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更新日:2024年3月29日

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第28回「黒岩知事との”対話の広場”Live神奈川」開催結果(その2)

令和元年11月11日(月曜)に開催された、第28回黒岩知事との"対話の広場"Live神奈川の実施結果についてご覧いただけます。

実施結果(テキスト版)

1.知事の挨拶/ゲスト・プレゼンテーション

2.意見交換

 

2 意見交換

 

参加者1

 勉強のつもりで、用語について教えていただきたいのです。「フレイル」という言葉と「未病」という言葉についてです。これから地域に帰って、いろいろ会話をする時にどう使い分けるのか、同じで良いのか、そこを教えていただきたいと思います。

 もう1つ。今、私に何ができるかという視点でお話を伺いました。今、考えているのは、サンドイッチ方式でこの活動をしていこうということです。上のパンは行政、下のパンは私たちまちの人たち。具はフレイル対策のいろいろな食、運動、社会参加。そのような活動、ウキウキ、ワクワクするような活動を取り入れる。それをだれが食べるのか。フレイルの方々、私たち市民のような、いろいろな人たちが、それを食べられるようにする。そして私はまちの一人のおばさんとして何ができるかを考えました。一人ではできないので、行政の方と町内でこのような活動ができたら良いなと感じました。市民の活動がもっとできるように、行政の方で何かしていただければ、まちのおばさんも頑張ります。

知事

 とても素晴らしい。サンドイッチ方式ですか。さっきやっていただいたお二人は、正にそうですよね。どんなきっかけで、どういうことを実際にやられているのですか。

関本弘子氏(オーラルフレイル健口推進員)

 私は9年前に健康普及員という役をいただき、そこでオーラルフレイル健口推進員の講習を受けてみないかと言われ、自分のためにも良いし、勉強してみようという気持ちでやりました。今はミニサロンを開催して、そこで空いた時間を5分でも10分でもいただいて、コツコツとやっています。こんなにたくさんの方の前でやったのは初めてです。

岸井ミツ子氏(オーラルフレイル健口推進員)

 私は認知症の勉強会に参加させていただき、その時にこのような形での社会参加というものを初めて知りました。それまではずっと働いていたので、地域とのつながりは一切ありませんでした。それから介護や心サポーターなど、いろいろな会合に出るようにしました。自分から出ていかなければ駄目だと思い、参加するようになりました。私は今、主に地域で、認知症カフェというところで、健口体操を15分くらい、30人ほどの人たちとやっています。もう一つ、心サポーターの方では、居場所がない、心に病を持った人たちと週に1回くらい、喫茶店や手芸、おしゃべり会、卓球をやったりしています。

知事

 こういう参加の仕方があるので、是非参加していただきたいですね。行政の立場からすると、サンドイッチ方式と言っていただいたのは本当に有り難いです。行政が税金を使って、いくら一生懸命やっても、それだけではなかなか浸透しません。皆さんが自分たちのところで何かをやってみようと思い、そのアクションとつながった時に大きな効果を発揮すると思うのです。

 前段のご質問がありましたが、飯島先生、フレイルと未病という言葉は、どのように考えれば良いのですか。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 実はこれは、良い質問であると同時に難しい質問なのです。背景と出所も違いますが、ほぼ近い言葉です。こういう場面では「フレイル」であるとか、こういう場面では「未病」などと、はっきりとは申し上げられません。けれども非常に近いということは、狙っている目線が同じということです。共通項は何かというと、健康だ、病気だというように○×ではなく、どんな人でもグラデーションで色(状態)が変わっていく、そのちょうど中間を表しているのが、フレイルと未病の同じところです。もう一つは、頑張れば戻れる、という強いメッセージが入っているのが、未病とフレイルの共通項です。

知事

p31vol28-12 先ほど、健康と病気の間はグラデーションでつながっています、という話をしました。これが未病です。

p31vol28-13 先ほど、食・運動・社会参加と言いましたが、この図を作ったのは、飯島先生と同じ東京大学の辻哲夫先生で、元々厚生労働省の事務次官だった方です。社会参加が入っていることに、最初は私もびっくりしました。食と運動は何となく分かります。なぜ社会参加が入っているのかを聞きました。東京大学は千葉県の柏市でいろいろな研究をされています。高齢者は元気でも急に具合が悪くなることがあり、それがどのような時なのかを調べたら、フレイル、虚弱だということが分かりました。虚弱になり、足腰が弱くなると、外に出ていくのがおっくうになり、外に出なくなり、家にこもってしまいます。そして、ある時急に状態が悪くなる。では、外を歩けば良いのか、散歩だけすれば良いのかというと、そうではありません。データをとってみると、「社会と関わる」ということが、とても大事なのだということが分かりました。大事なのは、何でも良いから社会の役に立っているという感覚で、内向きになるということが、状態が悪くなることにつながります。

p31vol28-12 未病のグラデーションには「改善する」ということも入っています。未病の表でいえば、左側の白い方に少しずつ持ってくるというものです。

 実は11月13日から2日間、ME-BYOサミット神奈川というものが開催されます。これは国際会議で、2年に1回神奈川県が行っています。WHO世界保健機関なども来て、2日間討論します。今回の目玉は、この未病のグラデーションの中で、あなたはどこにいるかを測る、その指標を発表します。WHOと東京大学が組んで、ずっと行ってきた研究結果が今度発表されるのです。簡単なチェック項目だけで「あなたの未病指数は45です」と数値で表します。いろいろフレイル対策やオーラルフレイル対策を行い、元気になってきたら未病指数が未病グラデーションの白の方に近づいて、45よりも良い数字になったなどと言えるようになる。その数字が未病指標として発表されます。是非これに注目してほしいと思います。はいどうぞ。後ろの方。

参加者2

 タカグチと申します。お聞きしたいことがあります。サルコペニアという言葉は「サルコ」と「ペニア」が医学用語なのでしょうか。英語では「筋肉」「減少」となっていますが、これの意味をお聞きしたいのと、私は今「腹を立てず、はらはらせず、腹で笑う」ということをモットーに生きています。また、地域活動で似顔絵を描くボランティアをしています。これは以前、知事にも差し上げました。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 サルコペニアというのは正式な医学用語なのですが、県民の方々には難しい言葉ですよね。「サルコ(sarco)」は、ギリシャ語の「サルックス(sarx)」が語源で「筋肉」という意味です。「ペニア(penia)」は、病名や医学用語によく「・・・ペニア」とありますが、目の前の現象が失われていくという意味の言葉で、私は語源についてはよく分かりません。ギリシャ語の筋肉を意味する「サルックス」と「ペニア」をつけて、「サルコペニア」となったのが言葉の発祥です。

知事

 ありがとうございました。腹を立てず…何でしたか。

参加者2

 腹を立てず、はらはらせず、腹で笑う。お腹の筋肉で笑うのです。

知事

 素晴らしい。それこそ健康になりそうですね。

参加者3

 先ほどお話のありました辻先生ですが、その辻理事長の下、神奈川県で健康生きがいづくりアドバイザー協議会を展開しています。その中で飯島先生にご教授いただき、サポーターをたくさん作っています。県内の各市で展開していて、今10か所で、フレイル対策を展開しています。神奈川県は大変広いですし、特に横浜は政令指定都市なのでまた別だと思いますが、まだまだ他にも広めたい市、町、地域があります。これを機会として、飯島先生を中心に、サポーターが地域に行って、地域の皆さんにフレイルを理解していただくきっかけを、今日知事にお願いしたら実現するかなと思っています。神奈川健康生きがいづくりアドバイザー協議会会長のミウラと申しますが、是非よろしくお願いします。

知事

 そのように飯島先生の思いを広げる人がいるのは心強いですよね。有り難いですね。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 サポーターについて、私も先ほど時間がなくて説明できなかったのですが、今、市民の方のフレイルチェックを、市民の方と一緒に行っています。未病のチェックの話がありましたが、フレイルのチェックも多面的視点で開発しています。それは医療従事者の手を必要とせず、住民同士でできるようなツールです。そのフレイルチェックを実際に行うのがフレイルサポーターです。全国で70近い自治体で導入されています。神奈川県では約10の自治体が真っ先に導入してやっています。それをもっと幅広く広げていきたいということですね。ありがとうございます。

知事

 これは広げていきましょう。ありがとうございます。

 榊さんがOriHime(分身ロボット)でご発言なさるとのことです。ALS(筋萎縮性側索硬化症)のため寝たきりの状態ですが、分身ロボットOriHimeを介してずっと議論に参加してくださっています。話す内容を視線で入力して発言されます。榊さんいかがですか。

榊氏(分身ロボットOriHimeを介して遠隔参加)

 年齢や病気のせいで体や口が動かなくなっても、テクノロジーの力で、カフェで働いたり絵を描いたりと前向きに生きられます。是非行政の理解と支援をお願いします。

知事

 ありがとうございます。私が気にしていたのは、榊さんはALSの患者さんですから、オーラルフレイルをやってくださいといっても難しいですよね。でも社会参加はでき、今日も議論に参加してもらっています。これは分身ロボットOriHimeです。手を挙げたり、目でこちらを見ています。顔を見て、いろいろなアクションもできます。(分身ロボットOriHimeが動く)あ、こっちを見てくださっていますね。手も振って、今拍手していただいています。榊さんが目で操作されているのです。このOriHimeを使った分身ロボットカフェがあり、行ったところびっくりしました。OriHimeを操作する人は、ALSの方だけではなく重度の障がいの方などで、全国にいらっしゃいます。そのような方たちとOriHimeを使って会話をするのです。カフェなので給仕してくれます。「何にしますか?」と聞かれ、コーヒーを注文するとロボットが動いて持って来てくれます。テーブルごとにOriHimeがいて、OriHimeがだれかとつながっています。私のテーブルのOriHimeを動かしている人は埼玉の女性と言っていました。難病で外に出ることができないという方がOriHimeを使って会話をするのですが、その会話が見事なのです。とても明るいし、ユニークでウィットに富んでいて、どんどん会話できるのです。このパワーはすごいなと思いました。テクノロジーでそのような部分を補えるなら、全く家から出られない難病の方でも、ALSの患者さんでも、テクノロジーの力で働けるということです。

 実は今日、神奈川県で画期的なことを行いました。前回の対話の広場に参加してくれたALS患者の髙野さんを県のアドバイザーとして委嘱し、委嘱状の交付式を行いました。そのために、髙野さんにOriHimeとともに県庁に来ていただきました。髙野さんはITの専門家です。スタンフォード大学の研究員であったり日本の大企業でバリバリ働いていました。ALSになり、そのようなことができなくなくなりましたが、頭脳は明せきです。意見をどんどん言えるので、その意見を県の政策に活かしたいと思っています。社会参加を可能にするテクノロジーの力はすごいものがあります。そういう時代に来ています。ハンディの部分はテクノロジーで補い、どんどん社会参加をする。そうすると生きがいも生まれます。これは大きいですよね。この流れをどんどん作っていきたいと思います。

参加者4

 金沢区から来ましたサノです。先ほどいろいろな話を聞きましたが、その中で寝たきりの高齢者を出さない予防対策としての具体策がありません。友人で80歳まで車に乗っていた人がいますが、今はほとんど歩けなくなっています。車社会で、ほとんど歩かない社会になっています。要するに、胴体と足をつないでいる筋肉が全く使われていないのです。自動運転が盛んになると寝たきりの高齢者が増えてきます。ここにどう対応するかという具体策が全く語られていません。今日の集会はそれが情けない。そこで私が提案するのは、3年ごとの免許更新の時に、階段を5段くらい、手すりを付けないで上り下りし、それを1分間に何回かやってもらう。それができないような人には免許は出さないとする。これは税金も使わないで済みます。免許が欲しい人はそれをやらざるを得なく、自動的に寝たきりが予防されることになります。これを全国に先駆けて、神奈川県が先頭を切って行う心構えがあるか聞いておきたいです。

知事

 ありがとうございます。今日お話していることは具体策だと私は思っています。どうすれば寝たきりにならないのかというときに、口腔機能が非常に大事だという話をしています。フレイルという、要するに筋肉が弱った状態になると、いずれ寝たきりになってしまいますので、そうならないように、具体的に今日皆さんでオーラルフレイルの健口体操をしたのも、滑舌も、寝たきりにならないように「皆さん元気でいきましょう」とするための具体策です。ご提案のあった、階段を上れるかどうかを免許更新の材料にするのは一つのアイディアですね。今日は会場に、このような活動をされている方々がいらっしゃっています。対話の広場には何回も来てくださっています。皆さん、どうぞ。

参加者5

 これはステッピングというもので、横幅13cmの台を上り下りします。私たちは13年前から有酸素運動を行うことで医療費を軽減しています。膝、腰の痛み、生活習慣病、高血圧、高血糖、高脂血症もかなり改善しています。今日も朝、金沢区で教室があり、現在7教室、8会場で毎日社会参加をしています。お口の体操もかながわ健康財団と一緒にやっています。今日は飯島先生、佐藤先生お2人のお話を聴いたので、さっそく明日のみなとみらいの教室で、今日教えていただいた健口体操を伝えたいと思います。

知事

 どうやるか、やってみるしかないですね。ステッピングと言われても分からないので、実際にやってみていただきましょう。寝たきりにならないための一つの具体策です。

参加者5

 (台を昇り降りしながら)1、2…とゆっくりです。声を出して…7、8、9、10。このくらいゆっくりやった方が良いです。

知事

 ありがとうございました。こういうことをずっと広げていらっしゃるのですね。後ろ向きもあるし横向きもある。この台でやるのですね。さっきの体操とドッキングすると面白いですね。

参加者5

 2年前に、幼稚園、保育園の園児にも広げたいという提案をしましたが、実現しました。泉区で今は5歳児がやっています。小さいお子さんから、私どもの教室では90歳以上の方もやっています。普及活動を続けたいと思います。

知事

 がんばってください。ありがとうございました。はい、ではどうぞ。

参加者6

 神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科から参りました。私が大学院に進んだのも、口腔の健康の価値が今後とても大切になると考えたからです。この健口の価値を届けるためのイノベーションを考えたいと思い、この大学院に入りました。そこで皆さんにお伺いしたいのですが、妄想で構いませんので、こんな技術、イノベーションがあったらオーラルフレイルを防げるのではないかとか、こんな地域間連携が実現できれば、よりオーラルフレイルを防ぐことができるのではないかというアイディアをいただけたらと思います。

知事

 難しいですね。どうですか。妄想はありますか。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 僕は医師で歯科医師ではありませんが、なぜオーラルフレイルをここまでしゃかりきに全国でやっているかというと、それには狙いがあります。妄想ではないです。絶対に実現したいと思っています。歯科の先生方にも、歯に加えて口の全体を評価して、トータルでアドバイスをしてほしいのがまず一つです。我々も一緒にやっていきたいと思っています。我々医師を含め、いわゆる歯科が専門でない専門職種の人も皆、口のことを大なり小なり意識し、普段の活動から少しずつ口の話をして、口の状態が怪しげだったらすぐ歯科の先生につなげる。これを専門職として皆がやってほしいと思っています。また皆さんに、「お口のささいな衰えって怖い」と思ってもらい、改善に向けてすっと腰を上げてほしいのです。この風土をどう作るかを相当意識してやっています。それには、先ほど申し上げたように、ただ「お口が重要ですよ、しっかりかんでくださいよ、お口が…」というだけでは駄目で、「怖いですね」と言われるような根拠が必要です。それを、僕は立場上研究者ですから、いかに分かりやすく、かつ切れ味が良いエビデンス・根拠を、どれだけ分かりやすく皆さんに提示できるかを意識してやってきました。マラソンで言えば、まだ競技場を出たばかりかもしれませんが、オーラルフレイルといえば神奈川県ということで、今、全国が注目していますから、これからは神奈川県から、もっと強いメッセージを、しかも具体的にどうやるかというメッセージを、一緒にどんどん出していきたいと思っています。

知事

 ありがとうございます。佐藤先生、いかがですか。

佐藤哲郎氏(一般社団法人神奈川県歯科医師会常務理事)

 ご意見をありがとうございます。大変心強い質問だと思っています。歯科医師会としては、オーラルフレイルに取り組んでいきます。

 先ほど「グー・パー・ぐるぐる・ごっくん・ベー」をやりましたオーラルフレイル健口推進員は、以前は8020運動推進員といっていました。今はオーラルフレイル健口推進員という名前に変わって、オーラルフレイルを広めてくれる方になっています。先ほどもお話がありましたが、かながわ健康財団やいろいろな運動を行っている方がいます。これらがどんどん広がり、飯島先生もおっしゃっていましたが、だれもがオーラルフレイルを知るようになる。そのために、サンドイッチという話もありましたが、神奈川県・知事が主導して、全神奈川県民が一丸になってやっていくような啓発をしていくことが必要です。フレイル検査で15項目ありますが、そのうち3つは歯や食に関するものです。そこで気になることがあれば、だれもが歯科医院に行き診てもらうのです。歯が痛かったり、何かあったら行くというのが今までの歯医者だったかもしれませんが、そうではなく、自分はオーラルフレイルなのかどうか、自分の口腔機能はどうなのかを調べるために歯科医院に行き、簡単に診てもらい、オーラルフレイルならば、こうすれば良いというアドバイスがもらえるというような社会が実現していけば良いと思います。それができるのが神奈川県だと思います。是非、よろしくお願いいたします。

知事

 今、ヘルスイノベーションスクールに行っている人の発言がありました。これは、神奈川県立保健福祉大学にできた、未病の専門家を育てる大学院です。授業は主に英語です。留学生も一人いて4月にスタートしたばかりです。なぜ未病の専門家と言っているのか。未病というのは一つの医学の専門分野だけでは駄目で、いろいろなことをつなげて理解することが必要だからです。その専門家を作るための大学院です。そのような大学院は今までどこにもなかったので、神奈川県が作ったのです。

 今日のゲストのお二人の先生は、ここに仲良く並んでいらっしゃいますが、業界で言うと、間に大きな壁が今まではありました。不思議だと思いませんか。歯科医師と医師。眼科も耳鼻科も皮膚科も内科も外科も皆医師なのに、歯科医師だけが別です。医師は国家資格を取った後、選択できる診療科が一杯あるのに、歯科医師だけ別でした。ここに壁があったのです。歯科医師は歯の医者で、虫歯の時に行けば良い、歯を治してもらえば良いと我々も思っていました。でもオーラルフレイルで言っていることは「つながっている」ということです。口腔機能です。虫歯ではなく、口腔機能。口腔機能が衰えると、全身が具合悪くなるという話をしています。これは妄想ではなく、新しい融合の、目指すべき世界だと私は思っています。頑張って勉強してください。はい、ではどうぞ。高校生ですね。

参加者7

 緑ヶ丘女子高等学校から来ました。先ほど、オーラルフレイルにならないためには、口内の健康や8020運動などで、80歳までに20本以上歯を残すことが大事だとの話がありました。私たち若い世代が80歳までに20本くらいの歯を残すために、今からすべきことは何ですか。

知事

 これは佐藤先生いかがですか。

佐藤哲郎氏(一般社団法人神奈川県歯科医師会常務理事)

 ありがとうございます。ど真ん中の質問をいただきました。12歳までの虫歯の数はすごく減ってきました。全国の中でも神奈川県はだいぶ良くなりました。ですが、12~18歳、18~20歳以降40歳まで一気に虫歯の数が増えていきます。今日は虫歯の話はしないはずですが、まずは虫歯ができないように、しっかりとお口の健康を維持していかなければなりません。それから歯周病です。虫歯と歯周病が歯を失う大きな原因の一つです。8020運動は80歳まで20本の歯を残します。歯は全部で何本あるかご存知ですか。全部で歯は28本あります。親知らずを入れると32本です。8本失って良いというわけではありませんが20本は残しましょうという話です。今、6424運動というものもあります。とにかく歯を失わないように、まず虫歯をつくらず、歯周病にもならないようにする。それが8020運動で、数の問題でした。今はそうではなく、機能の問題になりました。お口の体操は、私たちは年ではないからやらなくて良い、ではありません。年を取るとしわができたり、ほうれい線が出たりという時期が少なからず来ます。そうならないように、口の機能を保てるように、口の体操を行います。今日配ったチラシの健口体操を今から行う。年を取ってからやれば良いというのではなく、今からしっかりやる。それから早口言葉を言う。固いものをしっかりかんで、かむ力を維持する、ということです。ですから高齢者だけではなく、若い人もやらなくてはならないのです。同じなのです。今から始めてください。同じことだと思って、しっかりやってください。

知事

 若い時から、80歳の時の20本を意識するだけでも全然違います。ありがとうございます。

 今日はライブ版なので、YouTubeでの生配信を見ている方がTwitterでもご意見を寄せてくださっています。

 タカさんから、「滑舌測定で分かりやすく結果が見えるのは良いね。早口言葉の練習でもオーラルフレイル対策に効果があるのかな」。効果があるのですよね、早口言葉も。

 それから、エスエヌさん、「歯の健康が体全体の健康にも影響があることに驚きました。現時点で分かっている因果関係はあるのでしょうか」。因果関係はあるのですよね。今までずっとお話してきました。

 ジロウさんから、「そういえば飲み込む力が弱っているかも。食べ物よりも唾液がすぐに気管に入ってむせるのはオーラルフレイルでしょうか」。オーラルフレイルらしいですよ。このように意見をお寄せいただきました。では、いかがですか。はい。

参加者8

 横浜歯科医療専門学校から来ました。事前に自分で調べて考えてきたのですけれど、持論を聞いてもらって良いでしょうか。ネットで調べたものが大半なので、医学的エビデンスに欠けるのはご了承ください。

 まず、オーラルフレイルで、むせる等がありました。その行き着く先が、かめない、食べるものが偏って栄養が偏り、フレイルにつながる、食事低下、嚥下(えんげ)低下につながるというものでした。取り上げたい病気が1つあります。誤嚥性(ごえんせい)肺炎というものです。最近の死亡原因の第3位は肺炎です。高齢の入院患者の肺炎のうち、80代の8割、90代以上の9.5割が誤嚥性(ごえんせい)肺炎でした。古いデータですので今は違うかもしれませんが、この誤嚥性(ごえんせい)肺炎は死亡につながるものです。先ほどの話にあったように、見やすく、これがこういうことにつながるということが可視化できると、具体的に見えるので、自分はこれを「見える予防」と名付けています。これがこうなって、こうつながるのですよ、と具体的に見えるようになれば、人も動くと思います。

知事

 良いご提案ですよね。

飯島勝矢氏(東京大学高齢社会総合研究機構教授)

 そういうご提案も取り入れたいと思います。因果関係がより分かりやすくなると、皆さんに入りやすいと思います。ただ、研究者は膨大なデータを膨大な視点で見ます。すると、ある1つのシナリオだけで人が衰えていくわけではないのです。Aパターンもあれば、いろいろう回していくパターンもある。でもオーラルフレイルの視点と社会的要素は、実は表裏一体で、それは我々のデータでもはっきりと見えてきました。そこに食の偏り、栄養の偏りから低栄養になり、筋肉も減っていき、負へ転げ落ちる様子が見えてくるという話です。

知事

 はい、それではどうぞ。

参加者9

 足からの病気の改善ということで、25年間活動をしています。年間50件くらいの講演をしているのですが、予防医学、未病ということで多くの医者が集まり、統合医療、代替医療、最近では、ホリスティック医療などが知られてきました。その中で、今までは画像診断や細胞レベルで見ても改善しないため、部分的に見るよりも、トータル的、あるいは全体的に見ることが必要だという話になるのですが、残念なことに、ほとんどの会議がそこで終わっています。その先のことが大事です。全体的に、トータルで見るということは、足から全体・全身を重力とのバランスで見るということで、そこが大事なのです。重力ということを私たちは忘れていると思います。未病の研究会にもずいぶん参加しましたが、重力という言葉を忘れています。宇宙飛行士は「宇宙から青い地球を見るのも素晴らしかった。でも、もっと素晴らしかったのは、地球に戻ってきた時に感じた重力の威力、そのすごさだ」と言っているのです。重力ということを考えた時に、人間の土台である足から全身のバランスを整えて歩行する、一生懸命歩く、最後まで歩けるということが、今日のテーマでもある口腔ケアも含めて、かむ力、嚥下(えんげ)能力、すべてに関わってくると思います。先月は箱根町の観光協会で、1週間前には大宮の市民センターで、そういう話をさせてもらいました。是非そのような、土台から見るという大きな意味で、足と健康、未病ということを取り上げていただきたいと思います。

知事

 正にそうですね。この話は全人的に見るということですね。歯は歯だけを取り上げてみるのでなく、重力を感じる足の問題から見る。いろいろなところから見る。それは未病のグラデーションのどこにいるかを見るということです。健康か病気かという発想では出てこない。グラデーションしているから、いろいろな発想が出てくるということだと思います。今日はたまたまオーラルフレイル、歯の口腔機能ということから話をしましたけれど、足腰の話からすれば、フレイルということでまた話もできますし、様々な形で考えていくことができます。

 でも皆さん、わざわざこの会場に来ていただきましたが、特に年配の方は、普段、高校生や大学院生と一緒に会話をすることはあまりないのではないですか。これが対話の広場の面白いところだと思います。わざわざ来たという意識です。わざわざ来た、社会に参加した、関わった、皆で議論をしたというこの意識が、元気になる大きな秘けつだと思います。その流れを大切にしていただきながら、皆がいのちを輝かせるために頑張っていただきたいと思います。

 今日は、飯島先生、佐藤先生、最後までありがとうございました。榊さん、ありがとうございました。対話の広場は継続してやっていきますので、また、お越しください。ありがとうございました。

 

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