かながわなでしこファーマーズ

令和4年度 かながわなでしこfarmers’college~女性農業者のための経営発展セミナー~8月17日レポート

令和4年度 第1回 かながわなでしこfarmers’college
~女性農業者のための経営発展支援セミナー~
8月17日レポート

参加者
県内で就農している女性農業経営者

県内で就農している女性農業者で、経営発展を目指す農業経営者や、今後、経営参画を目指す方、将来の農業経営者を目指す雇用農業者を対象にしたセミナー。令和4年8月から9月にかけて、全4回のカリキュラムで開催。研修2日目のこの日は、農業簿記における財務管理と、農産物の魅力を幅広く伝えるためのPR手法やSNSの活用方法を学びました。

数字にこだわり、経営に生かす

全4回のカリキュラムのうち2回目の開催となった今回。午前中は、中小企業診断士の河野律子さんを招き、財務管理を中心に、簿記の見方や経理・財務の手法、税金の考え方について学びました。

企業経営において、利益や原価の管理、収益の改善は欠かせません。それは農業経営でも同様ですが、特に農業経営で活用される「農業簿記」は、一般的な簿記とは勘定科目が異なっていたり、さまざまな種類の在庫に対して棚卸を行う必要があったりと、農業経営に携わる女性農業者にとって、大きな関門として立ちはだかることが多くあります。

数字にこだわり、経営に生かす

そこで河合さんは基本に立ち返り、「なぜ会計を行わなくてはならないのか」という視点から解説しました。企業会計とは、外部に向けて情報を発信する「財務会計」と、内部の経営状況を確認するための「管理会計」の大きく二つに分けることができます。「それぞれの特性を理解した上で、しっかり農業簿記に数字をつけること。これが将来の経営に生きてきます」と河野さんは語っていました。

中小企業診断士の河野律子さん

また、「原価の理解は特に重要」と河野さんは口酸っぱく受講生に伝えていました。原価を把握していなければ、農産物の6次産業化をした際に適正な価格を設定することができないためです。また、原価を下げるために見直すべき勘定科目や税金などについても教えていました。受講生の中には普段から農業簿記に携わる方もいたようで、河野さんの具体的な解説に、感心した様子で受講し、休憩時間になっても多くの受講生が質問を行っていました。

「原価の理解は特に重要」

SNSは経営戦略の一つ

今やInstagramやTwitter、YouTube、Facebook、TikTokなどは、世の中にも大きな影響を与えるツールの一つとされています。とりわけマーケティングの観点から見ても、農作物の好イメージを発信したり、ECサイトと連携したりすることで売上向上につなげることができるため、これらSNSの理解と活用は、必要不可欠とされています。午後の講義は、ADU株式会社の宇田名保美さんを招き、SNS等の活用方法について講義が行われました。

SNSは経営戦略の一つ

受講生の大半は、InstagramやYouTubeなどに触れたことはあるものの、それを自社の農業経営には生かしきれていない、もしくは、趣味の投稿の延長線上で行っているという状況でした。宇田さんは、「個人的にSNSを使用するのと、仕事で使用するのは異なります。まずはマーケティングを学びましょう」と呼びかけました。

ADU株式会社の宇田名保美さん

ここでのマーケティングとは、例えば農作物を販売する際に、売上目標をたて、それに向けた販売手法や情報発信を考えることを指します。特に宇田さんによれば、かつては作れば売れる時代であったのに対し、近年は「農作物は美味しくて安心安全な食べ物」であることが当たり前になりつつある。この時、他の農作物と自社の農作物との魅力や味の違い等について、農家側が積極的に情報を発信するためのツールがSNSである、と言います。

ADU株式会社の宇田名保美さん

こうしたマーケティング的意義や、SNSの特徴について学んだ後は、当日持ち寄った、日頃生産している農作物や農産加工品について、どんな情報を発信すれば注目を集めることができるか互いに意見を出しあうワークショップが行われました。宇田さんが「みなさんの多くは、生まれながらの農業事業者ではなくて、結婚やキャリアチェンジなどで農業に携わるようになったはず。だから農業の魅力や商品を選ぶ時にどの部分を詳しく見ているか、きっとわかるはずですよ」と呼びかけていました。

ワークショップの様子

受講生たちも、「投稿文には、農作物の紹介だけじゃなくてその農作物も活用したレシピも紹介するといいかも」という意見や、具体的なハッシュタグの例などを出し合っていました。また、商品を魅力的に見せる写真の撮影方法についてもアドバイスが飛び交い、「こっちの方から取った方が美味しそうに見えるかもよ」と、仲を深めていました。

ワークショップの様子

午前・午後にかけて経理的な視点と経営企画的な視点を一挙に学んだ受講生たち。少しだけ疲れた表情を見せながらも、「この近くに地場産野菜を作ったお店があるらしいから、一緒に行って今日の復習をしよう」と呼びかけ合い、横のつながりを広げていました。

※講座は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、参加人数の制限やマスク着用、入室時の手指アルコール消毒、体温測定などを徹底して行われました。

午前・午後にかけて経理的な視点と経営企画的な視点を一挙に学んだ受講生たち