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更新日:2019年4月5日

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神奈川県水産技術センターコラムno.26

神奈川県水産技術センターコラム26号 2019年4月5日号

研究員コラム

1 ワカメに親しみを感じる理由?(企画資源部 加藤充宏)

2 空から藻場を調査しています(相模湾試験場 前川千尋)

1 ワカメに親しみを感じる理由?(企画資源部 加藤充宏)

  去年4月、私は城ヶ島にある水産技術センターに5年ぶりに戻り、三浦地区担当の水産業普及指導員となりました。普及指導の業務は2度目となりますが、以前と担当区が変わったため、新たに憶えなければいけないことも色々ありました。そのうちの一つがワカメ養殖の技術指導でした。
 ご存知の方も多いと思いますが、神奈川で生産されるワカメの大半は養殖によるものです。ワカメ養殖は、秋にワカメの幼葉が付いた種糸を等間隔に幹縄に付け、それを海上の養殖イカダに設置して育成し、冬から春にかけて大きく育った株を収穫します。また種糸を生産している漁業者も多く、春先から秋にかけて陸上水槽で種糸を管理している間は、普及指導員が定期的に水槽の水温や種糸の状態を確認し、結果を漁業者に伝えています。
 ワカメについては、この他にフリー配偶体技術を用いた試験も行っています。耳慣れない言葉ですが、これは受精前に雌雄別に分離したワカメの配偶体を増殖培養する技術で、異なる系統の交配試験等に用いることができます。なかなか細かい作業が多く手間もかかるのですが、磯焼けで減少しているカジメ等の増殖にも応用が利くことから、なんとか自分のものにすべく日々奮闘?しています。
以前はあまり海藻に興味のなかった私ですが、これらの業務で日々接しているうちにだんだん親しみを覚えるようになってきました。実験室で育てたフリー配偶体を顕微鏡で観察し、順調に育っているのが確認できると、思わずにやけてしまいます(気持ち悪い…ですか?)。
 しかしある日、親しみを感じる理由が他にもあることに気が付きました。私は趣味で植物を育てることが好きで、自宅には大小さまざまな植物の鉢が並んでいます。特に好きなのはシダの仲間なのですが、そのシダたちがワカメやカジメなどの海藻と似ているものが多いのです。シダと海藻は分類的にはまったく異なるグループですが、葉から胞子を放出するところなど生活史にも似たところがあります。そのことに気が付いてからは、シダの世話をするたび「これはワカメに似てるな」「こいつはカジメ?」「こっちはハバノリっぽい」などと想像を巡らせるようになりました。他愛のない話ですが、仕事がプライベートに良い影響を及ぼした稀有な例?として紹介いたしました。

ワカメ1カジメカジメ2

図1 ワカメ(左)とカジメ(中、右)

 シダ1シダ2シダ3

 図2 我が家のシダたち。海藻を連想させる?

2 空から藻場を調査しています(相模湾試験場 前川千尋)

 近年、磯でカジメ等の海藻がなくなる磯焼けと言われる現象が全国的に問題になっています。神奈川県でもここ10年ほどで磯焼けが進み、漁業者の方々は、海藻を食べるウニや魚の駆除に取り組んでいます。その効果的な方法を検討するため、藻場や磯焼けの状況を調査する必要性が高まっています。
 従来藻場を調査する方法は、潜水や船上からの調査が主体でしたが、潜水する技術や免許が必要であること、広範囲な調査をすることが労力的・費用的にも難しいという課題があります。そこで、相模湾試験場では、衛星画像やドローンで撮影した空撮画像から藻場の状況を把握する方法を検討する仕事を、国の水産工学研究所等と共同で取り組んでいます。その中で相模湾試験場の役割は、画像分析の基礎資料を得るために実際の藻場を調査することになっています。
 私もこの仕事にかかわるまでは、衛星画像を処理して藻場を判別するのはさほど難しいことではなく、技術的にもある程度確立していると思っていました。しかし、空撮画像から海の中の状況を把握することは、これまで個々の研究レベルでは行われていますが、空撮のやり方、画像の処理によってどの程度の精度で藻場が把握できるかという標準的な方法までは出来ていないのが現状です。私も、空撮画像さえあれば多少写りの悪い画像でもコンピューターで処理すれば何とかなるという認識でしたが、実際には目で見て海藻らしきものが写っていないとどうにもならないことが明らかになり、自分の認識不足をあらためて感じました。
 また、ドローンで撮影した画像から藻場分析するには、まず、何枚も撮影した画像を貼り合わせて調査対象海域全体を1枚の画像に加工します。陸上ですと画像を貼り合わせるための目標がありますので専用のソフトが自動で貼り合わせてくれますが、陸上が写っていない写真は自動で貼り合わせてくれません。実際に水産工学研究所の方が小田原市沿岸の藻場をドローンで撮影をしたのですが、やはり海しか写っていない画像はソフトが自動で貼り合わせてくれず、研究所の方が苦労して画像を貼り合わせていました。分析に使用する画像を一つ作るにも大変だと感じています。
 さらに、水産工学研究所の方が苦労して貼り合わせた画像を、普段業務で使用しているパソコンで開こうとしたら、画像を開かないうちにフリーズしてしまい、にっちもさっちもいかなくなりました。私も六十の手習いで画像解析を勉強していますが、相模湾試験場で藻場の画像解析ができるようになるには、まだまだ長い道のりだと感じている今日この頃です。

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