第28回「黒岩知事との"対話の広場"Live神奈川」開催結果

掲載日:2021年10月13日

概要

28回写真

 

テーマ

持続可能な神奈川に向けて

第3弾:「健康長寿に向けた未病改善」

~健口(けんこう)習慣を広げるには~

日時 令和元年11月11日(月曜)18時30分~20時
会場 神奈川県庁本庁舎3階大会議場
参加者数 135名

※参加者配布資料はこちらからダウンロードできます。

1 次第

2 事例発表資料 飯島 勝矢氏

3 事例発表資料 佐藤 哲郎氏

実施結果(テキスト版)

1.知事のあいさつ/ゲスト・プレゼンテーション

2.意見交換

 

1 知事のあいさつ/ゲスト・プレゼンテーション

司会

 皆様こんばんは。本日はお足元の悪い中、当会場にご来場いただきありがとうございます。ただ今から、第28回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」を開催いたします。

 本日は、知事のあいさつ、ゲストのプレゼンテーションに続き、会場の皆様との意見交換と進めてまいります。まず、本日のゲストをご紹介いたします。

 東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島勝矢様です。どうぞよろしくお願いいたします。

 一般社団法人神奈川県歯科医師会常務理事の佐藤哲郎様です。どうぞよろしくお願いいたします。

 また本日は、県と未病対策の推進に関する連携協定を締結しているサンスター株式会社にご協力をいただいております。サンスターグループ研究開発本部新規事業研究開発部新規事業開発プロジェクトリーダー藤澤考一様です。

 ここで、皆様にお伝えしたいことがございます。

 神奈川県では、3年前の平成28年7月26日に県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」で発生した大変痛ましい事件を受けて「ともに生きる社会かながわ憲章」を、神奈川県議会とともに策定しました。本日はここで「ともに生きる社会かながわ憲章」を読み上げてまいります。

p31vol28-0ともに生きる社会かながわ憲章

一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします

一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します

一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します

一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます

 平成28年10月14日神奈川県

ともに生きる社会かながわ憲章ロゴ そして、こちらは憲章の更なる普及と理念の浸透を図るために、先月新たに作成した「ともに生きる社会かながわ憲章」のロゴデザインです。「多様性」や「つながり」をイメージしていただけるよう、糸で紡いだ織物やSNSなどで用いられるハッシュタグをモチーフにしています。今後、様々な機会に皆様の目に触れて、憲章の理念を思い起こしていただけるようにしてまいります。

 それでは、お待たせいたしました。黒岩知事からごあいさつを申し上げます。

知事

 こんばんは。足元が悪い中、わざわざお越しいただき誠にありがとうございます。

 私は、この対話の広場でいつも動きながらしゃべりますが、今日歩き方が変なのは、昨日横浜マラソンに出たからです。フルマラソンです。65歳ですが、何とか完走しました。最後は死ぬかと思いました。まだ足にダメージが残っていてガタガタ歩いていますが、お許しいただきたいと思います。

p31vol28-1 この対話の広場は年間の共通テーマを設けています。今年は「持続可能な神奈川に向けて」です。神奈川県知事に就任してからずっと言い続けてきたのは、「いのち輝く神奈川」ということです。ひらがなで書いた「いのち」です。いのちが輝くには何が大切でしょうか。医療が充実していれば、いのちが輝きますか。食の問題、安心・安全な食がなければならないし、それを作る農業がしっかりすることも必要ですし、エネルギーの問題も大事です。いのち輝く神奈川環境も、汚い水、汚い空気では、いのち輝かないです。労働、環境、産業、まちづくり、教育、共生。それらがすべてつながらないと、いのち輝かないですね。

 国は全部担当する省庁が違いますので、どうしても縦割りになってしまいます。例えば、医療とまちづくりを一緒に考えることはできないのでしょうか。考えてみるとつながっていますよね。医療と環境の問題もそうです。これらを全部つなげて考えることが大事で、だから「いのち輝くp31vol28-3神奈川」でいこうと考えていたら、国連がこのようなことを掲げました。SDGs。「持続可能な開発目標」という言葉です。今のままだと地球は持続可能ではなくなってしまうという危機感でもあります。だから今のうちに変えなければならない。その中で17のゴールが設定されています。「すべての人に健康と福祉を」、「質の高い教育をみんなに」、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「住み続けられるまちづくりを」など。「いのち輝く」と同じではないかと思いました。国連もようやく気が付いたなと思いました。

p31vol28-4 神奈川県はSDGsの最先端自治体を目指そうと取り組んできたら、「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」に選ばれました。「自治体SDGsモデル事業」では、日本の10の自治体がSDGsの最先端の自治体に選ばれ、そのうち、都道府県としては神奈川県だけが選ばれました。県内の自治体としては、横浜市と鎌倉市も選ばれました。第2期として2019年に「自治体SDGsモデル事業」に選ばれた都道府県はありませんでした。「SDGs未来都市」の第2期に選ばれた県内の自治体は、小田原市と川崎市です。現在、県内で5つの自治体が選ばれています。神奈川県はSDGsにおいて、群を抜いて前に進んでいるのです。2018年には政府から「SDGs未来都市」選定証をいただきました。

p31vol28-6. SDGsをもっと分かりやすく皆に説明できないかと思っていましたら、昨年夏に、シロナガスクジラの赤ちゃんが、鎌倉の海岸に打ち上げられました。何事が起きたのかと思いました。こんなことは今までありませんでした。おなかを開けてみたらプラスチックのごみが出てきました。「これだ」と思い、「かながわプラごみゼロ宣言」を行いました。クジラが教えてくれたのだ。クジラからのメッセージだ。2030年までに、リサイクルされない、廃棄されるプラごみをゼロにしよう。クジラが涙を流すイラストを作り、今キャンペーンを行っているところです。自分ごととしてとらえましょう、ということです。

SDGs日本モデル宣言 SDGs日本モデル宣言を神奈川県が行って、賛同自治体が147になりました。このようなことが国連からも注目さp31vol28-8れ、この夏、国連本部から招待を受け、神奈川県が日本代表として国連の場で発表する機会を得ました。

2015p31vol28-9 今、高齢社会の中で、我々がやっている、いのち輝く取組、未病を改善する取組、これらは世界中から注目されています。なぜ注目されているのかが、この図を見ると分かります。60歳以上の人が30%を占める地域というのが黒くなっているのですが、2015年、世界中で日本だけが真っ黒です。ところが、5年ごとに世界はどうなるのか見てみましょう。2020年、2025年、2030年、2035年、2040年、2045年、2050年、圧倒的に北半球で高齢化が進みます。日本は世界の中でも高齢化の最先端で、高齢社会の課題が一番見えています。その日本の中で、一番高齢化する速度が速い県は神奈川県です。神奈川県でどう取り組むのかがモデルになります。

p31vol28-10 これが神奈川県の人口の形です。1970年はこのような形でした。85歳以上の方はこれだけでした。2050年を見てください。一番多い年代が85歳以上です。特に女性が多いですね。これを見ると、今のシステムのままでは崩壊してしまうことが分かります。高齢者の方は病院に行くことが多いですが、こんなに大勢の人が病院に行くと病院は機能しなくなります。それを変えなければならない。そのためのキーワードが未病です。

p31vol28-11p31vol28-12 私たちは病気と健康を分けて考えがちですけれど、そうではなく、未病というのは、白(健康)から赤(病気)へグラデーションでつながっています。だから病気になってから治すのでなく、未病の中で少しでも白い健康の方に持っていきましょうということです。そのためには何が大事でしょうか。

p31vol28-13 食、運動、社会参加が大切だということです。「食」というと、何を思いつきますか。テレビでもいろいろ取り上げられていますね。こういうものは健康に良い、こういうものを食べたら良い、と。食に対して日本人は関心が高いですよね。とても大切なことです。大切なのだけれど、よく考えてみてください。どんなに栄養、機能のある食があっても、食べられないと効果はありません。食べられないということはどういうことですか。口腔機能、かむ力、飲み込む力に関係があります。p31vol28-14これが今日の大きなテーマです。オーラルフレイル。口から健康になるということです。虫歯がないということではありません。神奈川県のこの取組は、日本の中で突出して進んでいます。食、運動、社会参加。食のところにオーラルフレイルがあります。

 笑いあふれる、100歳になってもいのち輝いて、みんなが笑っているような、そんな社会を目指していきましょう。その中の大きなテーマがオーラルフレイルです。それでは、これからゲストの専門家のお話を聴いてみましょう。ありがとうございました。

司会

 黒岩知事、ありがとうございました。続きまして、ゲストにプレゼンテーションをしていただきます。

 お一人目は、東京大学高齢社会総合研究機構教授飯島勝矢様です。飯島様は、老年期の諸問題を医学・生物学・心理学・社会学などの面から総合的に研究する「老年学」ジェロントロジーや老年医学を専門とし、研究活動を行っていらっしゃいます。また「フレイル」及び「オーラルフレイル」を提唱され、その研究に取り組まれるとともに、ささいな口の衰えが全身に大きな影響を及ぼすことについて多くの人に分かりやすく伝えていくため、テレビ出演や各地で講演を行うなど、全国的に活動されています。それでは飯島様、よろしくお願いいたします。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 28ijima1飯島と申します。貴重な機会をありがとうございます。スライドを見てください。「国家戦略としての『フレイル対策』」と書いてあります。キーワードはやはり「未病対策」、そして「健口(けんこう)」です。「健康」ではありません。「健口(けんこう)」です。口の重要性、歯だけではなく、しっかりかんで、しっかり飲み込むということです。また、人としゃべるなど、口にはいろいろな機能があります。口をいつまでも元気にすることは、健口長寿のメインストリーム(主軸)なのだということについて、今風にメッセージ化したのが「オーラルフレイル」という言葉です。しかし「フレイル」という言葉がよく分からないと「オーラルフレイル」も理解できません。そこで「フレイル」そして「オーラルフレイル」というものを世の中に出し、皆さんに知っていただこうと取り組んでいます。

 今、東京大学で「高齢社会総合研究機構」という組織に所属しております。これは正に知事が冒頭で話された、「医療とエネルギー」、「医療と環境」、医療の隣に食があるのを私は見逃しませんでしたが「医療と食」、それらを全部まとめてやろうと学部横断型で取り組む組織です。専門分野も関係なくオールで、さらに、産業界の方々ともオールで、高齢化社会のまちづくりをどう次のステージに移すのかということを推し進めており、そのリーダー役をやっています。ベースは老年医学であり、東大病院の医師です。

 さて、「総合知によるまちづくり」と掲げています。なぜこの「オーラルフレイル」、「フレイル」、「健口」、「未病対策」を、まちづくりの中でやらなくてはならないか、ということについてお話したいと思います。ちなみに、フレイルという言葉を初めて聞いた方、手を挙げてみてください。一方で、理解度はまちまちだけれども、何回か聞いたことがありますよ、という方、手を挙げてみてください。ありがとうございます。がんばってきたかいがありました。記憶に新しいのですが、先日の10月末、大手新聞の1面に「後期高齢者、来春からフレイル健診開始」と掲載されました。フレイル対策が国家プロジェクト、国家戦略となります。私も制度設計に一から関わり、厚生労働省の方と一緒に作ってきたもので、いよいよそれが始まります。

28ijima2 フレイルは、簡単に言いますと、「虚弱・老い」という意味です。いわゆる、何でもかんでも健康だ、大丈夫だ、というわけではなく、いろいろな衰えが出てきている状態のことです。それは、ぎりぎり人の手を借りてやっと生活できる状態でもなく、健康・剛健と要介護の中間の時期、一人一人が持っている中間の時期で、しかも、頑張れば機能を戻せる、可逆性のある時期のことです。その可逆性が、他の人の手によって戻るというよりも、自分次第で戻れ、しかも多面的であるというものです。スライドの右上のカラフルな歯車を見てください。黄色い歯車の、体が衰えた、膝が痛い、腰が痛い、筋肉も細くなったという身体的なものだけでなく、青い歯車の、心の部分という心理的な部分もあります。「ちょっと人前に出るのはもういいです、私」など、少し鬱っぽくなったり、そこに認知機能のかげりも出てきます。そして最後、一番上の赤い歯車の社会的フレイルは、例えば経済的要素、いつも1人でご飯を食べる孤食などです。この多面的な老い、多面的な虚弱、多面的なフレイルが相絡み合いながら、我々人間の自立が落ちていく。そのような概念を5年前に世の中に出しました。国家戦略として、この「フレイル」という言葉を全国で使っていただきたいと思っています。そして、そこに必要なのは科学的根拠です。科学的根拠がしっかりしなければ、上滑りの活動になってしまうと、しゃかりきに5年間活動してきました。例えば、ある運動をやりましょう、タンパク質がたっぷり入った肉を食べましょう、ということではなくて、あなたはだれと歩くのでしょうか、あなたはその一緒に歩いた人と、歩いた後、何が待っているのでしょうか、というところの方が、もしかしたら重要なのかもしれないということなのです。お肉をたっぷり食べた方が良いよ、ではなく、あなたはお肉をだれと食べるのかということ。そのような多面的なフレイルを、総合的にまちづくりの中でやっていかなければならないということです。私も医療関係者ですが、医療関係者だけが頑張ってやるのでは不十分だというのが、このフレイルの概念です。

 28ijima3フレイル対策をしっかり行うと、ある意味、未病対策につながります。フレイルと未病は、いとこ関係くらいの言葉です。

 フレイル対策を行うには、筋肉の衰え「サルコペニア」について、皆さんに、言葉は難しいけれどエッセンスはしっかりと伝えなければなりません。サルコペニアは「筋肉減弱」という意味です。「サルコ」は「マッスル」「筋肉」が、「ペニア」は「減っちゃいますよ」という言葉です。我々は診断基準のようなものを作っているのですが、ちょっとワンポイントお話したいと思います。「皆さん、歩かないと歩けなくなりますよ」という言葉は、全国の方が聞いています。でもその言葉を聞いて、はたと気付き、動く人はなかなかいません。一方、「高齢期の方における2週間の寝たきり状態は、7年分の筋肉を一度に失ってしまう」と聴くと、「そうだったのですか」とお話になります。同じことを言っているのですが、やはり根拠というものがしっかりあると、人の心を動かすということが分かります。

 28ijima4さて、筋肉の衰えはとても怖いです。転倒しやすくなる、転ぶ、骨折して入院するのも怖い。出掛ける回数が減り、人との接点が減るのも怖いのですが、実はお口まわりの筋肉が弱くなると、「オーラルフレイル」という現象に入っていくらしいということが分かってきました。簡単に言うと、「お口のささいな衰え」です。全く食べられないのではなく、滑舌が少し衰えてきた状態です。娘に「お母さん、ちょっと何を言っているのか聞き取れなかったのだけれど」と聞き直されてしまったり、かみごたえのある裂きイカやおせんべいを食べるのが難しいとか、汁物でいつもむせるとか、食べこぼしも出てきます。生活するのには困らないが、お口のささいな衰えが複数積み重なると、実は怖い世界に通じる入口に立っているのですよ、というのが、この「オーラルフレイル」という言葉です。

28ijima5 私たちの研究によると、自立しているにもかかわらず、お口のささいな衰えが複数積み重なったオーラルフレイルの方は、オーラルフレイルでない方々と比べると、4年間で2倍以上の方が亡くなっていました。また、2倍以上の方が要介護状態に新規になっていました。非常に怖いということです。衰えているのは口だけなのです。「(衰えているのは口だけ)にも関わらず」ということなのです。これを強くメッセージとして伝えたいです。

 28ijima6メタボ対策として、食べ過ぎては駄目、太っては駄目、というのは、中年層が気を付けなければならないことですが、高齢期に入り、そして更により上の高齢期になれば、むしろ、しっかり食べないといけないということに、徐々に考え方をシフトチェンジしていかなければなりません。そこに絶対に必要なのが、元気な口なのだということです。

 28ijima7タンパク質のことも含め、食事のアドバイスはこのスライドに出ているとおりで、今日は時間がないので細かいところまではお話しませんが、ポイントをしっかり学ぶ必要があります。ただ肉でしょう、魚でしょう、ということではないのです。また後ほどの意見交換でご質問があればお答えます。

 28ijima8もう一つ、人とのつながりについてお話します。このスライドは、5万人の自立した高齢者の方々のデータです。これは、運動だけやっている方よりは、運動はしていないが、文化活動と地域活動、文化活動とボランティア活動などをやっているだけでも、十分、フレイル予防、虚弱予防になっているということです。むしろ、28ijima9運動だけをやっている方々の方が3倍リスクが高かった、ということです。文化活動や地域活動は純粋な運動ではないのですが、フレイル予防になっています。結果的に動いているからです。

 栄養、運動、社会参加。栄養には食と口腔機能が重要ですということで、後ほど、ゲストの歯科の先生からもお話を聞きたいと思います。

28ijima10 私は全国で活動をしており、今、神奈川県庁ともタイアップして活動しています。

 28ijima11最後に、一人ひとりに、どのようなことに気付いていただけるのかが重要です。また、我々が受け皿をどう作るかも重要です。この二つのルートでしっかりやっていきたいと思っています。また、神奈川県庁とも、これからも取組を進めていきたいと思います。知事、これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

司会

 飯島様、どうもありがとうございました。

 続きまして、佐藤哲郎様のプレゼンテーションに移ります。佐藤様は、1991年に先代からの佐藤歯科医院を継承され、以来地元の川崎市中原区において、地域のかかりつけ歯科医として、乳幼児から90歳代の方まで、幅広い年代の方のお口の健康を守り続けていらっしゃいます。また、普段の診療の中で、オーラルフレイル改善プログラムを実施し、患者さんの口の機能回復に取り組まれるなど、歯科医師の立場からオーラルフレイル対策を実践されています。それでは佐藤様、よろしくお願いいたします。

佐藤哲郎氏(一般社団法人神奈川県歯科医師会常務理事)

佐藤先生画像1-1 こんにちは。佐藤と申します。よろしくお願いします。

 今、説明のありましたフレイルという言葉については、飯島先生からも知事からも説明がありましたので省略しま28sato2すが、一番重要なのは「適切な介入や支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」に戻れるということです。

 フレイルは1回なったら駄目というわけではなく、そこから戻って来ることができます。「フレイル、オーラルフレイルは可逆的である」ということを覚えておいてください。

28sato4 レジュメとは順番が違うのですが、分かりやすい図がこのスライドです。健康と要介護状態の間にフレイルがあり、その少し前にオーラルフレイルがあります。可逆的と言いましたが、オーラルフレイル・フレイルと要介護状態の間にある急坂を上って戻って来るよりは、健康とオーラルフレイル・フレイルの間にある、それほど急坂でないところを戻った方が楽ということです。オーラルフレイル、フレイルの状態になる前に、早めに予防すること、早く気付くことが重要です。ちょっと遅くなってしまったかなと思っても、戻ることが可能で、「戻る」ということが重要ですから、「戻ることができる」ということは覚えておいてください。

28sato3 次に、口に関する「フレイル」を「オーラルフレイル」と言いますが、「ささいな衰え」ということです。例えば滑舌が低下します。後ほど、パパパパ・・というような滑舌の測定があると思いますが、なかなかしゃべれなくなる、何を言っているか分からないと言われる、食べこぼし、わずかなむせがある、お茶を飲んでちょっとむせてしまう、かめない食品が出てくる。「これ固くてかめないのよね、駄目だわ」というのが、ささいな衰えです。皆さん、ありますか。若い方だとまだないと思いますが、そういうことがあると、オーラルフレイルっぽいのかなとも思います。「かめない」→「柔らかいものを食べる」→「かむ機能が低下する」→「かめない」、こうした悪循環で口の機能が低下すると「オーラルフレイル」の状態になる、というのが簡単な説明になります。

28sato5 8020運動というのがあります。80歳で20本の歯を残そうというものです。30年前に始めたころは全体のわずか8%の方しか残せていませんでしたが、今は半数の方が、80歳でも20本の歯があるようになりました。歯の数はまあまあ足りてきていますが、およそ50%の人は20本の歯がないという状態です。そのような方は歯医者に行っていただいて、きちんと入れ歯やブリッジ、インプラントを入れるようにすると20本の歯があることとほぼ同じ機能になります。機能がちゃんとしてくれば大丈夫ですので、かかりつけの歯科医を見つけていただいて、しっかりと機能を戻すことが重要です。

28sato6 これは健康寿命と平均寿命の差です。平均寿命は普通の寿命。健康寿命は、だれの世話にもならずに自立して生きていくことのできる寿命。この差が男では8~9歳、女性は12歳以上あります。この差を縮めていくのが健康長寿というものです。残念ながら神奈川県は健康寿命が上位の方に入っていませんが、この運動を続ければ、健康寿命と平均寿命の差が縮まり、健康寿命が100年になります。人生100歳時代に近づいていくと考えて、歯科医師会が取り組んでいます。

28sato7 今までの8020運動に続いて、オーラルフレイルを改善することは、日本歯科医師会の取組です。神奈川県、日本歯科医師会、神奈川県歯科医師会、それから国の骨太の方針にもオーラルフレイルが入っていますから、全国の運動になっていると考えていただければと思います。

 28sato8神奈川県の委託を受けて、神奈川県歯科医師会、飯島先生を中心とする研究者グループ、行政とでオーラルフレイル対策を行ってきました。概念はできてきましたが、どうすれば良いのか、どうなっているのかが分からないということで、平成28年度からオーラルフレイルについて、65歳以28sato9上の3,000人の方を対象に調べてみました。そのうち、普通に歯科診療所に来ていてメンテナンスをしている人、つまり痛いとか入れ歯が合わない人ではなく、メンテナンスだけをしている人は1,822名いました。それほど数は多くないと想像していたのですけれど、そのうち24%の440名、ご自身では何でもないと思っている65歳以上の高齢者の4分の1がオーラルフレイルでした。つまり自分は大丈夫と思っている人の4分の1が28sato4オーラルフレイルでした。在宅・高齢者施設にいる人では67%の人、全体では40%の人がオーラルフレイルの状態でした。これには驚きました。何でもないと思っている人がオーラルフレイルになっていました。ここから変えなくてはいけません。先ほど「フレイルと加齢との関係」のスライドがありましたが、このブルーの斜面の坂を滑り落ちないように、しっかり取り組まないといけません。ではどのようにすれば良いか。そのためのプログラムがあります。

28sato10 「オーラルフレイルを改善しないと」ということで、スライドをご覧ください。先ほど飯島先生のスライドでもありましたが、オーラルフレイルを抱える人は、普通の人に比べて要介護認定されるリスクが2倍以上、亡くなるリスクも2倍以上になります。放置すると非常に怖いことが分かりましたので、改善プログラムを作り、元の健康な状態を取り戻していかないといけません。そこで、28sato11このようなプログラムを、神奈川県、神奈川県歯科医師会、飯島先生を中心とするグループで作りました。行政と歯科医師会と住民が一体とならないとなかなか取り組めないからです。29年度から始め、30年度、海老名市をモデル地区として本格的に取り組みました。848名を調べたところ、オーラルフレイルに該当したのが215名でした。先ほど24%と申し上げましたが、同様におおよそ4分の1の人がオーラルフレイルになっていました。この28sato12人たちに行ってもらった改善プログラムがあります。今日、後ほど紹介されますが、「グー・パー・ぐるぐる・ごっくん・べー」という健口体操を準備体操として行う、早口言葉をいう、ガムをかみ、かむ力を改善する、早口言葉を言って滑舌を改善する、飲み込みを改善する開口訓練を行うなどです。これらを歯科医院で行ってもらいました。協力してくれた172名の方のうち、わずか1か月で56%、半数以上の方が改善しました。これは30年度の結果ですが、29年度の結果では、28sato43か月行うともっと良い数字が出ていますが、1か月でも良くなります。1か月頑張れば、「フレイルの加齢との関係」の図の斜面のところから、ぐっと戻ることができるのです。このきつい斜面のところで戻る傾向が出ていますので、このプログラムは有効であることが分かってきました。

28sato13 これをシミュレーションしてみたところ、65歳以上の人が228万人、神奈川県にはいます。その中で健康と思われる人が189万人います。その4分の1は40万人近くいます。そ28sato14して飯島先生が行った千葉県柏市での研究から、要介護になる人が1年で6,000人くらいいます。するとその人たちには、1年間で一人当たり300万を超える金額がかかります。しかし、改善プログラムを行うと、124億円の介護費が減ります。経済効果も大きいです。124億円あれば、どれだけのことができるかということです。これを官民一体、産業一体で改善していきたいと思います。

28sato15 神奈川県は全国的にもオーラルフレイルの対策が進んでいます。先ほど健康寿命と平均寿命の差が男性では8歳以上、女性では12歳ありました。それがぐんぐん縮まって、全国一の健康長寿県になると、歯科医師会では考えて活動しています。研究者の飯島先生はじめ、知事にもご協力をいただき、日本の中で、長寿県、長寿一番と言われることを目指しますので、県民の皆さんにもご協力いただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

司会

 佐藤様、ありがとうございました。ここで、ご来場の皆様には、神奈川県のオーラルフレイル健口推進員と一緒に、お口の健口体操を少しだけ体験していただきたいと思います。オーラルフレイル健口推進員は、お口の健口体操を通じて、地域住民の歯とお口の健康をサポートする県民ボランティアです。

 今日は、岸井ミツ子さん、関本弘子さんのお2人に、指導をお願いします。それでは岸井様、関本様、よろしくお願いします。

関本弘子氏(オーラルフレイル健口推進員)

 皆様こんばんは。さっそく運動に入ります。私たちは健口体操をします。フルコースだと腹式深呼吸に始まり、顔面体操、舌体操、唾液腺マッサージ、パタカラ体操などがあります。今日は短時間でやりますので、お手元のチラシにある「グー・パー・ぐるぐる・ごっくん・ベー」(PDF:6,122KB)を今から行いたいと思います。

岸井ミツ子氏(オーラルフレイル健口推進員)

 グー・パーは、脳にほど良い刺激を与えます。表情も豊かになります。是非ご一緒にお願いします。まず見本いきます。グーは口と目をしっかり閉じます。口角を上げてください。パーは目と口を大きく開けて天井を見てください。

関本弘子氏(オーラルフレイル健口推進員)

 ぐるぐるは、舌に力を入れて、唇の裏をなめるように一回り、二回りとやってみましょう。唾液がでてきます。ごっくんと飲み込みます。べー。これも舌に力を入れて、まっすぐに出してください。長めに、べー。1、2、3、4…10数えるまで。これの効能は、唾液がたくさん出て口が潤います。口の中がカラカラになると口臭の原因になります。舌を鍛えることで、飲み込む力もアップします。

岸井ミツ子氏(オーラルフレイル健口推進員)

 続けて3回行いたいと思います。グー、しっかり目をとじて。パー、大きく口を開けて上を見てください。舌を準備します。ぐるぐる、ぐるぐる、ごっくん、べー。10数えます。グー、しっかり閉じていますか。口角を上げてください。パー、大きく口を開けて上を見て。ぐるぐる、ぐるぐる、ごっくん、べー。1、2、3、4…10。はい、グー。パー。舌を準備して、ぐるぐる、ごっくん、べー。1、2、3、4…10数えます。

関本弘子氏(オーラルフレイル健口推進員)

 皆様にお願いが一つございます。つばをごっくんとしますので、お口の中をきれいにした状態でやってください。朝一番は菌がたくさんございます。歯磨きをした後にやると良いと思います。本日はご協力いただき、ありがとうございました。

司会

 岸井様、関本様、ありがとうございました。

 それでは、お待たせしました。ここからは、皆様との意見交換に移ります。マイクを黒岩知事にお渡しします。お願いいたします。

知事

 オーラルフレイルについて、死亡率が2倍になると聴くと、ちょっと怖くなります。知らなかった人も多かったと思います。今日は冒頭にご紹介しましたサンスターグループの藤澤さんがいらしています。サンスターといえばお口の専門家です。まず藤澤さんから、お口の専門家として今の話を聴いてどんなふうに思われたかをお話いただけますか。

藤澤考一氏(サンスターグループ研究開発本部新規事業研究開発部新規事業開発プロジェクトリーダー)

 ありがとうございます。私たちはお口の健康を保つという面を担っています。歯の治療は歯科医院でやっていただいて、我々は予防の面から、とにかく虫歯や歯周病にならないようにということで長年取り組んできました。とにかく歯を残そうということをやっていましたが、このオーラルフレイルという概念、歯があってもご飯が食べられなくなってしまうこと、しゃべることができなくなってしまうことがあると知って、非常にがく然としました。我々も歯を残すだけでなく、お口の健口体操のように、いかに口腔機能を残すかということにも力を入れていかないとと思い、昨今いろいろと活動しています。

知事

 ありがとうございます。では、自分がオーラルフレイルなのかどうかは、飯島先生、どうすれば分かりますか。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 測定の方法はいくつかあります。一番身近なのは滑舌です。大きな機械は必要なく、テレビのリモコンくらいの大きさの機械で5秒くらい測るだけです。

知事

 そういう機械があるのですか。今お持ちですか。これですね。この器械は「健口君」という名前なのですね。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 例えば「タ」を歯切れ良く5秒間言います。タタタタタタ…と。ダダダダダ…ではなくです。タタタタタタ…と5秒で30回言えるように、1秒間で6回を超えていただきたいのです。

知事

 挑戦する人、いますか。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 奥様から「話し言葉がよく聞き取れない」と言われた方とか、いらっしゃいませんか。

会場

 タタタタ…。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 5秒間で27回。1秒間で5.4回ですね。

知事

 惜しいですね。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 かえるの「カ」というのもあります。リベンジで「カ」でやってみますか。

会場

 カカカカカ…。息が続かないです。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 息も大切です。発音が独立していないので、アンダーカウントになってしまいました。

知事

 でも先ほどのレクチャーのように、これは改善できるのですよね。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 皆さん、努力すると、あっという間に数字が良くなります。逆に言うと6回を上回って速い人と比べると、例えば同世代の方で「タタタタタ・・・」がおぼつかない人は、滑舌だけでなく、全身の筋肉が弱々しいことも分かってきました。ですから、ただ、おしゃべりかとか滑舌が、ということではなく、全身のことなのだということが、我々の研究でも分かってきました。

知事

 今日、高校生もいっぱい来ています。「私たちは関係ない」と思って聴いていないですか。どうですか、やってみましょう。

会場

 タタタタタ…

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 35回。

知事

 すごいですね。早い。若い人はオーラルフレイルを気にしなくて良いですか。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 もしかしたら、柔らかいものばかり食べているのではないですか。しゃべってはいるでしょうけれど。よくかむということは、若い人たちも気にしなければならないでしょうね。

知事

 佐藤先生、今の若い子は固いものをあまり食べないとか、そういうことがあるのではないですか。

佐藤哲郎氏(一般社団法人神奈川県歯科医師会常務理事)

 オーラルフレイルは病名に近い言葉でいうと「口腔機能低下症」です。若い人には「口腔機能発達不全」という病名があり、柔らかいものばかりを食べることもあって、若い人にも口の機能の発達不全があります。今は65歳以上に焦点を当てていますが、若いころから取り組んでいかなければいけないという視点を持っています。若いから気にしなくて良いということではありません。

知事

 昔は固いもの、スルメをかんだり、おせんべいを食べたりしました。今はヨーグルトとか柔らかいものばかり食べていますね。若い時や子どものころから、かむことを鍛えないと、将来、口腔機能が強くならないのではないですか。

佐藤哲郎氏(一般社団法人神奈川県歯科医師会常務理事)

 軟性食品がありますね。ハンバーグとか。食べるものを小間切れにしていると、かむ回数も少なくなり、固いものをかまなくなります。すると必然的に筋肉が衰え発達しません。物を細かく切っておくのではなく、かむことで細かく砕く。ハンバーグを食べるにしてもベーコンを巻いてみると、ベーコンは固いのでかまなければなりません。これは、食ということで、食育にもつながります。食べることは重要です。食べさせる側も考えなければいけない時代になっています。

知事

 口腔機能がいかに大事かが、だんだん分かってきました。ここからのシナリオはありません。皆さんとの対話で進みます。こんなことをやっているとか、疑問点とか、何でも結構です。はい、どうぞ。

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