かながわなでしこファーマーズ

令和5年度 かながわなでしこfarmers’college~女性農業者のための経営発展セミナー~1月31日レポート

令和5年度 かながわなでしこfarmers’college
~女性農業者のための経営発展支援セミナー~
1月31日レポート

参加者
県内で就農している女性農業経営者

神奈川県内で農業を営み、さらなる発展や経営参画を目指す女性農業者に向けて多彩なプログラムで支援する「女性農業者のための経営発展支援セミナー」が第1回は2023年7月から8月まで、第2回は2024年1月から2月までの2カ月間、各4日開催しました。第2回の研修2日目を中心にセミナーの内容を紹介していきます。

漠然とした不安解消の糸口に

「今の農業経営についてなにかしなくちゃと思っているけど、何をしたらいいか分からない」――。そんな漠然とした不安を抱える女性経営者に向けて、不安解消の糸口となるヒントを提供するのが、この「女性農業者のための経営発展支援セミナー」です。初日は、簡単な自己紹介でアイスブレイクをしたのち、「マインド醸成」をテーマに現在、県内で活躍する女性農業者が登壇して自身の経営スタイルを語りました。

参加者たちが具体的な将来像を固めた上で、現状の課題の整理や将来ビジョンを設定する「経営管理・目標設定」を改めて学び直すカリキュラムが展開され、濃密な時間を過ごしました。

※こちらの写真は、第1回研修1日目の様子です。

漠然とした不安解消の糸口に

会計で無駄を見つけるヒントを提供

2日目は、財務管理(農業簿記)とマーケティングがテーマです。午前中は、本セミナーではすっかりおなじみとなった、中小企業診断士の河野律子さんを招き、なぜ会計が必要となるのか、原価計算がなぜ重要なのか、「なぜ」に重点を置きながら進行していきました。

河野さんは、「会計は、現場を生かすために行うもの」と言います。すなわち、経営者たちの人件費なども組み込んで将来の事業の指標とする「管理会計」と、今の事業のまま続けていてもよいか判断するための「意思決定会計」の視点が重要だと言います。

会計で無駄を見つけるヒントを提供

「例えば、直売所で販売して商品が売れた時、その時にかかった費用を見直すところから考えてみてほしいです。その作物を育てるためにかかった費用だけでなく、商品をラッピングするためにかかった時間、商品を直売所まで運ぶまでの時間、直売所でお客様とコミュニケーションをとるための時間、これら全てに人件費はかかっていますし、会計の視点でみてほしいのです。そこで人件費を抜いてしまうと、その事業が本当に収益性のある事業なのか、見落としてしまう可能性があります」と力説をしていました。

このマインドを培ったうえで、河野さんは、農業簿記の重要性や、変動費と固定費の見分け方、損益分岐点の計算式を紹介し、収益性を向上させるための道筋を示していました。

会計で無駄を見つけるヒントを提供

魅力を語る言葉を見つけよう

午後は、「販売戦略・マーケティング」を学びます。講師は、ADU株式会社の宇田名保美さんです。販売戦略・マーケティングというと、数字を扱ったり、さまざまなメディアを活用して売上を積み重ねていく手法と思われがちですが、そうではないと宇田さんは語ります。「良いものを作っても、知られていなければ売れません。商品の魅力を言葉にして伝えることが何よりも大切なのですが、農家の方が、『このジャガイモの品種は〇〇で~』と言っても、一般の人が品種を認識していないなど差があります。伝え方を考えるのがマーケティングで、こうありたいという理想の将来とのギャップを埋めていく方法を考えるのが、販売戦略なんです」

魅力を語る言葉を見つけよう

ワークショップでは、自分が販売したい商品の魅力を書き出して、周囲の人に相談し、周囲の人の視点から魅力を知り、参加者同士が楽しそうに会話に花を咲かせていました。

魅力を語る言葉を見つけよう

どうしても魅力を語る言葉が思いつかない、という人に対して宇田さんは、「言葉が思いつかなくても、例えば、Chat GPTに『ジャガイモのアイデアレシピを10個考えて』と入力すれば、一瞬で色々と提案してくれます。アイデアを生んだり、考えをまとめたりするのには話ができる相手がいると有効ですが、Chat GPTを活用すれば、一人でも多彩なアイデアを生むことができます」という最新の手法も伝授していました。

はじめは不安そうな表情を浮かべていましたが、セミナーが終わるころにはすっかり笑顔を見せていた参加者たち。3日目には5年後先まで見通したビジョンと計画を立て、最終日の4日目には営農計画を踏まえたプレゼンテーションが控えています。

魅力を語る言葉を見つけよう