神奈川県水産技術センターコラムno.27

掲載日:2019年5月10日

神奈川県水産技術センターコラム27号 2019年5月10日号

研究員コラム

1 ナマコの種苗生産(栽培推進部 菊池康司)

2 今年の相模湾の春シラス漁(企画資源部 舩木修)

1 ナマコの種苗生産(栽培推進部 菊池康司)

 皆さんナマコは食べますか?自分の回りには、ナマコがどんな姿の生き物か知っていても、頻繁に食べるという人はいませんが、現在の私の仕事の一つはナマコの種苗生産試験です。種苗生産とは、人工的にこども(この場合は稚ナマコです)を大量に育てて、自然界に放流し、資源を増やすためのこどもづくりの仕事です。
 日本人はあまりナマコを食べませんが、中華料理では高級食材で、中華街で干しナマコに700円/gの値段がついているのを見たことがあります。100gで70,000円と考えるととんでもない高級食材ですね。そうです、漁業者の人たちは、中国向け食材として、ナマコを漁獲しているのです。
 この仕事の担当になるまで、親の姿は知っていましたが、卵から孵化したばかりのこどもたちは、その姿は親からかけ離れており、どのように生まれ、成長するのか見当もつきませんでした。そんなナマコを紹介したいと思います。
 前任者から話を聞き、参考書を見ながら作業を始めました。初めに驚いたのは、成熟状況の確認方法です。その方法とは「ナマコに少し切れ目を入れて生殖巣を引っ張り出し、肉眼で確認した後は引っ張り出したものを押し込む。」です。親として利用するのですから、それなりに大切に扱うかと思ったのですが、なんて乱暴な方法なのでしょう。傷なんてつけたら死んでしまうのでは?と心配になりますが、問題ないようです。厄介なのは、あまり刺激を与えるとナマコはびっくりして内臓を出してしまうことです。こうなると今回は親として利用できません。「今回は」です。内臓を全部出してしまったら生きていけないと思うのですが、ナマコはしばらくすると新しい内臓ができるのだそうですからまた驚きです。
 親としての(放卵、放精の)準備ができているナマコを個別に水槽に入れ、温度や水質を変化させるなどの刺激を与えて待っていると、オスは白い精子を、メスはオレンジ色の卵を出します。これらを水槽で混ぜ受精させると発生が始まります。数十分で2分割(なんでこんなに離れているんだろう?今まで見てきた魚類では、2分割してもぴったりくっついているのが当たり前でした。)、数時間でポン・デ・〇〇〇(こんなの初めて見ました)、ヘルメット?卵型(嚢杯期といい、このような姿でも泳ぎだします)。アウリクラリア幼生(ウルトラ怪獣みたいです)へと変態します。この期間が比較的長く、2~3週間くらい微妙に変化しながら泳いでいます。次いでドリオラリア幼生(この期間は非常に短く写真に収めることができませんでした。おそらく、今回は数時間で変化してしまったと思われます。)その後、ペンタクチュラ幼生を経て稚ナマコになります(やっとナマコらしくなりました。)そして数か月育てて、海へ放流することができます。とにかく、今までの経験したこと(たいしてないですが)や習ったこととは違ったかなり風変わりなものを見ることができました。

011120

引っ張り出した卵巣・放精・二分割

 213031

 二分割2・四分割・ポンデ

 405060

 ヘルメット・嚢杯・怪獣

 627080

 さらに発達が進んだ怪獣・ペンタ・稚ナマコ

 90

 放流

2 今年の相模湾の春シラス漁(企画資源部 舩木修)

 3月11日、今年の相模湾のシラス漁が解禁となりました。昨年は相模湾内の水温が13℃台と低かったこともあり、解禁後、全域で漁獲がない状態が10日間ほど続きましたが、3月21日に発生した沖合系水の流入により、シラスが来遊し、ようやく漁が始まり、4月は広い範囲で漁期入りとなりました。
 今年は解禁当初から相模湾内の水温も14℃台で、シラスの滞留には悪くない環境だったこともあり、14日には一部漁場でややまとまった初漁がありました。
 予測担当の私もこれで一安心、相模湾全域で本格的な春シラス漁に突入か!?と思いきや、ここで問題発生!茅ヶ崎以西では連日安定した漁模様となっている一方で、藤沢以東の地域では殆ど漁がない状態となってしまいました。まさに冬場の天気配置ならぬ極端な西高東低な状況になっています。この状況は原稿を執筆している4月16日現在も続いています。
 要因の一つとしては、黒潮の大蛇行が挙げられます。大蛇行の影響で、相模湾内で反時計回りの流れが卓越する日が多く、結果的に沖合域から相模湾へ来遊したシラスの多くが、茅ヶ崎以西へと運ばれているのではと考えています。
 狭いようで広い相模湾。私としても全域のシラス漁業者の皆さんと景気の良い話をしたいところですが、藤沢以東の方とは「もう少し待ってみましょう」としか言えないもどかしさを抱えながらの浜回りになっています。
 このように、遊泳力の弱いシラスは、黒潮流路などの海況変動を受けやすく、今回のように相模湾全体でみればそこそこの漁模様であっても、エリアごとにみると明暗が大きく分かれるケースもあり、相模湾へのシラスの来遊メカニズムについて更なる研究が必要だと感じる今日この頃です。

本文ここまで
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