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更新日:2023年11月27日

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障害者雇用優良企業インタビュー(株式会社土屋製作)[No.31]

かながわ障害者雇用優良企業である株式会社土屋製作の障害者雇用取り組み事例です。

障害者雇用のきっかけ・目的

  • 昭和60年頃、藤沢養護学校の訪問をきっかけとして障害者雇用を始めた。
  • 当初の目的は少しでも社会福祉のお役に立ちたいと考えたことと、単純作業をする人材がなかなか定着しないという問題の解消だった。2週間の実習を2回行った後、5名程度を採用した。
  • 現在は藤沢養護学校、湘南地域就労援助センター、能力開発センター、神奈川障害者職業能力開発校など幅広く障害者雇用を推進しており、30名の障害者(主に知的障害者)が働いている。
  • 現在では障害者雇用の目的は、製造現場の重要な戦力を得ることであり、当初の目的から変化している。一般作業者と比較しても障害者の定着率は高く、勤続25年を超える社員もいる。作業に慣れてくると、彼らは健常者以上の力を発揮し、そのポジションではプロ意識を持ち、作業態度は自信に満ちている。

障害者雇用に対する取組み

  • 毎朝一般社員と一緒に製造ラインごと生活指導を含めた朝礼を行い、障害者の状態など確認するようにしている。
  • 基本的には製造ラインの長が障害者の指導を行うが、現在では長く勤務している障害者が多くいるので、先輩の障害者が後輩の障害者を指導するようになってきている。
  • 以前は年に1回保護者会を開催し情報提供や懇親を図る場を持つようにしていた。一昨年頃から3ヶ月に一度会報を発行する方法に切り替え、保護者の方に障害者の仕事の様子などを写真付きで具体的に紹介出来るようになり、より細やかな情報提供ができるようになった。
  • 専用冶具をなるべく廃止して、障害者でも覚えやすい汎用冶具を開発し使うようにしている。
  • 職場実習の受入を積極的に行っている。

障害者が従事している業務について

当社は自動車部品の表面処理を中心に金属部品の溶接、組立などを手掛けている会社です。自動車部品の塗装は主にカチオン電着塗装という技術を使って行いますが、この塗装には部品を塗装用ハンガーに掛ける工程や外す工程があり、障害者はそのラインに入って作業を行っています。

現在では知的障害者を中心に30名の障害者が働いており、当社の重要な戦力としてみなさん働かれています。

動くラインでの掛け作業静止ラインでの掛け作業

動くラインでの掛け作業 静止ラインでの掛け作業

平岡取締役部長に聞く!

職場定着率が高いということですが、何か特別なことをされましたか?

先ず最初に断っておきますが、当社では障害者雇用を始めるに当たって何か事前に準備をしていた訳ではありません。手探りの中から色々と学んできたというのが本当のところです。それに昭和60年頃ですから、世間的にもまだ障害者の雇用が今ほど騒がれてはいませんでした。そんな中、藤沢養護学校の先生が工場を見学にこられて、作業に向いていそうな障害者を10名くらい紹介してくれました。2回の実習を行った後、5名程度を採用してスタートしたのですが、今から考えてみると最初から複数名の採用をしたことは正解だったと思います。1人だけだと会話が出来ない人は孤立してしまいますし、そうなると様々なストレスを抱えてしまいます。複数名を採用すれば職場に会話が生まれて、そういった心のうちに溜め込むようなことも解消されます。

あとは仕事への適性ですが、部品ハンガーへの掛け作業などは、普通の人がやると長時間同じ作業の繰り返しですから、飽きてしまったり直ぐに疲れてしまったりしてしまいます。実際最初の頃は健常者が行っていたのですが、なかなか続かずに社員の出入りが激しかったようです。知的障害者は教えるまでには時間がかかりましたが、一度覚えてしまうと忘れませんし時間がかかった分だけ仕事をちゃんとやってくれました。そして何よりも粘り強かったですね。

当社が仕事に求めていた適性に上手く知的障害者の人たちがはまったことが、長続きした要因だと思います。

初めて職場に何人もの障害者がやってきた時、社員はどのような反応だったのでしょう?

ずいぶんと昔の話になりますので細かいところまではもうはっきりとしないのですが、ハンガーにちゃんと部品を掛けさえしていれば仕事として成立するものでしたから、それがちゃんと出来ている限り周囲からの反対や反発はそれ程上がらなかったと記憶しています。

今では知的障害者を多数雇用していますから、これから入社しようという人に対しては新卒でも中途でも面接の際にちゃんとそのことを説明するようにしていますし、実際に職場を見てもらうようにしています。その上で納得してくれた人を採用しています。

ただこれから新たに障害者雇用を始めようとする会社では、一般の社員に対してよく説明して協力をもらわないと上手くいかないのではないかとも思います。当社は仕事の性質上たまたま上手くいきましたが、やはり一般的には事前に勉強会を行うなどして社内のコンセンサスを得ておいた方が障害者も働きやすいでしょうし、社員も障害者に協力しようと仕事を教えたりするようになると思うからです。

30名もの障害者を雇用されていて能力評価はどのようにされているのでしょうか?

部品ハンガーへの掛け作業をベースに毎年行っています。(健常者とほとんど変わらないような)障害者の中で一番レベルの高い人の作業量を基準にして比較する方法で評価しています。毎年ちゃんと行わないと障害者の能力が落ちてきたかどうかが精査できなくなってしまいます。

これは私の実感なのですが、知的障害者の多くは健常の人よりも能力や体力の衰えが早いように思います。人によっては40代くらいからボーっとしてしまったり手先が利かなくなってきたりします。それに本人は気づきませんし自分から「仕事が出来なくなった」とは絶対に言ってきませんので、企業側が気づいて本人に能力が落ちてきたことをちゃんと説明しなくてはなりません。そして出来る仕事を探して異動させ、60歳の定年まで働けるように工夫をします。 

普通、能力評価はそれを社員の賃金にどう反映させるかということが大きな問題ですが、障害者の場合はお金よりもむしろ雇用をどう確保してやるかの方が重要になります。障害者はお金のために働いているのではないように感じています。ですから本人が少しでも長く働けるように能力評価をしていますが、そこまでしても実際は親が亡くなるなど生活環境が変わってしまうことで働けなくなり定年を前に辞めてしまうこともあります。

今「障害者はお金のために働いているのではない」とお話されましたが、ではいったい「何のために働かれている」と思われますか?

(知的)障害者には生活のリズムを安定させるために働いているところがあると思います。生活のリズムの中に仕事を取り入れているんですね。

例えば会社としては繁忙期には残業をお願いしたいことがあります。けれども知的障害者に「今日は仕事が多いから残業して欲しい」とお願いしてもまず無理です。健常の人であれば「大変そうだし残業代も出るし」と考え残業してくれますが、知的障害者にとってはそれが全く無く「17時からは○○する」という自分の生活のリズムを優先させます。もしも残業をお願いするのなら、時間をかけてそういったリズムにしていかなければいけません。またそのリズムをいたずらに乱してしまうとかえって本人の仕事に悪影響を及ぼしてしまう危険もあります。生活のリズムへのこだわりは彼らにとっては健康管理の一つでもあり、きっとお金以上に大切なものなのでしょう。

平岡克一 取締役部長

(平岡 克一 取締役部長)

訪問を終えて

「彼らは部品をハンガーに掛けきれないと、動いているラインでもどこまでも追いかけていって掛けようとしてしまう。正確にやろうとするのはいいけれど、反面危ないところもあるんです。」と工場を案内してくれる際に平岡部長が話してくださいました。

働いている姿を撮影しようとカメラを構えていると、みなさん気になるのか作業を中断してこちらに微笑んでくれます。「おじゃましてすみません。作業を続けてください。」とお願いしても、フラッシュがたかれるとやはりまた止まってしまいます。

ものすごく素直に反応してしまう障害者の姿は平岡部長のお話に真実味を与えてくれました。

(平成25年11月20日取材)

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