神奈川県水産技術センターコラムno.39

掲載日:2020年5月1日

2020年5月1日号

1 タナゴを追いかけて~水路に光る宝石~(栽培推進部 鈴木将平)

2 淀むことは忌むべきこと(栽培推進部 秋元清治)

1 タナゴを追いかけて~水路に光る宝石~(栽培推進部 鈴木将平)

 素掘りの水路をめっきり見かけなくなりましたね。
 かつては、日本の田園風景といえば素掘りの水路と広がった田畑そして雄大に広がる山々というのが定番だったと思いますが、そのような景色が見られる場所は全国でどれだけ残っているでしょうか。タナゴ類もまたそのような環境に古くから定着していた日本の淡水魚です。好適環境の減少により見かける機会の減ったタナゴ類ですが、探してみると思いのほか護岸水路で発見することが多いです。
 これまで全国各地津々浦々の水路でタナゴ類を追いかけてきましたが、素掘りの水路で捕まえたことはほとんどありません。つまりほとんどが護岸された水路での採集です。
 護岸水路といえば、3面コンクリート張りであり、生物はいない。というイメージを持たれる方も多いと思います。しかしながら、特に流れが緩やかな水路の曲がり角や升状になっている部分等では砂礫が堆積しており、生い茂る水草や平打ちする魚を確認できます。このようなちょっとした環境でもタナゴ類は生息できるようです。無論彼ら彼女らが好んでそこに住んでいるのかと聞かれると、そうではないのかなと個人的には感じます。以前はそこも素掘り水路のような好適地であったのではないでしょうか。変わりゆく環境に負けないように生活しているタナゴ類を見つけると、絶えず変化に振り回されている私たちも学ぶべきところは多いのかなと感じます。
 素掘り水路から護岸水路へと移り行く環境の中、様々な生き物が顔を出さなくなっています。しかしながら決していなくなっているわけではありません。ちょっとしたときに水路をのぞいてみてください。キラッと光る宝石達を見かけるかもしれません。

護岸水路に繁茂する水草

同所で出会ったヤリタナゴ

2 淀むことは忌むべきこと(栽培推進部 秋元清治)

  新型コロナウィルスは飛沫感染するといわれ、換気が悪く、人が密に集まる空間で感染が広がると報道されています。近年は日本の住宅事情もよくなり、隙間風が吹き込むような家は少なくなりましたが、病気を防ぐだけでなく、気持ちをリフレッシュするためにも時々は換気をしたいものです。
 なにごとにつけても淀むということはあまり良くないようで、海の中についてもこれは言えるようです。かつて東京湾には広大な干潟が広がっていましたが、戦後の沿岸域の開発によって約9割が消滅してしまいました(図1)。特に、神奈川県側の川崎市から横浜市の沿岸域は、ほとんどが埋め立てられ、現在は工場用地や港湾として利用されています。埋め立てにあたっては事前に環境の影響を評価し、できるだけ悪い影響が出ないような取り組みがされていますが、埋め立て地の形状によっては潮通しが悪くなってしまう場合があります。故事に「淀む水には芥(ゴミ)たまる」とあるように、そういった場所には外から新鮮な海水が供給されず、汚れがたまり、海底はヘドロに覆われてしまいます。また、魚介類が生存できないくらいに溶存酸素濃度が低下してしまう貧酸素水塊(溶存酸素量が2.5ml/l以下)が発生、停滞しやすく、そういった場所では生物の種類や量は極端に少なくなってしまいます。例えば、京浜運河や横浜港の底層は夏場になると貧酸素水塊に広く覆われ、移動が苦手な貝類(タイラギやトリガイ)やナマコなどは生き残るのが難しくなりますが(図2)、埋め立て地の間の水路など水の入れ替わりがある場所では、ナマコの生き残りが見られるなど、機動的に動けない生き物にとって水の入れ替わりは重要と言えます。一言に水の入れ替えと言っても陸上のように窓を開けて換気するほど簡単にはできませんが、生き物の分布とそこの環境を丁寧に見ていくことで、生物の生き残りを高めるためのヒントが得られればと考えています。

図1 東京湾埋め立て推移図 干潟・浅場の減少

202005-4

図2 貧酸素水塊発生海域で斃死したタイラギ、トリガイ(底びき漁獲物)


本文ここまで
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