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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.221

食品の細菌検査について

2024年3月発行

スーパーマーケットなどで販売されている食品は、安全性が確保されていることが前提にあるため、私たちは日常的に食品を購入し安心して食べることができます。その安心のための取り組みの一つとして、地方衛生研究所では食品の収去検査を行っています。

食品の収去検査とは

国内における食品等の安全性は、食品衛生法などの法令を遵守することで確保されています。この法令に基づき、行政機関が行う食品等の抜き取り検査を収去検査と言います。神奈川県では、保健福祉事務所の食品衛生監視員が製造所や販売店などから収去した食品について衛生研究所が検査を行い、法令で食品ごとに定めている成分規格や神奈川県の指導基準に適合しているかを監視しています。検査の結果、成分規格から外れた場合は、違反食品として回収や廃棄等の厳しい措置が取られますので、検査は信頼性が確保された適切な業務管理システム(食品GLP)に基づいて行います。収去検査は、食品中の食品添加物などの化学検査と細菌検査に大別されますが、今回は細菌検査について紹介いたします。

成分規格とは

細菌の成分規格や指導基準が定められている食品について、代表的なものを示しました(表1)。

表1 細菌の成分規格や指導基準が定められている代表的な食品

この中から冷凍食品を例として少し詳しく説明します(表2)。冷凍食品は「食品、添加物等の規格基準」の中で規格基準が定められており、その中に成分規格、加工基準及び保存基準があります。食べる時の加熱の必要性と製造時凍結前の加熱の有無で①~④の4つに分類され、それぞれに成分規格を定めています。 ①の場合は「細菌数が検体1gにつき300万以下で、かつ、E.coliが陰性でなければならない」が成分規格であるため、この2つの項目について検査を行います。2022年度に当所が実施した①~③の冷凍食品の収去検査は、132検体、264項目で全てこの成分規格に適合していました。

表2 冷凍食品の分類と成分規格

検査方法について

法令等には、食品ごとの検査方法について、検体の採取や試料の調製、使用培地、培養温度や時間なども定められています。食品によっては黄色ブドウ球菌やサルモネラ属菌なども検査しますが、今回は前述の冷凍食品を例に「細菌数」「大腸菌群」「E.coli」の検査方法を紹介します。

<試料の調製>

冷凍食品25gを量りとり(図1)、希釈水225mLを加えて専用機器(ストマッカー)で粉砕、均一化します(図2)。そこから10mLとり希釈水90mLを加えて混和したものを試料原液(100倍希釈液)とします。

図1 食品の秤量

図2 ストマッカーで粉砕

<細菌数検査> 

試料原液から10倍段階希釈を行い、1mLずつを2枚の滅菌シャーレにとります。そこに標準寒天培地を加え35℃で24時間培養します(図3)。発育したコロニー(細菌が繁殖して目に見える集落を形成したもの)を数え、希釈倍数を乗じて食品1g中の細菌数を求めます。

図3 10倍段階希釈の方法

<大腸菌群検査(デソキシコーレイト寒天培地法)> 

試料原液1mLずつを2枚の滅菌シャーレにとります。そこにデソキシコーレイト寒天培地を加え35℃で20時間培養後、暗赤色のコロニーの発育を確認します(図4)。このコロニーをEMB寒天培地上で培養し、典型的なコロニーの発育を認めた場合は、次にLB培地で培養しガスの産生を確認します。さらにこの典型的なコロニーがグラム陰性無芽胞桿菌であれば、大腸菌群を陽性と判定します。

図4 デソキシコーレイト寒天培地に発育したコロニー

< E.coli検査(EC培地法)> 

試料原液1mLずつを3本のEC培地に接種します。大腸菌群検査よりも高い温度の44.5℃で24時間培養しますが、この温度は正確性が求められるため、より温度が安定する恒温水槽を用います(図5)。EC培地でガスの産生を確認した場合は(図6)、EMB寒天培地に進み、この後大腸菌群検査と同様の方法でE.coliを陽性と判定します。

図5 恒温水槽による培養

図6 EC培地 培養前(左)
        培養後ガス産生(右)

この3つの検査項目は、食品の細菌汚染の程度を示す衛生指標菌とされています。
このように法令等で定められた方法で検査を実施し、各基準に適合しているかを判定します。

正確な検査結果を導くために

神奈川県では平成9年から食品GLPを導入し収去検査を行っています。
このシステムでは、検査方法の手順・検体の取扱い・検査機器の保守管理・試薬等の管理などについてそれぞれ標準作業書を作成し、それに従い検査を実施します。例えば機器の保守管理では、冷蔵庫の温度確認(図7)や標準分銅を用いた天秤の精度確認(図8)などを標準作業書に従い日常的に行います。こうして実施した内容は記録を作成し、決められた期間保管をしています。また、検査の精度を保つために、定期的な精度管理試験の実施や、全国規模で行われている外部精度管理調査にも参加をしています。このような様々な作業を行い検査の信頼性を高めています。
今後も引き続き県民の皆様の食の安全、安心に貢献できるよう努めてまいります。

図7 冷蔵庫の日常点検

図8 天秤の日常点検

(参考資料)

注:リンクは掲載当時のものです。リンクが切れた場合はリンク名のみ記載しています。

(地域調査部 小泉明子)

   
衛研ニュース No.221 令和6年3月発行
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