神奈川県水産技術センターコラムno.45

掲載日:2020年11月9日

2020年11月6日号

1 温暖化の影響?神奈川県の魚市場で増えつつある魚、消えつつある魚(栽培推進部 中村良成)

2 初期餌料としての珪藻(栽培推進部 菊池康司)

1 温暖化の影響?神奈川県の魚市場で増えつつある魚、消えつつある魚(栽培推進部 中村良成)

 今年は異常冷夏の再来を思わせるような長梅雨から一転して猛暑日の連続となり、非常にめり張りのきいた夏でした。一方、彼岸を過ぎたら最高気温が20℃に達しないような日が続きました。気候変化が極端になり、春や秋の風情が年々薄くなっていると感じずにはいられません。これも地球温暖化の影響でしょうか?
神奈川の海は、黒潮の影響で日々状況が変わるためか、気温変化のようにはっきりと温暖化の傾向を示しにくい面がありますが、魚市場に水揚げされる魚を通してみても温暖化を感じずにはいられません。
 その代表と思う魚の一つがカタボシイワシ(写真1)です。沖縄では「スルル」と呼ばれるなじみの魚で、一見するとニシンそっくりです。十年ほど前から県内の定置網に入るようになり、漁業者からも「ニシンでもマイワシでもない見慣れないイワシが獲れる」と問い合わせがあったりしましたが、今ではすっかり定着し「カタボシイワシ」という銘柄を作った漁港もあるほどなじみの魚となりました。
 ハタの仲間もめっきり増えました。中でも一番増えているのでは?と思うのがオオモンハタやアカハタです。オオモンハタは薄黄色の地に茶色い水玉模様のハタ(写真2)で、尾鰭の縁が白いのが特徴です(写真3)。アカハタ(写真4)は名前の通り鮮やかな赤いハタで、見てよし、食べてよし!小笠原で種苗生産が行われるような魚です。両種とも以前からたまに魚市場で見かけることはありましたが、年々増え、三崎魚市場では今や水揚げされない日のほうが少ないほどに定着しています。特にオオモンハタは選別後の投棄魚の籠の中の3~4cmの稚魚から50cm以上数kgの見るからに鍋や刺身でおいしそうな成魚まで、あらゆるサイズの魚をみかけ、相模湾で再生産しているのは明らかです。先日、熱海の防波堤で釣れた魚を同定してくれと友人からメールが来て、早速画像を確認したら、オオモンハタの稚魚でした。
 もう一種、今後話題になりそうなのがオオニベです(写真5)。大きいものは全長2m近くになる大きなイシモチの仲間で、宮崎県では種苗生産や養殖の対象魚となっているばかりか、砂浜からの投げ釣りで数十kgの巨大なオオニベが釣れるのですっかりブームになっているとか(数カ月前に放送されたNHKの番組で知りました)。本県では主に夏から秋にかけて定置網に入りますが、三崎魚市場で見ていると明らかに水揚げ量が年々増えているように感じます。まだ、稚魚や若魚を見かけたことはありませんが、オオモンハタのように相模湾で再生産をするようになるのは時間の問題ではないかとも考えられます(ひょっとしたらもう定着しているのかもしれません)。あと十年もしたら湘南海岸でも巨大なオオニベの投げ釣りがブームになるのでは?と思わずにはいられません。
 沖縄の高級魚であるフエフキダイの仲間(写真6:ハマフエフキ)も、三崎の魚市場では水揚時期が夏?秋の一時期だけから年々長期化する傾向にあり、サイズも大型化しています。
一方、めっきり見かけなくなったのがアイナメ、柴や安浦など東京湾側の魚市場では、冬になれば活魚槽の底一面がアイナメでびっしり埋め尽くされるほど水揚げされていたのに、今やほんの数尾見かけるのみです。はっきりした理由は分かりませんが、温暖化の影響ではないでしょうか。
 総じてみると、神奈川県の漁港では温暖化の影響で魚市場に水揚げされる魚の種類が年々増えているのは間違いないでしょう。漁業は、農業のように気候変動に対して作付種を変えるような能動的な取組みはできません、あくまでも獲れる魚を売るだけです。今回紹介した魚はみんな美味しい魚で、カタボシイワシ以外は高級魚ばかりです。県民の皆様にバラエティに富んだ美味しい地魚をもっと知っていただき、正当な評価をしていただくためにも(それが漁業者の収入に直結します)、積極的な情報発信が必要でしょう。ヒット商品三崎マグロ切符の次は三崎、いや、神奈川地魚切符です。 Go to eat Knagawawa local fish!

(写真1)カタボシイワシ

1-2

(写真2)オオモンハタ

1-3

(写真3)オオモンハタの尾

1-4

(写真4)アカハタ

1-5

(写真5)オオニベ

1-6

(写真6)ハマフエフキ

2 初期餌料としての珪藻(栽培推進部 菊池康司)

 現在、水産技術センターでは、サザエの種苗生産に大変苦労しています。当センターでは、殻高2cm程度に育てたサザエを、放流用の種苗として、漁業者に配布しています。以前は年間50万個から60万個程度を生産していましたが、ここ数年では10万個程度まで落ち込んでしまいました。
生産がうまくいっているときと、うまくいっていない今では何が違うのか、大きな疑問となっています。要因として、親として使用するサザエが、磯焼けが原因で、良い卵を産まないのか?温暖化で水温が変わったか?何らかの感染症ではないか?水質に問題があるのではないか?考えればきりがないほど出てきます。
 その中で気になったのが、ごく初期のサザエの餌環境でした。サザエは受精後は2~4日は浮遊生活をしていますが、その後、海底などに着底し、珪藻などの餌を食べ始めます。当センターでは、珪藻を付着させた波板に着底させ、その後数ミリ程度の大きさまで波板上で育てていきます。今まで、この時の餌となる珪藻の種類についてほとんど記録が残っていないのです。いろいろな研究資料を調べてみると、珪藻なら何でもよいというわけではなく、サザエや、似たような生活史を持つアワビでは、Navicular属、Cocconeis属やCylindrotheca属の珪藻が比較的適しているようで、Licmophora属などは適していないようでした。
 当センターの珪藻を、初心者ながら図鑑と首っ引きで観察すると、特に目立つのはLicmophora属でした。他にはAchnanthes属やPseudo-nitzschia属など様々な珪藻が観察されました。しかし、適しているといわれるNavicular属やCylindrotheca属が少し観察されるだけで、Cocconeis属の珪藻はほとんど観察されません。当センターで唯一残っていた記録では、Cocconeis属が優占していたというものがありました。想像するに当時のセンターでは期せずして、餌料として優良なCocconeis属が繁茂していたため、その後、記録をとるようなことはしなかったようです。初期餌料の不良がすべての原因とは言い切れませんが、一つの要因ではあると思います。
 今後は、ちゃんとした餌をやればこの問題は解決といいたいところですが、付着珪藻は配合飼料のように、売っていないので、波板上に自分で育てなければなりません。飼育環境を調整できる小規模での実験室ではかろうじて培養できるのですが、実際に使用するのは、屋外の飼育水槽です。飼育水、温度、光どれも簡単には調整できるものはありません。そのような中でどのようにすれば珪藻をコントロールできるか、他の要因も含め困難は続いていきます。
2-1

Navicular

2-2

Cylindrotheca

2-3

Cocconeis

 

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