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更新日:2024年4月4日

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淡水魚類図鑑 カマキリ

カマキリ(アユカケ) Cottus kazika

レッドリスト 県カテゴリ:絶滅危惧IA類(ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種) 国カテゴリ:絶滅危惧2類 (VU)

カサゴ目カジカ科

カマキリの幼魚

分布 秋田県・茨城県以南の本州、四国、九州
形態 体は灰かっ色で、黒い帯が、4本 背びれの後方と尾びれ近くにある。淡水産カジカの仲間では一番大きくなり、最大30cmになります。
えらぶたの上方に4本の棘(トゲ)があります。 
生態 親魚は秋に川を下り、河口域や沿岸域で産卵します。ふ化した稚魚は海で成長し、初夏に河川を遡上します。
夜行性で稚魚は水生昆虫を主体に食べますが、大きくなると小魚を食べるようになります。
備考 神奈川県下では最近の記録は非常に少なく、相模川と酒匂川で少数が採集されているに過ぎません。本種はそ上能力が弱いため、小さな堰(せき)や階段式の魚道を越えて上流に行くことが苦手です。県内の主要な河川には堰が多数あるため、生息域がせばめられて絶滅寸前にまで追い込まれてしまったと考えられています。
 福井県では天然記念物に指定され、保護増殖が行われています。
 夜行性なので、懐中電灯を照らしながら、覗き眼鏡を使用して夜間に調査を行っています。昼間の調査では、ほとんど採集できませんが、夜になると浅い瀬やトロに出てきます。ハゼ類と異なり、電灯で照らしても成魚はじっと動かずにいます。
地方名 相模川厚木市ではフグタやカワフグ、平塚市ではゲンノウとも呼ばれ、大きいものは塩焼きにして食べたと聞きます。
あられがこ、かご、がこ(福井県)、たきたろう、ふぐた(神奈川)、あいかぎ、あゆかけ、かまはぜ(静岡県)
名前の由来
 カマキリ(鎌切):えらぶたの4つの棘により鎌のように切られることから
 アユカケ(鮎掛):えらぶたの棘で鮎をひっかけてたべる(?)ということから
 あられがこ:晩秋から冬にかけて、あられが降る晩に腹を上に向けて浮かび川を下ることから

 

 

本種は県レッドデータブックでは絶滅危惧種Eである。相模川と酒匂川から採集された。 カマキリは、夜行性なので、カワアナゴと同様に夜間に調査を行った。昼間の調査では、採集できないが、夜になると浅い瀬やトロに出てくる。ハゼ類と異なり、電灯で照らしても成魚はじっと動かずにいるので、採集しやすい。過去の記録が少ないのは、生息する個体数自体が少ないこともあるが、投網を中心にした調査方法にも問題があると思われる。今後は、他の河川でも、夜間調査を実施すれば、新たな生息域が発見できるかも知れない。
 また、過去の調査では、カマキリの採集地点が、相模川の寒川堰下流と酒匂川の飯泉堰下流に限定されていた。これは、河川構造物によって本種の遡上が、妨げられている証拠で、大きな問題である。しかし、近年、県下の数カ所で底生魚も遡上できる魚道が設置されて、1999年には寒川堰の上流で初めて採集された。今後、魚道の設計は、従来のようにアユ等の遊泳力の強いものだけを遡上させるのではなく、カマキリ等の遡上能力の低い底生魚にも配慮することが重要である。
 静岡県では本種の分布調査が進み、最近は18河川において生息が確認されている。本種は河口から海域で産卵し、稚魚は海で生育する。母川回帰性がないとすると、黒潮の状況等の沿岸の海況が、県内のカマキリの出現状況を左右することになる。今後は、県内とその周辺都県の産卵場と稚魚の移動経路を明らかにすることが求められる。
カマキリ(アユカケ)


魚にも「カマキリ」がいる!
 「カマキリ」と言えば、ほとんどの人は、手にカマを持ったあの虫を思い浮かべます。ところがどっこい、魚にも正式な名前(標準和名)が「カマキリ」なる鈍くさいヤツがいます。エラブタ(魚のカマと言うとこの部分)に棘があり、触ると切れるのでこの名があります。別名はアユカケですが、この名も棘で引っ掛けて、アユを食べると言う俗説に由来します。
 本種はカジカの仲間です。沿岸で産卵して、ふ化した稚魚は海で育ち、春先に川を遡上します。本来は河川中流域の瀬が主な生息域ですが、遡上能力が低く、途中に障害物があると上流へは行けません。酒匂川には下流に堰があるので、仕方なく小田原付近でひっそりと生活しています。これらの河川構造物の影響もあって、県下では生息数が減少し、今では県の絶滅危惧種になってしまいました。
 夜間に活動し、主に魚やエビ等を食べています。試験場の調査も夜、水面を電気で照らして、カマキリを捜します。発見してもじっとして動かないので、採集しやすい魚です。触っても頑固に動かず、石になりきってしまいます。これをカマキリの「石化け」と呼びます。どこか憎めないヤツですが、時々、アユの友釣りでかかり、その容姿から釣り人をびっくりさせることがあります。
 本種は、希少種として環境の指標になる魚ですが、水産上も利用価値が高く、福井県では独特の食文化があり、アラレガコと言って珍重されています。酒匂川でも昔は漁師たちの間でかなり人気のある魚だったそうです。(酒匂川と魚たち)

アユカケとカジカ エサをくわえた
生息環境により体色が変わります アユを パクッ
顔のアップ ルアーにも食いつく
正面から見ると、愛きょうがあります 厚木市の井上さんが相模川神川橋下流で釣ったものです。10.5cmもあるルアーにがぶり、
カマキリ 静岡県河津川にて臼田氏撮影

 

カマキリの卵
カマキリのふ化仔魚カマキリのふ化仔魚(静岡県水産試験場浜名湖分場より提供)

 

ふ化観察記録

 

 

 

このページの所管所属は 水産技術センター内水面試験場です。