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初期公開日:2024年1月10日更新日:2024年1月17日

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新かながわグランドデザイン(仮称)基本構想 素案

新たな総合計画(新かながわグランドデザイン(仮称))基本構想の素案

新かながわグランドデザイン(仮称)基本構想 素案

(注釈)ウェブアクセシビリティの向上のため、一部の記載をPDF版から修正しています。

策定に当たって

第1章 基本目標

第2章 政策の基本方向

第3章 基本構想の見直し

神奈川をとりまく社会環境

新かながわグランドデザイン(仮称)素案 基本構想(PDF:3,280KB)

策定に当たって

1 策定の主旨

県では、県政運営の総合的・基本的指針を示す総合計画として、2012(平成24)年に「かながわグランドデザイン基本構想」を策定し、神奈川の人口が減少に転じていることが予測される2025(令和7)年を見据え、基本理念である「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けて、超高齢社会や将来到来する人口減少社会をはじめとする様々な課題への対応を着実に進めてきました。

そうした中、今日では、神奈川においても明らかに人口減少局面に入り、超高齢社会や本格的な人口減少社会など予測していた社会が現実のものとして到来しています。さらに、世界中に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症の感染拡大や国際情勢の不安定化など、予測し得なかった事態にも直面し、神奈川をとりまく社会環境は大きく変化しています。

今後、2040(令和22)年頃には団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となり、神奈川の高齢者数と高齢化率はともにピークを迎え、さらには神奈川の総人口は900万人を下回り、これまで見据えてきた課題がより一層鮮明化していくことが予測されます。

未来の姿をつぶさに見通すことは難しくなっていますが、想定し得ない事態が生じた場合でも、その影響を最小限に抑えることが求められます。例えば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下では、経済的困窮や社会的孤立などに陥るリスクが急速に顕在化し、より深刻な課題として再認識されました。将来の不確実性が高まる中、これらのような社会に潜在する課題をあらかじめ浮き彫りにしていくことが重要です。そのためにも、できる限り将来の展望や課題を明らかにし、長期的なビジョンを県民と共有する必要があります。

こうしたことから、これまで掲げてきた「いのち輝くマグネット神奈川」の理念を継承し、2025(令和7)年よりもさらに先を見据えて「かながわグランドデザイン基本構想」を見直し、「新かながわグランドデザイン(仮称)基本構想」としてとりまとめました。

2 計画の位置付け

本計画は、神奈川県自治基本条例第20条に規定する「総合計画」として、県政運営の総合的・基本的指針を示すものです。

3 計画の構成

第1章 基本目標
1 目標年次

2040(令和22)年

2 基本理念

「いのち輝くマグネット神奈川」を実現する

3 神奈川の将来像

(1)誰もが安心してくらせるやさしい 神奈川

(2)誰もが自らの力を発揮して活躍できる神奈川

(3)変化に対応し 持続的に発展する神奈川

第2章 政策の基本方向
1 2040年に向けた政策の基本方向

(1)将来に希望の持てる社会をつくります

(2)国内外から選ばれ 持続的に発展する都市をつくります

(3)地球規模の課題に対して役割を果たします

(4)誰もが自分らしく生きられる社会をつくります

(5)安全・安心で持続可能な社会をつくります

(6)多様な担い手との協働・連携を強化します

(7)市町村との協調・連携のもと 広域自治体の責任と役割を果たします

2 政策分野別の基本方向

(1)子ども・若者・教育

(2)健康・福祉

(3)産業・労働

(4)環境・エネルギー

(5)共生・県民生活

(6)危機管理・くらしの安心

(7)県土・まちづくり

3 地域づくりの基本方向

川崎・横浜地域圏

三浦半島地域圏

県央地域圏

湘南地域圏

県西地域圏

第3章 基本構想の見直し
神奈川をとりまく社会環境
Ⅰ 予測される将来の変化

1 人口・世帯

2 社会・経済

3 自然・環境

Ⅱ 不確実性とくらしの不安

1 くらしをとりまく問題

2 自然の脅威

4 神奈川の姿

(1)時代を切り拓いてきた神奈川

神奈川は、約920万の人口を擁し、開港以来、世界に開かれた日本の窓として、時代を先導するとともに、力強い経済力を持って、我が国の発展を支えてきた地域です。

世界に開かれ、首都圏を支えてきた個性豊かな神奈川

首都圏は、我が国の政治、経済、文化等の様々な活動の中心的役割を担うとともに、約4,500万人の人々が居住する生活の場となっており、我が国を牽引し、活力を創出する地域として発展してきました。

首都圏の中で自立性の高い都市拠点を有する神奈川は、業務、商業、居住など様々な機能を担っており、神奈川ならではの特色や強みを生かしながら、首都圏の活力創出において重要な役割を果たしてきました。

先進性を持って時代を切り拓いてきた神奈川

高度経済成長期において、京浜工業地帯をはじめとする県内工業の発展は、県民の所得と福祉の向上に大きく貢献する一方で、人口の過密化や環境汚染などの問題を引き起こしました。そうした中、神奈川は首都機能の一翼を担いながら、県民生活に大きな問題をもたらす急激な人口増加などに対応するため、人口の流入抑制や土地利用規制の強化など県土の適正利用の取組により、豊かな自然環境や生活環境の確保に努めてきました。

石油危機を契機として我が国が低成長期を迎えると、神奈川では重化学工業中心の産業構造から、頭脳型・高付加価値型への転換を進め、現在にもつながる産業基盤の基礎を築くなど、先駆けて時代の変化をとらえてきました。

また、環境問題が都市・生活型から地球温暖化など地球規模の問題にまで拡大する中で、地域からの地球環境保全への貢献を進めるとともに、一層複雑化・多様化する地域課題を解決するため、多様な主体による協働型社会づくりに取り組んできました。

そして、今日においては超高齢社会や人口減少社会を乗り越えるため、これまでの政策の蓄積を生かし、国家戦略特区をはじめとする特区制度などを活用した様々な先進的取組を展開しています。

このように、課題先進県である神奈川は、時代の節目ごとにめざすべき将来の姿を考え、常に新たな時代を切り拓く姿勢を大切にしてきました。

(2)神奈川の特色や強み

世界に開かれ、首都圏を支えてきた神奈川は、常に新しい時代を切り拓いてきた進取の精神をはじめ、多様で優れた魅力を有しています。これらは自然や歴史・文化、そして神奈川に働き、学び、くらし、活動する人々によって培われてきたものです。

(世界と日本各地をつなぐ交流拠点)
  • 国際交流拠点

国際貿易港である横浜港、川崎港、横須賀港を擁し、羽田空港とも多摩川スカイブリッジなどで結ばれている神奈川は、アジア、そして世界に開かれた国際交流拠点としての役割を果たしています。

  • 充実した交通ネットワーク

神奈川は首都圏の広域的な道路網や鉄道網をはじめ、都市間連携を円滑にする様々なネットワークが形成されており、県内における交流や首都圏、全国との交流も活発に行われています。さらに、首都圏と中部圏、関西圏を結ぶリニア中央新幹線が全線開通すると、人口7,000万人規模の広域経済圏が形成され、新駅が設置される神奈川のさらなる魅力やポテンシャルの向上につながることが期待されます。

(くらしと調和する多彩な自然・文化)
  • 多彩な自然環境

美しいなぎさを持つ相模湾、みどり豊かな丹沢大山などのやまなみ、県民の貴重な水源であるやまなみ五湖など多彩な自然がくらしと調和しています。

  • 歴史と文化

歴史の舞台となった武家政権誕生の地・鎌倉、北条氏の城下町・小田原、近代日本開国の地・横浜など各地域で育まれた様々な伝統や文化は、まちへの誇りやにぎわいを生み出す源泉となっています。

(集い活躍する多彩な人材)
  • 集まる人材

全国第2位となる約920万の人口を擁する神奈川は、首都東京と隣接し利便性が高いだけでなく、我が国の発展を牽引する産業・研究機関等の集積を背景に、多様な人材の活動拠点となっています。

  • 多彩な県民活動

保健・医療・福祉や子どもの健全育成、社会教育などの様々な分野で、先駆性や専門性、行動力といった特性を持つNPOやボランティアなどによる多彩な活動が展開され、多くの県民が意欲を持って参加し、相互のネットワークの形成が進んでいます。

  • 豊かな国際性

我が国の文明開化の発祥の地である神奈川は、これまでも、世界に開かれた窓として、世界と日本を結ぶ重要な役割を担い、様々な分野における交流を通じて、豊かな国際性を育んできました。現在、176の国と地域の外国籍県民約24万人が生活する国際性豊かな地域となっています。

(産業の集積がもたらす高い経済力)
  • 高い経済力

神奈川の県内総生産は、35兆2,054億円(2019年度)で、デンマークの国内総生産に匹敵し、一国の経済に肩を並べる高い経済力を有しています。

  • 基幹産業

京浜臨海部や県央・湘南地域などを中心に、自動車などの輸送用機械をはじめとする製造業の生産拠点が集積し、工業製造品出荷額等は、愛知県に次ぐ全国第2位となっています。また、学術・研究機関(民営)の数も全国第2位と、企業の研究機関や大学などが数多く立地しており、技術開発にかかわる高いポテンシャルを有しています。

5 基本構想の見直しの視点

神奈川をとりまく社会環境の変化を踏まえ、次のような視点を持って、2040(令和22)年の将来像に向けた政策の方向性を整理しました。

(くらしをとりまく不確実性への対応)

世界中に影響を与えた新型コロナウイルス感染症は、我が国では、海外から神奈川に寄港した大型客船内で多数の患者が発生したことで注目を集めました。グローバル化が進展した現代は、そうした新興感染症が感染拡大するリスクが高く、また国際情勢の影響を非常に受けやすい状況となっています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大や国際情勢の不安定化などの危機に直面したことで、危機管理上の課題や海外依存の経済をめぐる課題、社会的孤立などくらしをとりまく課題が浮き彫りとなりました。

このように、予測が難しく先の見えない時代にあって、あらかじめ社会に潜在する課題を浮き彫りにし、想定し得ない事態が生じた際の影響を最小限に抑えていくことが求められています。

(少子高齢化・人口減少への対応)

2008年に我が国が人口減少に転じて以降も、神奈川の総人口は一貫して増え続けてきましたが、2021年10月に統計開始以降初めて前年同月と比べて減少に転じてから同様の傾向が続いており、神奈川も明らかに人口減少局面に入りました。その主な要因は、出生者数の減少と高齢化に伴う死亡者数の増加です。今後、団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年頃に向けて、さらなる高齢化の進行が見込まれます。

このように、少子高齢化が進み、神奈川でも本格的な人口減少社会など予測していた社会が現実のものとして到来する中、くらしや経済活動を支えてきた社会のしくみや基盤の維持が困難となっていくため、子育て支援や人を呼び込む地域づくりなど人口減少を少しでも緩和するための取組とともに、将来の人口構造を踏まえた社会づくりが求められています。

(まちや産業をとりまく変化への対応)

産業の発展とともに、ヒト・モノ・カネ、そして情報の動きが速まる中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけとして、社会全体でデジタル化が加速しました。同時に価値観やライフスタイルの多様化も進み、空間のゆとりや豊かな自然の魅力が見直されるなど、神奈川にも様々な好機が訪れています。

また、近年、世界では異常気象が頻発し、我が国においても記録的な大雨が発生しており、2019年に発生した台風第15号及び第19号は県内各地に甚大な被害をもたらしました。こうした異常気象の要因として地球温暖化の影響が指摘される中、環境と経済が調和する持続可能な社会の実現が世界全体の課題となっています。

このように、デジタル化、グローバル化など時代が激しく変動し、脱炭素化への対応も迫られる中、将来を見据えた、まちの創造や社会のしくみの構築が求められています。

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第1章 基本目標

1 目標年次

2040(令和22)年

2 基本理念

「いのち輝くマグネット神奈川」を実現する

「いのち輝くマグネット神奈川」とは、県民が生きている喜びを実感し、生まれてよかった、長生きしてよかったと思えること、人やものを引きつけるマグネットの力を持ち、住んでみたい、何度も訪れてみたいと思う魅力にあふれているということです。

県民一人ひとりのいのちを輝かせるとともに、人やものを引きつける魅力を持った神奈川の実現をめざしていきます。

3 神奈川の将来像

基本理念のもとに、2040(令和22)年を展望し、誰もが安心してくらし、また誰もが自らの力を発揮して活躍し、そして持続的に発展する神奈川の実現を、県民や企業、NPO、大学、団体、行政など多様な強みを持つ主体の力を結集して共にめざします。

「くらし」の観点
(1)誰もが安心してくらせる やさしい神奈川

社会に潜在する様々な課題を、多彩な人材が集まる神奈川ならではの支え合いによって克服することで、県民の抱える不安を解消し、「誰もが安心してくらせる やさしい神奈川」の実現をめざします。

「ひと」の観点
(2)誰もが自らの力を発揮して活躍できる神奈川

誰もが元気で長生きでき、年齢や性別、障がいの状態、国籍などにかかわらず、誰もが自分らしく社会づくりにかかわることができる環境づくりを共に進め、「誰もが自らの力を発揮して活躍できる神奈川」の実現をめざします。

「まち・産業」の観点
(3)変化に対応し 持続的に発展する神奈川

神奈川の多彩な魅力に共感する県民の気持ちを大切にしながら、まちのビジョンや政策を共に創り、人を引きつける、魅力あるまちづくりを共に進め、様々な変化にも神奈川全体が柔軟に対応できる「変化に対応し 持続的に発展する神奈川」の実現をめざします。

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第2章 政策の基本方向

2040年に向けた政策の基本方向及び政策分野別の基本方向、地域づくりの基本方向を「政策の基本方向」としてとりまとめました。

1 2040年に向けた政策の基本方向

基本目標の実現に向けて、神奈川をとりまく社会環境を踏まえ、県の政策がめざすべき方向性をまとめました。

(1)将来に希望の持てる社会をつくります
(人口減少社会)

人口減少が進行する中、人口・経済の密度が低下し、地域の活力や都市機能が失われていくことが懸念されます。他方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけとして、豊かな自然環境や空間のゆとり、地域固有のコミュニティなどの魅力が見直されました。本格化する人口減少社会を乗り越えるためにも、そうした多様な魅力を生かした地域づくりが求められています。

そこで、それぞれの地域の特性を生かした様々な取組により、人の流れをつくることで、にぎわいを創出するとともに、多様な主体が地域に誇りを持って活躍し、豊かさを実感できるまちづくりをめざします。また、コミュニティの再生・活性化を支えるスマートモビリティ社会の実現に向けた取組など、都市づくりの観点から地域課題の解決をめざします。

(少子高齢社会)

少子高齢化の深刻化とともに、多数の現役世代で高齢者を支えてきた医療・介護サービスの持続可能性や、次世代の担い手である子ども・若者が抱える生きづらさや将来への不安など、様々な課題が顕在化しています。そうした中、将来にわたって子どもから高齢者まですべての世代の人たちが希望を持つことができる社会づくりが求められています。

そこで、若い世代が未来に希望を持ち、希望する人数の子どもを生み育てることができるよう、当事者である若い世代や子どもの目線を大切にしながら、経済的な負担や社会的な障壁の緩和をめざすとともに、神奈川の未来を担うすべての子どもたちが安心して快適に学び、自分らしく生きる力を高められる環境づくりをめざします。また、未病改善の取組によりいくつになっても元気に生き生きとくらせる社会をめざすとともに、医療・介護の将来の需要やテクノロジーなどの変化に対応し、誰もが住み慣れた地域で安心して生活し続けることができる持続可能な医療・介護の基盤の構築をめざします。

(人生100歳時代)

我が国では平均寿命が延び、本格的な人生100歳時代の到来が予想されます。定年退職後が「余生」と呼ばれた時代から超長寿の時代に向けて急速に社会が変遷し、価値観やライフスタイルの多様化が進む中、すべての世代の人たちが生涯にわたり生き生きとくらせる環境づくりが求められています。

そこで、誰もが文化芸術活動やスポーツに多様な形で親しみ、人々との交流を通じて心豊かにくらすことができるよう、様々な場や機会の創出をめざします。また、働き方やキャリア形成の多様化を後押しし、誰もが生涯の生活設計に多様な選択肢を持ち、生き生きと活躍できる社会づくりをめざします。

(2)国内外から選ばれ 持続的に発展する都市をつくります
(国際競争下での世界との結びつき)

世界ではヒト・モノ・カネなどをめぐる国際競争が激化しています。工業製品等の貿易をはじめ世界との結びつきによって成長してきた我が国の経済は、激しさを増す国際競争や世界的な産業構造の転換期を乗り越え、持続的に発展していくための変化が必要となっています。そのためにも、長年続いてきたデフレマインドを転換し、経済や社会の好循環を実現することが求められています。

そこで、県内経済の成長を牽引することが期待される産業の集積や新たなビジネスの創造を促進するため、国内外から選ばれる魅力的なビジネス環境の構築をめざすとともに、経済発展の屋台骨である中小企業が稼ぐ力を高め、持続的に成長できる環境づくりをめざします。また、安全・安心な食料等を安定的に生産する持続可能な農林水産業の実現をめざします。

(デジタル技術の進展による地域・社会の変化)

産業の発展とともに、ヒト・モノ・カネ、そして情報の動きが速まる中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけとして、社会全体でデジタル化が加速しました。くらしの様々な物理的・地理的な制約がなくなりつつある中、こうした機会をとらえ、従来の発想では解決できなかった様々な課題に対応することが求められています。

そこで、県民のくらしを豊かにする新しいライフスタイルなどを展望しながら、AIやロボットなど最先端のテクノロジーの開発・実用化による新たな価値の創造を後押しし、そうしたイノベーションにより、あらゆる分野の課題解決をめざします。また、誰もが安心してデジタル化の恩恵を受けることのできる社会の実現をめざします。

(3)地球規模の課題に対して役割を果たします
(地球環境問題)

近年、人間活動に起因する地球温暖化により、異常気象、生態系への影響、食料生産や健康など、人間への影響が既に現れており、今後、温暖化が進むと、さらに深刻な影響が及ぶと予測されています。こうした状況に歯止めを掛けるため、世界全体で温室効果ガス排出量を削減していくことが必要であり、我が国においても「2050(令和32)年までの脱炭素社会の実現」が国全体の目標として掲げられました。また、国は、気候変動と密接に関わりのある生物多様性の損失についても、あわせて解決していく必要があるとしています。加えて、長らく「大量生産・大量消費・大量廃棄」が前提とされてきた社会は、資源の制約や海洋汚染などに直面しています。こうした環境問題がいのちやくらしに影響することをあらゆる主体が意識し、世界全体の課題として対応することが求められています。

そこで、脱炭素社会及び循環型社会の実現、生物多様性の保全に向けて、各主体が課題を「自分事化」し、それぞれの役割を踏まえて取組を進められるよう、県が取組を後押しするとともに、県自らも率先実行に取り組むことで、環境と経済が調和する持続可能な社会の実現に貢献します。

(国際社会が共有する様々な課題)

2015(平成27)年に国連サミットが全会一致で採択したSDGsの普及やサステナビリティを理念とするESG投資の拡大への期待が高まっています。我が国の企業も短期的な利益の追求だけでなく、持続可能な成長に向けた社会的価値を生み出すことへの意欲が高まっており、そうした変化を社会へ大きく波及させることで、ウェルビーイングを実感できる豊かな社会を形成していくことが求められています。

そこで、国際社会が共有する様々な課題について、県として果たすべき役割や使命を実行します。また、県民や企業、NPO、大学、団体、行政などが共に行動できるように、社会課題の共有や社会的投融資の促進などに取り組み、一人ひとりが豊かさを感じられる持続可能な社会の実現に貢献します。

(4)誰もが自分らしく生きられる社会をつくります
(社会的孤立や生活への不安)

新興感染症の脅威や不安定な国際情勢など神奈川をとりまく環境は不確実性が高まっています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会的・経済的影響がすべての県民に及ぶ中、特に社会的に弱い立場の方々のくらしにより大きな影響が及ぶことが浮き彫りとなりました。こうした想定し得ない事態が生じた場合でも、県民のくらしへの影響を最小限に抑えるための備えが求められています。

そこで、多様な担い手と連携し、声を上げることが難しい子ども・若者や、困窮に陥りやすいひとり親家庭、困難な問題を抱える女性、孤独・孤立に悩む方など、生きづらさやくらしにくさを抱える人たちへの支援の輪を広げることで、「見えない困窮」にも早期に対応し、誰もが生まれ育った環境に左右されず、自分らしく生きられる社会づくりをめざします。

(ともに生きる社会)

人と人とが互いに理解し合い、互いの人権を尊重することが、価値観が多様化する現代社会を生きるうえで重要となっています。そうした中で、ジェンダー平等の実現など、性別(注釈)や国籍、障がいの状態などを理由とする偏見や差別・排除のない、誰もが多様な個性を発揮し、互いに尊重し合える社会の実現が求められています。

そこで、ともに生きる社会の実現をめざし、多様な個性を尊重することの重要性を広く浸透させるとともに、当事者目線に立って課題を共有しながら、地域や社会に潜在する様々な障壁を取り除き、希望する誰もが個性や可能性を生かして自分らしく社会参加し、お互いに支え合いながら活躍できる地域社会をつくります。

(注釈)「性別」には、男女に限らず、すべての性自認を含みます。

(5)安全・安心で持続可能な社会をつくります
(くらしをとりまくリスクや潜在的課題)

近年、首都直下地震や集中豪雨等の自然災害の発生、不安定な国際情勢を背景とする有事などの懸念に加え、新興感染症の感染拡大が将来にわたり何度も発生する可能性が指摘されています。そうした不確実性に耐え得る危機管理体制の構築とともに、日常的に起こり得るサイバー犯罪や特殊詐欺など社会環境の変化に伴う犯罪の発生等からいのちやくらしを守る基本的な安全・安心の確保が求められています。

そこで、県民一人ひとりに地域の災害リスクや避難時の行動、地域における助け合いについての理解の浸透を図るとともに、あらゆる災害に対応するための応急体制の強化や、被害に遭ったとしても早期に自立して生活再建できる災害に強い都市づくりをめざします。また、新興感染症の感染拡大に備え、平常時から市町村や関係団体等との連携体制の強化をめざします。さらに、犯罪や消費者トラブルに遭われた方に対する相談体制を強化するとともに、複雑・多様化する犯罪等にも対応し、地域も一体となった県民の安全・安心を守る体制づくりの一層の推進をめざします。

(都市基盤や情報ネットワークの強靭化)

神奈川をはじめ我が国においては、高度経済成長期を中心に整備されてきた都市基盤や建築物といった既存ストックの老朽化が進んでいます。また、災害に備えて、ヒトやモノ、情報の流れを支えるネットワークの整備・維持が重要となっています。限られた財源で、災害に備えた都市基盤の整備やインフラの健全性を保つための効率的な維持管理が求められています。

そこで、将来の人口構成や世帯構成を見据え、地域の実情に応じた市街地の再生や都市機能の集約化とともに、インフラの戦略的なメンテナンスによるトータルコストの中長期的な縮減・平準化をめざします。また、ヒト・モノ・情報をめぐる首都圏や国内他地域、国外とのネットワークの充実・強化を推進し、インフラの持続性と強靭化の両立をめざします。

(6)多様な担い手との協働・連携を強化します
(多様な主体の強みを生かした協働・連携)

人口減少と少子高齢化が進み、行政も含めて人材不足が懸念される一方で、社会課題は一層複雑化・多様化しています。こうしたことから、多様な主体がそれぞれの強みを生かした協働・連携を進めていくことが求められています。

そこで、社会課題の解決やサービスの担い手としてますます重要性が高まるNPOや企業、大学、団体等と、対等なパートナーとしてめざすべき方向性や問題意識を共有し、政策形成の早い段階から対話を重ねるなど、複雑化・多様化する様々な課題に共に向き合って協働・連携を推進することで、持続可能な神奈川を共に創り上げていきます。

(7)市町村との協調・連携のもと、広域自治体の責任と役割を果たします
(広域自治体としての県の役割)

超高齢社会や本格的な人口減少社会が到来する中、広域自治体である県は、市町村との役割分担のもと、県内全域で総合調整機能を発揮するとともに、市町村を補完する役割がますます求められています。特に、神奈川は、様々な規模の市町村が所在しているため、地域の実情を踏まえ、県全域での行政サービスを効率的・効果的に提供できるよう、今後も、県は市町村との柔軟な協調・連携のもと、広域自治体としての役割を果たしながら、持続可能な行政運営を実現していくことが求められています。

そこで、県は、多様化が進む行政サービスへのニーズを踏まえながら、国・県・市町村の役割分担について不断の見直しを図り、広域自治体として市町村との一層の連携や効果的な施策展開に取り組むことで、持続可能な行政サービスの実現をめざします。

(県域を越えた広域行政課題への対応)

神奈川と首都圏、全国をつなぐ交通ネットワークの充実などを見据えながら、人々の活動領域の変化に伴う広域的なニーズに応えることができるよう、県域を越えた連携・協力のもと、多様な広域行政課題に対応していくことが求められています。

そこで、47の都道府県で組織する全国知事会や、首都圏の都県及び指定都市で構成する九都県市首脳会議などを通じ、他の自治体と連携・協力した取組を一層進めることで、課題の解決をめざします。

2 政策分野別の基本方向

「2040年に向けた政策の基本方向」を踏まえ、政策分野ごとに県が取り組む政策の基本方向をまとめました。

(1)子ども・若者・教育
(結婚や出産・育児の希望がかなえられる社会づくり)
  • 結婚の希望をかなえるための支援に取り組むとともに、安心して子どもを生み育てることができるよう、デジタル技術も活用しながら、当事者の目線に立って、多様なニーズにあわせた支援やコミュニティづくりを推進し、社会全体で子ども・子育てを支えるしくみの構築を進めます。
  • ワーク・ライフ・バランスの考え方の普及啓発に取り組み、長時間労働などの働き方の見直し、育児休業の取得など仕事と子育ての両立に向けた取組を推進します。
(支援を必要とする子ども・家庭への対応)
  • 子どもの人生がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、子どものことを第一に考え、すべての子どもたちが夢や希望を持つことができる社会の構築をめざし、必要な環境整備や子ども・家庭への支援を行います。
  • 児童虐待防止のため、虐待の早期発見・早期対応に努めるとともに、再発防止のための親子関係の再構築など関係機関と連携しながら養育力不足の家庭への支援の強化を図ります。
  • すべての子どもが同じ場で共に学び共に育つことをめざす、という基本的な考え方のもと、インクルーシブ教育を推進し、一人ひとりの状況に応じて、子どもたちの社会的自立をめざした支援の強化を図ります。
(子ども・若者が心豊かに育ち自立できる社会づくり)
  • 未来を担う子どもたちが、思いやる力や自立して生き抜く力、社会に貢献する力を身に付け、積極的に社会とかかわり、心豊かに生きることができるよう、様々な人々との協働・連携を推進します。
  • 子どもの発達や成長に応じた職場体験学習などのキャリア教育(注釈)に取り組み、未来や自らの将来に夢や希望が持てる教育を推進するとともに、ボランティアなどの体験活動を通じ、豊かな人間性や社会性を育成します。また、子どもたちが、将来、県民や市民として適切に判断し、行動するための資質・能力の育成や社会意識と自覚を醸成する教育を行います。

(注釈)一人ひとりの社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育。

  • 子ども・若者の不登校やひきこもりなどへの対応についてNPOなどと連携を図りながら、子ども・若者やその保護者が相談しやすい体制を充実させるとともに、デジタル技術も活用しながら、いじめや不登校の未然防止などに取り組みます。
  • 地域ボランティア、学校、NPO、警察の連携をさらに充実し、子ども・若者に悪影響を及ぼす環境を改善するとともに、地域で成長を見守り、また安心できる居場所を確保するなど、子ども・若者が健全に育つ社会全体の協力体制の構築を図ります。
(希望に満ち信頼あふれる学校づくり)
  • 児童・生徒が学ぶ楽しさや分かる喜びを実感でき、未来を担う貴重な人材として大切に育まれるよう、地域や家庭と連携し、地域に開かれた学校づくりにより、希望に満ち信頼あふれる学校教育を進めます。
  • 個性豊かな次代の人づくりを担う、高い指導力と意欲を持つ教職員の確保・育成や学びを支える外部人材の確保を推進するとともに、安全で快適な教育環境づくりを進めます。
(時代や社会の変化に対応した学びの推進)
  • 外国語教育や国際理解教育、情報教育、環境教育、科学技術・産業教育などを推進し、グローバル化やデジタル化の加速など時代や社会の変化に対応できる人づくりを進めます。
  • 一人ひとりの学習意欲と多様なニーズに対応した生涯学習の機会の拡充を図ります。
(2)健康・福祉
(支え合う地域社会づくり)
  • 身近な地域で保健・医療・福祉サービスを安心して利用できるしくみづくりや、地域での支え合いの活動をつなぐ人づくりを進めます。また、保健・医療・福祉にかかわる多様な担い手と連携し、誰もが孤立せず、地域で支え合いながらともに生き、自立して自分らしくくらすことのできる地域社会づくりを支援します。
  • 保健・医療・福祉サービスに関する情報提供体制の確立、苦情に対応する体制の整備を図ります。また、成年後見制度や虐待防止など、地域でくらす高齢者や障がい者一人ひとりを支える権利擁護の取組を推進します。
  • ユニバーサルデザインの考え方に基づき、誰もが自らの意思で自由に移動し、社会に参加することができるまちづくりを進めます。
  • デジタル技術も活用しながら、食・運動・社会参加によるライフステージに応じた未病改善の取組で県民の行動変容などを促進するとともに、がんの早期発見、早期治療を進めるため、がん検診を促進します。また、自殺や精神疾患の予防のため、専門的な相談を行うなど、こころの健康づくりを推進し、孤立しない地域社会づくりを進めます。
  • ひきこもり当事者とその家族への相談支援を行うとともに、市町村やNPOと連携してひきこもり当事者のための居場所の確保などに取り組みます。また、働くことに悩みを抱える若年無業者等を支援するなど、自立に向けた取組を推進します。
(高齢者が安心して生き生きとくらせるしくみづくり)
  • 高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、適切な保健・医療・福祉サービスを受けられるしくみや体制づくりを推進します。
  • 介護予防の取組、生きがいづくり、高齢者向けの多様な住まいの普及など、高齢者が安心して生き生きとくらせるしくみづくりを推進するとともに、地域の見守り活動への支援など孤立化や孤独死を防ぐ取組を支援します。また、認知症高齢者やその家族などを支援するための取組を推進します。
(障がい者が地域で安心してくらせるしくみづくり)
  • 地域移行を含めた、障がい当事者の自立と社会参加を促進するため、障がいの種別等に応じ、障がい者のライフステージに沿って、住居、保健、医療、保育、教育、就労のほか、親元・家族からの自立等を含めた、様々な生活上の課題やニーズに対応する支援体制の整備に取り組みます。また、発達障害や高次脳機能障害など、制度のはざまにある障がいへの対応を図り、障がいの状態にかかわらず、安心して生活できるしくみづくりを進めます。
  • 市町村その他の関係機関と連携し、障がい者虐待の未然防止や早期発見、早期対応に取り組みます。
(地域における持続可能な保健・医療体制の整備)
  • 人口減少社会及び超高齢社会に対応するため、健康寿命の延伸などをめざして、最先端医療の推進と最新技術の追求のための支援強化などを進めます。
  • 高度ながん医療の提供と地域がん医療のネットワークづくりを進めるとともに、がんの苦痛を和らげる緩和ケアを地域で受けられる体制や、がん患者・家族への支援の充実を図ります。
  • 患者の視点に立った良質な医療を住み慣れた地域で提供するため、医療機関の機能分担や福祉施設などとの連携を進めるとともに、医療に関する情報提供の推進や総合的な救急医療体制の充実を図ります。
  • 特定の地域や特定診療科における医師の不足や偏在の解消など、地域の実情に応じた医療提供体制を確保します。
(保健・医療・福祉人材の育成・確保と働きやすい環境づくり)
  • 地域医療を支える看護職員をはじめとして、専門性と幅広い知識・技術を持つ保健・医療・福祉人材の育成を進めます。また、外国人材や、資格・技能を持ちながら就業していない潜在的人材の掘り起こし、介護ロボットの導入等の働きやすい環境の整備などにより、保健・医療・福祉人材の確保・定着を推進します。
(3)産業・労働
(産業競争力の強化)
  • ヘルスケア、ロボット、脱炭素、デジタルなど高い成長が期待される産業の発展に向けて、国内外からの企業誘致や県内企業の投資を促進します。また、海外との経済交流ネットワークを形成し、県内企業の海外展開を支援します。
  • 地域の中小企業と大企業・大学などの相互連携を活発化することにより、地域産業の活性化を図ります。また、中小企業の円滑な資金調達を支援するとともに、地域の団体等と連携した支援体制の強化などを通じて、中小企業のものづくりや経営課題の早期発見・改善を支援し、稼ぐ力の向上など経営基盤の強化を図ります。
  • 国家戦略特区をはじめとした特区制度なども活用し、成長産業の創出を促進する環境の整備を進め、起業やベンチャー企業等による新事業創出を支援します。また、産学公連携による新技術・新製品開発などへの支援を通じて、産業構造の転換に伴う企業の新規分野への参入を促進します。
  • 大学や研究所など県内の豊かな知的資源を生かし、企業等も集積する最先端のイノベーション拠点とも連携しながら、イノベーションを持続的に創出するとともに、科学技術を社会実装するための機能の構築や人材の育成など科学技術基盤の充実を図ります。
(魅力ある地域資源を生かした産業の振興)
  • 地域において、商店街などが中心となり多様な主体と連携して行う魅力創出、にぎわいづくりや地域商業を担う人材の育成などを支援するとともに、伝統的工芸品などの地域産業を支援します。
  • 神奈川が有する地域の観光資源を生かして、新たな観光の魅力創出に取り組み、デジタル技術も活用しながら、国内外から人を引きつけ、何度も訪れたくなる魅力ある地域づくりを進めるとともに、国内外への戦略的なプロモーションを行います。
(農林水産業の活性化)
  • 経営発展段階に応じた支援や企業の参入などにより、多様な担い手を育成・確保します。また、スマート技術を含めた新たな技術の開発・導入を推進し、生産性の向上を図ります。
  • 農林水産業の生産基盤を整備し、適正な維持管理を図ります。また、農地の集積の促進と有効活用を図ります。
  • 地産地消の推進や生産段階等における安全管理、県民や市場ニーズの変化に対応した流通・販売対策、6次産業化の支援などにより、新鮮で安全・安心な農林水産物の安定供給や県産木材の有効活用を図ります。
  • 農林水産業の持続的な発展のため、環境負荷低減技術の導入や未利用資源の有効活用など脱炭素化につながる環境に配慮した生産を推進します。また、農地・森林・海・川が有する多面的機能の発揮や里地里山の保全、神奈川の農林水産業への理解促進に取り組みます。
(多様な人材が活躍できる社会づくり)
  • 人材の多様な特性やニーズを踏まえた就業支援等を通じて、若年者や中高年齢者、女性、障がい者など多様な人材の活躍を支えます。また、外国人材が働きやすい環境づくりに取り組みます。
  • 生活と仕事の調和を図るワーク・ライフ・バランスを推進し、一人ひとりがライフスタイルやライフステージに応じて、働く場所や時間など多様で柔軟な働き方を選択して働き続けることができ、安心して生涯にわたる生活設計を描けるよう、労働環境の整備を図ります。
  • 働く意欲のあるすべての人々が、その能力を高め、新たなキャリア形成に挑戦できるよう、必要な職業能力開発の機会を提供し、企業や求職者のニーズに応じた産業人材育成を図ります。また、ものづくり技術・技能の承継を支援し、技術・技能が尊重される社会づくりに取り組みます。
(4)環境・エネルギー
(脱炭素社会の実現)
  • 事業者の省エネルギー対策の推進、脱炭素型ライフスタイルへの転換、人流・物流のゼロカーボン化など、デジタル技術も活用しながら、徹底した省エネルギー対策に取り組みます。
  • 太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を促進するとともに、企業や家庭における再生可能エネルギー由来電力の利用促進に取り組みます。
  • 森林整備や木材利用の促進、海洋における藻場の再生・整備など、吸収源対策の促進に取り組みます。
  • 温室効果ガスの大規模排出事業者でもある県が、県有施設の省エネルギー対策の徹底、県有施設への再生可能エネルギーの導入・利用などに率先して取り組みます。
  • 既に現れている地球温暖化の影響を回避・軽減するため、気候変動に適応する施策を推進します。
(循環型社会づくり)
  • 循環型社会を形成するため、廃棄物の排出抑制・再使用・再生利用(3R)や、化石資源由来のプラスチック等を再生可能な資源に置き換えるRenewableの取組を推進します。
  • 廃棄物の適正処理や不法投棄等の未然防止対策を推進するとともに、県土の環境美化と海洋プラスチック問題に対応するため、県民、市町村、事業者等と連携したクリーン活動を推進します。
(生活環境の保全)
  • 大気汚染の状況について情報提供を行うとともに、法令に基づく規制・指導、大気汚染防止対策の普及啓発などにより、大気環境の保全を図ります。
  • 事業所からの化学物質(注釈)の排出規制や、事業者による排出削減対策の促進に取り組むことで、化学物質による環境への影響の低減を図ります。また、事業者や県民の化学物質対策への理解を深めるための取組を推進します。

(注釈)トルエンやキシレンなどの「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」に基づく対象化学物質。

  • 水環境を保全するため、水質の汚濁状況を監視し、工場・事業場の規制・指導を実施します。また。地域の実情に応じて生活排水処理施設を整備するとともに、日常生活における汚濁負荷低減の取組を普及・啓発します。
(自然環境の保全・再生と活用)
  • 将来にわたり県民が必要とする良質な水を安定的に確保していくため、水源かん養など公益的機能の高い森林づくりや、生活排水対策など、県民や市町村などと連携し、水源環境の保全・再生に取り組みます。
  • 丹沢大山地域のブナの立ち枯れ、人工林の荒廃、希少動植物の減少など自然環境の劣化への対応を図るため、県民や市町村と協働・連携して自然再生に取り組みます。
  • 都市のみどりについて、生物多様性の確保と良好な自然環境の保全・再生・創出と活用に向けて、地域制緑地(注釈)の保全、維持管理や都市公園の整備・管理などに取り組みます。

(注釈)緑地や良好な環境を保全するため、法律や条例により土地利用が制限された地域。

  • ニホンジカやニホンザルなどの野生鳥獣について、適正な個体群管理や生息環境の確保などにより、保護と被害への対応を図ります。また、生態系や農林水産業などに大きな影響を与える恐れのあるアライグマやクリハラリスなどの外来生物に係る対策の強化を図ります。
  • 多様な主体との連携により、海洋汚染や生態系への影響など環境問題への対策に取り組みます。
(5)共生・県民生活
(ともに生きる社会の実現)
  • 「ともに生きる社会かながわ憲章」や「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」の理念の普及啓発や障がいへの理解の促進、障がい及び障がい児・者に対する差別の解消に取り組みます。
  • 県民一人ひとりが多様な文化や民族の違いを理解し、認め合い、外国籍県民などが個性と能力を発揮できる安全・安心な環境を整備するなど、多文化共生の地域社会づくりを進めます。また、地域からの国際交流・協力を推進します。
  • 児童虐待やいじめ、配偶者などへの暴力、高齢者や障がい者への虐待など人権侵害となる問題の発生を防止し、人権尊重の理念を定着させるため、人権教育や人権啓発を推進します。
  • すべての人が個性と力を発揮できるジェンダー平等社会をめざし、固定的な役割分担意識を解消するなど、男女共同参画の取組を推進します。
  • 多様な担い手と連携し、声を上げることが難しい子ども・若者や、困窮に陥りやすいひとり親家庭、困難な問題を抱える女性、孤独・孤立に悩む方など、生きづらさやくらしにくさを抱える人たちを早期に切れ目ない相談・支援につなげます。
(多様な担い手が協働・連携する地域づくり)
  • 協働型社会の実現に向けて、県民や企業、NPO、大学、団体、行政など多様な主体と持続可能な関係を築き、各主体の強みを生かす協働・連携を推進します。また、企業の社会貢献活動の取組とも連携しながら、多様な主体による協働やネットワーク形成を促進します。
  • 県民やNPOのボランタリー活動を促進するとともに、地域課題の解決に取り組むNPOが自立的、安定的に活動できるよう支援します。また、地域の課題解決や活性化に取り組む人材を育成するため、講座の開催や学習情報の提供などを行い、地域活動への参画を支援します。
(誰もが文化芸術に親しむことができる環境づくり)
  • ゆとりとうるおいを実感できる、心豊かなくらしを実現できるよう、デジタル技術も活用しながら、誰もが文化芸術に親しむことができる機会を広げるとともに、文化芸術活動の支援や県内各地の伝統的な文化芸術の保存・活用などにより、文化芸術を通じたにぎわいの創出や文化芸術の振興に取り組みます。
(誰もが生涯を通じてスポーツを楽しむことができる環境づくり)
  • 誰もが生涯を通じて、気軽にスポーツを楽しみ、心身ともに健康で豊かにくらすことができるよう、デジタル技術も活用しながら、乳幼児から高齢者までのライフステージに応じたスポーツ活動の推進や、誰もがスポーツを「する」「観る」「支える」といった、多様な形で親しむことができる環境づくりなどに取り組みます。
(くらしと行政のデジタル化の推進)
  • 県民の安全・安心と利便性の向上を図るため、くらしと行政のデジタル化を進め、誰もがデジタルの恩恵を受けられる社会の実現に向けて取り組みます。
(県民との対話による開かれた県政の推進)
  • 情報公開、情報提供の充実を図るとともに、施策形成過程への県民参加や、県民との対話による県政を推進します。
(6)危機管理・くらしの安心
(大規模な災害や新興感染症への対応力の強化)
  • 大規模地震等による津波や、激甚化・頻発化する集中豪雨などの自然災害から、県民のいのちを守るため、市町村と連携し、ハード・ソフト両面からの防災・減災を図り、安全で安心なまちづくりを進めます。
  • 災害時における情報の収集・提供体制の強化や津波避難対策、火山対策、医療救護対策、災害時要配慮者対策、ライフラインの応急復旧対策などを進め、応急活動体制の充実を図ります。また、デジタル技術も活用しながら、災害リスクのさらなる見える化を進めるとともに、防災情報の共有や意識の高揚、自衛隊等と連携した訓練の充実などにより、地域が一体となり、かつ国や他の都道府県、市町村、関係団体などと連携した防災体制を確立し、大規模災害への対応力を強化します。
  • 武力攻撃や大規模テロなどの万一の事態に備えるための国民保護対策を推進するとともに、放射能被害などから県民のくらしの安全を守るための原子力災害対策に取り組みます。
  • 新興感染症の発生に備え、平常時から非常時を見据えた医療提供体制の構築を進めます。
(犯罪や事故のない安全な地域社会づくり)
  • 警察活動の高度化・合理化に資する先端技術の導入を進め、変化する社会情勢に即応し、警戒の空白をなくすため、警察力を総合的に強化するとともに、県民の防犯意識の向上、地域の自主防犯活動の拡大やネットワーク化などにより、犯罪のない安全で安心してくらせる地域社会づくりを進めます。
  • 地域の安全確保にとって必要な情報を提供するとともに、防犯への配慮が十分になされた住宅や道路、公園などの整備を促進します。
  • 子どもたちが犯罪に巻き込まれないよう、子どもを守る活動を強化するとともに、高齢者が被害に遭いやすい特殊詐欺やサイバー犯罪などの複雑多様化する犯罪に対応するため、犯罪の抑止と検挙を両輪にした取組を推進します。また、市町村や民間支援団体などと連携しながら、犯罪被害者等の相談や支援体制の充実を図るなど、総合的な取組を進めます。
  • 交通事故のない社会の実現に向け、交通安全に配慮した道路などの整備を進めるとともに、新たなモビリティの普及にも対応しながら、高齢運転者への支援や県民全体の運動として交通安全意識の高揚などに取り組みます。
(生活の安心の確保)
  • 生産者、事業者、消費者、行政がそれぞれの責務や役割を果たすとともに、お互いに情報や意見を交換する場の提供などを通じ、協働・連携して安全で安心な食の確保に努めます。
  • 複雑・多様化する消費者トラブルへの対応として、消費生活相談機能の充実に取り組みます。また、消費者トラブルの未然防止や悪質商法の被害拡大防止のため、消費者団体などと連携した情報提供や消費者教育を充実するとともに、悪質な事業者に対し、適切に行政指導・処分を行います。
  • サイバーセキュリティの確保に向けて、県自らが対策を講ずるとともに、県民や企業などに対して適切なセキュリティ対策の導入等について積極的に働きかけていきます。
(基地対策の推進)
  • 人口が密集する神奈川にあって、県民生活や地域のまちづくりに障害を与えている基地の整理・縮小・返還に向けた取組を進めます。
  • 厚木基地周辺における米軍機による深刻な騒音被害など基地を巡る動向を的確にとらえ、安全で安心してくらせる環境の確保を図る取組を進めます。
  • 基地に関係する自治体と連携し、基地負担の着実な軽減に取り組みます。
  • 災害時における米軍との相互応援など、基地との連携を推進します。
(7)県土・まちづくり
(次の世代に引き継げる持続可能な県土づくり)
  • 地域の個性や魅力を生かしながら、都市的な機能の集約化を進めるとともに、郊外部などの豊かな自然環境と調和した地域循環共生圏づくりの推進、省資源・省エネルギーの取組や再生可能エネルギー等の導入促進により、環境と共生する都市づくりを進めます。
  • 地域の特性を踏まえ、一層の「選択と集中」による効率的で効果的な都市基盤の整備や、これまで蓄積された都市基盤の有効活用、計画的な維持管理による施設の長寿命化など、地域活力を維持・形成する都市基盤の充実・強化を図ります。
  • 山・川・海の連続性をとらえたなぎさづくりや、水とみどりのネットワークの形成など、環境や防災に配慮したゆとりのある県土の形成を図ります。
  • 農地や森林について、地域の実情や特性に応じた適正な整備保全と有効活用により、良好な環境を確保します。
(総合的な交通ネットワークの形成)
  • 神奈川が引き続き世界との国際交流の拠点としての機能を発揮していくため、国際交流を支える交通ネットワークの強化を進めます。また、首都圏や全国との交流連携を強化するため、リニア中央新幹線の整備などを促進します。
  • 広域的な交通利便性の向上と交通混雑の抜本的な改善を図るため、県土構造の骨格となる自動車専用道路網の整備促進を図るとともに、これらと一体となってネットワーク機能を強化し、県内各地域間の交流と連携を促進する幹線道路網の整備を推進します。
  • 既存の交通ネットワークを生かした鉄道やバスなど公共交通の利便性の向上、スマートモビリティなどの新しい交通サービスの活用を図るなど、デジタル技術も活用しながら、誰もが安全・安心に自由に移動できる交通環境の充実を図ります。
  • デジタル技術をはじめとした新しい技術の活用により、渋滞、交通事故、環境悪化などの道路交通問題の解決に寄与する交通管制の高度化に取り組みます。
(快適で安全・安心な住まい・まちづくり)
  • 県民やNPOなど多様な担い手の参画により、神奈川が持つ豊かな自然や歴史・文化、景観など様々な地域資源の維持・再生などに取り組むとともに、みどり豊かで調和のとれた都市景観を実現します。
  • 生活基盤の充実を図るとともに、防災、福祉、環境などに配慮したまちづくりを推進します。
  • 多様化するライフスタイルも踏まえて、誰もが安全・安心で心豊かなくらしを実現する住まいと居住コミュニティづくりを推進するとともに、建築物の安全性の確保や空き家対策などに取り組みます。
(地域の特性を生かした地域づくり)
  • 地域の持つ自然環境や歴史、文化、産業、交通、広域的なつながりなどの特性を生かして、人を引きつける魅力ある地域づくりを進めるとともに、市町村が主体的に進めるまちづくりなどを支援します。
  • 東京との結びつきや神奈川の中の東西の交流とあわせて、南北を結ぶ軸を形成するなど、地域間の交流・連携を強めます。

3 地域づくりの基本方向

(1)基本的考え方

神奈川は、我が国の政治、経済、文化などの中枢的役割を担う首都圏にありながら、海、山、川、湖などの自然と歴史・文化に恵まれるなど、多彩な風土を持っています。

その中で、これまで神奈川は、業務機能やものづくりの面で首都機能の一翼を担うとともに、計画的な土地利用を図ることによって、良好な都市環境の保全に努めてきました。

一方で、人口減少や少子高齢化の加速等を背景として、低未利用地や空き家等の増加により、土地の管理水準や利用効率が低下し、県土の荒廃や地域社会の衰退を招く恐れが高まっています。さらに、自然災害の激甚化・頻発化、新興感染症の流行、産業構造の変化や国際化・情報化の進展、人々の価値観やライフスタイルの多様化など、社会環境は大きく変化しています。

こうした状況を踏まえ、人口減少社会における持続可能な社会の実現に向けて、県土の適正な利用と管理に取り組むとともに、市町村主体のまちづくりに配慮しながら、それぞれの地域の特性を生かした様々な取組により、個性や魅力にあふれた、活力ある地域づくりを推進します。そして、こうした地域の取組を他の地域政策圏に横展開することで、波及効果や相乗効果が生まれるよう、広域的なヒト・モノ・情報の交流・連携にも取り組みます。あわせて、自然災害に対する備えを一層強化します。

(2)地域政策圏

地域づくりに当たっては、水、みどり、自然の連続性や将来の交通基盤の整備状況、人々のライフスタイルの多様化や産業構造の変化を踏まえながら、地域の特性を生かすことが重要です。そこで、地域ごとの人口の動向や特性を踏まえ、個性や魅力にあふれた、活力ある地域づくりを進めるため、「川崎・横浜地域圏」、「三浦半島地域圏」、「県央地域圏」、「湘南地域圏」、「県西地域圏」の5つの地域政策圏を設定し、それぞれの地域政策圏のめざすべき方向性に向けて、様々な施策・事業を進めます。

また、施策・事業の推進に当たっては、隣接する地域政策圏との結びつきを踏まえ、地域間の連携について柔軟な対応を図っていきます。

川崎・横浜地域圏

(多摩川、鶴見川流域、多摩・三浦丘陵の一部を含んだ川崎・横浜の各市域)

川崎、横浜の各市域、及びその周辺地域

先端技術産業や数多くの研究機関が集積する川崎市域と、開港以来、海外から様々な文化を取り入れ新たな産業を生み出してきた横浜市域及びその周辺の地域からなる地域です。

(めざすべき方向性)

世界と、神奈川そして日本の交流・結節地域として、都市に残された貴重な自然環境との調和を図りながら、これまでの文化や産業の集積を生かし、経済の活性化や国際交流・文化交流をさらに充実させるとともに、世界とつながる文化や産業を発信することで、にぎわいや活力があふれ、国際色豊かで魅力あふれる地域づくりをめざします。

(川崎・横浜地域圏における政策展開の方向)
  • 広域的な道路交通網や国際港湾機能が充実し、羽田空港にも近く産業活動のポテンシャルが高い京浜臨海部においては、総合特区制度などを活用しながら、国際競争力を強化する拠点の形成などを図るとともに、この効果を圏域全体に波及させるため、総合的な交通ネットワークの形成を推進します。
  • 川崎市域では、首都圏に位置し東京と横浜という巨大消費地に接している地理的優位性を生かしながら、国内外から集積するライフサイエンス分野の企業や研究機関を生かした国際競争力の高い産業の創出・育成などを進めるとともに、環境に配慮したまちづくりや安全で快適な生活空間の形成に向けた取組を進めます。
  • 横浜市域では、歴史、文化芸術、観光・コンベンション資源を生かし、多くの人々が訪れ、交流の拠点となる都市づくりや、みどりあふれる快適な生活空間の形成などを進めるとともに、MICEの振興やインバウンド需要の取り込みにより、地域の産業の活性化などを図ります。
  • 残された貴重な自然環境との調和を図りつつ、多様な人々のニーズに応じた、より機能的な市街地を形成するとともに、切迫する大規模地震などの自然災害へ対応するため、地震や洪水、土砂災害などへの備えを強化します。
三浦半島地域圏

(多摩・三浦丘陵の一部で構成される三浦半島の地域)

横須賀、鎌倉、逗子、三浦の各市域、葉山町域、及びその周辺地域

三方を海に囲まれ、変化に富んだ海岸線を有し、多摩丘陵から続く、まとまったみどりや豊かな歴史と伝統に恵まれた地域です。

(めざすべき方向性)

貴重なみどりと三方に広がる海、豊かな歴史的文化遺産、全国有数の露地野菜産地、美しい景観など、三浦半島が持つ地域資源を保全しながら、これと調和・共生した都市的環境の形成により、経済と環境の好循環を生み出すことで、うるおいを持って快適にくらすことができ、首都圏や海外からも多くの人々をひきつける魅力と活力にあふれる地域づくりをめざします。

(三浦半島地域圏における政策展開の方向)
  • 自然環境や歴史的風土と調和する都市空間の形成を図りつつ、国営公園誘致や小網代の森などの大規模な緑地の保全やブルーカーボンを隔離・貯留する藻場の再生など環境保全を図ります。
  • 海の魅力と食の魅力や地域の歴史・文化などの観光資源を生かし、市町や事業者と連携して地域一体となった取組を推進することにより、交流人口を増加させ活力と魅力ある地域づくりを進めます。
  • 都心からのアクセスの良さと自然豊かな三浦半島ならではの多様な働き方が実現できる仕事スタイルの確立、就労機会の創出を進めるとともに、移住・定住の促進に取り組みます。
  • 交通利便性の向上や広域的な交流・連携の強化を図るための道路網の整備、地域特性を生かした農業・水産業の振興、企業立地や産業集積の促進を図ります。
  • 切迫する大規模地震などの自然災害へ対応するため、三浦半島断層群の地震や津波、土砂災害などへの備えを強化します。
県央地域圏

(丹沢大山のやまなみや相模湖、津久井湖、宮ヶ瀬湖などの湖、相模川の上中流域を一体としてとらえた地域)

相模原、厚木、大和、海老名、座間、綾瀬の各市域、愛川、清川の各町村域、及びその周辺地域

丹沢や相模川を中心とした森林・川・湖などの自然と活気ある都市とがバランスよく存在する地域です。

(めざすべき方向性)

豊かな自然を保全し、これを活用した地域の魅力づくりと活性化を進めるとともに、広域的な交通結節機能を踏まえた生活環境や産業基盤の整備を図り、自然と都市、産業、文化が調和し、うるおいと活力にあふれた地域づくりをめざします。

(県央地域圏における政策展開の方向)
  • 水源地域の森林や丹沢大山の自然環境を保全・再生する取組などを進めるとともに、地域と連携しながら宮ヶ瀬等の水の恵みを生かしたにぎわいの創出や、都市部に隣接するという地理的条件を生かした農林業の振興を図ります。
  • 総合特区制度などを活用しながら、ロボットなどの先端産業や環境・エネルギー関連産業など成長分野の産業集積を図るとともに、高い技術力を持つ地域の企業との交流や連携を促進します。
  • リニア中央新幹線の建設と県内駅設置の促進や優位性のある交通結節点の強化を図るとともに、地域間の交流を支える交通網の整備を進めます。また、南北に整備された広域的な交通ネットワークを生かした生活環境や産業基盤の整備を進めます。
  • 市町村と連携した観光の振興や、文化芸術の振興、住環境の充実などに取り組むことで、にぎわいのある住みやすい地域づくりを進め、定住人口の維持、交流人口の増加を図ります。
  • 切迫する大規模地震などの自然災害へ対応するため、地震、洪水などへの備えを強化するとともに、災害活動における拠点機能の強化を図ります。
湘南地域圏

(湘南海岸から丹沢に至る、相模川下流や境川、引地川、金目川の流域を一体として捉えた地域)

平塚、藤沢、茅ヶ崎、秦野、伊勢原の各市域、寒川、大磯、二宮の各町域、及びその周辺地域

湘南のなぎさや相模川、丹沢のやまなみなどの自然資源や相模湾沿岸に広がる旧別荘などの歴史・文化資源に恵まれた地域です。

(めざすべき方向性)

湘南のなぎさや丹沢大山のやまなみなどの豊かな自然環境や、湘南地域で育まれた貴重な地域資源の保全や活用を図るとともに、交通ネットワークの整備とあわせた都市機能の向上や、環境と共生したまちづくりを進め、人々をひきつけ、持続可能な活力にあふれた地域づくりをめざします。

(湘南地域圏における政策展開の方向)
  • 多くの人が訪れ、にぎわう湘南の“なぎさ”や丹沢大山など美しい自然環境、歴史・文化に恵まれた湘南地域の価値や魅力を生かして、定住人口の維持や交流人口の増加に取り組みます。
  • 山・川・海の連続性に着目して水源地域の森林や里地里山、農地、河川、海岸の保全・再生の取組を推進し、これらの豊かな自然や地域の様々な歴史・文化資源を活用した観光振興などを通じて、地域の個性と魅力を高めていきます。
  • 地域間の交流や広域的な連携を強化するため、交通ネットワークの整備を推進するとともに、環境との共生や新たな地域拠点となるまちづくりを進めます。
  • 総合特区制度などを活用しながら、産学公の交流や連携を促進し、新たな産業の創出・育成や地域産業の活性化を図るとともに、持続可能な地域をつくる人材育成にも取り組みながら、農林水産業の振興などに取り組みます。
  • 切迫する大規模地震などの自然災害へ対応するため、地震や津波、洪水などへの備えを強化します。
県西地域圏

(丹沢、箱根、酒匂川流域を一体としてとらえた地域)

小田原、南足柄の各市域、中井、大井、松田、山北、開成、箱根、真鶴、湯河原の各町域、及びその周辺

富士・箱根・伊豆に連なる豊かな自然を背景に、山・川・海・湖・温泉、歴史や文化などの多彩な地域資源に恵まれた地域です。

(めざすべき方向性)

豊かな自然、歴史・文化などの地域資源を生かし、未病の戦略的エリアとしての魅力を向上させるとともに、地域の特色を生かした様々な生産活動が営まれ、職・住・遊が一体となって豊かなくらしを実感できる、活力と魅力あふれる地域づくりをめざします。

(県西地域圏における政策展開の方向)
  • 未病の戦略的エリアとしての魅力を発信するとともに、豊かな自然環境を保全しつつ、歴史・文化、豊かな水などの地域資源を活用し、国内外から訪れる多くの人との交流を促進することで、世界的な観光地としての魅力向上に取り組みます。
  • 地域の特性に合った都市基盤や産業基盤の整備を進め、企業誘致を促進するとともに、地域に根ざした商工業や農林水産業の振興を図ります。
  • 市街地の再整備や、生活交通の確保に努めるなど、自然と調和した居住環境の整備を進めます。
  • 豊かな自然などに恵まれながら、都心からの交通利便性も高く、「住みながら働く」最適な地域であるという利点・魅力を生かして、移住・定住の促進を図ります。
  • 切迫する大規模地震などの自然災害へ対応するため、神奈川県西部地震や南海トラフ地震、津波、箱根山・富士山の火山災害などへの備えを強化します。

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第3章 基本構想の見直し

「基本構想」については、「実施計画」の改定時など、状況の変化に応じて総合的に点検を行うこととします。

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神奈川をとりまく社会環境

神奈川においても明らかに人口減少局面に入り、超高齢社会や本格的な人口減少社会など予測していた社会が現実のものとして到来しています。さらに、世界中に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症の感染拡大や国際情勢の不安定化など、予測し得なかった事態にも直面し、神奈川をとりまく社会環境は大きく変化しています。

そこで、神奈川の将来像を描くに当たって見通した、様々な時代の変化や社会環境を「予測される将来の変化」と「不確実性とくらしの不安」の観点でまとめました。

Ⅰ 予測される将来の変化

1 人口・世帯
(1)人口の状況
ア 神奈川の総人口

神奈川では、2014年に1958年の調査開始以降初めて死亡者数が出生者数を上回る自然減となり、その後も自然減が拡大しています。転入者数が転出者数を上回る社会増は今も続いていますが、2021年に自然減が社会増を上回ってから、その傾向が続いており、人口減少局面に入りました。

県では、2020年の国勢調査を踏まえ、高位、中位、低位の3つのケースを設定した将来人口推計を行いました。将来人口は、高位と低位の範囲内で推移していくと推計され、中位推計では、神奈川の総人口は2020年にピークを迎えており今後、減少が続くことが見込まれ、2035年には900万人となり、2040年には884万人となると見込まれます。

イ 地域の動向

人口動向を地域政策圏別に見ると、川崎・横浜地域圏では増加していますが、県央地域圏や湘南地域圏では概ね横ばいとなっており、三浦半島地域圏や、県西地域圏では人口減少が進んでいます。

県の将来人口推計(中位推計)では、川崎・横浜地域圏は2030年、県央地域圏は2022年、湘南地域圏は2020年に人口のピークを迎え、その後減少していくこと、三浦半島地域圏や県西地域圏では引き続き減少することが見込まれます。

(2)少子高齢化の状況
ア 少子化の進行

2022年の全国の出生数は77万747人、合計特殊出生率(注釈)は1.26、神奈川の出生数は5万6,497人、合計特殊出生率は1.17となり、いずれも過去最少となりました。

少子化の要因としては、非婚化や晩婚化の傾向、出生率の低下などが考えられます。神奈川の50歳時未婚率は、近年一貫して上昇傾向にあり、2020年に男性で30.07%、女性で17.28%となっています。

(注釈)15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの。1人の女性がその年齢別出生率で一生の間に産むとしたときの子どもの数に相当。

イ 高齢化の加速

神奈川の高齢化率(65歳以上人口の占める割合)は、2020年には25.6%でしたが、県の将来人口推計(中位推計)では、2040年には33.3%になることが見込まれます。

ウ 神奈川の人口ピラミッド

2020年の人口ピラミッドを見ると、70歳代前半の団塊の世代(注釈1)や40歳代後半の団塊ジュニア世代(注釈2)が多い一方で、それより若い世代は、出生数の減少により少なくなっています。

県の将来人口推計(中位推計)では、2040年には、団塊ジュニア世代が65歳以上になり、若い世代は少なくなるため、5歳階級別の人口で、最も多くなる年代は65~69歳となることが見込まれます。そのため、超高齢社会への十分な対応を図る必要があります。

(注釈1)1947年~1949年における出生の急増(第一次ベビーブーム)による世代

(注釈2)1971年~1974年における出生の急増(第二次ベビーブーム)による世代

(3)世帯の状況

神奈川の世帯数は、2015年には397万世帯となり、増加が続いています。県の将来世帯推計では、2030年頃に414万世帯となりピークを迎えると見込まれています。

家族類型別に見ると、生活上のリスクが懸念される単独世帯が増加しています。また、一人暮らしの高齢者の世帯は、2015年の40万世帯から2040年には70万世帯と1.75倍となるなど、大幅に増加することが見込まれます。

(4)人口減少や少子高齢化に伴う様々な課題
ア 地域コミュニティ

少子高齢化等の要因により、自治会・町内会等の地域コミュニティの衰退が懸念されています。地域におけるつながりが希薄化し、世帯が孤立すると、DV・虐待等の家庭問題の潜在化や、災害発生時の互助・共助機能の低下などにつながる可能性があります。

イ 人生100歳時代

神奈川の平均寿命は伸びる傾向が続いており、2020年に男性が82.04歳、女性は87.89歳となりました。また、国の推計では、2040年に65歳である全国の男性の約4割が90歳まで、女性の2割が100歳まで生存すると見込まれます。「人生100歳時代」の本格的な到来が予想される中、誰もが生きがいを持ち、幸福度の高いくらしができる環境が求められています。

ウ 都市のスポンジ化

今後到来する本格的な人口減少社会により、空き家や空き地が増加する「都市のスポンジ化」が進行していくことが想定されます。

公共交通においては、通勤通学者の減少や、運転手等の担い手不足により、さらなる減便等が見込まれ、公共交通の確保やサービス水準の維持が困難となることが懸念されます。

高度経済成長期を中心に整備されてきた都市基盤や建築物といった既存ストックの老朽化が進んでいます。人口密度が低下するほど社会資本を効率的に運用することは難しくなり、さらに高齢化の進行に伴い医療や介護に関する歳出の増加も見込まれることから、自治体の住民1人当たりの財政支出は一層増加することが予想されます。なお、自治体の行政運営においては、そうした歳出の増加や、職員数の減少が見込まれる中、財政面や人材面から行政サービスの質やインフラを維持していくことが難しくなっていくものと予想されます。

土地利用や水資源の動向

県土のあり方を検討する際に考慮する必要がある土地利用や水資源の状況は、次のとおりです。

土地利用の傾向

県内の土地利用状況(面積)は、森林が約4割と最も多く、続いて住宅地や工業用地等の宅地が約3割を占めており、農地は1割弱となっています。

土地利用の推移を見ると、農林業的及び自然的な土地利用については、森林は近年横ばいとなっているものの、農地は都市化の進展等により減少傾向となっています。一方、都市的な土地利用については、住宅地や道路は都市基盤の整備、社会経済活動の拡大等により増加傾向となっており、工業用地は2012年頃までは工場の移転等により減少していますが、その後は横ばいとなっています。

人口減少社会における土地利用の課題

我が国は本格的な人口減少社会を迎えており、神奈川も2021(令和3)年10月に統計開始以降初めて前年同月と比べて減少に転じてから同様の傾向が続いており、神奈川も明らかに人口減少局面に入りました。また、少子化や高齢化も急速に進んでおり、人口の地域的な偏在も生じています。

これらを背景として、市街地においては、所有者不明土地や空き家等の増加により、土地の利用効率の低下が懸念されるだけでなく、人口密度の低下により、土地の管理水準が低下するほか、行政、医療・介護、福祉、商業等の都市機能の維持が困難となる恐れがあります。また、農業の担い手減少や高齢化により、農地の管理水準の低下や荒廃農地の増加も懸念されます。

これらの課題は既に顕在化しはじめており、必要な対策を講じなければ、今後、一層状況が悪化し、県土の荒廃だけでなく、地域社会の衰退を招く恐れがあります。

こうした状況を踏まえ、人口減少社会においては、市町村主体のまちづくりに配慮しながら、地域活性化につながる土地利用の効率化や最適化を図るとともに、持続可能で自然と共生した県土の適正な利用と管理に取り組んでいく必要があります。

水資源の安定的な確保と効率的な利用

県内の上水道用水の需要量(1日最大取水量)は、近年、横ばいで推移していますが、今後、県内人口の減少等に伴い、減少傾向になると考えられます。

2023(令和5)年4月現在、上水道事業者(注釈)が保有している水源量は、日量約567万立方メートルとなっており、これは上水道用水の需要量の傾向を踏まえると、県民が安心して生活し、企業も安定した事業活動ができる状態に水資源が確保されているといえます。

今後も将来にわたり、県民に良質な水が供給できるよう、水源の環境を守るとともに、水道事業者間の多様な広域連携等を図ることにより、水資源の安定的な確保や効率的な利用が求められています。

(注釈)県及び県内17市町が上水道事業者として、一般家庭や企業等に水を供給している。

2 社会・経済
(1)差別や偏見のない共生社会
ア 障がい者

人と人とが互いに理解し合い、互いの人権を尊重することは、価値観が多様化する現代社会を生きるうえで重要となっています。

そうした中、2016年7月に起きた県立障害者支援施設での事件を契機に、県は2016年に「ともに生きる社会かながわ憲章」を、2023年に「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」を施行しました。2022年の県民ニーズ調査によると「いじめや差別がなく、人権が尊重されていること」を重要であると思う人の割合は84.9%となっており、県民の問題意識が高いことが伺えます。

イ 多文化共生

県内外国人数は、2012年度に161,155人(県民の56人に1人)でしたが、2022年度には239,301人(県民の39人に1人)となり、10年間で大きく増加しました。出身地の国・地域数は176と多様化が進んでおり、ベトナムが年々増加し、中国に次いで2番目となっています。また、県内の外国人労働者数は、令和5年6月に在留資格「特定技能2号」の対象分野を拡大する閣議決定がされたことなどから、今後、一層増加することが予想されます。

ウ ジェンダー平等

近年、結婚・出産後も仕事をする女性は増加していますが、男性よりも非正規雇用に転じることが多く、女性就業者の正規雇用の比率が25~34歳をピークに低下していく、いわゆるL字カーブが課題となっています。性別にかかわらず、育児や介護があっても仕事と家庭を両立しやすい環境づくりが求められており、長時間労働の是正や、テレワークの導入をはじめとする多様で柔軟な働き方の実現が重要となっています。

また、2022年の全国の男性の育児休業取得率は、17.13%で上昇傾向にありますが、女性の育児休業取得率の80.2%と比較すると依然として低い水準となっています。

(2)デジタル化の加速

近年、デジタル社会の実現に向けた取組が急速に進んでいます。5G通信の普及拡大は、大量のデータの高速処理などを可能とし、ドローンや自動運転、画像解析、AI等をはじめ、様々な技術の活用を加速させることが期待されます。

また、ブロックチェーン等の技術を活用してデータを分散管理するWeb3や、仮想空間でコミュニケーションをはじめ様々な活動・体験ができるメタバースは、新たな経済的・社会的価値の創出や、個人の活動領域の拡張など、社会に大きな変革をもたらす可能性があるとされています。

(3)国際競争の展開
ア 経済の結びつき

我が国の貿易額は、今後も高い経済成長が見込まれるアジアとの輸出入額が米国やEUを大きく上回っています。2021年にはアジアとの輸出入額が過去最高の約83兆円となるなど、経済的な強い結びつきがあります。神奈川においても、三大港(横浜港、川崎港、横須賀港)の輸出入額は、対アジアが大きな割合を占めています。

イ 訪日観光の状況

全国の訪日外国人旅行者数は、2020年以降、コロナ禍の影響により落ち込みましたが、それまで、ビザ要件の戦略的緩和や訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充、航空・鉄道・港湾等の交通ネットワークの充実などを背景に増加を続けてきました。今後、人口減少により国内の観光需要の先細りも懸念される中、インバウンド消費の拡大に期待が寄せられています。

(4)産業をとりまく変化
ア 市場をめぐる課題

1980年代から2000年代にかけて、市場や効率性を重視した「新自由主義」と呼ばれる考え方が台頭し、企業のグローバル化が進展する中、世界経済が大きく成長する一方で、経済的格差の拡大や過度な海外依存による経済安全保障リスクの増大などの弊害が生じたことが指摘されています。

そうした市場原理から生じる弊害を乗り越えるため、国は官民が連携して「成長」と「分配」の好循環の実現をめざす「新しい資本主義」を掲げ(注釈)、賃金引上げをはじめとする「人への分配と投資」や、「科学技術・イノベーションへの重点的投資」などの方向性を示しました。

(注釈)「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」(2022(令和4)年6月7日)

イ 産業構造の転換

近年、世界では急速に加速するデジタル化やサステナビリティなどへの対応の重要性が増しており、産業構造の大きな転換が見込まれています。そうした中、我が国の製造業の事業所数は長期的に減少傾向となっており、神奈川においても2016年から2020年までに495事業所の減少となりました。

ウ 働き手の減少

神奈川の労働力人口は、女性の労働力人口の増加等により増加傾向が続いてきましたが、2020年以降は横ばいとなっています。15~64歳人口が長期的に減少していくことが見込まれる中、産業における労働力不足の深刻化が懸念されています。

(5)県民生活や経済活動を支える交通インフラ

県内では新東名高速道路等の開通が予定されており、県内の交通利便性はさらに向上していくものとみられます。

また、現在整備が進められているリニア中央新幹線が開業すれば、県内にも新駅が設置される予定です。開業すれば東京・名古屋間が40分、東京・大阪間が67分で結ばれ、東京、名古屋、大阪の三大都市圏が一体化します。域内のGDP約320兆円、人口約7,000万人の、世界を先導する巨大経済圏が形成されることが期待されています。

(6)エネルギーにかかわる新技術

脱炭素社会の実現やエネルギー安全保障の観点から、エネルギー問題を本質的に解決する新たな技術の実用化が期待されています。

近年、屋根だけではなく壁にも設置できるペロブスカイト等の次世代型太陽電池や、火力発電においてCO2排出量を削減できる水素・アンモニアの混焼、都市ガスの脱炭素化に資するメタネーション等、エネルギーにかかわる様々な新技術の研究開発が進められています。

3 自然・環境
(1)地球温暖化をめぐる状況

世界では2050年のカーボンニュートラルをめざす動きが活発化しています。我が国でも地球温暖化対策推進法に「2050年までの脱炭素社会の実現」が明記されました。

県内における温室効果ガスの排出量は、2013年度までは増加傾向にありましたが、2014年度からは減少傾向となっています。

神奈川の森林面積をみると1993年度は97,347ヘクタールであったのに対し、2023年度には94,024ヘクタールとなり、30年間で3,323ヘクタール減少しました。

(2)生物多様性をめぐる状況

2022年の生物多様性条約COP15では、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標が合意されました。

近年我が国でも、里地里山の管理の担い手が不足し、資源が十分に活用されないことなどから、国内の生物多様性の損失が懸念されています。そうした中、国は、2023年に「生物多様性国家戦略2023-2030」を策定し、「『2050年までに、生物多様性が評価され、保全され、回復され、賢明に利用され、生態系サービスが維持され、健全な地球が維持され、全ての人々にとって不可欠な利益がもたらされる』自然と共生する社会」を実現することをビジョンとして掲げました。

(3)廃プラスチックをめぐる状況

我が国の廃プラスチックの総排出量は、2021年に824万トンとなっており、そのうち717万トン(87%)は有効利用されていますが、107万トン(13%)は有効利用されることなく埋立等されています。

また、海洋プラスチックごみは、海洋環境の悪化や海岸機能の低下などに影響を及ぼすことが懸念されており、2015年のG7エルマウ・サミット以降、世界全体の課題として共有されています。2019年のG20大阪サミットでは「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにまで削減する」という目標が共有され、2023年のG7気候・エネルギー・環境相会合ではこの目標が2040年に前倒しされています。

Ⅱ 不確実性とくらしの不安

1 くらしをとりまく問題
(1)国際情勢の不確実性

新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、ロシアによるウクライナ侵攻等の影響により、2021年以降は、原油価格が大きく上昇するとともに、日常生活に必要な電気・ガス等のエネルギーや食料品等の価格上昇が続きました。また、米中貿易摩擦や、各国の保護主義的な措置といった地政学的リスクも懸念されるなど、グローバル化の進展を背景に世界全体で不確実性が高まっています。

(2)くらしに潜在する不安
ア 新型コロナウイルス感染症の影響

2020年3月、世界保健機関(WHO)によりパンデミック(世界的大流行)が宣言された新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、医療提供体制の逼迫のみならず、学校の臨時休業や外出の自粛、飲食店等に対する営業時間短縮の要請等により、人の往来や企業活動の制約等にもつながり、医療や福祉、教育等多方面に影響が及びました。

2023年4月までに世界で感染が確認された人は7億6,367万人、死亡者数は691万人となりました。グローバル化が進展した現代では、パンデミックは将来にわたり何度も発生する可能性が指摘されており、その度に、特に社会的に弱い立場の方々のくらしに大きな影響が及ぶことが懸念されます。

イ 犯罪や事故の状況

犯罪の認知件数は、2013年以降減少傾向で推移していましたが、高齢者が被害に遭いやすい特殊詐欺の発生が高止まりしているほか、先端技術を悪用した犯罪が年々増加傾向にあるなど、サイバー空間における脅威も深刻化しており、社会情勢の変化に対応する対策が求められています。

また、交通事故は、発生件数、死者数ともに減少傾向にありますが、死者に占める高齢者の割合が高くなっています。

ウ 自殺者の状況

県内の自殺者数は、2009年以降減少傾向が続いていましたが、2020年には1,402人と若干増加し、2021年は1,369人となりました。これは、交通事故死者数の約9.6倍となります。2021年の自殺に至る主な原因・動機は、多いものから順に「健康問題」、「家庭問題」、「経済・生活問題」となっています。

エ 子どもの貧困の状況

我が国の「子どもの貧困率」は2021年に11.5%となっており、およそ9人に1人が貧困状態にあるとされています。特に、子どもがいる現役世代のうち、ひとり親世帯の貧困率が高い傾向となっています。

オ 困難を抱える子ども・若者

県内の公立学校のいじめの認知件数の推移は、2013年度に国がいじめの認知に関する考え方を詳細に示し、各学校が積極的に認知するようになったことも影響したことから、増加傾向となっています。近年は、インターネットやスマートフォンの普及等に伴い、第三者による把握が困難な、SNSを利用した「ネットいじめ」が発生するなど、いじめの事案の複雑化・潜在化が指摘されています。

また、ヤングケアラーやひきこもり、児童虐待など子どもの健全な育成に影響する家庭内の潜在的な問題への対応が求められています。

国の調査によると、日本の若者の悩みや心配ごとは、多いものから順に「お金のこと」、「自分の将来のこと」、「就職のこと」となっています。勉強や、家族、友達といった身近なことよりも、お金や自分の将来のことで悩んでおり、他国の若者と比べて、自分の将来について明るい希望を持っている人が少ない状況となっています。

カ 生活困難な高齢者

2022年12月における生活保護を受給している人の割合は、全国で1.62%、神奈川で1.66%となっています。そのうち約半数は65歳以上の高齢者になっています。世帯類型別の被保護世帯数でも高齢化の進行などを背景に、「高齢者世帯」が増加傾向にあります。

2 自然の脅威
(1)豪雨災害の激甚化・頻発化

近年、世界では異常気象が頻発し、我が国においても記録的な大雨が次々と発生しており、その要因として地球温暖化等による影響が指摘されています。台風についても、海水温が高くなるほど勢力がより強くなると考えられており、2019年に発生した台風第15号及び第19号は、県内各地に甚大な被害をもたらしました。

神奈川は、人口密度の高い都市部においても、起伏のある地形が多く、過去10年間(2013年~2022年)の土砂災害発生件数は全国で3番目の多さとなっています。

(2)大規模地震の切迫性

神奈川周辺では、首都直下地震、相模トラフ沿いの海溝型地震、南海トラフ地震等の大規模地震が想定されています。今後30年以内に発生する確率は、首都直下地震では70%、南海トラフ地震では70~80%とされています。

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