更新日:2025年4月15日

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4章 生活習慣病を学ぼう

神奈川県『健康・未病学習教材(高校生用副教材)』第四版

生活習慣病とは、生活習慣が深く関与し、それらが発症の要因となる病気のことをいいます。生活習慣病には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、歯周病などがありますが、これらは自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行し命にかかわる疾患を引き起こすことがあります。生活習慣病のうち罹患が疑われる成人の推計が1,000万人に上る「糖尿病」、そして様々な健康への影響が明らかとなっている「喫煙」を中心に学びます。

今から生活習慣について考えることが大切な理由

生活習慣病になる人は、年齢が高くなるにしたがって多くなります。適切な生活習慣を続けていても生活習慣病になることはありますが、健康的な生活習慣を続けることによって発症のリスクを減らすことができます。

生活習慣について、40年以上前に米国のブレスロー教授が行った研究報告から「ブレスローの7つの健康習慣」として広く世界に知られているものがあります。

生活習慣 関連疾患等
食習慣 2型糖尿病、肥満、脂質異常症、高尿酸血症、循環器病、大腸がん、歯周病など
運動習慣 2型糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧症など
喫煙 肺がん、循環器病、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病など
飲酒 肝障害など

注意:生活習慣にかかわらず体の中のインスリンの量が絶対的に足りなくなって起こる1型糖尿病という病気があります。

ブレスローの7つの健康習慣(1980)

(1)喫煙をしない
喫煙をしないイメージ

(2)定期的に運動をする
定期的に運動をするイメージ

(3)飲酒は適量を守るか、しない
飲酒は適量を守るか、しないイメージ

(4)1日7から8時間の睡眠をとる
1日7から8時間の睡眠をとるイメージ

(5)適正体重を維持する
(5)適正体重を維持するイメージ

(6)朝食を食べる
(6)朝食を食べるイメージ

(7)間食をしない
(7)間食をしないイメージ

 

「ブレスローの7つの健康習慣」を守るメリット

メリット1 45歳の人の平均余命の差

6~7つを実施した場合と実施が3つ以下の場合、男性で11年、女性で7年の差があります。

メリット2 生活習慣病に死亡率の差

がん、心臓病、脳血管疾患による死亡率が少ないことも立証されています。なかでも、喫煙、飲酒、運動の有無が強く影響するといわれています。

出典:文部科学省健康な生活を送るために(令和2年度版)【高校生用】

糖尿病について

糖尿病ってどんな病気?

食事をして血糖値が高まると、すい臓から出るインスリンが、肝臓や筋肉など身体の組織にブドウ糖を取り込むのを促し、血糖値をちょうどよい値にコントロールします。

しかし、何らかの原因により、インスリンが十分につくられない、あるいはインスリンの効きが悪いことで、ブドウ糖が肝臓や筋肉などに取り込まれず、血糖値が高いままになってしまうのが糖尿病です。放置すると、細い血管が傷み、失明や足の壊疽、腎不全など全身に様々な影響が出てきます。

糖尿病の原因

糖尿病は大きく分けて、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、その他に分類されます。糖尿病患者の多くは2型糖尿病で、肥満と運動不足が発症に関係します。

1 型糖尿病

自己免疫疾患などが原因。ほとんどインスリンが分泌されないため、毎日インスリンの自己注射が必要。

2 型糖尿病

大人になって罹ることの多い糖尿病。発症原因は、大きく分けて遺伝因子と環境因子がある。遺伝因子とは、両親や兄弟が糖尿病であるという遺伝体質のことで、環境因子とは、肥満、過食、高脂肪食、運動不足、ストレスなど。

図:糖尿病発症のメカニズム

糖尿病に関する状況

令和元年(2019)国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる者の20歳以上の割合は、男性が19.7%、女性が10.8%でした。この10年間で見ると、男女とも大きな増減はみられませんでした。年代別にみると、年齢が高い層で、糖尿病が強く疑われる者の割合が高くなっています。

「糖尿病が強く疑われる者」の割合(20歳以上、性・年齢階級別)

出典:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」より

歯肉の炎症である歯周病と糖尿病のかかわり

重度の歯周病があると、炎症によって生じる物質が歯周ポケットから血流にのって全身を回り、インスリンを効きにくくします(インスリン抵抗性の増大)。そのため、糖尿病が進行(悪化)しやすくなります。

ワーク1

これまでの説明を読んで、糖尿病にならない生活習慣とは何か、グループで話し合い、その内容を書きましょう。

「喫煙」による健康への影響について

タバコには約4000種類の化学物質が含まれており、そのうち約200種が有害物質です。喫煙による健康被害としては、「がん」だけでなく、循環器、呼吸器、その他多くの重篤な病態を引き起こすことがわかっています。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)をご存じですか。正常な呼吸を妨げる生命を脅かす肺の病気で、世界中で約2億人がこの病気にかかっていると推計されています。別名タバコ病ともいわれるように、最大の原因は喫煙で、患者の90%以上は喫煙者です。長年にわたる喫煙が大きく影響するという意味で、まさに"肺の生活習慣病"です。

喫煙開始年齢別にみたがんの死亡率比 男性

喫煙開始年齢別にみたがんの死亡率比(男性)

参考:厚生労働省「喫煙の健康影響に関する検討会報告書」Inoue et al 2004(14)

喫煙開始年齢別にみた心臓病の死亡率比 男性

喫煙開始年齢別にみた心臓病の死亡率比(男性)
参考:厚生労働省「喫煙の健康影響に関する検討会報告書」 Honjo et al 2010(16)

出典:神奈川県「たばこ ためしに吸ってみようかな…と簡単に思っていませんか」

若い人ほど吸ってはいけません

低年齢で喫煙を開始するほど、将来がんや心臓病にかかる危険性が高くなります。

ニコチンは脳を支配する

タバコに含まれるニコチンによる害で、最も深刻なのが脳への影響です。タバコを吸うと、ニコチンは数秒で全身にまわり、脳内にある快楽を感じる場所へ作用します。これが何度も繰り返されると、本来ニコチンがなくても普通に過ごせるはずなのに、ニコチンが欲しくてたまらない状態になってしまうのです。血中のニコチン濃度が減ると、激しい離脱症状が起こり(=肉体的依存)、脳が私たちをイライラさせ、ニコチンを摂るように命令を出します。このようにして脳がニコチンに支配されてしまうと、普通に過ごすことが難しくなってしまうのです。

ワーク2

タバコの健康被害、喫煙開始年齢、ニコチンの働きを学んで、タバコとどう向き合うかグループで話し合い、その内容を書きましょう。

 

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