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更新日:2024年5月1日

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研究報告 第168号 摘要一覧

神奈川県農業技術センター研究報告の摘要のページです。

トマト品種‘湘南ポモロンショコラ’の育成

 当所では,生食用で長円筒形の特徴的な果実形状に着目した中玉トマト品種の育成に取り組み,‘湘南ポモロンショコラ’を育成した.2008年に‘Vancouver Black’とFight7月8日を交雑し, F1個体を自家受粉して,F2以降の個体選抜と系統選抜を繰り返し,固定した. 育成した系統VB-longは,現地試作での評価が高いため,育成を完了し,‘湘南ポモロンショコラ’と命名して2021年12月に品種登録出願した.

 ‘湘南ポモロンショコラ’は,完熟期の果色が茶色の長円筒形で,一果重が50 g程度の中玉トマトの固定種であり,株当たりの可販果収量が,雨よけ栽培では1.3 kg,促成栽培では2.7 kg程度で,糖度が大玉トマト品種と同等である.

ナス一代雑種品種‘かな紫’の育成

 食材としてのナスの利用範囲拡大を目指し,生食しても食味の良い品種として一代交雑品種‘サラダ紫’が育成され,県内各地域で導入が進められてきたが,さらなる普及の実現には,省力性と上果率の向上に資するとげなし性の導入および乱形果を含む障害果発生率の低減が求められている.そこで,半数体育種法を用いて新たな一代雑種品種の育成に取り組んだ.

 2014年に‘サラダ紫’の両親系統に複数の品種・系統を交雑して得たF1個体から倍加半数体を作出し,とげがなく,果形の乱れが少ない系統を選抜した.選抜系統同士を交雑して得たF1組合せの中からとげがなく,障害果発生率が低い「ES11×MS38」を有望系統として選抜し,現地適応性試験において高評価が得られたため,‘かな紫’と命名して品種登録出願を行った.‘かな紫’は,茎,葉身およびへたにとげがなく,果実は多汁質で倒卵形である.‘サラダ紫’より空洞果,乱形果などの障害果発生割合が低く,上果収量が多い.

ナス新品種‘かな紫’の果実品質特性

 当所で育成されたナス新品種‘かな紫’果実の内容成分等について,一般品種,‘かな紫’と同じ系統に由来する‘サラダ紫’との比較を行うとともに,収穫時期による品質の変化を分析・調査した.その結果,‘かな紫’の比重や果肉硬度,遊離糖含量は,‘サラダ紫’および‘SL紫水’に比べて大きな差は認められなかったが,遊離糖の構成比において果糖の占める割合が‘サラダ紫’とは異なった.

 収穫期別の品質について6月下旬~9月の果実を分析評価したところ,収穫が進むにつれ果皮が硬くなる傾向が認められたが,内容成分などの品質は変動が少なかった.また,収穫年ごとの果実品質を比較しても安定しており,夏秋作型に適していることが明らかになった.

三浦半島地域における冬期主要野菜の輪作作物として導入可能なサツマイモ栽培の検討

 三浦半島地域における冬期主要野菜の輪作作物としてサツマイモ栽培の導入の可能性について検討した. 当地域のサツマイモ栽培は,定植から収穫までの期間が短く,収量性や品質の高い品種の‘シルクスイート’や‘安納芋系’を用いて,4月下旬から6月上旬に定植すれば,定植後4か月程度で目標収量に達した.

 サツマイモを4月下旬までに定植し,後作がダイコンの場合は8月下旬まで,後作がキャベツの場合は9月上旬までに収穫することで当地域の栽培体系に組み込むことが可能であり,ダイコンやキャベツの生育や品質にも影響はみられなかった.

多様なナス交雑系統の葯培養および胚珠培養による倍加半数体系統の早期作成

 多様な形質に着目した新規性のあるナス固定系統を早期に育成するため,F2世代で完全ホモ接合個体を得られる倍加半数体(doubled haploid; DH)系統を作出した.当所で育成した水ナス品種‘サラダ紫’の親系統に,米ナス,イタリアンタイプ等,様々な特性を持つ市販8品種・系統を13通りの組み合わせで交配し,未熟果実から胚珠を採取し,培養することで世代促進を図った.それらのF1系統の蕾971個から葯6,723個を培養して,541個体の半数体を得た.そのDH1系統を自殖して完熟種子を得ると共に,一部については胚珠培養により世代更新を促進させることで,親系統の播種からDH2系統育成まで通常3年かかるところ,2年に短縮できた.

ヤポンノキ新品種‘八剱枝垂れ’の育成経過と特性

 ヤポンノキ(Ilex vomitoria Aiton)新品種‘八剱枝垂れ’(‘Yatsurugishidare’)は,雌の枝垂れ性品種‘Pendula’の自然交雑種子を2005年に播種し選抜育成された品種で,2018年に種苗法による品種登録申請を行った.樹形は枝垂れ性で,母親の‘Pendula’と比較し,側枝は主幹からの分枝直後に下垂を始める.雄性品種で,5月上旬に開花する.葉身は長楕円形であり,幅は約8mm,葉表面は淡緑色,灰色の枝に密に着き常緑である.

 分枝直後に下垂するため,株張りが狭く,樹形が細いため,剪定にかかる労力を低減できる.また,常緑で病害虫の被害が少ないため,狭隘化した都市空間の植栽に適する.

 ‘八釼枝垂れ’の独特な樹形を活かしてシンボルツリーとしたり,刈込労力が少ない生垣としての利用が期待される.また,既存‘Pendula’の受粉樹としての利用が可能である.

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