に同行した施設関係者)、「(認知症の)当事者、支援者、店舗、すべての住民のためにぜひ継続が必要」(支援サポーター)、「表情はにこにこし、化粧品コーナーでは鏡を見ながら化粧をしている。支援しているこちらが喜びをもらった」(倉石さん)という感想が終了後に寄せられた。
 『おれんじあさお』が目指すのは、住民発信のチームオレンジとして実績を積み上げて、認知症の人も他の障害を持った人も高齢の人も皆が安心して暮らせる「地域共生社会」を実現すること。それを最終的なゴールとして『おれんじあさお』は日々活動を続けていく。

※『おれんじあさお』の活動ブログURL、問い合わせ先は以下の通り
URL https://ameblo.jp/orangeasao
電話 080-9301-8152
Mail orangeasao@gmail.com

オレンジパートナーリリース『9月21日は世界アルツハイマーデー』(令和5年7月号)

 毎年9月21日は、国際アルツハイマー協会と世界保健機関が共同で、1994年に制定した「世界アルツハイマーデー(認知症の日)」。2012年からは9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、日本各地で国、地方自治体、支援団体、企業などが様々な啓発イベントを繰り広げます。

 公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部(杉山孝博代表)では、9月18日13時から桜木町駅前の県民共済みらいホール(横浜市中区桜木町1―1-8―2 県民共済プラザビル1階)で「2023年世界アルツハイマーデー記念講演会」を開催します。第1部は杉山孝博代表の講演、第2部ではかながわオレンジ大使矢作博之(オレンジ大使活動名)さん、前田博樹さんの話とパネルディスカッションが行われます。このイベントは参加料無料で定員300名。先着順に参加申し込みを受け付けます。

 神奈川県では、9月30日13時から17時まで、「世界アルツハイマーデーかながわ」を、横浜市西区の新都市プラザ(そごう横浜店地下2階正面入口前)で開催します。認知症本人大使である「かながわオレンジ大使」によるミニコンサートやコラージュ制作の実演などを通じて、生き生きと暮らしている認知症の方ご本人の活動を紹介します。そのほかに、認知機能のチェックや、脳と身体の機能を向上させる運動である「コグニサイズ」などを体験することができ、誰もが楽しみながら、認知症について、身近に考えるきっかけになるようなイベントです。
オレンジパートナーの皆さん、友人や仲間を誘って、ぜひともお越しください。

※「2023年世界アルツハイマーデー記念講演会」の問い合わせ・申し込み先
公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 TEL045-548-8061※事務局開設は毎週月曜・水曜・金曜の10時~16時
※「世界アルツハイマーデーかながわ」の問い合わせ先
神奈川県高齢福祉課 TEL045-210-4846

オレンジパートナーインタビュー『オレンジカフェ=あつま~る』(令和5年6月号)

 「アドボケイトを頭の片隅に置いて、認知症の本人や家族の喜び・やりがいが、自分たちの喜び・やりがいになっていくことを(オレンジパートナーには)味わって欲しい」そう話すのはNPO法人日本ナラティブ音楽療法協会理事でオレンジパートナーの長谷川静さん。
 アドボケイトは長谷川さんにとって忘れられない言葉だ。音楽を学びにアメリカにいた40代後半、訪問先の図書館長は担当者をアドボケイト(adovocate)と紹介した。調べるとこの言葉には地域に訴えたいこと、変えたいことを提唱する(人)という意味が含まれていた。私がやろうとしているのはこれだと長谷川さんは気づく。帰国し50代になった長谷川さんは人生を変える出来事を経験し、両親の住む北海道に向かった。そこで地元の拠点病院の会長から歌を歌いに来てくれと頼まれた。初めは認知症とは無関係に楽しみの一環と思っていたが、父親が認知症になり他人事ではなくなった。長谷川さんは甲府で認知症の支援啓発活動を活発に行っていた知人女性に相談。すると「そういう体験をしながらあなたは何をしているの。もっと勉強しなさい」と叱られ、音楽と認知症がつながることを知り、各施設を訪問。それ以来始めた音楽活動は20年になる。

 次の転機は長谷川さんが参加した神奈川県主催のチームオレンジのコーディネーター研修だった。研修で民間レベルでのチームオレンジが必要と感じた長谷川さんは、認知症や様々な障害を持つ人と家族、地域の人たちの居場所を東逗子に作ろうと決心する。
 周囲の人たちの理解と協力を得て2022年3月に開催したオレンジカフェは、1回きりのワンディオープンのつもりだった。しかし評判がよく、熱心なスタッフや逗子市、社協、包括支援センター等の助力もあり、カフェの名称を『あつま~る』として月1回のペースで今も続けている。中でも印象的なのは認知症の本人とその妻が演じる紙芝居で、既に13回を数える。「月日が経つごとに症状が進む本人が、懸命に紙芝居をする姿を見るのは(私自身、スタッフやボランティアにとって)すごい学びだと思う。皆が応援すると本人はとても喜び、(妻から)本人の生きがいになっていると聞くと感動する」(長谷川さん)。案内チラシを自ら印刷するなど経費的には厳しいが、逗子に限らず多くの地域の人に『あつま~る』を知ってもらい、参加して欲しいと長谷川さんは語った。
(認知症の人と家族の会・水越)

オレンジパートナーリリース『新しい活動を目指す若年性認知症カフェ=こねくと』(令和5年5月号)

 2017年から若年性認知症の本人や家族への支援活動を行っている「そらとうみとたいようと」の会。そのプロジェクトリーダーを務める幸田裕介さん(みどりの丘・執行部部長)は、神奈川県オレンジチューターでオレンジパートナーのメンバーだ。これまでにカフェ、フットサル、卓球、サーフィン、マラソンなど様々な活動に取り組んできた。それがコロナ禍で中断。症状が早く進む若年性認知症の人に対しては、スピーディーな対応が必須と考えていた幸田さんは、2023年からコロナ感染症に注意した上で活動を再開。①厚木市の包括支援センターと連携した認知症勉強会の開催②清川やまびこマラソン(11月5日開催予定)への若年性認知症の本人や支援者の参加促進と、趣旨に賛同したランナーにオリジナルTシャツを無料配布し、着用して走ってもらう③認知症サポーター養成講座開催などを行う予定だ。

 今年になって障害グループホームの人たちと話し合う機会があった幸田さんは、「障害の分野の人たちは認知症について知らないことが多い。逆に私たちは、認知症は知っているが障害について詳しい知識はない。知識や経験を互いに共有したらより良いサービスが出来るのではないか」と思ったという。そこで認知症への拒否反応をなくし、正しい啓発と公正なサービスを目指すには、障害と介護の壁を取り払って共存する必要性を感じ、新たな試みを開始した。それが『若年性認知症カフェ=こねくと』だ。拠点としてオーバーバーズセキサテライトと名付けたビルで、認知症のグループホームをスタートさせた。10月までには認知症に限らず福祉に関するあらゆる相談に年中無休で応じるカフェ『こねくと』を、誰でも気軽に立ち寄れるよう1階に移し、グランドオープンする。オレンジパートナーメンバーに限らず、このプロジェクトに興味のある方、ボランティア活動を考えている方からの「連絡、問い合わせを歓迎します」と幸田さんは話している。
※この件の問い合わせ先
「そらとうみとたいようと」の会・プロジェクトリーダー 幸田裕介さん(080-7763-1232)

オレンジパートナーインタビュー『介護家族の想いとブログ』(令和5年4月号)

 認知症の介護は毎日毎日が新しい(出会い)。そこでとどまったり、迷ったり、悩んだりしてようやく解決したと思ったら新たな出来事が起こる。現実に向かい合うのが一番大事」そう話すのは2つの認知症支援団体(認知症の人と家族の会、若年性認知症家族会・彩星の会)で世話人をしているオレンジパートナーの三橋良博さん。妻が若年性認知症と診断された時、三橋さんは若年性認知症のことが全く分からなかった。そこで日記・メモ代わりにどんな経過で何をしたかを書こうと『若年性アルツハイマー介護日記』と名付けたブログを2005年から始めた。現在18年目に入り、書いた記事本数は1200を超えている。「ブログをやったから今の(私の)介護があるようなもの」と話す三橋さんは当初、周囲に理解されず孤独になって様々な感情が渦巻き、自分を理解してほしいと飾らない言葉で吐き出すように記事を書き続けた。やがて記事に共感し、コメント(アドバイス)を送ってくれる人たちが現れた。届く多くのコメントに支えられていると感じ、同時に勇気と元気を教わったという。コメントをくれる人たちの中に、現在所属する団体のメンバーがいた。誘われて会に入ったものの、三橋さんがつどいに参加するのは3、4年先になる。会のメンバーの前で自身の体験を話すのがとても恥ずかしく、行くことを迷いに迷っていたからだ。しかし「参加してみると、迎えてくれる人たちが本当に温かい。(私を)理解してくれる人がいる、一人ではないと勇気づけられた。それから自分がかなり変わった」と当時を振り返る。

 「オレンジパートナーの皆さんは何かをしようという意欲のある人たち。座学で習ったことは大事だが、認知症の本人や家族がどう思い、何を感じてどうしたいか。活動している現場に入ってそれを知って欲しい」「カフェやつどいは地域や団体によって個性がある。運営する人たちの話を聞き、やり方や方針を理解して参加して欲しい。中に入ってみると、認知症の本人は自分の意志を持ちそれを発信し、笑顔もあり元気。(行こうかどうか)迷っても入ること、一歩踏み出すことが大事だと思う」。それが個人経営の仕事を抱えながら団体の運営、つどいの企画、講演、研修会参加と多忙な日々を過ごしている三橋さんから、オレンジパートナーへ贈る言葉だ。「私は現役の介護家族。認知症の人たちやその家族と触れ合っていると、認知症は特別な病気ではなく白髪や顔のしわと同じ。共に生き、普段の生活の中にある。誰しも認知症になる可能性があるのだから、皆で一緒に支えながら歩んでいく手助けができればいいなと思っている」。三橋さんはこれからを見据えて柔らかい表情で話した。 (公益社団法人認知症の人と家族の会 神奈川県支部 水越)
※三橋良博さんのブログのURL http://suriburi.blog37.fc2.com/

ホームページをリニューアルいたしました。

2023年3月30日に、オレンジパートナーネットワークのホームページをリニューアルいたしました。