川崎の農業を生産から調理まで伝える
神奈川県では、農家や農村地域に受け継がれてきた行事食や野菜・果物・畜産物の加工、工芸品といった生活技術を伝承する人を「ふるさとの生活技術指導士」として認定しています。JAセレサ川崎管内でこの認定を受けた人を中心に構成されるのが、「JAセレサ川崎ふるさとの生活技術指導士の会」です。郷土に伝わる生活文化の継承活動を通して、広く交流を図り、都市農業の理解や振興を目指しています。
また、JAセレサ川崎では、准組合員に向けて「セレサ組合員カレッジ」を開催しています。これは協同組合であるJAセレサ川崎を知ってもらい、「かわさき農業の応援団」になってもらうことを目指しています。参加者は3年かけて収穫体験や直売所見学、品評会の見学、栽培管理の体験を学び、今回の料理教室は3年目の集大成です。

豊かにに実ったシイタケを収穫
12月3日、冬らしい寒さの中、カレッジの参加者らは川崎市宮前区西野川でシイタケ栽培などを営む森敬起(もりけいき)さんのビニールハウスで、収穫体験に臨みます。中に入ると、棚に並べられたおがくずの塊から、立派に育ったシイタケが顔を出していました。森さんは「先の曲がったハサミを使って、なるべく軸の根本から丁寧に収穫してください」とアナウンス。しかし、元気に育ったシイタケは互いの傘が重なり合っており、刃先で傷つけないよう、参加者は慎重に収穫を楽しんでいました。

和・洋・中の三拍子
シイタケ収穫から大型農産物直売所「セレサモス宮前店」でのショッピングを挟み、いよいよ調理体験がスタートです。この日のレシピは、「鶏肉とシイタケの混ぜご飯」「キノコとベーコンのグラタン」「ナメコの中華風スープ」。和・洋・中華の三種で、先ほど収穫したシイタケを楽しみます。
キノコとベーコンのグラタンは、グラタンに欠かせないホワイトソースを簡単に作るために、バターの前にサラダ油を入れたり、材料を炒めた後に薄力粉を振り入れてダマになるのを防いだりと、様々な知恵が盛り込まれていました。「鶏肉とシイタケの混ぜご飯」では、収穫したばかりの新鮮なシイタケから水分が出て、調味料とよく馴染み、混ぜご飯にピッタリの味付けとなっていました。
調理中、ふるさとの生活技術指導士の会のメンバーは、積極的に声をかけながら参加者との会話を楽しんでおり、スムーズに進行していきます。

「作った人の愛情を感じる」
「これ、差し入れね」とふるさとの生活技術指導士の会のメンバーから次々と寄せられた副菜たちは、小松菜とキクラゲのナムルや、ダイコンの桜漬け、ニンジンの味噌和えなど五種類。野菜たっぷりの豪華メニューに参加者たちもにっこり。調理が終わったグループから、「いただきます」の掛け声で食事と会話に花を咲かせていました。

自宅でぬか漬けを作っているという女性は、「さっき自分達で収穫したシイタケと、普段お店で見ることは少ない大ぶりのナメコがたっぷり入っていて、とてもおいしかった」と満足気な笑みを浮かべていました。男性向け料理教室に通っているという男性は、「仲間と農地を借りて野菜を育てており、農業に関心があり参加しました。今日、料理を教えてもらい、ふるさとの生活技術指導士の会の皆さんの農作物に対する愛情を深く感じられました。」と新たな発見が得られた様子でした。

「食べることは生きること」農業に関心広げて
小松菜の漬物で認定を受けている持田眞弓さんは、「レシピを完成させるために、何度も試食を重ねて調味料や分量を調整してきました。レシピを考えることが大好きで、その上、こうやっておいしいって食べてもらえることがとてもうれしい」とやりがいを口にします。
同会の会長を務めており、梨ジャムで認定を受けている持田一恵さんは、「この会は野菜や果樹、畜産など多彩な分野の人たちが集まっていて、それぞれの得意分野を生かして活動しています。組合員カレッジのように生産から食事まで農業の全工程を知ってもらうのは非常に良いことです。『食べることは、生きること』なので、この機会にもっと農業に関心を寄せてもらえれば」と話していました。

取材協力
JAセレサ川崎ふるさとの生活技術指導士の会
JAセレサ川崎 ファーマーズマーケット
セレサモス 宮前店
- 所在地
- 神奈川県川崎市宮前区宮崎2-1-4
- 営業時間
- 9:30 ~ 15:00
- 定休日
- 毎週水曜・年末年始
- 電話
- 044-853-5011