神奈川県水産技術センターコラムno.30

掲載日:2019年8月2日

2019年8月2日号

1 芦ノ湖のワカサギは波打ち際で産卵する(内水面試験場 工藤孝浩)

2 フィールドワークについて(栽培推進部 角田直哉)

1 芦ノ湖のワカサギは波打ち際で産卵する(内水面試験場 工藤孝浩)

「それは水深50cmのことですか?」
「いいえ、ワカサギの卵は波打ち際から50cmまでの浅場にあります」
「???」
 これは2018年3月に開催された所内の研究発表会でのこと。当時城ヶ島で種苗生産に従事していた私と、内水面試験場のワカサギ担当者とのやり取りである。その翌月、私は内水面試験場に異動してワカサギ担当となった。
 着任早々に確かめたかったのは、芦ノ湖のワカサギは本当にそんな所で産卵するのか?ということ。時まさにワカサギの産卵期である。湖岸を歩き回って産着卵を探し、多くの卵を見つけた場所に張り込んで日没後の産卵行動を観察した。
 果たして、箱根の山並みが闇に沈むと、夜陰に紛れてワカサギの群れが静かに湖岸に現れた。翌朝そこを調べると、波打ち際に大量の卵を発見。まさに前任者が言うとおりであった。
 芦ノ湖は、約3,000年前の火山活動によってできた新しい湖で、元々ワカサギはいなかった。そこに大正年代以降、霞ヶ浦や北海道の湖から繰り返し受精卵を移植して定着させたものだ。本来ワカサギは汽水魚で、湖や海から流入河川の河口付近に遡上して砂礫に産卵する。流入河川がない湖では、湖岸でも産卵することが知られているが、湖岸での産卵についての詳細な研究は見当たらないようだ。
 芦ノ湖のワカサギは、釣りや漁業の対象としてはもちろん、放流されたマス類など大型魚の餌としても重要である。また、釣りや漁獲されるワカサギは、年によって大きく増減している。ここ数年、芦ノ湖には毎年3~5億粒の受精卵からふ化させた仔魚が放流されているが、これが適正な数なのかの科学的な裏づけはない。
 ワカサギの適正な放流数を明らかにするためには、自然産卵数を知ることが必要なのである。
 ワカサギの数は、湖内での自然産卵数と放流数の合計から、釣りを含めた漁獲と、大型魚による捕食を含む自然死亡数との差し引きで決まる。これらの中で、放流については正確な数が分かり、漁獲は推計が可能、自然死亡については既存の研究から引用可能なものがある。一方、自然産卵数については皆目見当がつかないのである。
 前任者は、決まった人数と時間で湖岸の砂礫を採り、卵の数を数えた。このやり方は、相対的に卵が多い場所や時期を明らかにすることはできるが、定量評価には結びつかない。そこで今年の3~4月には、湖岸に人工の産卵床を設置して、一定期間の産卵数を日々数える実験を行った。初めて取り組んだ実験は、なかなか想定どおりには進まなかった。まだ改善点は多いものの、適正な放流数を明らかにするため、自然産卵数の把握に向けてまずは一歩を踏み出したことをご報告する。

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芦ノ湖の流入河川に遡上したワカサギの産卵群。今年は渇水のためにすべての流入河川・水路が涸れ、湖岸産卵のみであった(2018年4月)

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湖岸の礫に産みつけられたワカサギの卵(2019年4月)

2 フィールドワークについて(栽培推進部 角田直哉)

 4月に入庁し、城ケ島の水産技術センターに配属されました、角田直哉です。
 現在は、マダイ・ヒラメ・トラフグの市場調査や、トラフグ関連調査を担当しております。業務では、県内の市場を早朝から回ったり、実際にトラフグの種苗放流を行ったり、トラフグの稚魚がいる砂浜で曳網による採集調査を行ったりと、フィールドワークがとても多いです。直接現場に赴き、自分の目で見て、触れる作業は、「生」の情報を知ることができる大変貴重な機会です。学生時代も魚類の研究を行っていたため、生き物に触れる機会はありましたが、海況によって毎日変わる市場の水揚げの調査や、トラフグの成長を追跡できる曳網調査では、常に変化する自然を相手にした「水産」であることを強く感じ、心躍ります。
 ただ、どんな調査を行うにしても、周囲の協力がなければ、実施できません。例えば、市場調査では漁師さんや市場関係者の皆様の協力があってこそ、初めて魚を測定することができます。放流や曳網調査でも同じです。そのため、この環境で調査を行えることに感謝しつつ、そこから得られる貴重なデータを県の水産業に還元できるよう、精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

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早朝の小田原魚市場

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トラフグ稚魚

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