梅毒は病原微生物スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマが感染して起こる病気です。
感染経路のほとんどは性的接触ですが、母親から胎児に感染する先天梅毒もあります。
感染後約3週間で感染部位のしこり、鼠径部のリンパ節腫脹(I期梅毒)、感染後3か月以後に手のひら、足の裏や体全体に赤い発疹が出ることがあります(Ⅱ期梅毒)。治療をしなくても症状は消える場合がありますが、適切な治療をしないと病原菌は消えません。
感染後3年以上経過すると、皮ふ、筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)、心臓、血管、脳などに病変ができて死に至ることもあります(晩期梅毒)。血液検査で診断でき、治療は抗菌薬が有効です。気になる症状がある時には、症状が改善した場合でも早めに医療機関(泌尿器科、婦人科、皮膚科など)を受診しましょう。
予防のためには、性交渉の際(オーラルセックスを含む)、適切にコンドームを使用することが重要です。
梅毒の症状や予防策を正しく理解し、不安があれば早期に検査を受けましょう。
梅毒検査は、保健所等で匿名・無料でHIVと一緒に受けることができます。(一部、梅毒の同時検査を実施していない検査機関があります)
「神奈川県内の保健所等HIV検査実施機関一覧(無料・匿名)」
神奈川県では、2024年第1週から第13週(1月1日から3月31日)までに169例が梅毒と診断されました。これは[2]に示すように年間報告数が過去最多であった、2023年と同等以上のペースとなっています。(2024年4月5日時点の感染症発生動向調査より)
[1] 週別報告数の状況
[2]年別報告数の推移
[3]男女別・年齢階級別の感染者の状況
男性は20歳代から50歳代が中心で、全体の9割以上を占めています。一方女性は20歳代が中心で全体の約半数を占めており、30歳代が約2割、40歳代が約1割と続いています。男性10歳代、女性80歳以上は報告がありませんでした。
(1)男性(n=116)
(2)女性(n=53)
[4]男女別・病型別の状況
男性は早期顕症梅毒Ⅰ期が最も多く、全体の約6割を占めています。一方女性は早期顕症梅毒Ⅱ期が最も多く、全体の約半数を占めています。この期間の妊娠中の発見は3人です。また女性では晩期顕症梅毒の報告はありませんでした。男女ともに先天梅毒の報告はありませんでした。
(1)男性(n=116)
(2)女性(n=53)
[5] 推定感染経路(n=169)
推定感染経路は不明、記載なし以外はすべて、性的接触で全体の約9割を占めています。針刺し事故や、輸血、静注薬物の使用や常用の報告はありませんでした。
[6]推定感染地域(n=169)
神奈川県が最多で、全体の5割以上を占めています。日本国内都道府県不明または不明は全体の約5割を占めています。また東京都が全体の約1割を占めています。また国外は、タイ2人、モンゴル1人です。
[7]性風俗の利用歴、従事歴
(1)男性の6か月以内の性風俗利用歴 (n=116)
6か月以内の性風俗利用歴有が全体の4割を占めています。
(2)女性の6か月以内の性風俗従事歴(n=53)
6か月以内の性風俗従事歴有は全体の約3割を占めています。一方、従事歴無が全体の約4割を占めており従事歴有を上回っています。また6か月以内の性風俗利用歴有は報告がありませんでした。