かながわなでしこファーマーズ

令和6年度 かながわなでしこfarmers’college~女性農業者のための経営発展セミナー~第1回研修会3日目 9月5日レポート

令和6年度 かながわなでしこfarmers’college
~女性農業者のための経営発展支援セミナー~
第1回研修会3日目 9月5日レポート

参加者
県内で就農している女性農業経営者12人

農業を営む女性がアイデアやスキルを培い、自身の農業経営を発展させる手法を学ぶ「女性農業者のための経営発展支援セミナー」が開かれ、3日目となるこの日は、農業の進め方を見直し、より効率的な農作業の進め方や販売コストを下げる方法を模索する「計画生産」と、未来の自分の理想像に向けて目指すべき方向性の指針となる「営農計画」について学びました。

農業に経営の発想を

神奈川県が主催するこのセミナーは、2024年8月から9月までの2か月間、全4日間のカリキュラムで構成されています。
経営者の視点で物事を考える「マインド醸成」や、簿記の中でも特殊な「農業簿記」、販路拡大や農作物の魅力の伝え方を学ぶ「マーケティング」など各分野の専門家を招いて講座形式やワークショップ形式などを行い、自身の農業経営ですぐに役立つ考え方を身に付けていきます。

頭の中のカレンダーを見える化しよう

頭の中のカレンダーを見える化しよう

研修3日目を迎えたこの日は、同セミナーで初登場となる、株式会社食農夢創の代表取締役の仲野真人氏が登壇しました。
仲野氏は大手証券会社出身で、マーケティングを専門に学んだ後、自身を媒介に農業や水産業、畜産業といった全国の生産者たちをつなげ、イベント企画や講師、ネットワーク化に取り組む6次産業化のプロフェッショナルです。

「この講義の目的は、みなさんの頭の中にある農作物のカレンダーを、ガントチャートなどを活用して他の人にも見える化していくことにあります」と語り、その導入方法を説明していきました。
そもそも計画生産導入の必要性について仲野氏は、「一度3か月から1年の大日程計画、1か月から3か月の中日程計画、1週間から1か月の小日程計画に落とし込むことで、PDCAサイクルを回すことができるようになります」と力説します。

頭の中のカレンダーを見える化しよう

GAP認証で攻めと守りの計画生産

「ただ、本音を言うと農業の計画生産は天候に左右されたり、品目ごとに生産時期が異なったり、日々の作業に追われてしまったりと、作成が難しいのは分かります」と言葉を区切った仲野氏が提案したのは、GAPの第三者認証の取得でした。
GAPとは、Good Agricultural Practiceの頭文字の略称で、農作物等を生産する過程で生産者が守るべき管理基準とその取組を取りまとめた基準です。
神奈川県では「神奈川県GAPチェックシート」を2017年に作成し、GAPの導入を進めています。また、GAPの第三者認証の取得支援を実施しています。

「GAP認証を得るには、計画生産を取り入れなくてはなりません。
また、一度取ったら終わりではなく、認証維持のために計画生産を続ける必要があります。きちんと計画生産を行えていれば、例えば、農作物の出荷先で農薬基準値を超えて出荷停止となるような事態があっても、あなたの農作物は基準をクリアしていることが担保され、出荷できる訳です。
GAP認証は、販売先の信頼獲得などの攻めのメリットと、自分の農作物を守るメリットがあるんです」

GAP認証で攻めと守りの計画生産

「農業で社会課題を解決する」

このほか、計画生産をスムーズに導入し、続けていくために役立つアプリの情報や、売上が低迷した時の原因分析の方法とその解決策を生む基本的な考え方について語った仲野氏。
講座の結びで、農業で社会課題を解決できる可能性について触れます。
「地球温暖化などの環境問題や、女性の就労などの女性活躍、せっかく生産されたものが食べられずに捨てられるフードロスなど、様々な社会課題があります。
この社会課題を17に集約したグローバル・スタンダードな考え方がSDGsで、農業は15の社会課題を解決する可能性を秘めています」

あっという間の60分間で、仲野氏に勇気づけられた参加者たちは、講義終了後に仲野氏のもとに詰めかけ、自身の悩みや具体的なアドバイスを昼休み中にも求めていました。

「農業で社会課題を解決する」

思考整理にAI活用

昼休憩で参加者同士でランチタイムを楽しんだ後は、「5年後の営農計画の作成演習」に取り組みます。
講師は、(有)河野経営研究所の代表取締役、河野律子氏が担当します。
ここ数年、女性農業者のための経営発展支援セミナーの営農計画を担当していた河野氏ですが、経営コンサルタントとして中小企業や農業経営者と共に歩いてきた経験をベースに、常に最新情報を講座に反映しています。

思考整理にAI活用

「5年後に向けた営農計画書の作成は、言わば、ありたい姿を実現するために、取組の方向性を決め、具体的な取込事項に落とし込む事業計画です。
ありたい姿を描くには、考えの整理が大切で、それにはAIが非常に便利なんです」と開始早々、河野氏は、参加者に「これからやりたいこと」をテーマにウェブアンケートを仕掛けました。
参加者が箇条書きで回答すると、河野氏はそれらをとりまとめて、Chat GPTに「以下の内容を箇条書きで取りまとめて」と動作を促します。
すると、ものの数秒で意見が集約され、各自のやりたいことがアウトプットされました。
「考えがまとまらなくて、言語化するのが苦手な人は、AIに聞いてみるとこれだけ簡単に言語化してくれます。
積極的に活用していきましょう」と河野氏は呼びかけていました。

思考整理にAI活用

その後、農作物を作ることを見直すオペレーションと、売ることを考えるマーケティングについて、自身の農業経営へ落とし込んでいく時に重要なポイントを講座形式で解説していきます。
また、経営全体の目標、生産の目標、販売の目標をありたい姿から逆算するワークショップでは、冒頭にAIで思考が整理されたからか、参加者たちはすらすらと筆を走らせていました。

仲野氏のロジックと河野氏の最新技術の活用を学ぶ濃密な時間を過ごし、考える武器を手に入れた参加者たち。
「5年後の営農計画」の完成に向けて、約2週間、自身のありたい姿をじっくりと考えていきます。

思考整理にAI活用