WWWを検索 当サイトを検索

平成26年8月7日発行

前号 次号

神奈川県 腸管出血性大腸菌感染症情報(6)

腸管出血性大腸菌感染症の原因菌は、ベロ毒素を産生する大腸菌です。腹痛、水様性下痢、血便などの症状が見られ、重篤な合併症により死に至る例も見られます。
汚染された食品からの感染が主体であることから、予防のために食品の十分な加熱、冷温保存を徹底し、調理後はなるべく速やかに食べきることを心がけましょう。
また、糞便を介したヒトからヒトへの感染も多いため、食事前、トイレの後などの手洗いも十分に行うようにしましょう。

1.神奈川県の週別発生状況

第31週(7/28~8/3)に12例の報告があり、第1週から第31週までの累積報告数は122例となっています。122例のうち無症状病原体保有者は21例、溶血性尿毒素症候群(HUS)の報告は3例です。

2.神奈川県の月別発生状況

例年、報告数は5月頃より増加し、6月から9月にかけてピークになります。
今年は6月以降発生が多い状況が続いており、今後の発生動向にも注意が必要です。

3.神奈川県の年齢・性別累積報告数

各年代より報告があり、特に20歳未満の報告数が多くなっており、約48%を占めています。
男女別では、男性が62名、女性が60名となっています。

4.神奈川県の血清型・毒素型の累積検出状況(2014年第1週~第31週)

血清型はO157が多く、約74%を占めています。O157うち毒素型はVT1・VT2(VT1とVT2を両方産生するもの)が約78%を占めています。

5.腸管出血性大腸菌感染症の分子疫学調査

感染症の発生時においては、感染源や感染経路の推定による感染拡大の防止が重要です。感染源を推定する方法のひとつに分子疫学調査があります。地方衛生研究所は保健所を介して集められた菌株について生化学的形状、血清型、毒素型などを確認した後、分子疫学調査の一環であるPFGE解析(図1)を実施し、感染症の拡大防止および散発発生の迅速な検出と抑止に役立てています。
今年の6月頃から神奈川県を含めた関東地方で腸管出血性大腸菌O157 VT1 VT2の報告が増加しており、当所微生物部が実施したPFGE解析で結果が一致した菌株もありました。PFGE解析が一致した菌株は、感染源が同一である可能性が高いと考えられます。この結果は、感染の原因究明のための疫学調査に役立てています。

PFGE(パルスフィールド・ゲル電気泳動)解析:
細菌の染色体DNAの塩基配列が菌株により異なることを利用して、特殊な酵素(制限酵素)で特定の塩基配列を示す部位を切断して断片を比較することにより、起源が同じ菌かどうかを推定する方法です。

腸管出血性大腸菌感染症の報告数は、当該週の国からの還元データおよび各保健所からの報告をもとに集計しています。報告遅れ、修正等のため、報告数が前後することがあります。

<参考リンク>