かながわなでしこファーマーズ

令和4年度 かながわなでしこfarmers’college~女性農業者のための経営発展セミナー~2月15日レポート

令和4年度 第2回 かながわなでしこfarmers’college
~女性農業者のための経営発展支援セミナー~
2月15日レポート

参加者
県内で就農している女性農業経営者

県内で就農している女性農業者で、経営発展を目指す農業経営者や、今後、経営参画を目指す方、将来の農業経営者を目指す雇用農業者を対象にしたセミナー。令和5年1月から3月にかけて全4回のカリキュラムで開催されました。研修3日目となるこの日は、将来を見据えた農業の計画生産について具体的な取組事例と、各参加者の事業に応じた5年後の営農計画について学びました。

今回のセミナーでは、全4回のカリキュラムを通して、女性農業者が抱える現状の農業経営の課題を掘り起こし、農業経営者としての経営マインドやマーケティングの手法を学ぶことで、現在から5年後の営農計画を具体化することを目指します。

講師の金子栄治さん

「ワクワク」を計画に盛り込む

4回目の総まとめである営農計画の策定に向けて午前中は、適切な農業生産を行うために不可欠な売上計画や働き方について講義が行われました。講師を務めたのは、横浜市青葉区で農業を営む金子英治さん。2018年に代々続くイチゴ農家の16代目に就任し、現在は糖度8度以上のフルーツトマトの生産・開発や、経営計画の作成・家族経営の悩みなどのコンサルティングに取り組んでいます。

メモを走らせる受講生たち

「そもそも、皆さんの農業経営において『適切な農業生産』ってなんでしょうか」。午前中の講義が始まり、開口一番、講師の金子栄治さんが投げかけます。自然を相手とする農業は環境変化の振れ幅が大きく、売上の見通しを立てることを疎かにしがちです。しかし金子さんは、自社で実際に活用している売上計画表や販売計画表を例に挙げ、作付量から生産量を予測し、その内容を月別、週別、日別にまで落とし込んでいく大切さを説明しました。
計画を立てるために持つべきマインドについては、「現状維持ではこの先の保障はない。農業を続けるためにいかに『ワクワクすること』を経営計画に盛り込むかが大切です」と語り掛けました。実際に活用されている資料と生の体験談を前に受講生たちは、農業の最前線で働く“先輩”の言葉を受け止めようと背筋を伸ばし、メモを走らせていました。

メモを走らせる受講生たち

ゆるやかなつながりが将来を広げる

「ワクワクすること」とはどのようなことでしょうか。金子さんは、ワクワクするために、ゆるやかなつながりを持つことの重要性を強調します。「農業に携わりながら、地域や学校、友人などいろいろな人たちとゆるやかにつながりを持っておくことで、選択肢が増え、野菜の販路を拡大できたり、将来、社会が大きく変化した時に思わぬところで助けられたりします」といいます。
金子さんのワクワクとゆるやかなつながりが一体となった事業のひとつが、「農福連携」です。金子さんは、福祉事業所などと連携して障がいのある方たちや労働市場で不利な立場にある方々が働くことで支援と賃金を得られる「ソーシャルファーム」の取り組みを進めており、農園を社会的接点の場にしようとしています。

メモを走らせる受講生たち

情熱的に語りかける金子さんの講義に、受講生は興味津々。「新たに人を雇用する時に気をつけていることは」「家業から事業にするためにどこから手を付ければいいか」など、多くの質問を寄せていました。「時代にあった経営戦略や、逆境に打ち勝つためにはどうすればいいか」との質問に金子さんは、「いま農業に取り組む自分自身がワクワクする事が大切。ワクワクすると自然と笑顔となり、その笑顔に周りの人々は寄ってくる。一緒に神奈川の農業を盛り上げていきましょう」と答え、熱いエールを送っていました。

「ソーシャルファーム」の取り組み

計画の事前準備

午後は、いよいよ5年後の営農計画の策定に向けて、中小企業診断士の河野律子さんによる講義と事前準備が行われました。農業経営の中で見過ごしがちな機材置き場の整理を例に挙げたオペレーションの効率化・合理化の重要性や、消費者ニーズとウォンツに寄り添ったマーケティング施策の立て方など、これまでの講義で学んだことを振り返りると、実践編へ。

中小企業診断士の河野律子さん

シートを基に「これからの目標設定」を作成していきます。スラスラとペンを走らせる人もいれば、ペンを握り頭を抱えながら進ませる人もいました。
グループでのワークショップでは、積極的に意見を交わし、和やかなムードで進行していきます。ある受講生の発表では「家計と経営の通帳が一緒になっているため、適切に経営状況を確認できていない。それを改善していきたい」と話していました。また、別の受講生は「パートさんがシフト制を組んでいて、人によって作業のクオリティが異なるのを課題と考えています。誰でも管理や作業ができるようなオペレーションができるようにしたい」と発表していました。

「これからの目標設定」の作成

河野さんは、「ありたい姿から逆算し、課題と紐づけることで、自分で経営している方は考えが整理でき、経営主が違う方は、経営主と考えをすり合わせることができる」と言い、「2週間後は実際に営農計画書を作り上げます。とにかく、頑張りましょう」と講義を締めくくりました。

「これからの目標設定」の作成

目標の実現を目指して実際に活躍する姿を目の当たりにして夢を広げた午前中。午後には、それを実現するために落とし込んでいくために脳に汗かいた受講生たち。これらを踏まえて、2週間後の策定に取り組んでいきます。

※講座は、新型ウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、参加人数の制限やマスク着用、入室時の手指アルコール消毒、体温測定などを徹底して行われました。

中小企業診断士の河野律子さん