神奈川県水産技術センターコラムno.42

掲載日:2020年8月5日

2020年8月7日号

1 自粛中のホトケドジョウを復元するためには(内水面試験場 本多聡)

2 あぶないピッチャー?(企画指導部 加藤充宏)

1 自粛中のホトケドジョウを復元するためには(内水面試験場 本多聡)

 初めまして、4月より神奈川県水産技術センター内水面試験場に配属されました、1年目の本多です。

 今回は、現在、種苗生産中のホトケドジョウと相模川で見かけた稚魚たちについてお話ししようと思います。私は小田原市で生まれ育ち、幼い頃から河川(主に下流・河口域)に出かけては、魚類や甲殻類などの水辺の生き物を捕まえて飼育するというマニアックな趣味を15年以上続けてきました。それにも関わらず、私は担当魚種であるホトケドジョウを野生下で見たことがありませんでした。
 それもそのはずで、ホトケドジョウは流れの緩やかな河川の湧水域に生息するドジョウの仲間であり、近年の都市開発に伴い、ホトケドジョウの好む環境が減少し、個体数を減らしている絶滅危惧種です。内水面試験場では、神奈川県内のホトケドジョウを生息地から緊急避難させ、種苗生産を行い遺伝子の保存に取り組んでおります。
 5月よりホトケドジョウの種苗生産に取り組んでいますが、親魚の体調管理、稚魚の餌の種類と量の調整、生まれた稚魚の大きさに差が出ないよう成長させるなど課題が多くあり、日々観察しながら飼育管理に努めております。初めての体験ばかりで失敗もありますが、無事にふ化し成長している稚魚を見ると嬉しくなります。
 そんな中、昼休みに職場の近くを流れる相模川を覗きに行くと、流れの緩やかな浅瀬に稚魚が何尾も泳いでいる姿を見かけました。よく観察すると、懸命に泳ぐ稚魚たちは、白黒のコントラストが強いシマドジョウ類の稚魚でした。ひげもホトケジョウの8本より2本少ない6本です。今までシマドジョウ類の採取と飼育の経験はありますが、2~3センチの稚魚を見たのは初めてで、思わず見入ってしまいました。ホトケドジョウの種苗生産では、親魚から稚魚まで丁寧に世話をする一方で、魚種は異なりますが稚魚の姿を見て、自然下でも毎年繁殖している事を考えると、生き物のたくましさを感じます。また、魚も飼育下では家畜化(家魚化?)して、本来の生態が変化してしまう危険があります。そこで、ホトケドジョウを鍛えてトレーニングをした後に自然へ帰す研究を計画していますので、新しい発見があれば、報告したいと思います。
 まだまだ自粛ムードは続きそうですが、散歩等で外へ出た際に身近な自然や生き物に目を向けてみると、思わぬ発見があるかもしれませんね。拙い文章ではありましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ホトケドジョウ

ホトケドジョウの稚魚

シマドジョウ

シマドジョウ類の稚魚

2 あぶないピッチャー?(企画指導部 加藤充宏)

 私は水産業普及指導員として、一昨年から貝毒関連の調査に携わっています。「貝毒」とは、アサリやカキ等の二枚貝が毒性のあるプランクトンを捕食することで内臓に毒が蓄積され、それを人が食べて中毒を起こすものです。貝毒による被害を未然に防ぐため、神奈川県では二枚貝可食部の毒性と貝毒原因プランクトンの出現状況を定期的に調査しています(くわしくは県水産課のホームページをご覧ください)。今回は、貝毒原因プランクトンの調査中に思ったことをお話しします。
 貝毒原因プランクトン調査では、県内各地で採水したサンプルを水産技術センターに持ち帰り、それを顕微鏡で検鏡して貝毒原因プランクトンの出現数・密度を確認しています。担当になった当初は四苦八苦しながら検鏡していましたが、そのうち次第にプランクトンの様々な姿に興味をもつようになってきました。
 この調査のターゲットとなる貝毒原因プランクトンにディノフィシス(Dinophysis)という渦鞭毛藻がいるのですが、それがまたなんとも奇妙な形をしています(図1)。最初は「ビールを注ぐピッチャーみたいだな」と思いましたが、私は植物を栽培するのが好きなので「ウツボカズラにもこんなのあったな」(図2)とも思ったりして、眺めているうちに少し愛着をおぼえてしまいました。しかし前述のとおり、こいつは貝毒の原因になる恐ろしい存在、その出現を喜ぶわけにはいきません(貝毒原因プランクトンといっても有毒化しないこともある上、毒化するにはある程度以上の密度が必要になります)。とはいえ顕微鏡を覗き続ける作業もなかなか疲れるので、こういったなんてことのない連想で気分を紛らわせるのも作業効率を上げるコツなのかな、と考えて一人で勝手に納得している毎日です。
ディノフィシス

図1 様々な形をしたディノフィシスの仲間

ウツボカズラ

図2 自宅で育てていたウツボカズラの一種


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