子どものころから難病を抱えている方は、将来どのような仕事をするのか、やりたい仕事に就くためにどのようなことをしたら良いのか、どこに相談したら良いのか等、さまざまな不安があることと思います。
今回は、難病を抱える方の就職支援、就労支援の専門家である中金竜次氏に、若い年代で病気にり患している方の就職活動やキャリア形成について、お話を伺いました。
治療と仕事の両立をサポートする看護師・就労支援者
就労支援ネットワークコーディネーター(治療と仕事の両立)
平成25年~平成31年3月
神奈川県の難病患者就職サポーターとして、地域連携ネットワークづくり及び難病患者の就労支援・相談に携わる。
病気を開示しながら就職される方や障害者手帳を取得し就労する方々の相談を年間約1000件対応。
在任中は、難病研究班の就労ガイドブック制作にも参加。また、神奈川県の治療と仕事の両立支援推進チームメンバーとして講演。平成28年に開催された一億総活躍国民会議の懇談会では、『難病患者の就労支援の拡充』について、プレゼン・意見交換を行った。
令和元年~
難病患者・長期慢性疾患患者の就労支援・地域連携ネットワークのコーディネーターとして、就労支援ネットワークONEをスタート。
セミナーや研修・講演などにより、難病患者の就労課題に取り組んでいる。
難病のある方の就労人口は増えています。
それには、二つの要因があると思っています。
1点目として、難病の方の就職や就労に向けての支援体制が整ってきたことが挙げられます。
厚生労働省は、平成25年に「難病患者就職サポーター」という制度を作りました。
当初はその難病患者就職サポーターを大都市に配置していましたが、成果があったため、現在では全都道府県に配置しています。
地域差はありますが、各地でのサポーターの活躍で経験値が積み上がり、適切な支援ができるようになってきていると思います。
自治体ごとの取り組みもみられます。
神奈川県でも、かながわ難病相談・支援センターがあり、難病の方に向けた情報の提供や、電話や面談での各種相談に取り組んでいるので、難病の方の就職を支援する基盤が徐々にできていることを感じています。
2点目として、医学の進歩により、治療をしながら就労ができる方が増加していることがあります。 難病患者の方の寿命が伸びたり、有効な治療方法が開発されたりしたことで、病気を抱えながら仕事ができる人が増えてきました。
難病の方の就職件数が右肩上がりになっている背景には、これらの要因があると考えられます。
ただ、ここ最近は新型コロナウイルス感染症の影響で、求人数は減っている状況です。
残念ながら、正直なところ、支援体制が整っているとは言えない状況だと思います。
たとえば大学生なら、学生の就職活動は大学のキャリアセンターで支援を受けることができると思います。
しかし、難病を抱えている学生となると、キャリアセンターだけで、新卒での、一般雇用への就活を支援していくことは、難しいのではないかと感じています。
実際のところ、大学のキャリアセンターでは支援を受けるのが難しいため、私のところに相談に来る学生さんもいらっしゃいますので、障害者手帳を持っていない、治療をしながら就活をする学生への支援に関しての取り組みは、かなり限定的な状況と思われます。
私がハローワークの難病患者就職サポーターをしていた時には、「地域若者サポートステーション」と連携するようにしていました。
「地域若者サポートステーション」とは、これも厚生労働省が若年者の雇用促進のために設置しているもので、働くことに悩みを抱えている15歳から49歳までの方に対して、就労に向けた支援を実施しているものです。
全ての都道府県に設置されており、就業体験や各種訓練プログラム、就活セミナーなどを受けることができます。難病を抱えた若い方にも、活用できる機関と考えています。
私としては、未成年で病気を抱えていらっしゃる方については、ご家族の方にも一緒に、病気を抱えながら就労を続けるための情報提供をすることが大切だと感じています。
お子さまが小学生くらいでも、安心・安全に就労できるような職業の選択肢や、合理的配慮の考え方をご家族にお伝えしていく。
そういった情報があれば、ご家族が家庭の中でそのような環境を整えることができます。 そして、家庭の環境が整うことで、当事者の方の将来の選択肢が増える、ということが考えられます。
私のところに相談に来る時点で、就職活動の時にオープンかクローズかを決めている方には、その決断を尊重したうえで、支援をしていきます。
決まっていない方には、それぞれのメリット・デメリットをお話ししています。
就労継続という観点では、オープンにしておいた方が、企業側も環境等を整えてくれたりするので、うまくいきやすい側面はあると思います。
企業には、難病の方の就職が可能な企業と、そうでないところと温度差がありますし、いろいろな考え方があります。
やはり企業としては「従業員に安全に働いてもらいたい」という思いがありますので、難病を抱えた方の雇用は慎重になる部分もあります。
私のような支援者が応募前に直接企業と話をすることで、難病のある方の雇用に一定の理解を得ることが可能かどうかの感触がわかるほか、企業の方にも安心してもらえる面はあります。
また、当事者の方としても、就職の望みの薄い企業への応募を避けることで、無駄な消耗が防げる、ということがあると思います。
先述のとおり、企業は「従業員に安全に働いてもらいたい」と考えていますので、意見書に「就労可能」と書いてあることで、採用する上での安心につながってくると考えられます。
医師の意見書の取得にはお金がかかりますが、取得しておくと次のような利点があります。
障害者の雇用枠というのは、障害者雇用促進法に基づき、一般の求人とは別に設けられた求人のことです。
この障害者枠を使って就職するには、障害の認定を受け、障害者手帳を取得する必要があります。
難病を抱えた方が手帳を取得できるかどうかは個々のケースによりますので、すべての難病の方に当てはまるものではありません。
それでも、進行性の病気の方などは、現時点では障害の認定を受けることは難しくても、将来的には認定されることがあるかもしれません。
障害者の就職については、支援してくれる機関もたくさんありますし、就職先の選択肢が広がる可能性があります。
そのため、私としては、自分が現在どのような状態なのか、将来的にどのような状態になる可能性があるのかを、ある程度知り、準備をしておくことをおすすめしています。
準備というのは、たとえば、病気が進行したら外出が難しくなる可能性があるなら、在宅でもできる仕事に関連する資格を取得したり、スキルを身につけておく、などです。
IT・パソコン関連の知識や技術を習得する、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)などパソコンの資格を取得する、等の準備をしておくことで、在宅で就労できる仕事が見つかる可能性が拡がると思います。
伝えたいことはいろいろとありますが。
一番は、「通院の配慮をしてくれると、働きやすくなる人がたくさんいますよ」ということですかね。
これから就職する人だけでなく、すでに企業の中で働いている人にも、難病を抱えている人はいます。
難病を抱えている人は大病院に通っているケースが多いのですが、そうなると平日の昼間の受診になります。
となると、通院をするためにはどうしても平日に仕事を休まなければなりません。
そのような通院休みが取りやすくなるだけでも、難病を抱えた人には、ぐっと働きやすくなります。
実は、企業の方にそのことを話すと、「そういうことで働きやすくなるなんて」と感じてくださる担当者も多いです。
現在、がん患者の就労継続の理解は徐々に進んできているところですが、がん以外の疾患にも理解をしていただけるようになると良いと思います。
まずは「知る」こと。
いまはSNSなども発達していますから、様々な情報を入手しやすくなっています。
世の中にどんな仕事があるのか、自分の病気はどのようなものなのか、自分で調べて知識をつけましょう。
特に、病気があっても活躍している人はどのようなことをしているのか、調べてみましょう。
いろいろな人がいますよ。会社を経営している人や、テクノロジーを駆使して家から働いている人などもいます。
そのような人たちからはきっと、ヒントをたくさんもらえます。
そのうえで、大切だと思う点が二つあります。
一つ目。自分のチームを作りましょう。
自分のことを話したり、書いたりすると、整理がしやすくなると思います。
自分の味方になってくれる人を見つけて、仲間を増やしていきましょう。
二つ目。柔軟性を持ちましょう。
状況に応じて柔軟に対応していくことは、とても大切です。
病気を抱えながらも頑張っている、活躍している先輩はたくさんいます。
そんな先輩方は、物事に柔軟に対応しながらも、あきらめない気持ちを強く持っていることを感じます。
ぜひ、自分のペースで良いので、あきらめない気持ちを持って進んでください。
実際には病状により就労が難しい方もいらっしゃいますが、働ける方々については、一定の配慮により就労の機会を得ることはできます。
こちらとしても、そうした方々があきらめなくてもいいように、必要な情報を発信できるよう、がんばっていきます。
神奈川県 福祉子どもみらい局
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