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更新日:2024年1月31日

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農産物の上手な利用法(米の酸度調査/試薬・用具)

「農産物の上手な利用法」のページでは、オープンラボで実験された農産加工実験や神奈川県農業技術センターの過去の研究成果を紹介しています。

 
試薬・用具
メチルレッド 0.1g
ブロムチモールブルー 0.3g
エチルアルコール 150mL
精製水
保存ビン・メスフラスコ・ピペット
栓付き試験管(25mL)・ろ紙
写真:指示薬と用具   写真:pH指示薬法・染色液による判定

★米のおいしさ分析・診断について

一般的に米の食味・おいしさを計測する場合には、分析検査と官能検査が用いられています。農林水産省の過去の研究報告では、米の主要な味覚成分は、硬さ、粘り等の物理的な要素が重要な部分を占めていることが分かっています。さらに香り、特に古米臭はマイナス要素ですが、うまみ成分・甘み、色などとともに重要しています。
現在市場では、分析検査としては、食味計を利用した計測が一部で導入されています。食味計では、水分とタンパク質、そして精度が劣りますがアミロースなどを計測しています。これらの成分含有率と官能検査の相関を用いて、食味値としています。実際には、この食味値はおおまかなものでしかなく、米のおいしさを分析する上ではまだまだ問題があるといわれています。

米の食味・おいしさを評価する項目として、物理特性では炊飯米の硬さ、粘り、バランスなど、うまみでは米のおいしさを左右するアミノ酸や糖類などの化学成分、香り・鮮度ではマイナス要素として古米臭(脂質の酸化による)と炊飯米における芳香、色彩については、炊飯米について、色(白色度)黄ばみなどがあげられます。

米の食味・おいしさは食感(歯ごたえ、粘り等)、うまみ(うまみ・甘さ)、香り(芳香・古米臭)、鮮度(保存状態の検証)、色合い(白色度、黄ばみ)を総合的に分析し、総合データを評価する必要があります。

★新米と古米

お米は、新米、古米、古々米などと呼ばれます。では、いつから新米は古米になるのでしょうか。
1995年11月に施行された食糧法の下での計画流通制度を円滑に運営するために、政府は制度として「米穀年度」という概念を導入し、新米と古米の区分を明確にしていくことにしました。
〈米穀年度〉 11月1日~翌年10月31日

★新米・古米の区分

新米・・・生産された年の翌米穀年度中までに供給されるもの
古米・・・翌米穀年度を過ぎて供給されるもの
この他にも、流通・商業の活動事情や品質面での理由から、様々な区分法が存在します。一般に、米穀小売店では、お米が生産された年の年末あるいは翌年の春頃まで「新米」入荷という形で販売しています。
梅雨時の多湿時期や夏の土用の高温時期には保管している米の品質劣化が進むので、収穫時から翌年の梅雨前までの期間のお米を新米、梅雨後から次のお米が生産されるまでの期間のお米を古米とする分け方も存在します。現在は、低温倉庫に入れるお米の低温保管が普及し、梅雨や土用の品質低下を防止できるので、この区分法の本来の意味は失われています。

日本では新米が美味しいとされ、新米の香り、光沢、軟らかい食感等が好まれていますが、翌年の梅雨から夏を過ぎると米の食味が著しく落ちると言われています。古米の特徴としては、米飯が硬く、粘りが少ない、古米臭がある、米飯の光沢や白度が低下する、などの点があげられます。保管・貯蔵によって、米の澱粉粒や細胞を包んでいる膜が硬くなり、炊飯中の吸水や膨潤を妨げること、脂質が分解されて生じる脂肪酸が澱粉と結合してその糊化を妨げること、澱粉分解酵素やタンパク質分解酵素の活性が低下すること、脂肪酸が酸化分解されてヘキサテール等の古米臭成分を生成することなどが古米化の原因と考えられています。
 

★新米と古米を見分ける

古米と新米を見分ける方法には、貯蔵中の米の品質変化を示す成分・指標として、発芽率、カタラーゼ活性、水抽出酸度、米飯中の古米臭の主成分とされるヘキサナール、アミラーゼによるデンプンの分解産物である還元糖などを測定する様々な方法があります。
残念ながら、生産地や輸入米と国産米を見分ける方法はこのような成分の測定では判別できません。生産地を見分けることは、まだ未来に開発が期待される技術と考えられます。

カタラーゼ呈色による米一粒の鮮度測定法は米粒のカタラーゼの作用により米粒を黒紫色に呈色させ、一粒ごとの呈色程度を色彩色差計で測色する方法です。古くなった米はカタラーゼ活性が低下するため、呈色程度が低くなり、この差に基づいて米一粒の鮮度を簡便に測定する方法です。呈色試薬として1%グアヤコール、3%過酸化水素水、2%パラフェニレンジアミンを用いています。
米のなかの酵素「パーオキシダーゼ」の活性を調べるものにグアヤコール法があります。酵素は、時間が経つと活性を失ってしまうので、鮮度の落ちたお米ではこの試薬と反応が起きないので、色の変化が少なかったり、色の変化が観察されません。酵素は米の胚乳部分よりも糠の部分や胚芽の部分に含まれているので、玄米向けの判定法になります。この方法についてはキットも販売されています。
この呈色反応はの原理は、パーオキシダーゼ活性の高いお米、つまり鮮度の良いお米は、過酸化水素水を分解するため、グアヤコールと反応して、テトラグアヤコールを生成し、糠や胚芽部分が赤色に染まりるという仕組みです。

蛍光イメージング法はコメ自身に存在するパーオキシダーゼの活性が鮮度の低下とともに低下することを利用し、コメの鮮度を判定しようというものです。パーオキシダーゼと過酸化水素を反応させ、発生する生物ラジカルでルミノールを化学発光させます。パーオキシダーゼ活性が強いとルミノールは強く化学発光しますが、パーオキシダーゼ活性が低下していますと化学発光は弱まります。これを利用してコメの鮮度が判定できないか、検討されています。

★pH指示薬法

米の貯蔵においては、主要成分のうち、タンパク質やでん粉に比べて、脂質の分解が最も速く進行するので、品質劣化の指標として脂肪酸度がよく用いられます。脂肪酸が増えるとpHの低下を引き起こすのでpH指示薬を用いて判定することができます。お米を水につけ、そのpHを測定するのですから、pHメーターをもちいればよいのですが、指示薬を使う方が簡便にできるので、更に細かい分析に先立ち、スクリーニングで行われています。 玄米では表面がぬか層で覆われているため、水素イオンが溶出しにくいので、この方法は主として精米の新鮮度を判定するのに用います。

指示薬法は米の酸度・pHを対象としますが、浸出液の呈色の方が粒の染色より鋭敏です。浸出液を調べる試薬は粒を染色する場合よりも濃度が薄いものを使います。試料全体の新鮮度を判定するにはこの方が簡単ですが、呈色別の粒数の割合を出したい場合は試薬濃度を濃くするか、1粒ずつ浸出液の色を観察する方法も考えられます。適切なpH付近に変色域を持つ指示楽を適宜組み合わせるとよりよい結果が得られ、また試薬液自体のpHをコントロールしておくと、わずかなpH差が見やすくなることも考えられます。
穀粒のpH変化を捉える方法は、火力乾燥などのために酵素力の低下した試料の新鮮度判定に有効であり、また、脂質の酸化といった成分の酸化による酸敗臭は直接食味に関連することでもあり、商品価値としての新鮮度の判定としての意味があります。
精米の新鮮度はあくまでも新米かどうかを判定する要素ですが、この判定で新米か古米かを判定することはできないことを理解した上で実施してください。

★参考文献

「ライスミュージアムお米の品質評価テキスト」の3-2-2pH指示薬法
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