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女性の声が社会を変える!農業女子PJの今

女性の声が社会を変える!農業女子PJの今

2013年の発足から13年目を迎えた、農林水産省の「農業女子プロジェクト」。女性農業者の存在感を高め、社会全体での活躍を後押しすることを目的に数々の取組を推進してきました。2025年12月3日、農林水産省経営局就農・女性課女性活躍推進室で、農業女子プロジェクト事務局の伊藤博行さんと大河原綾乃さんに取材を敢行。42社に上る参画企業とのユニークな商品開発の裏側や、今年から始まった新たな企業間連携「パートナーズ会議」、そして多様化する女性農業者のニーズに合わせたサポート体制の進化について、たっぷりとお話を伺いました。

企業コラボで目指す「社会へのインパクト」

「単に女性農業者の発信を増やすだけではなく、社会を良くしていきたい。そういう思いもあって、企業とのコラボは始まりました」。プロジェクト立ち上げ当初の思いを、事務局の伊藤さんはそう捉えています。農業女子プロジェクトに登録する女性農業者が1,105人(25年10月末時点)、42社の企業が参画しています。このプロジェクトの最大の特色は、単なるPR活動にとどまらず、女性農業者のリアルな声を企業の商品開発やサービスに直接反映させる「共創」にあります。

「農業女子は本当に熱い方が多い」と大河原さんが語るように、全国から集まるメンバーは非常にアグレッシブ。企業が求める「現場の意見」に対して、忖度なしの本音をぶつけます。 会議室だけでなくオンラインも活用しながら行われる意見交換会では、時に厳しい意見も飛び出します。しかし、その「使いにくい」「もっとこうしてほしい」という素直で切実な声こそが、企業にとってはブレイクスルーの種となります。メーカーの開発担当者も気づかなかった視点を提供し、共に学び合う場となっているのです。

農業女子プロジェクトとは

「欲しい」を形に。ヒット商品の開発秘話

では、実際にどのような商品が生まれているのでしょうか。まずは、ダイハツ工業の軽トラック「ハイゼット」です。かつての軽トラといえば「白」が常識でしたが、女性たちの「畑に出るのが楽しくなる色が欲しい」という声から、ピンクやミントグリーンなどカラフルなカラーバリエーションが誕生しました。さらに注目すべきは機能面です。「日焼けが気になる」という切実な悩みから、紫外線を99%カットするガラスを採用。また、乗り降りのしやすさを考慮してフロア高を下げるなど、女性目線の改良が施されました。これらは現在、ハイゼットに「標準装備」されており、多くのユーザーに喜ばれています。

金子総業と開発した農具も象徴的です。女性の筋力でも扱いやすいよう、ショベルの金属部分を桜の花びらの形にくり抜いて軽量化を実現。柄の部分には波型の加工を施し、握力の弱い女性でも滑りにくく、しっかり力を込められるよう工夫されています。 「ピンク色は単に可愛いからではなく、農業女子プロジェクトの象徴として採用された経緯もあります」と大河原さん。現場の課題を解決する機能性と、心躍るデザインの両立こそが、本プロジェクトが生み出す商品の真骨頂と言えるでしょう。

教育機関との連携で職業の選択肢に

モノからコトへ。広がる体験と連携の輪

共創の波は、形ある「モノ」から、体験やサービスという「コト」へも広がっています。全国農協観光協会との「つなぐプロジェクト」では、女性農業者が自身の畑で農業体験を提供するコンテンツを開発。首都圏での養蜂体験や、富士山の麓での収穫体験など、それぞれの地域色豊かなプログラムが生まれています。

「自分の農業の魅力を伝えたい」「農業の楽しさを知ってほしい」というメンバーの情熱が、新たな観光資源として形になりつつあるのです。 大河原さんは「最近ではメンバー自身が企業に企画を持ち込むケースも増えています」とうれしそうに語ります。メンバーが自走して企業とコラボレーションを生み出す。プロジェクトが目指してきた自立的な活動が、全国各地で芽吹き始めています。

リアルな対話とウェブで紡ぐ、輝く未来

全国に散らばるメンバーのもとへ足を運び、膝を突き合わせて語り合う。オンライン全盛の時代だからこそ、リアルな対話で得られる「熱」を大切にしている姿勢が伝わってきました。
農業女子プロジェクトは、2024年11月には公式ホームページも全面リニューアル。リニューアルされた公式サイトでは、開発された商品の詳細や、全国の農業女子たちの活動レポートが随時更新されており、「農業女子とは何か」をより明確に伝え、活動の可視化を進めています。「これからはメンバーの写真をどんどん掲載して、一緒にサイトを育てていきたい」と意気込みます。 農業を「職業」として選択する女性たちが、活き活きと輝ける社会へ。企業を巻き込み、地域を巻き込みながら進化を続ける農業女子プロジェクトは今後もさまざまな展開をみせていくでしょう。

紹介してくれた人

農林水産省経営局就農・女性課女性活躍推進室
大河原 綾乃さん

大河原 綾乃さん

農林水産省経営局就農・女性課女性活躍推進室
伊藤 博行さん

浦野 崇さん