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ウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎)

ウイルス性肝炎とは、肝臓に炎症を起こすウイルスによって肝臓の細胞が壊された状態をいいます。代表的な肝炎ウイルスとして、A型、B型、C型、E型があります。感染症法では、ウイルスに感染してまもなく起こる急性肝炎が届出の対象となっています。A型肝炎およびE型肝炎は4類感染症に、B型肝炎・C型肝炎を含めたその他のウイルス性肝炎は全数把握対象疾患5類感染症に定められています。ここでは、B型およびC型肝炎についてとりあげます。

感染経路

B型肝炎

B型肝炎ウイルスに感染して、一時的な感染で終わる場合(一過性感染)と、ほぼ生涯にわたって感染が持続する場合(持続感染)に分かれます。
持続感染者の多くは、出産時にB型肝炎ウイルス持続感染者のお母さんから感染した人たちです。また、B型肝炎ウイルスの感染時期が若い年齢であるほど、持続感染になる可能性が高くなります(1~5歳時の感染では25~50%が、5歳以上の感染では6~10%が持続感染になります)。初めてウイルスに感染したのが思春期以降である場合、多くは一過性感染となります。
B型肝炎ウイルスをもった人とのカミソリや歯ブラシの共用、入れ墨、ピアスの穴開け、違法薬物使用時の回し打ちなどによる感染(血液感染)、B型肝炎ウイルス持続感染者のお母さんからの感染(母子感染)、性行為による感染の3つが主な感染経路です。現在は、性行為による感染が原因として最も多くなっています。

C型肝炎

C型肝炎も、ウイルスに感染して一時的な感染で終わる場合(一過性感染)と、ほぼ生涯にわたって感染が持続する場合(持続感染)に分かれます。一度C型ウイルスに感染すると、約70%の人が持続感染者になります。
C型肝炎ウイルスは、ほとんどが血液を介して感染します。具体的には、輸血、薬物使用による針や注射器の共有、入れ墨などです。出産時や性行為による感染もありますが、B型肝炎に比べて稀です。

症状

肝臓の炎症は、ウイルスに感染してまもなくおこる急性肝炎と、長い期間ウイルスが肝臓にとどまる事によっておこる慢性肝炎に分類されます。慢性肝炎は肝臓の細胞が破壊されている状態であり、血液検査で肝臓の機能低下が認められます。

B型肝炎

B型肝炎の症状は、成人がB型肝炎ウイルスに感染したときに一時的な症状が現れる急性肝炎と、持続感染している人に起こる慢性肝炎に分けられます。
急性肝炎の症状は、B型肝炎ウイルスに感染しておよそ1~6カ月後で現れ、具体的には発熱、倦怠感、食欲低下、嘔吐、黄疸(目の白目の部分が黄色くなり、その後皮膚も黄色くなります)、褐色尿(濃いウーロン茶様の色の尿になります)などがあります。その後、症状は数週間で自然に治まります。
思春期以降、免疫によってB型肝炎ウイルスを病原菌と認識できるようになると、B型肝炎を排除しようとする白血球の働きが活発になり、ウイルスとともに肝臓の細胞を一緒に破壊するようになります。その後、B型肝炎ウイルスは増殖性の低いウイルスとなります。最終的に、80~90%の人は肝臓の機能に異常の現れない「無症候性キャリア」といわれる状態になり、残る10~20%の人は、慢性的な肝臓の細胞の破壊が続く状態(慢性肝炎)から、肝硬変や肝臓がんなどを発症する可能性がでてきます。

C型肝炎

C型肝炎ウイルスに感染して6カ月以内に症状が出現した場合、急性肝炎とされます。実際には、70~80%の人はウイルスに感染しても急性肝炎にはなりません。ただし、B型肝炎よりも高い確率で慢性肝炎に移行します。
急性肝炎の症状は、発熱、倦怠感、褐色尿、黄疸などがあります。これらの症状はウイルスに感染後、およそ2~14週間後に現れます。
およそ30%の人はウイルスが排除されますが、残る70%の人は「キャリア」といわれ、ウイルスを持ち続けます。その後、慢性肝炎となり肝臓の細胞の破壊が進むと、肝硬変や肝臓がんを発症します。C型肝炎は、肝硬変や肝臓がんの原因として最も多いものです。

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診断について

B型肝炎、C型肝炎ともに多くは症状が無く、血液検査で肝臓の機能低下(AST、ALT、血清ビリルビン値など)を指摘され、診断される場合が多いです。また、肝炎や肝硬変、肝臓がんについては超音波検査やCT検査などで診断されます。

(参考:B型肝炎、C型肝炎の血液検査について)
B型肝炎、C型肝炎の血液検査には色々な種類のものがあります。それぞれの検査結果を組み合わせて解釈することで、感染の状態を把握できるようになっています。

B型肝炎

HBs抗原: これが陽性の場合はB型肝炎ウイルスに感染していることを意味します。逆に陰性の場合は、B型肝炎ウイルスには感染していないことを意味します。
HBs抗体: これが陽性の場合は、ワクチンによってB型肝炎に対する免疫が付いている場合、あるいは急性肝炎から治癒した状態であることを意味します。
HBc抗体: これが陽性の場合は、現在または過去にB型肝炎ウイルスに感染している(した)ことを意味します。
IgM-HBc抗体: これが陽性の場合、過去6カ月以内にB型肝炎ウイルスに感染したことを意味します。感染症法に基づく届出は、この検査の陽性を確認することによって行われます。
HBe抗原: これが陽性の場合は、血液中のウイルス量が多く、他人へ感染させる恐れが高いことを意味します。
HBe抗体: これが陽性の場合は、血液中のウイルス量が少なく、肝臓の細胞に対するウイルスの影響が少ない状態であることを意味します。

C型肝炎

HCV抗体: これが陽性の場合は、現在もC型肝炎ウイルスに持続感染している場合か、あるいは過去にC型肝炎ウイルスに感染したが現在治癒してウイルスがいない状態か、の2通りが考えられます。この検査が陽性の場合、血液中にC型肝炎ウイルスの遺伝子が検出されるかどうかを調べる検査を行い、上記いずれかを判断します。

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治療について

B型肝炎

急性肝炎に対する特別な治療はありません。安静、食欲低下に対しては水分・栄養補給のために点滴などを行います。慢性肝炎に対する治療は、インターフェロンや核酸アナログ製剤などがあります。年齢や肝臓の障害の程度によって、どの治療を行うかが異なります。

C型肝炎

急性肝炎に対する特別な治療はありません。B型急性肝炎と同じように、安静などの対症療法を行います。慢性肝炎に対する治療は、以前はインターフェロン治療が用いられていましたが、近年では抗ウイルス薬によるインターフェロンフリー治療が主流となっています。

予防について

B型肝炎に対してはワクチンがあり、定期接種の対象で、1歳になる前に3回接種します。一方、C型肝炎に対するワクチンはありません。
またB型肝炎ウイルスに持続感染しているお母さんから赤ちゃんへの感染を予防する目的で、出産時と生後2ヶ月後に免疫グロブリン、生後2,3,5カ月にワクチン接種を行います。いずれの肝炎も、主に血液を介してウイルスが感染することから、他の人の血液に触れないことが大切です。具体的には、歯ブラシ,カミソリ,などの血液が付着する可能性のあるものを他人と共用しないこと、他の人の血液に触れなければならないときはゴム手袋を着用すること、注射器や注射針を共用して,非合法の薬物(覚せい剤,麻薬等)の注射をしないことなどです。

参考リンク

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