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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血レンサ球菌を原因とし、のどが痛くなる細菌感染症の代表的なものです。5歳をピークに幼児から学童期に多くみられますが、成人も感染することがあります。季節的には冬から初夏にかけて多くみられます。感染症法では定点把握疾患5類感染症に定められており、指定された小児科から保健所に報告が届けられます。学校保健安全法では特に出席停止の基準は定められておらず、流行状況や病状により登園・登校が判断されます。

感染経路

A群溶血レンサ球菌にかかった人の咳やくしゃみを吸い込むことによって感染する場合(飛まつ感染)、また菌のついた手で口や鼻に触れることによって感染する場合(接触感染)があります。

症状

A群溶血レンサ球菌に感染してから1~5日後に、38度を超える発熱、のどの痛み、全身倦怠感が現れ、しばしば嘔吐を伴います。熱は3~5日で下がります。菌が産生する毒素によって、皮膚の発疹や舌の発赤が現れる「猩紅熱(しょうこうねつ)」という状態になることがあります。舌の発赤は、その見た目から「いちご舌」と言われます。他の合併症としては、菌の直接的な影響による中耳炎、肺炎、髄膜炎などがあります。また菌に対する免疫学的な機序によって、関節や心臓などに障害を受ける「リウマチ熱」や腎臓の機能が低下する「急性糸球体腎炎」を起こすことが知られています。このうち、リウマチ熱の発症は適切な抗菌薬による治療によって予防できるとされます。

診断について

発熱、のどの発赤、いちご舌の3つの症状を確認することで診断されます。これらの症状が揃わない場合、のどのぬぐい液の培養または迅速診断キットでA群溶血レンサ球菌を確認するか、または血液検査でASO、およびASKという抗体の上昇を確認することで診断されます。A群溶血レンサ球菌は健常な人の15~30%が保有しているとされ、症状のない場合でも菌が検出されることがあります。

治療について

抗菌薬の投与が行われます。最も多く使用されるのはペニシリン系といわれる抗菌薬で、治療を24時間以上行うことで、他人への感染力はなくなるとされています。合併症を予防するために、抗菌薬の使用期間を守った確実な治療を行うことが大切です。

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予防のために

感染者との接触を避け、手洗い・うがいなどの一般的な予防を行うことが大切です。ワクチンはありません。

溶血レンサ球菌レファレンスセンター

国立感染症研究所は、全国各地域に8つのレファレンスセンターを置き(福島県衛生研究所、富山県衛生研究所、東京都健康安全研究センター、神奈川県衛生研究所、大阪府立公衆衛生研究所、山口県環境保健センター、大分県衛生環境研究センター、国立感染症研究所)溶血レンサ球菌の病原体調査を行っています。神奈川県衛生研究所は関東甲信静ブロックにおけるレファレンスセンターに指定されています。
調査内容として、血清型の違いによる分類(血清型別)、遺伝子型の違いによる分類(遺伝子型別)、どの薬剤に治療効果があるか調べること(薬剤感受性試験)を主に実施しています。

血清型別: A群溶血レンサ球菌の表面にある代表的なタンパクに、MタンパクとTタンパクがあります。100以上の種類が知られるMタンパクは症状を起こす原因(病原因子)として知られていますが、検査が比較的困難です。一方、Tタンパクは病原因子とは考えられていませんが、検査が比較的簡単であることから多くの施設で行われています。
遺伝子型別: Mタンパクに関連する遺伝子はemm遺伝子といわれ、今まで100種類以上の遺伝子がみつかっています。emm遺伝子の塩基配列を調べることによって、菌の型別が可能になりました。最も多い型はemm1 型といわれるもので、全体の約半分を占めています。
薬剤感受性試験: 細菌の抗菌薬に対するMIC(最小発育阻止濃度)を測定することで、抗菌薬が効きやすいか(感受性あり)、効きにくいか(耐性あり)を調べる検査です。

※MIC(最小発育阻止濃度)
細菌の発育を阻止するために必要な、抗菌薬の最小濃度のことをいいます。様々な濃度の抗菌薬を入れた培地で細菌を培養し、菌の発育程度を比べることによって調べます。

参考リンク

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