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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.203

食品検査の信頼性確保のために

2021年3月発行

皆さんは、検査と聞いて何を思い浮かべますか。食品に関する検査だけでも、食品メーカーが出荷の可否を判定する際などに行う検査、商取引における品質証明のための検査、食品の規格への適合を判定するための検査など様々な検査があります。
法令で定められた食品の規格への適合を確認する収去検査1)の場合、もし、その食品が規格から外れていれば市場から速やかに排除しなければなりません。そのように社会に少なからず影響を与える可能性がある検査の結果が正しくなかったら大変です。
神奈川県では、平成9年に食品衛生法に基づく収去検査を行う機関に食品GLP2) を導入し、以来20年以上、検査の信頼性確保に努めています。
今回は、収去検査における検査結果の信頼性確保に向けて神奈川県衛生研究所(以下、当所)に設置している信頼性確保部門の取組みについてご紹介します。

1) 収去検査:食品衛生法などの法令に基づき、食品の製造施設や小売店などから食品※)を採取し検査すること
2) 食品GLP(Good Laboratory Practice(業務管理基準)):食品衛生に関する試験検査に関して、手順や記録方法などの具体的な管理基準を定め、それらの有効性や実施状況を第三者が検証することにより信頼性を確保するシステム
※) 食品以外に食品添加物、直接食品に触れる器具や容器なども含みます。

神奈川県における食品GLP体制

神奈川県では、現在、図のような食品GLP体制を敷いています。食品の採取を行う「収去部門」、実際に検査を行う「検査部門」、そして、検査結果の信頼性を確保するための「信頼性確保部門」の3つの部門があり、それぞれが独立した立場で収去検査に関わることによって公正で信頼性の高い検査結果を出せる組織体制となっています。食品の採取を行う収去部門は、県庁生活衛生課(専門監視担当)、保健福祉事務所及びセンター(以下、保健所)並びに食肉衛生検査所(衛生監視課)、検査部門は、当所微生物部、理化学部及び地域調査部の3部と食肉衛生検査所(精密検査課)、信頼性確保部門は、当所企画情報部に設置されています。



図 食品GLP体制と収去検査の流れ

収去検査の流れ

大まかな収去検査の流れは、図の赤字部分のとおりとなります。

収去部門では、保健所や食肉衛生検査所の食品衛生監視員が、管内施設で製造された食品や小売りされている流通食品、食肉センターで処理されている食肉などを ①検査に必要な量を採取(以下、収去)します。収去時には、汚染などにより食品の特性を変化させないように衛生管理された器具や容器を使用します。

微生物の規格などの検査を行う場合は、温度管理されたクーラーボックスに入れて搬送の間に微生物の数が変化しないよう低温を保ち検査部門のある当所に搬送し ②検査を依頼します。収去にあたっては、予め食品の採取の手順、使用する器具などの管理、搬送の方法などを定めた各種標準作業書を整備しています。

検査部門では、検査員が搬送時のクーラーボックス内の温度や搬送された食品の包装の破れの有無などの外観をチェックし、搬送状態に問題がないか確認します。また、検査に必要な量が確保されているか、検査依頼内容に問題がないかなどを確認した上で受領し、③依頼の内容に沿った検査を実施します。検査にあたっては、受領した検体の取扱い、使用する機械器具や試薬などの管理、検査法などを定めた各種標準作業書を予め整備しています。検査結果については、検査を直接担当した検査員と別の検査員とで検査記録などを確認し、検査結果を検査部門の直接の監督者である検査区分責任者に報告します。検査区分責任者は、検査結果が正しいことを確認し、検査成績書を作成します。作成された検査成績書は、複数の職員でチェックを行い、最終的に検査部門のトップである検査部門責任者の承認を受け ④収去部門に回答されます。

回答を受けた収去部門では、検査結果から食品衛生法などに基づき定められた食品の規格への適合を ⑤判定し、食品の提供を受けた収去先に ⑥収去検査結果を通知します。

信頼性確保部門の業務

○内部点検

信頼性確保部門では、収去部門、検査部門に対して定期的に内部点検を実施しています。第三者的な立場として信頼性確保部門による内部点検を実施することにより、収去検査の信頼性を確保するという目的がありますが、それぞれの部門が持つ問題点等を明確にし、改善につなげていくことも重要な目的となっています。

内部点検の方法としては、組織・施設等に関する点検、記録に関する点検、検査等実施中における点検などがあり、これらの点検を各部門に対し年に1回以上行っています。

例えば、組織に関する点検では、各部門における食品GLP組織上の責任者等に対する権限の付与、職員の職務分掌の作成、業務管理に関する規定の内容などについて確認を行っています。検査部門における記録に関する点検では、科学的に妥当といえるデータに基づき検査結果を出しているか、検査する食品の受入から検査結果回答までの一連の行為がトレース可能な記録となっているか、精度管理3)が適切に実施されているか、使用している機械器具、試薬等の管理記録が取られているかなどについて確認を行っています。実際の検査に立会う点検では、標準作業書に従い検査が行われているか、試薬等の調製の仕方、記録を記載するタイミングなど、主に記録だけでは把握しきれない内容について確認を行っています。

○精度管理

検査部門では、検査の精度を保つために、計画的に精度管理を行っています。
信頼性確保部門では、検査部門が行う精度管理の年間計画の策定にあたり協議を行うことにより適切な計画の策定に関わります。そして、内部点検時に実際の精度管理の実施や記録を確認することにより精度管理が計画どおりに行われているかを確認するとともに、適切に精度管理の結果の評価が行われているかを確認します。

○外部精度管理調査

収去検査の信頼性を確保するために外すことができないのが、外部精度管理調査への参加です。外部精度管理調査とは全国の収去検査などの食品検査を行う機関が参加し、同じ条件の検体を検査することにより、かたよりやばらつき4)の度合いについて全体からのずれがないかを確認する大切な調査です。
信頼性確保部門では、各検査部門が参加する試験項目を決定し、実施結果の評価を行っています。評価にあたっては、統計学的な手法により客観的に評価を行います。

信頼性確保部門では、そのほかに、各部門の標準作業書写しの保存、各部門における研修計画立案にあたっての協議、食品衛生監視員を対象とした科学的統計学的考えに基づき収去検査を行うための研修なども行っています。

3) 精度管理:検査担当者の技能水準を確保し、検査の精度が適切に保たれていることを確認するために、既知の濃度の検査対象物質を食品に添加したものなどを分析し、検査結果のかたよりやばらつきの程度を統計学的に評価するために行う試験
4) かたよりやばらつき:かたよりは、理論上の値からのずれを示し、ばらつきは、同じ検査を繰り返し行った場合の値のばらつきを示す

おわりに

食品は、私たちの毎日の生活に欠かせないとても大切なものであり、その安全性は確保されている必要があります。食の安全を確保するしくみについては、法令により食品ごとの成分の規格や製造、加工、流通、販売等における守るべき具体的な基準が定められています。また、定められた基準に則って食品が製造等されているかについて、全国の食品衛生監視員による食品関係営業施設への立入検査の実施や、製造や小売りされている食品の収去検査を実施するなどのチェック体制が築かれています。このように日本では安全を確保するしくみが構築されていますが、食品は毎日口にするものであるため、「安全」という要素だけではなく、「安心」を得る(消費者の皆さんに安心してもらえる)ことが非常に重要といえます。

当所では、食品の検査を通じて食の安全・安心に貢献するために、今後も検査結果の信頼性確保に取り組んでまいります。

(企画情報部 芝 顕三)

   
衛研ニュース No.203 令和3年3月発行
発行所 神奈川県衛生研究所(企画情報部)
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