ホーム > 電子県庁・県政運営・県勢 > 県域・県勢情報 > 地域の総合案内 > 川崎県民センター > 令和5年度黒岩知事と県民との“対話の広場“川崎会場開催結果

更新日:2024年3月13日

ここから本文です。

令和5年度黒岩知事と県民との“対話の広場“川崎会場開催結果

令和5年度黒岩知事と県民との“対話の広場“川崎会場、テーマ「健康長寿に寄与しともに生きる科学技術」の開催結果です。

概要

  • 日時 令和5年12月20日(水曜日)18時30分から20時00分まで
  • 会場 ソリッドスクエアホール
  • テーマ 健康長寿に寄与しともに生きる科学技術
  • 内容

 1知事のあいさつ

 2新たな総合計画の紹介

 3事例発表 【事例発表者】中村雅也氏(慶應義塾大学医学部教授)

 4意見交換

 5知事によるまとめ

  • 参加者数 118名

終了後のアンケート結果(回答者数62名)

(1)参加した感想

大変良かった…45名(77.6%)・良かった…12名(20.7%)・あまり良くなかった…1名(1.7%)・良くなかった…0名(0.0%)
(2)特に印象に残ったもの ※複数選択可

事例発表…37名(59.7%)・意見交換…38名(61.3%)・知事挨拶…13名(21.0%)
(3)今後取り上げてほしいテーマ

ヘルスケア、若者に関する施策 など

(4)自由記述

  • 医療についてのお話を詳しく聞くことが初めてだったので、難しい部分もありましたが、研究をされている方からお話を聞くことができて、とても勉強になりました。
  • 脊髄を再生させるための移植ができているということを知って、全身マヒになってしまった人も希望をもてるのではないかと思った。技術の発展によってこれからの未来がどうなるのか楽しみになった。医療についての内容であったためとても興味深く、健康に対する意識がとても強くなった。いつ何がおこるかわからない世の中で生きる私たちの生活やこれからの技術に期待したいと思った。
  • 今は便利になってなんでも一人でできるけど、やっぱり人と人のつながりは大切だから、高校生だしもっと地域に貢献したいし、関わって助けたりしたいです。
  • ヘルスコモンズネットワークにもあったように、笑いと健康は結び付いていたり、いくらロボットが技術進歩しても絆は人間の仕事と聞いたため、これから、笑いや人間にしかできないことを大切にしていきたい。また、高齢化など他人事ではないと感じることができた。
  • 社会参加、笑い、盲導犬、看護師の役割の変化、ヘルパーが入る生活、など、心のふれあいに関する質問が、科学技術をテーマにした回で多く寄せられたことが、非常に印象に残りました。また、若い方から多くの発言があって、とても良かったです。
  • テクノロジーが目指すのは「死なない社会」ではなく「いのちが輝く」生き方だという言葉が、とても印象に残りました。

意見

 私の住んでいる町内会で、町内会のお祭りがあったんですけれども、今年からお祭りが中止ということになりました。その理由が、高齢化して担い手がいないという、結構、最近耳にするような課題が自分の地域でも来ているなというところがありますので、そこを行政と医療とでどういうふうに取り組んでいけるのかなっていうことが一つです。

今後の対応状況

 未病の改善に必要な要素である食・運動・社会参加のうち、社会参加の鍵を握るのは、町内会などの地域コミュニティです。 町内会の担い手不足といった問題は、多くの地域コミュニティが抱える共通の課題であり、お祭りのみならず、町内会自体の運営にも影響を及ぼすものです。 こうした中、いのち未来戦略本部室では、県及び県内市町村が連携して、地域コミュニティが抱える課題や取組事例などを共有するとともに、課題解決に向けた議論を行うため「かながわコミュニティ再生・活性化推進会議」を設置しています。 この会議の中で、「担い手不足」等をテーマに、例えば、地域の民間事業者の従業員が、清掃活動や祭りなどの担い手として自治会活動に参加する事例や、中学生が自治会役員を務める事例を共有するなど、地域のコミュニティ活動を最前線で支える市町村の取組を後押ししています。

対応状況一覧(PDF:142KB)

開催結果・知事あいさつ

対話の広場タイトル

 こんばんは。神奈川県知事の黒岩祐治です。この時間に、わざわざ会場まで来てくださって、本当にありがとうございます。せっかく来てくださったのですから、いい時間を過ごしていただきたいと思っているところです。

 この県民との対話の広場というのは、私が知事になって、ずっとやり続けてきて、今まで1万4000人近くの方が参加してくださいました。そして今年も県内6会場で開催しています。会場ごとにテーマ決まってはいますけれども、どういう進行になるかは全然決めていません。皆さんと対話しながら、この会を進めていくことにしております。どういう展開になるか。私もとても楽しみにしているところです。皆さんの発言がなくなると、この流れはぴたっと止まってしまいますから、ぜひどんどん発言をしていただきたいと思います。ただ、今回のテーマについての発言をお願いしたいと思います。

知事あいさつ

 今日は、最初に、素晴らしい先生にご講演をいただきます。この人をよく覚えてくださいね。中村雅也先生です。私は、きっとノーベル賞を取ると思いますよ。先生は、ものすごく熱い男なんですよ。もう情熱家、情熱がほとばしるというか、そういう先生でありまして、多分、中村先生の話を聞いたら、みなさん心が熱くなると思います。そして、熱くなった気持ちの中で、今日は皆さんとしっかり議論をしていきたいと思っています。今日は、身体のこと、健康のこと、こういったことをテーマにしながら、皆さんとともにお話をしていきたいと思っています。それでは最後までよろしくお願います。ありがとうございました。

新たな総合計画の紹介

司会

 それでは次に、神奈川県の総合計画についてご説明をいたします。今年度の対話の広場は、2040年の神奈川を展望する、新たな総合計画の策定に向けて開催しております。県の総合計画について、神奈川県政策部長の山崎よりご説明を申し上げます。

神奈川県政策部長

 皆さんこんばんは。県の政策部長をしております山崎と申します。今年度、県では新たな総合計画を作っておりますので、ご紹介をさせていただきたいと思います。あわせて今日のテーマに沿った形の取組みもご紹介させていただきたいと思います。

 総合計画ですが、県の総合計画というのは2階建ての計画になっています。まず上にあるのが、基本構想というものです。これは中長期に、県がどういう方向で政策を運営していくのかという、中長期のビジョンを描いているものでございます。

新たな総合計画・基本構想

 基本理念としては「いのち輝くマグネット神奈川」を実現する、ということで、これは今の総合計画と同じものを継承したいと考えています。その上で、新たな基本構想では神奈川の将来像としまして、「誰もが安心してくらせるやさしい神奈川」、「誰もが自らの力を発揮して活躍できる神奈川」、「変化に対応し持続的に発展する神奈川」、この3つの将来像を掲げて取り組んでいきたいと思います。

 次に、下層にあたる実施計画です。今、ご説明した基本構想は、2040年を見据えておりますが、それに向けて、当面4年間、どんなことをしていくか、ということを描いたものです。

新たな総合計画・実施計画

 「県民目線のデジタル行政でやさしい社会の実現」を4年後の目指すべき姿として掲げまして、様々なプロジェクトに取り組んでまいります。今、素案を作り、パブリック・コメントを実施しております。会場にもチラシを置いてございますし、ネット等でご検索いただければ見ていただけると思います。ご意見を募集していますので、どうぞよろしくお願いいたします。(募集期間:令和5年12月19日から令和6年1月17日まで)

 続きまして、今日のテーマに沿った県の取組みをお話させていただきたいと思います。県では、科学技術の成果を地域社会に展開し、実装させるために、神奈川発のイノベーションを起こしていこうと取り組んでいます。中でもヘルスケアの分野では、「最先端医療最新技術の追求」と「未病の改善」という2つのアプローチを融合させて、持続的可能な社会を作っていこうと「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」に力を入れています。

 羽田空港の対岸にあります殿町地区は、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略特区に指定されておりまして、「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」のまさに拠点となっています。2016年4月に、再生細胞医療の産業化拠点である、ライフイノベーションセンターを開所しまして、再生細胞医療を中心に、新産業創出に取り組んでいるところでございます。

ライフイノベーションセンター 

 

キックオフイベント

 今年の6月には、関係するアカデミアの方や企業などの皆様とともに、「再生・細胞医療が届く!未来へのキックオフイベント!」を開催しまして、再生細胞医療が届く未来に向けたキックオフ宣言を行ったところでございます。

 それから今年の11月には、殿町A地区のまちびらきセレモニーが開かれました。知事から、ライフイノベーションセンターの入居企業が、再生細胞医療の実用化に向けて研究を進めているとお話をさせていただきました。

殿町A地区まちびらき

 さらに、「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」を、世界展開、グローバル展開することにも力を入れています。今年の7月には知事がアメリカを訪問しまして、スタンフォード大学の医学部と「ME-BYO(みびょう)」をテーマとするシンポジウムを開催いたしました。このシンポジウムでは、スタンフォード大学のロンパール教授から、県の未病の考え方を説明していただくなど、本県の取組みに非常に賛同していただいております。

スタンフォード大学

以上、今日のテーマでありますこの健康やヘルスケアの分野を含め、新たな総合計画につきまして、ご意見ございましたら、ぜひ県へお寄せいただければと思います。私からの説明は以上でございます。本日はよろしくお願いします。(ご意見募集は令和6年1月17日に締切ました。)

事例発表

司会

 それでは続いて、本日の地域テーマについて、お話をいただく慶應義塾大学医学部教授、中村雅也様をご紹介します。

 中村雅也教授は、90年代前半から脊髄の研究を始め、現在は京都大学の山中伸弥医師と共同でiPS細胞を使った脊髄再生移植の研究を行っていらっしゃいます。これまで、中枢神経である脊髄は、ひとたび切れたら決して繋がらないと言われていましたが、iPS細胞を使い、環境を整えることで伸ばす方法の開発にご成功されています。また研究を行う傍ら、脊髄外科のスペシャリストとしてもご活躍されています。それでは中村教授、どうぞよろしくお願いいたします。

中村雅也氏(慶應義塾大学医学部教授)

 皆さんこんばんは。ご紹介いただきました慶應の中村です。まずこのような素晴らしい機会をいただいたことに関しまして、黒岩知事をはじめ神奈川県の皆様方に感謝申し上げます。今日、私、非常にわくわくしています。会場を見渡すと、本当に若い学生の方もいらっしゃるし、ご高齢の方もいらっしゃるし、もう本当に、皆さんといろんなディスカッションができることに期待を持っています。

 私が本日お話するタイトルが「健康長寿に寄与しともに生きる科学技術」ということで、今日は未来の話を皆さんにしたいと思います。しかも近未来の話です。特に、ここにあるように私たちが目指す近未来の医療・介護・ヘルスケアということでお話をしたいと思います。よろしくお願いします。

 未来の話をするためには、これまで過去がどうであったか、そして、これからどうなっていくかということを、データを使って少しお話しします。

超高齢社会を迎えた日本の現状

 50年前、1970年代には、男性の寿命はまだ70歳に届いていません。それが2020年には、いよいよ80歳を超え、女性も88歳に届こうとしています。これがあと数十年すると、女性の平均寿命は90歳超えるんですね。

 これを反映して、右側のグラフを見ていただくと、1970年代、65歳以上の方々を高齢者と呼んでいますが、この当時、7.4%なんですね。それが今は29.1%です。それが皆さん耳にしたことがあるかと思うのですけれども、2040年の問題。団塊の世代のジュニアが、高齢化して高齢者に入ってくる年が2040年なんですが、2040年に、35%を超えます。すなわち、3人に1人が高齢者という時代がそう遠くない未来に訪れます。こう聞くとなんだか、超高齢者って、何かこう悪いようなイメージを抱かれるかもしれないです。決してそうではないんです。

 寿命が長くなったというのは、医療が進歩したからなんです。医療というのは、人の命を救うため、これは第1の目的で発展してきた学問ですから、これはいいことなんです。

日本の社会と人口構成の推移

 ただもう少しブレークダウンすると、課題が見えてきます。日本の人口はご存じの通り、どんどん減っていきます。この減り方は、まだもう少し加速するかもしれないんです。2060年になると、ほぼ戦後の1950年の頃と同じ8500万ぐらいまで減るんですね。これはすごいことなんです。

 下のピンクと水色、これが高齢化率で、これは平衡状態になるんです。

 問題は、この橙色の真ん中、いわゆる就労人口、生産人口と言われる働く世代です。ここがどんどん減ってくるんですね。これが何を意味するかというと、こちらの赤い折れ線グラフ、これは65歳以上の高齢者と、就労人口の比率です。すなわち戦後の高度成長期には、お一人の高齢者を10人の働く世代で支えようという社会構造だったんです。これが、失われた30年、バブル崩壊の間にどんどんその比率は下がります。10対1が、4対1、3対1になって、2020年、今や2対1です。これが2040年になると、1.5対1になるんですね。わかりやすく言うと、担ぎ手が御神輿から騎馬戦、そして肩車へ。これだけ若い世代の方々に重くのしかかります。

要介護度別認定者数の推移と高齢者が要介護・要支援となる原因

 さらに拍車をかけているのは、2000年から始まった介護保険制度です。2000年当初は介護が必要だという方は200万人ちょっとでした。それが今、676万人です。2040年になると、900万人を超えるんです。

 この原因は何かというと、骨折、転倒、関節痛、運動器疾患です。腰が痛い、膝が痛いという方たちが20数パーセント。そしてその他が脳卒中と認知症。これで約6割の方々がカバーされます。

 そして問題は、日本の総医療費の約4分の1が、介護保険に使われているという実態です。

我が国の高齢化社会に必要なものは?

 この実態を受けて、今、日本が、どういう舵を切っているか。この超高齢社会で何が必要か。

 「健康寿命」という言葉を聞いたことがありますか。人の手を借りずに、自分がやりたいことができる、行きたいところに行ける、やりたいことができる寿命です。健康寿命と平均寿命の格差が男性で9年、女性で何と12.5年あるんです。その間は人の手を借りながら生活しているんです。

 これが、我々医療人が目指してきた社会なのか。決してそうじゃないんです。

 黒岩知事もよく言われます。いのち輝く神奈川。よりわかりやすく言うと、生涯現役、ピンピンコロリ。これが健康寿命の延伸なんです。ぎりぎりまで自分らしく生きる、生きがいを持って生活する、これが重要なんです。動ければ、健康寿命は伸びていくんです。動ければ、他界されました日野原病院名誉院長や、あるいは、ギネスブック記録のエベレスト登頂に成功されたプロスキーヤーの三浦さんのように、健康寿命はどんどん延伸していくんですね。

健康寿命延伸に向けた日本の取り組み

 国でも当然このことを視野に入れた議論をしています。これは「健康日本21」、これも第三次案が出ていて、一番上にあるのは、健康寿命の延伸なんです。

 その下に2つあります。ひとつは、もちろん医療の大事な目的である、死亡率の低下。もうひとつは、不健康割合の低下。この中で、先ほど申し上げたように、脳血管疾患、脳卒中や認知症や運動器疾患というのが重要だと言われているわけです。

 今日、私の話は2つあります。前半は、医療人として私がどうやって医療を変えていこうか、近未来の医療は何が必要かと、こう考えてきた大きなポイントが、「先制医療」と「再生医療」ということです。

 私は整形外科ですから、先ほど運動器疾患と言いましたけれども、2015年に今の立場をいただいて、様々な研究をやってきました。その時のキーワードが老化、再生、スポーツ外傷。運動器といっても、筋肉もあれば椎間板も骨も関節も靭帯も末梢神経も脊髄もあります。これらにフォーカスをして様々な研究を行ってきました。今日はその中から、私のライフワークである脊髄再生の研究をお話ししたいと思います。

脊髄損傷の現状と治療の限界

 脊髄とはどういう組織かというと、私は脊髄腫瘍とか脊髄の病気をいっぱい手術しているんですけれども、患者さんのご家族に説明するときにこの絵をいつも使うんです。脊髄とは中枢神経なんです。中枢神経の最も厳しい点は何かというと、正常な脊髄の機能がここだとすると、絶対に超えちゃいけない線があるんです。健康なときには気づきません。手を動かしたり、歩いたりできるのは、当たり前だと思っているんです。これ、決して当たり前じゃないんです。脳の命令をしっかりと脊髄が手足に伝えるから、手足が動いているんですね。

 ところが例えば、この線を一回の外傷で超えてしまう患者さんがいます。実際、私が治療した患者さんです。18歳です。大学1年生、ラグビー選手です。1年生の夏合宿の練習試合のファーストスクラムで、こういったけがをしました。首が、ずれているのがわかりますか。スクラムが崩れたときに首の骨がずれちゃったんです。

 そうすると、こういう人たちに対して私たちは手術をします。骨を戻して固定をして綺麗に治ったように見えますよね。レントゲンだけ見ると、綺麗になった。ただし、この後ろにある脊髄、神経はこういう状態です。少しわかりにくいかもしれないんですけれども、これは首を横から見ているところで、脳がここにあって、このあたりは正常な脊髄ですけど、ここは白い、真っ白ですよね。これは脊髄が完全に切れているんです。一瞬のスクラムが崩れたこの中で、彼の人生は変わってしまうんです。今、彼ができることは、肩をすくめることだけです。ひじも動かない。手も動かない。足も動きません。これが脊髄損傷の厳しさです。

 もう一つは、先ほど申し上げた、この日本の超高齢社会を反映した脊髄損傷があります。これは、年齢的な首の変形によって、神経の通り道がだんだんだんだんと狭くなるんです。ところが、こういったゆっくりとくる圧迫に対しては、結構、脊髄は我慢強いです。この方、脊髄のここがちょっと細くなっていますよね。ただし、ちょっと手がしびれる、ちょっと足がもたもたするという程度なので、手術を受けないんです。この方は、おうちで転んでしまったんですね。その時、脊髄がこの線を越えちゃったんです。手術をして脊髄の圧迫を取ってあげました。でもこの白い神経、これとは全然大きさが違いますが、この方も完全麻痺で寝たきりです。

 こういった方々をどうしたらいいんだ、骨を固定したり、神経の圧迫を取ってあげたりしても、傷ついた脊髄は治せない。だから、脊髄の再生医療が切望されてきたという、こういった背景があります。

iPS細胞を用いた脊髄再生の前臨床研究

 私は30年近くこの世界での最新の研究をやってきて、今日まであるのは、ここに掲げたiPS細胞の生みの親である山中先生、そして慶應の生理学教室の教授である岡野先生、この2人との出会いがあって、様々な研究をして、今に至っているわけです。

亜急性期脊髄損傷に対する臨床研究の流れ

 今、実際に、脊髄損傷を負われて1ヶ月以内の方に対して、移植を行っています。怪我をして1ヶ月以内を亜急性期というんです。山中先生のところからiPS細胞をいただいて、それを神経の基(もと)になる細胞に誘導して、これを凍らせて取っておきます。不幸にして怪我をされた患者さんが市中病院にいらっしゃったら、様々な検査をして、全部基準を満たしたら、私どもの病院に来ていただいて移植を行って、そのあと、リハビリをやっていく。こういった流れで、2019年の2月に承認をいただき、ずっと準備をしていたわけです。2020年の6月にはもう準備ができていたんですけれども、もう皆さんもご存じのように、コロナの影響を受けてなかなか開始ができなかったんです。

 何とか、2021年の12月に世界初となる1例目の移植を行いました。この1例目の方のMRIを見ても、脊髄がもうほとんど切れそうになっている。大怪我だと思うんです。これ実際の動画です。これを見ていただくと、脊髄に針を刺しています。損傷部を確認して、真ん中に、私がこの手で細胞に200万個移植してきました。この方に関しては、手術後3ヶ月間、しっかりと経過を見て安全性が担保された状態で、その上で、2例目、3例目、先月4例目の患者さんの移植を行いました。これで、あと1年間しっかりと経過を見て、皆さんにしっかりとした形で結果を出していきたいと思っています。

殿町/羽田エリアに東日本における再生医療ハブを構築

 このような再生医療を行うにあたって、日本の再生医療というのは、世界をリードしているんですけれども、これを日本のみならず、世界に展開していこうということで、本当に、神奈川県の皆さんの大きな支援を受けて、この羽田・殿町のエリアで、慶應義塾大学の殿町キャンパスというのもここに出ていますし、先ほどお話があったですね、RINK(リンク)の皆さん、あるいは、国立衛生研究所、実験動物中央研究所、そしてライフイノベーションセンター、これらの連携の中で、新たな再生医療を創出する場所が動き出しています。

 そして、対岸の羽田には、藤田医科大学が出てきていて、この連携の中で、もうここは国際戦略総合特区あるいは、国家戦略特区ですから、知事がよくおっしゃる、ここに再生医療の出島を作るんだ、日本のハブになるんだ、そして世界に冠たる拠点を作ろう、ということで、アカデミアである慶應、あるいは藤田、そして多くの企業の方々を巻き込みながら、神奈川県の皆さんといろいろな取組みを進めているというところです。

健康寿命延伸に向けた日本の取り組み(その2)

 ここまでが(健康寿命延伸に向けた日本の取組の)上の話になります。後半は下の話をさせてください。

 医療人として様々な研究をやってきたんですが、ここだけでは足りないなと私は感じていて、下にある生活習慣の改善、あるいは社会環境の改善、ここも非常に重要なテーマです。これを何とか解決しようということで、我々が採択をいただいたプロジェクト、これが「COI-NEXT共創の場形成支援プログラム」といいます。慶應義塾大学が代表機関で、東京医科歯科大学、理化学研究所、東京工業大学、そして自治体として神奈川県の皆さんにもご参加いただいて、産学公の連携でこのチームを作っています。このテーマのポイントをいくつか話します。

 私たちが対象としているのは、病気になった後の生活者、そういった方々に対してどういうふうな医療サービスができるかということです。超高齢社会では、ある程度の年齢になると、病気が全くないという方はいらっしゃらなくなります。

病後の生活者

 世界の、あるいは日本の中を見ても、認知症や鬱病、脳卒中、心不全という病気が、非常に社会に大きなインパクトがあるということで、この方々を対象にして、プロジェクトを進めようとしています。こういった病気の後の生活者の方々が、どういった課題に直面しているか。主だった課題を挙げます。皆さん、これはファクト、事実ですからね。

病後の生活者が直面する課題(特に都市圏において)

 独居高齢者は、東京が全国で一番多いです。4人に1人です。2040年になると、45%と推定されています。これ、他人ごとじゃないんです。わずか20数年経つと、2人に1人の高齢者が一人暮らしになるんです。そして、病気や孤立が引き起こす生きがいの低下ということ、これは明確に数字で出ています。病気になったとき、3人に1人、男性の一人暮らしでも3人に1人は近所づきあいがない、あるいは困ったときに頼れる人がいない。これで2人に1人が生きがいをなくしちゃうんですね。神奈川県も含む首都圏というのは、非常にインフラが整備されています。暮らしやすいまちです。ただし、便利すぎるがゆえに、周囲の人との関係性が非常に希薄であるという一面もあります。それがこの結果なんですね。

 そういった方々が、人の手を借りたい、介護を受けたいと思ったときに、要介護2から5の認定者の方々が介護サービスを受ける率のワーストツーが東京と大阪です。これも事実です。そして、さらに追い打ちをかけたのが新型コロナです。新型コロナがさらに社会の分断、孤立を加速しました。

 ただでさえ孤立しているこの都市圏において、孤立が加速し、生活者に対して限られたリソースを、医療介護のリソースを、どう有効活用するかというのは、これからの社会で非常に重要な課題であろうと考えます。

慶應義塾COI-NEXT拠点のビジョンとSDGsとの関連

 そういった議論をして、我々のこのプロジェクトのコアになるビジョンというのが、ここに書かれたSDGsの3番、9番、10番、11番。どこにも「医療」と書いてないんですね。「ヘルスケア」と書いているんです。そのビジョンが、「誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点」。このヘルスコモンズ共創拠点は、後で説明します。

 このSDGsのビジョンは、さらには、病気や介護のための離職の問題、貧困であったりヤングケアラーの教育の問題に波及していくだろうし、当然、新たなサービスがあるため、格差を生まないような配慮であったり、気候環境への変動にも配慮するということになります。

ビジョンを共有した産官学連携チーム

 こういったビジョンを掲げて、4アカデミアが膝を突き合わせて議論をして作った社会のビジョンというのが、この「ヘルスコモンズ共創拠点」です。では、ここで何をやるのかというと、大きくいきます。本当に、このプロジェクトは、世のため人のためにやりたいんです。国民の幸せを目指します。そして、神奈川県を含む、新しい地域社会、公共政策の実践につなげていきたいと思っているし、新しい産業も作っていきたい、新しい手法、価値を開拓していきたいと、こういったビジョンに共感をいただいたんです。

 これは、もうすでに神奈川県の皆さんも動いていらっしゃったんです。「ヘルスケア・ニューフロンティア政策」や「未病政策」。お互いの目指しているところが、マージしたんですね。だから同じチームのメンバーとして一緒にやっていこうということになりました。

医療・介護・ヘルスケアの現状と課題

 それで、これもよく、私が使う絵なんですけれども、医療介護ヘルスケアの現状と課題で、よくこれは知事もおっしゃいます。白と赤じゃないんだと、健康と病気じゃないんだと。

人間ドックとか検診を受けて、異常があって病気だと言われた方が保険医療を受けて、その病気の後、介護になっちゃう人もいるわけですから、グルグル回る。これはペイシェント・ジャーニーというんですけれども、ここから逃れようというコンセプトを、私たちとともに知事が打ち出されていて、この人たちに対してどういうふうなアプローチをするのかということになります。

そこで、我々医療人からの目線で言うと、せっかく、世界のたぐいまれなる日本の質の高い医療情報、介護情報をしっかり活用したい。未病の方々とつなげたい。ところが現実は、このデータは分断されているんですね。

私たちが目指すヘルスコモンズ共生社会

 これを何とかしたいと思って考えたのが、この「ヘルスコモンズ共生社会」、「とも生き社会」です。具体的に何を目指しているかというと、生活者の方々がいて、まず社会のネットワークを作ります。それは、遠く離れた家族かもしれない。近所の地域のコミュニティの方かもしれない。医療機関であったり、介護ケアサービスセンターであったりするかもしれない。そしてその中に、もう1つ重要なことは、ここにデータ基盤を作るんです。データ基盤は、単なるデータの寄せ集めではなくて、アカデミア、研究者が持つサイエンスと繋がっているデータです。

 生活者の方々が、このサービスを受けたいんですと言った瞬間に、そのデータが、こういった医療情報や介護情報がここに入って、様々なテクノロジーを活用して、生活者の方々の普段の動作、寝たり話したり歩いたり食べたりといった情報が、ここに入って、医療介護情報と名寄せをされて、しっかりとしたエビデンス、サイエンスに基づくフィードバックが、生活者お一人お一人に返ります。そして、生活改善、早期発見、早期介入や行動変容で健康を維持していただく、未病改善ですよね。まさにレッドブラックの方もいらっしゃるわけですね、いやもうこれちょっと待てないよという方の場合には、しっかりと必要なときに必要なところにつなげるようにそのサービスをする。

 ただし、これがサイバー空間だけで終わってしまっては、本当の意味で一人ひとりの生活に寄り添っていないんです。だから、必要なときにリアルなサービスを届ける、これが私たちの目指す社会になります。

 じゃあこんな理想を言っているけど本当にできるのか、とよく言われるんですけれども、すでにネットワークの基盤はこの神奈川県で作りつつあります。湘南エリアあるいは川崎エリアのあたりで作っていって、こういった方々が、受診をいただいたらその医療情報がご本人の同意のもとに入り、ご本人の生活情報が入り、アカデミアの持つ様々な分析ロジックによって解析されたフィードバックは、医療機関、介護機関、あるいは自治体や企業からサービスとして提供されることになります。

 例えば、認知症の場合、どうなるかというと、様々な検査の医療情報、それを使ったリスクの層別化、そして一方で、患者さん一人ひとり、生活者の皆さんが持っている生活課題を抽出してしっかりと解析して、様々なサービス、食事であったり運動であったり睡眠であったり、そういったサービスを出していくことになります。

 具体的に、ある女性が、お一人暮らしで、息子とは離れて住んでいて、料理とドライブが好きだったとします。ただ、最近、もの忘れがひどい、認知症と言われて、運転は駄目だと言われたとすると、結局、出歩かなくなってしまって、口もきかなくなり、笑顔がなくなって、要介護になった。これでは健康寿命は延伸できないんですね。

 だったら、もうちょっと違ったサービスで、より早期に、身に着けるデバイスなどがその人の状態を表示して、様々な先生がコンピューターで見ていて、その解析によって、その人が本当に料理が好きなんだったら、料理を楽しむための素材を送ってあげよう、アプリを送ってあげよう。あるいは今、高齢者の免許返納は大きな社会の流れです。でもテクノロジーがあれば、軽度の認知症の方でも運転できる時代は、すぐそこに来ていると思うんです。ただ移動すればいいんだったら、無人のトランスポートでいいんです。でも運転することを楽しみにして息子のところに来ているんだという人が必要とする技術はあるんですね。だから私たちが言っているのは、もちろん認知症を予防することも大事だけれども、例えば認知症になっても安心して生きがいを持って生きられる、そういった社会を作っていきたいということなんです。

 脳卒中も然りです。様々な医療情報と、私も着けているスマートウォッチとか様々なデバイスを通した情報、この両方の情報が統合されて、リスクに寄り添ったサービスを提供する。例えば、低リスクだったら食とか運動のサービスを提供する、中程度だったらウェアラブルデバイスと保健商品をつなぐようなサービスを提供する。

 もう1つは、これは神奈川県の皆さんが取り組んでおられる、神奈川県の脳卒中地域医療連携ネットワークです。例えばリスクの高い人、いつ脳卒中になるかもしれないという方が、仮になったとしても、このネットワークの中でしっかり守られていれば、超早期に医療機関に搬入されて超急性期の治療がきちんと行われれば、良くなるんですね。

 例えば、不整脈の既往があって、軽い脳梗塞を起こしたけれども、結局、麻痺も起こらなくて大丈夫だと思って、たかをくくって運動もしない、たばこも吸っている。その結果、脳梗塞が再発してもおかしくない状態になってしまった。実際こういう方いらっしゃるんです。

 その前に、リスクが低いうちであれば食とか運動のアプリのサービスを提供して、行動変容で未病改善ですよね。中リスクであれば、これもウェアラブルデバイスと保健商品、これでしっかりと寄り添う。たとえ再発してしまったとしても、このネットワークの中でしっかり寄り添える治療ができるから、予後が改善されて、脳卒中であったとしても安心して生きがいを持って暮らせる。こういった社会を作っていきたいと思っています。

 私たちが目指している都市型ヘルスコモンズというのは、医療・介護・生活情報に基づく、一人ひとりに寄り添うサービスの提供、そして安心と生きがいを持って生活を豊かに暮らせるコモンズ共生社会、これを繰り返し申し上げたいと思います。

 黒岩知事と私は同じ方向を向いていると信じています。いのち輝く神奈川県。今日、私が申し上げたいのは、先制医療と再生医療、そして下(の図)は、ヘルスコモンズ共生社会。こういったものを我々は、神奈川県の皆さんとともに目指していければと思っています。ご清聴ありがとうございました。

司会

 中村教授ありがとうございました。これより意見交換となります。

意見交換

知事

 はい。私が言ったとおり、熱いでしょう。このほとばしる情熱で、先生のお話をもっと聞いていたかったんじゃないかなと思いますね。この情熱、私が最初に聞いたときに、今、お話がなかったエピソードをお聞きしました。そのエピソードを、ここでしていただきたいなと思ったところであります。学生時代に、同期の医学生がスキーの事故でまさに脊髄損傷になった。その彼に対して誓ったエピソードが中村先生をかきたてた、そのエピソードをせっかくの機会ですからお話しくださいませんか。

中村教授

 ありがとうございます。その話をすると、今でも熱くなっちゃうんですけど。

 前にいる高校生の皆さんと同じような頃なんです。私は大学2年生で、バスケットボール部に所属していて、冬にみんなでスキーに行ったんです。

 その時、私の1つ下の1年生とみんなで一緒に八方尾根にスキーに行って、その1つ下の後輩が新雪に突っ込んだんです。彼はスキーがとても上手で、どんどん滑っていって、バーンとこぶで飛ばされて、新雪に突っ込んでしまったんです。みんなで見ていたんですけど、出てこないんです。先輩から、行ってこいって言われて、私は雪の斜面を駆け上がって彼の所に行きました。その時彼が、動かない、動かない、と念仏のように言っていたんですね。その時、私は脊髄損傷って知らなかったんです。それから、レスキュー隊の人と一緒に彼を下に運んで、救急車で病院まで3時間半ぐらいかかったかな、夕方で暗くなっていて、病院に着いてカートが見えた時に、私は、これで救われると信じて全く疑ってなかったんです。手術もやったと聞いて、そのころには私たちはもう普通の生活に戻っていました。手術の後、彼はリハビリテーション病院に転院して、リハビリもやっているんだなあと思っていました。

 それから10ヶ月ぐらいしたら、1通のはがきが届いて、退院したので自宅に戻りました、近くにいらっしゃったら遊びに来てくださいっていうので、私は真に受けて、私の1つ上の先輩と一緒に彼に会いに行ったんですよ。

 扉が開いたときにね、私に、雷が落ちたんです。

 彼は、電動車椅子をあごで操作して出てきた。そして、ニコニコ笑って、ありがとうって。

 電動車椅子で部屋に連れて行ってくれて、リハビリやっていろんなことができるようになったって言われて、私は、その時はもう言葉を失っていたんです。

 その当時は、まだパソコンなんてなくて、そこにはワードプロセッサがあって、彼はキーボードをあごで操作して打ったはがきを私たちに送っていた。そんなことも全く知らないで、呑気に遊びに行った私は、すごく恥ずかしかった。雷が落ちた時、私は19歳です。今から40年以上前、その時の、どうやったら、何で治せないんだ、という思いが、今も私の中に燃え続けています。

 だから、脊髄再生の研究をずっとやってきて、私達が論文を出したり、ニュースになったりすると、必ず彼からメールが来ます。彼は、こんな体になっても医者になりたい、患者さんの気持ちがわかる医者になりたいって言っていたけれど、その時、時代はまだ追いついてなくて、1年生の彼に医学実習を受けさせることはできないということになって、彼は文学部に転部しました。でも、その中で彼は一生懸命がんばって、今も大学で働いています。

 だけど、待っています。私たちの再生医療を。

 だから、研究を生むためにやっているのではなくて、患者さんに届けたいからやっているっていう。すみません、私はこの話をすると、どうしてもこう、中から込み上げてきちゃって、こういう話し方になってしまって。先ほど知事に、今日はこの話をスキップしようとも話し合っていて。すみません。そういう思いで研究をやってきました。

知事

 ありがとうございます。素晴らしいですね。若い皆さんは、何かの出会いによって、動機付けというか、それに向かって進んでいくエネルギーが、どこからか出てくるということがきっとあると思うのです。中村先生には、そういう体験があったということなんです。

 実は、川崎でこんなにすごい研究をやっているってご存じでしたか。キングスカイフロントは、羽田空港のすぐ向かい側のところにあります。実は、私が知事になったときには、ただの原っぱでした。1つだけ実験動物中央研究所があって、あとは全部、原っぱだったのです。そこで、特区を取りに行こうと、京浜臨海部でライフイノベーション国際戦略総合特区を取りにいったのです。これは、全国からその特区を取りいくという国のコンペでした。神奈川県と川崎市と横浜市の共同プロジェクトという形で取りに行きました。私が、何のための特区か、医療の出島にするんだと一言言って、特区を勝ち取った。それからどんどん、再生医療の最先端企業や研究所が世界中から集まってくるようになってきました。そこで、慶應義塾大学も来たということです。

 その中で、今、研究されている脊髄損傷・再生医療の話を今日されましたけども、実は、我々が今やっている研究は、もう1つ先があって、脊髄損傷になると、こうやって、もうパッと腕が上がらないわけです。その全く上がらない方の脊髄を再生します。再生した後はロボット、ロボットスーツHAL(ハル)®というのがあるのです。足が動かない人に、そのロボットを装着すると、歩こうという信号がいき、その信号をキャッチセンサーでキャッチして、モーターを回す。歩けない人はそのHAL®を着けると歩けるようになる。この2つをドッキングさせようという研究を、今やっているのです。中村先生、いつごろ実現しそうですか。だいぶ進んでいると思うのですが。

中村教授

 今日、お見せしたビデオは、亜急性期といって、怪我をしてから1ヶ月以内の方ですけれど、友人も含めて私たちのゴールは、慢性期といって怪我をしてから何年も経った人達です。特に、私がやっぱり治したいのは、完全脊損といって全く動かない人なのです。細胞移植で神経が繋がるようになるんです。これは、ネズミでも成功している。サルでも成功しています。

 ただ、本当の意味で機能を再生させるためには、細胞を移植して寝ていても駄目です。使わなきゃ駄目なのです。最初は、微弱な信号しか出ないのです。それで、足を動かして歩いてくれと言っても、皆さん歩けません。それを支援するロボットが、ロボットスーツHAL®です。それは何かというと、筋肉の、本当にわずかな、動こうとする信号をしっかりキャッチして、その信号を増幅して動かすものです。それを繰り返すことによって神経線維の再生が促されて、最初はロボットの助けがないと動かないけれども、だんだんとそれが自分で出来るようになる。そういった最先端のテクノロジーと再生細胞医療を融合させるという研究をやっています。

 知事の今の質問にお答えすると、慢性期の脊髄再生医療はおそらく数年以内に始まります。数年です。本当は、来年と言いたかったのですけれど、今、PMDAという臨床試験をするときに審査する機関から、同じ臨床試験をやるときに、細胞の安全性をもう1回確かめなさいと言われています。それはイコール、ネズミに移植して、1年以上見なければいけないのです。それだけで、1年半ぐらいかかるので、慌ててそれをもう1回やり始めている。前回やっているからいいかなと思ったけれども駄目で、もう1回やっているところで、2、3年以内には始まると思っています。

知事

 2、3年以内には始まる、これは世界が注目するテクノロジー、それが今、この神奈川、川崎で生まれようとしているということです。その当事者の方の話を聞いたというのは、非常に貴重な体験だと思います。

 中村先生の話で、すごいなと思うのは、前半の話は、まさに医療者としての最先端の研究者としての話です。大体、普通の人はそこまでなのですけれども、後半の話はガラッと違う話、皆を健康にしましょうという話です。お医者さんは、病気を治しましょうということは一生懸命やられるのだけれど、健康的に高齢になっていきましょうということも同時におっしゃっている。そのようなドクターは珍しいです。

 「未病(みびょう)」という言葉が出てきましたので、簡単に説明しますと、真っ白な健康な時があって、真っ赤な病気の時があるのではなくて、健康な白から病気の赤の間というのは連続的に変化していて、グラデーションになっている。病気になってから治すのではなくて、このグラデーションのどの部分になっても、少しでも健康に持っていこうとすることが大事です。このグラデーションのところを「未病」と言います。

 未病を改善するために何が大事かというと、食・運動・社会参加といったものが大事です。例えば、この社会参加というのは、実はすごく大事で、先ほど言った「孤立」、一人暮らしでどんどん皆が孤立するようになると、みんな具合が悪くなってくる。老人の方は、急にドーンと具合が悪くなることがあるそうなのです。孤立するとドーンと具合が悪くなる。だから、コミュニケーションの取れる人達がいること、コミュニティの力がどれだけ大事かということです。

 今、我々は、ヘルスケア・ニューフロンティアという政策の中で、どんどん進めていることもあり、まさに、中村先生の考えとぴったり一致しています。だから、100歳時代になっても、超高齢社会になっても、みんな元気でいるということが一番いいじゃないですか。それを皆で目指しましょうということで、今、未病改善そしてヘルスケア・ニューフロンティアという政策を進めているということであります。

 我々の方から少し長くお話しましたけれども、こういった情報を基に、今日、もっと様々な話を聞いてみたいなということもありますし、私はこんなことやっているというアピールもあるかもしれないですし、このテーマであれば何でも結構ですので、手を挙げてください。どうぞよろしくお願いします。

参加者1

 今日は、ありがとうございました。中村先生にお伺いしたいのですけれども、後半でお話しくださった共創社会ですが、人間ってやっぱり、理性と感性で色々と行動を決めていく生き物だろうと、常日頃、実感しています。特に、感性に訴えていくことは、とても難しいのではないかと思います。共創社会の中で、例えば、たばこが駄目だとか、高血圧がだめだといったことは、多くの方々が知っていると思うのですけども、それを大学の授業のように、一方的に伝えるだけではなくて、もっと、例えば笑いであったりとか音楽であったりとか、芸術であったりとか、わかりませんけども、そういった今までにないようなアカデミアと組み合わせると、なにか素敵な相乗効果が得られるのではないかと勝手に感じているのですが、その辺、いかがでしょうか。それが、まず1つ目です。

 それともう1つは、今、日本の医療費が約50兆円近くなってきているというお話で、やはり、そこで一番大事だと思うのは、今ここにいらっしゃる高校生たちに対して、ヘルスリテラシーといったものを、学校教育の中に取り入れていくといったことも、とても大事じゃないかと思うのです。先日、インターネットでいろいろと見ていたら、ジョンソン・エンド・ジョンソンっていう会社が、日本を含めた6ヶ国のヘルスリテラシーの意識調査というのをやっていて、それを見たら、日本が最低なのです。もう圧倒的にダントツにいろんな分野で最低なのです。やはり、高齢、超高齢化社会であることはもちろんなのですけども、今ここにいる高校生達が、2040年に30歳を超える年齢になる、その時に、ここにいる高校生達がヘルスリテラシーを習得して、自らいろんな情報を準備して判断して、健康予防に繋げていくという社会が出来ていたらいいなと思うのです。その辺、県としての取り組みみたいなものが、もしあるのであれば、教えていただきたいと思いました。以上です。

中村教授

 1点目の感性に訴える、というのは、素晴らしい指摘で、実は我々は、芸術、音楽、非常に重要だと思っていて、東京芸術大学の皆さんともいろんな議論をする中で、アート・ミーツ・サイエンスという、芸術とサイエンスが出会うプロジェクトに今取り組んでいます。その中で、型にはまった形、1足す1は2とか、答えはこうなのだというような押し付けるものではなくて、楽しむとか、それが生きがいであったりとかもする。個人個人やはり感じ方は違うので、まさに、その感性に訴えた寄り添うサービスというのが、私は今後、ますます重要になってきていて、ここは我々、医療者だけでは全然駄目なのです。そういった芸術や音楽の方々や、或いはもう1歩踏み込むと、実は我々のチームには哲学者の方も入っている。例えば、我々が医療情報や生活情報を科学に則ったアルゴリズムで解析して、あなたはこうしていたら何年後にこういう病気になっちゃいますよとか、いわば未来予測をするということが、本当にその人にとって幸せかどうかっていうのは、個人個人違うのですよね。価値観が違うので、そういったところまでしっかり考えて、決して押し付けるのではなく、その人その人の考え方、感性にしっかり寄り添えるようなサービスを我々は考えていかないと、社会にはとても受けられないと考えています。

 本当に、多様なステークホルダーを巻き込むような形で、議論を展開していきたい。医療だけに偏る、或いは研究者だけに偏るのではなくて、その中に、今日ここにご参加いただいている市民の皆さんの声を取り入れられるような形で事業を進めていきたいと思っていて、その1つの形が、リビングラボと言います。これを作りつつ、実際、もう動かし始めているのですけれど、皆さんの声を聞きながら、どういったサービス、研究者や医療人が届けたいサービスではなくて、現場の人たちがこういうサービスが欲しいのだ、こういうサービスして欲しいのだというサービスにしていきたい。これはバックキャストと言うのですけれど、そういうことを考えています。

知事

 とてもすばらしい指摘だと思います。私は、「いのち輝く神奈川」と言っています。「いのち」はひらがなで書いて「いのち輝く」って。「いのち輝く」というのを「Vibrant INOCHI」という英語にして、これも発信しているのだけれど、いのちは、いのち以外は言いようがないので、もういのちにしている。いのち輝くために何が大事かというと、医療が素晴らしく充実することは大事ですけれども、医療がいくら充実したとしても、いのちは輝かないですよね。安全で豊富な食がなければならないし、それを支える農業もしっかりしなければいけないし、そして、大気汚染などの環境の問題や、エネルギーも豊富でなければいけない、クリーンなエネルギーでなければいけない。いろいろなものが全部連動していないと、いのち輝かないですよね。大前提として、平和ということもあります。

 でも、その1個1個のことというのは、国が言うには、全部、担当の役所が違うんですね。それが問題だと私は思っています。途切れてしまうのです。今おっしゃった笑いによって皆が健康になることが大事じゃないですかというのは、まさにその通りだと思います。それは、どこの役所が担当するのかと言ったら、厚生労働省は医療を担当しますから、笑いはどこですかね、文部科学省ですかね、そういう話になってしまいます。

 そうではなくて、いのち輝くということが一番大事でしょ、それがゴールですよねという発想になったときに、いろんなものが結びついてくる。例えば、エンターテイメントと未病改善をクロスさせる。実際、県はそれをやっているんです。例えば、県営団地を10ヶ所選んで、今、ユースクラシックという若手のクラシックの皆さんに教えてもらう事業をしています。これは、まずコーラス部を作ってもらいます。そこで皆さんにコーラスを練習していただいて、そこに新たなコミュニティが作られます。そして、その人達の発表の場を作っているのです。発表の場というのも、ちゃんとしたホールでやるんです。ちゃんとしたホールなので、皆さん正装してくるわけです。そこで出てきて、お客さんが入っている中で、緞帳がバーンと上がってスポットライトが当たって、そこでわっと歌ったら、もうこれだけでどんなに元気になれるかというのは見たらわかります。

 ほかには劇団が3ヶ所あって、横須賀に「よっしゃ」という劇団があります。それから小田原と綾瀬にも高齢者劇団があります。これは、県が仕掛けて、それまで芝居なんかしたことないという人達が集まって、プロが教える。発表の場もあります。皆さん、これを見たら楽しそうだし、実際の舞台に立ったら、もう必ずみんな元気になっています。病気になってから治すという発想じゃないのです。 要するに何かというと、いのち輝くと言った中で、中村先生の話にもありましたけれど、楽しいということは本当に大事です。楽しく生きると、皆が元気になってくる。生きがいとかそういうのは、例えば、おじいちゃんが孫の前で「おじいちゃん、芝居をやったよ」、「おじいちゃんすごいね」みたいなそんなコミュニケーションで、また元気になってくる。そういうことを、我々は仕掛けてやっています。

 リテラシーの話もありましたけれども、高校生用の教材を作っています。これは「ME-BYO」というものです。実は、コロナでいろいろなことを仕掛けていたのが、ちょっとストップしてしまったのですけれど、高校生用の未病の学習教材は、本当に面白いですよ。未病改善のためには食・運動・社会参加が大事です。では、なぜ社会参加が大事なのか、皆で話し合って書いてください。こういうふうなテキストなんです。高校生が、それはどういうことなのかということを話し合いながら、行動を変えていくということをやっていて、それで健康観、未病観というのを広げていこうとしています。こういったことを、これからさらに進めていきたいと思っています。

参加者1

 中村先生と知事の話を伺って、本当に嬉しく思っています。中村先生の言うチームの中に、色々な企業が入っていましたけれども、できれば、吉本興業みたいなところも入れると面白いのではないかと思いました。また、黒岩知事がご出身のフジテレビの、例えばFNS歌謡祭などの音楽番組を見ると、もうそれだけで多くの方々が青春に戻ったりすると思うので、そういった関係者も仲間に入れるといいのではないかと感じました。あと、健康というと、WHOの定義は、私はとても素敵な定義だと思うので、病気であるのかないのかだけで判断するのではなくて、その辺も皆さんで共有していただければ、また違うリテラシーもできるのではないかと感じました。本当にありがとうございました。

知事

 吉本興業などは、真面目にそのような研究をしているので、吉本興業と県は実際に今、連携しています。ありがとうございました。

参加者2

 私は視覚障がいがあり全盲で、今日も盲導犬を連れてきています。この子とは、まだ一緒にスタートしたばかりで、あと7、8年は健康であれば一緒にいけます。私は、それから後も、盲導犬と一緒に社会参加をして、いろいろなことをしたいと思っているのですけれども、日々、この子の健康管理がちゃんとできるかどうか、少し心もとないところもあるのです。例えば盲導犬ロボットなんかを研究されていますけれども、私が想像するものというと、ペンギンみたいな感じでよちよち歩くのでは、一緒に歩けないなと思ったりもします。

 先ほど、中村先生がHAL®と言っていた着るロボットですか、何かそういうものをおっしゃっていましたけれども、そういうものが、脊髄損傷の方だけではなくて、私たちのような、社会参加がなかなか1人ではできない人たちに向けて、例えば、ズボンを履いただけで、膝や腰が悪い人が上手く歩けるようになるとか。それから、私のようなものは、一緒に歩かないといけないので、今、私が盲導犬をつれているように身軽に歩いてくれるロボットみたいなものがあって、未来に向けて活躍できるようなことができればいいなと、今日のお話を聞いて思いました。その辺の展望はいかがでしょうか。

中村教授

 ご質問ありがとうございます。2つ答えを考えていたのですけれど。もちろん、視力を失った方は、いろんな意味で大変な生活をされていると思います。

 1つ目は、今はまだ少し時間が必要かもしれないですけれど、再生医療で視力を戻すことも、近い将来、必ず出来るようになると私は思っています。もちろん、視覚を失われた方にはいろんな病気のパターンがあるので、どこが障がいされているかによっても治すアプローチは違うのですけれども、私と一緒にずっとディスカッションしていて、殿町にも参加いただいている高橋真代さんは、iPS細胞を使った網膜色素変性症の世界で初の移植をされた方です。彼女は、本当にそれを目指して日々研究を続けていますから、それが1つのアプローチになると思います。

 2つ目は、ご自身もおっしゃっていましたが、最近のテクノロジーはすさまじく発展していて、もうロボット型の盲導犬は、私は現実的に、テクノロジーとしてはかなり近いところにあると思っています。ただ、本当に盲導犬と完全に置き換えることができるかというところは、感性というか、機械では越えられない、盲導犬の持つ温かさだったり、心の繋がりだったりというところが、ロボットでどこまで近づけられるかというハードルは、まだなおあります。目的が自身の視覚を補うような働きをするロボットというのは、技術的にはかなり高いレベルに来ているので、ペンギンさんがよちよちというのではなくて、しっかりと盲導犬のように動き、正しい方向を自分のカメラで察知し、ちゃんと誘導するというのは、私は、技術的には近い将来はできると思います。ただ、人と盲導犬との絆とかはロボットではなかなか難しいかもしれないです。これが2つ目ですが、お答えになっていますでしょうか。

知事

 私は、当事者目線という言葉をよく使っているのですが、今のお話の中で、私はこんなロボットがあったら嬉しいんだけど、とおっしゃっていました。これは、すごく面白い。面白いというか、まさに当事者の生の声です。テクノロジーはいろんな障がいを補ってくれます。これから、どんどんそういう世界になってくると思います。今みたいな、当事者の気持ち、こんなロボットがあったらいいのにというその気持ちをしっかり受けとめて、技術者がしっかりと開発するという流れです。ですから、もうどんどん、こんなことがあったらいいな、さっきズボンを履いたら、それだけで歩けるようになればいいなという話もありましたが、こういう発想はすごく大事だと思います。どんどん、そういう発信をしていただきたいと思います。ありがとうございました。

参加者2

 あと一言、実は私が、今、一緒にいるこの子、神奈川県の今年度の盲導犬の5頭の貸与制度の中の5頭目がこの子なのです。ということで皆さん、後で、犬の目を見ないで、そっと覗いてみてください。この子が、神奈川県が貸与してくれた子です。ありがとうございます。

参加者3(高校生)

 今日は、本当にありがとうございました。私は将来、看護師になりたいと考えています。ヘルスコモンズ共生社会の中で、AIやデジタルサービスと協働していく上で、看護師の役割は変化してしまうのかなと、どのように変化していくのかということが気になりました。

中村教授

 すごくいい質問です。医療の現場で、どういうことが起こっているかというと、現場の看護師、医師もそうなのだけれど、看護師の皆さんもすごく大変です。気持ちはお一人ひとりに寄り添って、しっかり目配せしたいのだけれども、勤務体制であったり人手不足であったり大変なのが現状で、そのために何が起こっているかというと、離職したりするということが現場で起こっている。

 看護師さんも介護士さんもそうなのだけれども、私が思っているAIとか、そういったテクノロジーを活用することで、何が出来るようになるかというと、現場での業務負担が減るのです。例えば、ウェアラブルデバイスを一人ひとりの患者さんにつけたり、或いは、デバイスを先生の家の部屋の中につけたりしてもいいのだけれど、ベッドセンサーも然りで、それによって、ちゃんと機械がモニタリングしていれば、巡回をいちいちしなくても、自動的にアラートが出たらすぐにその人のところへピンポイントで行けばいい。そうすると、定期的にグルグル巡回なんて夜間しなくて済むし、少ない人でもカバーできる。だから、テクノロジーによって現場のやるべき仕事が、機械的な部分は機械がしっかりとサポートして、看護師さんがやることは、もっと人として一人ひとりに寄り添うような、そういった部分にエフォートをもっと割いていく。カルテの記録だとかに時間を割くのではなくて、それは音声で話せば全部カルテに記載されて、巡回するような労力もセンシングデバイスを用いてしっかり寄り添うような形になる。

 実は、慶應病院はAIホスピタル事業という国から指定された4つの病院のうちの1つで、すごく色々な試みをしているのです。今、もう現場にそういったものが導入されてきています。それが医療・看護において、近い将来そんな遠くないです。今もう既に実証されているシーズがたくさんあるので、そういった体制に変わっていくと思います。

知事

 看護師を目指してやっているっていうのは、すばらしいと思います。私も看護師をテーマにしたドキュメンタリー番組を、ずっとフジテレビで作っていました。私は、先ほどから目線とずっと言っていますけれど、目線という言葉を教えてくれたのは、実はナースなのです。その番組の中で、病院の救命救急センターに配属された8人の新人ナースを、3年間ずっと追いかけました。3年後にまた取材カメラが入った時に、最初の8人だったのが3人になっていました。その3人の方も、他の病棟へ行ったりして、1人だけ残っていたナースのシーンを撮っていたのですが、そのナースが、ICUで、全く意識のない患者さんに話しかけている。意識がないのに話し掛けているのはすごいなと思って、何を話しているのかと尋ねたら、そこにあるベッドに上にあるモニターを説明しているのです。

 私は、そのシーンを見て、すごいな、こんなにも頑張っていると、「意識のない患者さんに話しかけるナース」とナレーションを入れたのですけれども、それをスタジオで見ていた当時の日本看護協会の南裕子さんという会長さんが、「あのナース、成長しましたね」って言った。そして、「なぜ、彼女がモニターを説明したか分かりますか。それは、患者さんの目になっているからです。ナースは、こちら側から患者さんを見ていますよね。それも大事で、外から見る目も大事なのだけれど、パッと置き換えて、患者さんの目になって、この患者さんの目に何が映っているのかなって自分で考えて、それを説明しているのです。それが看護の目です。」と言ったのです。すごいなと思いました。

 よく考えてみると、看護師の目はそれだけじゃ駄目ですよね。その患者さんの目にパッと置き換えることも大事ですし、天井から見ている目、1人の患者さんだけを見ていても駄目だから、あちらからはこうで、こちらからはこうだという、全部をパッと切り換えられる目とかね。それと、人間全体をこっちからこう見る目などパッパッパッと切り換えていくということができるナースが素晴らしいナースだということ。この部分は、AIがどうなろうがテクノロジーがどうだろうが関係ない。ここは、人間の、ヒューマンの部分です。そういうのはとても大事にしていただきたいと思います。

参加者4(高校生)

 本日はこのような貴重な機会を設けてくださりありがとうございます。私自身、要介護の人と生活していたことがあるのですけれど、介護のヘルパーさんが家に来たときに、私自身、家の中に知らない人がいることにすごくストレスを感じていました。要介護の人にとっては、ヘルパーさんはすごくありがたいものだと思うのですけれど、その周りの家族とかにとって負担にならないように要介護の人と生活していくにはどうしたらいいと思いますか。

知事

 これはすごくリアリティのある話だけど、答えるのは難しいですね。確かに。相性もありますしね。このヘルパーさんは相性が良いけどこのヘルパーさんは嫌だなって、人間同士のつき合いですから。そういうのもありますので、どうすればよいかっていうのは、どうしますかね。

中村教授

 確かに、プライベートな空間で、ご家族がいて、その介護を必要とする家族がいて、そこに介護されるケアの方が入ってくるっていうことは、やはり、自分たちの空間に知らない人が入ってくるわけだから、当然、家族の方にとってみれば、ある一定のストレスがあるというのは理解できます。

 私はもちろん、テクノロジーとか、例えば介護ロボットができてくる時代はもう近いと思っているのです。だけどそれよりも、今の課題に直結するのは、医療であろうが看護であろうが、介護であろうが、一番大事なのは人と人との心の繋がりなんです。先ほど知事もおっしゃっていたけれど、型通りに、例えばマニュアルに従って介護していますというと、やはり心と心が繋がっていないのですよ。そうすると、ご家族にとっても介護を受ける方にとっても、一定の距離ができてしまうと私は思うのです。

 やはり、社会の中で、これはもう医療・介護だけの話じゃないけれど、一番大事なのは人と人の心の繋がり、信頼関係とか、そこが一番大事だと思っています。そこを気づけない介護士の人が来たら、それは替えるしかないと思います。それはお互いにとって不幸だから。替えればそれで次が必ずうまくいくのかというのは難しいのだけれど、介護士の方もそういった気持ちで、その介護の現場に行く。そういうところは、人というのは、やっぱりロボットではできないところというのは、こういう心と心の繋がりや触れ合いだと思うので、そういった部分で解決するのは、私は直近の一番のソリューションではあると思うのだけれど、将来的には人ではなくて、そういったロボット、テクノロジーがその役目に置き換わるっていう時代はあるけれど、それですべてが解決できるとは私は思ってないのだけれどね。これが答えになっているかどうかは、ちょっと分からないですけれど、今、私が答えられるのはそのぐらいですかね。

知事

 そうですね。そういう思いを持ったときに、自分で抱え込まないで誰かに相談できるという、そういう感じがあると救いになるかもしれないですね。ありがとうございました。

参加者5(高校生)

今日は長い時間、たくさんの面白いお話、ありがとうございました。私は、海外の映画とかを見ている中で、科学技術が発展すると、人と技術が敵対したりとかして、自分たちがもっといいように、自分たちの生活を支援してくれるっていうイメージがあまりなかったんです。けれど今回の話を聞いて、自分たちを助けてくれる存在っていうことを知ることができたので、すごくいい学びになりました。

 最初の方に(中村先生が)、高齢者1人あたりを支える人の割合が減っているという話をしていたと思うのですけれど、怪我や病気をした人への助けをしてくれるロボットとかは、今、どんどん開発が進んでいるっていうことを今日知ったのですけれど、そうではない普段の生活を送っている人に対する支えとか支援をしてくれる技術に、今どんなものがあるのか興味があるので、あれば教えて欲しいです。

中村教授

 かなり広い範囲の質問ですので、ものすごくたくさんあるのです。

 例えば、私は整形だから、運動器ということで、今日話した内容でいうと、転倒というのは、高齢者にとって、たかが転倒ではなくて、転倒がきっかけで寝たきりになって、要介護になって、命まで落としてしまうということがある。なので、転倒を防止するような見守るサービス、センシングデバイスは山ほど出てきています。

 例えば、歩行のパターンを赤外線カメラとかで撮って、或いはウェアラブルデバイスで歩行パターンを解析して、こういうシグナルが出たら転倒するリスクが90%ありますとか、この状態だったら40%ですとか、そういう技術ができています。生活の中に、監視されているというのではなく、何気なく着けているスマートウォッチとか、いろいろなデバイスが開発されているので、それによって見守るサービスはかなり出てきています。

 あとは、例えば、認知症ではスマートミラーといって、鏡の向こう側にカメラがあって、毎朝、顔を洗う時に洗面台の前に立つと、その表情で鬱や認知症を予測する技術も出てきています。あとは、話す言葉や会話の言葉、この言葉の使い方で認知症を予測するとか、ロボットだけではない様々なデータを活用した寄り添うサービスができています。

 ほかには、例えば、ロボットスーツHAL®という話もあったけれども、歩行支援ロボットだって相当出てきているし、サービス会社だけに偏った話ではなくて、日本が牽引する新たなロボット技術は、私達のチームには東京工業大学の先生、慶應義塾大学の理工学部の先生、理化学研究所の人も入っていて、そういった方々と、様々なセンシングデバイスロボット技術を駆使したシーズ、種が、いっぱいできてきています。答えになっているかな。

 驚くべきは、寄り添うロボットといって、人が朝、起きてくると、リビングに置いてあるそのロボットが人に話し掛けるの。話し掛けて、その人がどういう回答をするかによって、ロボットがいろんな疾患を予測するというのもできているのです。すごい時代ですよね。これは、そう遠くない話をしています。

知事

 ロボットというと、何か人間のような形のイメージですが、ロボットもいろいろですよね。MIMOSYS(ミモシス)®というのがあって、これは声の分析なんです。声だけで、心の未病状態が分かるというもので、これ東京大学の先生が開発したものなんですよ。神奈川県の「マイME-BYOカルテ」というアプリの中に入れてあります。人間の声は、その脳と直接繋がった波形が出てくるっていうものです。後ろから急に首を絞められたら、きゃっ、と言うでしょ。あれは脳に直結した声です。ところが人間は声を作ることができますよね。元気そうに話しているけれど、実は落ち込んでいる、というのが、波形を調べると出てくる。それを全部データ解析して、声だけで心の未病状態がわかるものを開発しました。これ皆さんも使えるんですよ。「マイME-BYOカルテ」というのは、県のホームページからすぐ入れますからね。その「マイME-BYOカルテ」の中に、未病指標があります。

 「未病指標」というのは、未病状態はどれぐらいなのか。一番悪い状態が0、一番良い状態が100。簡単ないくつかのチェックによって、未病指標の数字がポンと出るんです。それを見ながら、指標が少し悪いから何とかしようと、自分で行動を変えていこうということに繋がってくる。そのチェックの中の1つに、そのMIMOSYS(ミモシス)®というテクノロジーが入っています。これは面白いですよ。これも世界から注目されて、今、データをどんどん分析している最中で、もう大体見えてきたとお話しされていました。認知症というものは、白と赤に二分されるものではないですよね。認知症ではない人が突然認知症になるということはあり得ないんです。大体10年以上かけて、だんだん、だんだん、進んでいくという印象です。なるべく早い段階で認知症がわかれば、進行をゆるやかにすることが期待できます。その人の声だけで、認知症の初期のレベルはこの辺だってことはわかるようになってきています。そういうことによって、科学技術をうまく取り込んでいくということは大事だと思います。素晴らしい指摘でしたね。ありがとうございました。

参加者6

 現在、私の祖母が植物状態なんですけど、今回の中村教授の話で、脊髄が再生できるという話でしたが、それって植物状態も直ったりするんでしょうか。あと、他のどのような病気が治っていくのかっていうのを知りたくて質問させていただきました。以上です。

中村教授

 この私の話を聞いて、自分のおばあちゃんがそういう状態だっていうのってね、ものすごい強い思いに繋がるんです。他人ごとじゃなくて自分事として捉えるでしょう。植物状態っていうのも、様々な病態が入っているから、どういう原因でそういった状態になっているかっていうことによって話はかなり、違ってくるんだけど。例えば、その脳の状態がね、悪くなって植物状態になっているとすれば、どの部位か、っていうことにもよるんだけど。

 私たちが目指している脊髄の再生っていうのは突破口に過ぎなくて、今まで駄目だと言われた中枢神経の再生なんです。ということは、脊髄がもし直せれば、脳も直せます。なので、私たちが脊髄損傷の次に考えているのは、脳卒中や脳出血、脳梗塞いずれも入っているし、今まで治せなかった神経変性疾患という神経が壊れていくような病気、筋萎縮性側索硬化症という体の中の運動を支配する神経細胞がどんどん死んでいっちゃう病気があるんだけど、本当に苦しい辛い病気なの。だんだん、だんだん動けなくなって、最後は呼吸ができなくなって亡くなってしまうというALSという病気。それだって治療ができるんじゃないかと思っています。

 あとは、多発性硬化症といって、中枢神経の中のある特異な細胞、それがどんどん壊れていってしまう病気、これも若年者で若い人で重症化するケースがどんどん増えてきているんだけど、それも、iPS細胞を使う大きな強みというのは、その失っている細胞に、特化して分化誘導ができるので、なくなった細胞を補うことで、細胞置換と私たちは言っているんだけど、それができるようになれば、中枢神経の再生はかなり現実的なものになっていくと思っているから、私たちの脊髄再生はその突破口に過ぎません。

 だからおばあちゃんにも近い将来ね。近くはないかな。私、あんまり期待だけ煽ってはいけないから、病態がわからない中であまりこう希望的観測で物を言ってはいけないけれど、そういったサイエンスが不可能を可能にする時代は近くまできているということだけメッセージとして伝えさせてください。

知事

 そういう希望を持って言って差し上げてください。

参加者7

 ありがとうございます。知事が健康長寿で食と運動と社会参加っておっしゃったので、ぜひ、やっていただきたいなと思ったのが、市民農園とかにソーラーシェアリングみたいにしてソーラーをして、そうしたら食を作って、そして農作業で運動して、そして、社会参加、ソーラーシェアリングを使っているってこと自体が脱炭素に貢献しているし、コミュニティでみんなが集まってきて、もしかして若い人とかも作業とかして、社会参加になるかなと思いました。

 思い至れば、知事が、知事になる最初の時に、神奈川県のすべての家に太陽光みたいな感じのことをおっしゃって、今、川崎市とか東京とで義務化すると言っているけど、私は、神奈川県知事がもっと先にそれを言っていたと思っているので、太陽光は住宅もだけれど、そういうソーラーシェアリングも、いいなあとか思って、つい最近、ペロブスカイトの会社と、何か締結されたとかいうニュースもあったので、そういう科学技術の食と運動と社会参加と長寿と、掛ける科学技術で、何かやっていただきたいなと思ったので、お考えをお聞かせください。

知事

 いや、素晴らしいですよ。本当に私が拍手を送りたいくらいです。私が知事になったのは12年半前ですけれど、ちょうど東日本大震災直後だったんですね。当時、計画停電していましたね、福島第一原発で大変な事故が起きたという中で、じゃあどうするのかと。今すぐ福島第一原発を動かすことはできないというときに、これは早く新しいエネルギー体系を作らないといけないということで、やはり太陽光だ、太陽光発電だって。

 当時、街に出て太陽光発電だと言ったんですけど、皆さんキョトンとしていたんです。家にある温水が出る太陽熱温水器でしょ、と言われた。そうじゃない、太陽熱で温水を出すんじゃなくて、太陽の光を電気に変えて使えるんですよと言ったら、何で光が電気になるんですかって聞かれたので、ソーラーパネルを借りてきて、これが電気を作るんですよ、これを全部の家の屋根につけられたら、設置費用はかかるけども、売電収入と言って、発電した電気を電気会社に買ってもらえるから、結果的には電気がタダで作れる状況であるんだからと説明しました。これだったらもう全部の家がつけるだろうと思って、そう言ったんですけど、なかなか大変でしたね。時間がたつとだんだん熱が冷めてくるっていうのもありました。そうしたら、薄膜太陽電池が出てきたから、これならいいぞ、どこでも太陽電池を貼れるぞと思ってやったんだけれど、実はコストがすごく高くて、発電効率もすごく低いという状況で、なかなかうまくいかないなあと思っていたら、ペロブスカイト型太陽電池が出てきたんですよ。

 これは新しい薄膜太陽電池で、実は昨日、日揮株式会社という新しいペロブスカイト型太陽電池を作っていらっしゃるメーカーと実証実験をやっていこうと協定を結びました。これすごいですよ。曲面でもどこでも貼れる。だからどこでも太陽光発電ができます。例えば、将来の話だけれど、車のボディにこれを全部貼ったら、それだけで車が走るって信じられますか。そういう時代がテクノロジーの進化でやっと来たっていうことですからね。これを神奈川県でも、私は、前から言ってできなかったことで大きな課題と思っていたので、やっとその時代が来たか、そう感じるところであります。皆さんとともに最先端のエネルギーの普及を神奈川県で目指していきたいと思います。ありがとうございました。

参加者8

 このような時間をいただきましてありがとうございます。私、高校時代、ラグビーをやっていまして、菅平で、自分も大きなけがをしたので、医療の皆様には感謝申し上げております。

 1つ、2つご質問させていただきたいのが、地域社会の活性化も、長生き健康長寿で不可欠だということだったんですけども、私の住んでいる町内会で、町内会のお祭りがあったんですけれども、今年からお祭りが中止ということになりました。その理由が、高齢化して担い手がいないという、結構、最近耳にするような課題が自分の地域でも来ているなというところがありますので、そこを行政と医療とでどういうふうに取り組んでいけるのかなっていうことが一つです。

 あと、自分は農業系の大学を出たんですけども、やっぱりそこで新しいことをやろうとすると、どうしても現場とのギャップが出ると思うんです。そこのギャップをどうやって埋めていくのか。あと、それを一般人、自分たち一般人がどのように受け入れていけばいいのかなっていうのをご教授いただければと思います。

知事

 はい、ありがとうございます。いろいろ政策を見ている中で、やはりコミュニティというのはものすごく大事だということをつくづく感じますね。横浜市に若葉台団地という団地があって、高齢化の進み方がものすごく速いんです。もう52%超えているぐらいです。15年間ですごい勢いで15%増えているんだけど、びっくりするのは、要介護認定率、介護を必要とする人の率が全然15年間で増えてないんですよ。全国平均を下回っているんです。

 その理由が知りたくて現場へ聞きに行ったら、コミュニティですね。自治会がすごくしっかりしていて、多世代が交流する場を作っていて、いろんなスポーツイベントや文化イベントを仕掛けているんです。そのことによって、奇跡のような、つまり、元気な高齢者が楽しく過ごしているという団地ができ上がっているんですね。

 だから祭りが中止になるっていうのは、まさにそれと逆行する話だと私は思いますね。そういうことを調べながら、県として何ができるか、ちょっと考えたいと思いますね。こういうのが大事だと私は思うんですよ。祭りによって、みんながひとつの何かイベントをやることによって、また改めてコミュニティが再生してくる。そういうのがなかったら、だんだん、だんだん皆閉じこもっていってしまって、コミュニティがどんどん廃れていくっていうことになりますよね。まあ、お祭りというのは基本的には市町村が担当するものでありますから、県がというよりも、市町村とどう連携しながらやっていくのかということは大きな課題だというふうに思っています。ありがとうございました。

 それから、農業系の大学で現場とのギャップというお話がありましたけど、意味がよくわからなかったんですが、現場とどういうギャップなんでしょうか。

参加者8

 すみません。ありがとうございます。ちょうど先ほどおっしゃっていた太陽光発電と農業に取り組もう、と考えたときに、やはり農業って太陽が大切なので、上につけてしまうと、農作物が育たなくて、結局、耕作放棄地になってしまって、何もできなくなってしまう、ということがあります。要は、先生方とかがこういうふうにやれば理論上はできるっていうものと、現場で取り組んだときに、やっぱり収量が落ちて結果的に販売できないものができてしまう、というギャップがどうしても生じてきてしまう、そういうところです。

知事

なるほどね。これもね、目線というのがすごく大事だと思うんですね。これからまさにおっしゃった農業、そこでやったのがその目線っていうのを無視して、これやりましょうよってバーンと作られたら、ちょっと待ってくれみたいになってしまう。この目線をどこに置いて物事を考えて作っていくかということは、非常に重要だと思いますね。

まとめ

知事

 皆さんと話をしているうちにあっという間に時間が過ぎてしまいました。どうですか、高校生がどんどんこうやって発言してくださるということで、嬉しいじゃないですか。これは高校生、現役の高校生と、ご高齢の方も一緒になってこうやって議論するという場、というのはなかなかないことじゃないですか。私は、これがこの対話の広場の一番大好きなところなんです。

 今日はテクノロジーに焦点を絞って、いろいろな議論をしました。ただ、よく考えなきゃいけないのは、何をゴールにしているか、ということです。何をゴールにしているのか。科学技術はどんどん進歩して、具合の悪い臓器をどんどん取り替えて、駄目になった細胞はどんどん再生して、死なない社会を作ろうと思っているんでしょうか。

 違いますよね。ここは大きなポイントだと思うんです。いろんな病気を克服しますよ、障がいを克服しますよ、でも死なない社会を作ろうと思っているんじゃないんです。じゃ何なんだと。

 いのち輝く社会です。最後の最後まで、いのちが輝く社会です。

 これは亡くなった日野原重明先生と私はずっと懇意にしていたんですけれども、日野原先生が目指しておられたのは、まさにそう。いのちが輝く。逆に言うと、いのちはいつか終わるんです。そういうことをちゃんと考えるということも大事だという、いのちに向き合うというのはそういうことなんですよ。

 いのちは、でも回っている、いのちは巡る。本人が亡くなっても、みんなの記憶の中に息づいているんです。これは、いのちはめぐるということだけれども、そういうことも含めて、今日は全くその話はしていませんけれど、死生観というか、いのちとは何なんだ、逆に死ぬとはどういうことなんだ。生きるとはどういうことなんだ。

 そういうことがまずベースにあった上で、こういったテクノロジーの力によって、その不便をどう乗り越えていくのかと、こういうことだということを、最後に今日の総括としてお示しさせていただきたいと思います。

 今日は最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

 中村教授、ありがとうございました。

(以上)

このページに関するお問い合わせ先

政策局 政策部情報公開広聴課

政策局政策部情報公開広聴課へのお問い合わせフォーム

川崎駐在事務所

電話:044-549-7000

ファクシミリ:044-549-7222

このページの所管所属は政策局 政策部情報公開広聴課です。