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更新日:2024年5月1日

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研究報告 第166号 摘要一覧

神奈川県農業技術センター研究報告の摘要のページです。

 イチゴ新品種’かなこまち’の育成

 ‘かなこまち’は,子房親である静岡県育成の‘紅ほっぺ’,花粉親である群馬県育成の‘やよいひめ’を交配して得られた促成栽培用のイチゴ新品種であり, 2017年4月に神奈川県農業技術センターで育成を完了し,2020年9月に品種登録出願を行った.その主な特性は次のとおりである.草勢は強く,果実の形は長円錐形で,揃いが良く,平均果重が16.4gと‘紅ほっぺ’並みに大果である.果皮色は濃橙赤で‘紅ほっぺ’に近く,果実の光沢は強い.果肉色や果心の色は淡赤色であり,果実硬度はやや硬い.果実の糖度や酸度は‘とちおとめ’より高く,多汁質で食味は良好である.連続出蕾性で,収量は‘とちおとめ’より多収で,‘紅ほっぺ’よりやや低収で,‘やよいひめ’並みである.収穫開始期は‘とちおとめ’や‘紅ほっぺ’より遅いが,年内収穫ができる.

 新型コロナウイルスの感染拡大がイチゴ観光農園に及ぼす影響とその対応

 イチゴ観光農園は,新型コロナウイルス感染症の発生の影響で,売上が例年よりも30%から50%減少した.施設面積が大きい生産者は売上減少率が大きく,大きく収益が減少した.売上が減少した主な要因は,観光農園の閉園時期が,例年と比較して1ヶ月以上早まったこと,それにより団体客,一般客が減少したことであった.また販路を小売りに切り替えたが,出荷調整の労力がかかることが課題であり,面積が大きい園ではこれに加えて出荷ロスが発生していた.

 2020年から2021年にかけての観光農園は,例年と同様に開園し,栽培品種も変更せずに運営を予定していた.シーズン当初は感染防止対策への意識は高いとは言えなかったが,その後に感染者数が増加に転じたことから,意識が高まったと推測され,追加の対策がとられていた.具体的には事前予約制度の導入や収穫エリアの区分けといった入場者数の制限が行われていた.

 事前予約制,特にweb予約の場合にシステムの導入と維持に一定のコストがかかる.また,入場の制限は入場料収入が減少する.このように安全性は確保できたが,収益性の低下に繋がる可能性が明らかになった.本調査を通じて,ポストコロナのイチゴ観光農園の経営モデル作成に向けた今後の課題が収集できた.

 トマト品種’湘南ポモロンレッド35R'および’湘南ポモロンゴールドG4’の育成

 2009年に育成した生食・加熱調理兼用の中玉トマト品種 ‘湘南ポモロン・レッド’(‘SPL 25R’) および‘湘南ポモロン・ゴールド’(‘SPL G3’)は,県内で年間約50 t生産され,直売所を中心に県オリジナル品種として販売されている.一方で,‘SPL 25R’は尻腐れ果が発生しやすいこと,生食では果実の硬さ等から食味 が市販大玉品種と比較して劣ること,‘SPLG3’も‘SPL 25R’と同様に果実の硬さにより生食での食味がやや劣ること等が課題となっている.これらの特性の改良を目的として育種に取り組み,‘湘南ポモロンレッド35R’および‘湘南ポモロンゴールドG4’を育成した.

 ‘湘南ポモロンレッド35R’は,F1品種,果実が濃桃色の長円筒型で,約50~80 gの中玉トマトであり,1株当たりの可販果収量は1.0~2.4 kgである.また,‘SPL 25R’と比較して,果肉がやや柔らかく,糖度は同等以上である.‘湘南ポモロンゴールドG4’は,固定種,果実が橙黄色の長円筒型で,約50~80 gの中玉トマトであり,1株当たりの可販果収量は2.0~3.1 kgである.また,‘SPL G4’と比較して,果肉がやや柔らかく,糖度は同等以上である.

 

 トマト長期多段栽培における開花から収穫までの栽培環境と収量との関係性について

 神奈川県におけるトマト長期多段栽培において,気温,飽差およびCO2濃度を制御する複合環境制御区と気温のみを制御し飽差およびCO2濃度を制御せず成り行きとする対照区を比較し,開花から収穫までのハウス内環境と収量との関係性を調査した.複合環境制御区の可販果収量は40.6 kg・m-2であり,対照区と比較して約15%増加した.複合環境制御区は,対照区に比べて日平均気温が高かったため,栽培終了までの花房段位が多くなった.日射量以外の環境要因が収量に及ぼす影響を評価するため,積算日射量当たりの月間収量と環境要因の関係性を評価した結果,積算日射量当たりの月間収量の試験区間差と開花から収穫までの明期平均CO2濃度の試験区間差との相関関係が高かった.これらの結果から,換気開始温度を高めたことで花房段位が増えて収穫果実数が増加傾向であったこととCO2施用による果実重の有意な増加が収量に影響を及ぼした可能性が示唆された.以上より,神奈川県におけるトマト長期多段栽培において,気温制御およびCO2施用が重要であると推察できる.

 三浦半島地域における夏まき秋冬どりニンジンの作期と適品種

 三浦半島地域における夏まき秋冬どりニンジンの作期と適品種の選定,積算気温による収穫日の推定法について検討した.

 7月下旬から9月上旬まで播種期を設定し,それぞれの播種期における収穫適期を検討した結果,7月下旬播種では11~12月収穫,8月上中旬播種では12~1月収穫,8月下旬播種では1~2月収穫,9月上旬播種では2~3月収穫となり,7月下旬から9月上旬播種により,11~3月まで連続して収穫できた.

 作期別に適品種を検討したところ,生育が早くて,形状や揃いがよく,根部障害の発生が少ない品種として,11~12月収穫では‘紅うらら’,11~2月収穫では‘アロマレッド’,12~3月収穫では‘彩誉’が適した.

 神奈川県におけるニホンナシ生育予測システムの開発と気温上昇がナシ開花日に及ぼす影響

 近年の気象条件下や今後の温暖化への対応のため,ニホンナシの収穫期や開花期を精度よく予測できる技術開発と気温上昇がナシ開花期に及ぼす影響の評価が必要となっている.そこで,神奈川県農業技術センターにおける過去の気象・生育データを利用し,ニホンナシの収穫予測システムおよび開花予測モデルを開発した.

 ‘香麗’,‘なつみず’,‘幸水’では満開後一定期間の気温と果実生育日数の相関を利用して収穫予測式を作成し,予測式を搭載した収穫予測システムを開発した.

 ‘幸水’および‘豊水’では自発休眠期と他発休眠期の生育モデルを統合した開花予測モデルを作成した.気温予測値を利用することで,‘幸水’でDVI2値=0.40時点,‘豊水’でDVI2値=0.55時点で開花日が予測できると考えられた.

 また,開花予測モデルを利用して,過去の気温データを1℃ずつ上昇させて開花日を予測したところ,開花日の遅れや不開花は2016年以降の気温データを気温上昇させたときに発生しやすい傾向であった.

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