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基礎から応用まで実践で学ぶ かながわ農業アカデミーの魅力

基礎から応用まで実践で学ぶ かながわ農業アカデミーの魅力

広大な敷地に露地野菜のほ場や温室、ビニールハウスなどを有する神奈川県立かながわ農業アカデミー(海老名市)では、神奈川県農業を担う優れた人材を育てることを目標とし、 基礎から応用まで実践的な教育を行っています。ここに通う2名の生徒と、年間300件以上の相談を受ける担当者に話を伺い、同アカデミーの魅力に迫ります。

農業技術の実践教育 かながわ農業アカデミー

「かながわ農業アカデミー」の前身は昭和18(1943)年、食糧増産のために地域で農作物の生産を担う技術者の育成を目的に「神奈川県立修練農場」として始まりました。以降、農業経営に必要な知識や技能を学ぶ機能や、農業後継者の育成の機能を備えて改称・再編し、平成8(1996)年に、現在のアカデミーの形へと整備されてきました。

主にふたつの課程を開講しています。ひとつは、生産技術科。修業期間2年間で、農業の基礎から専門までの知識・技術を学びます。専攻では、野菜や花き、果樹に分かれて生産・販売・経営の知識を身に付けます。

農業技術の実践教育 かながわ農業アカデミー

もうひとつは、技術専修科。この課程は修業期間1年間で、より専門性の高い高度な知識と技術を習得します。こちらも野菜や花き、果樹に分かれているほか、露地野菜で独立就農を目指す人向けに、独立就農チャレンジという専攻も用意されています。

アカデミー最大の特徴は、体験を通して学ぶ実践教育を重んじている点にあります。農業の基礎知識を講義や演習で学んだら、すぐに敷地内に広がる約5.9haのほ場で実習を行い、理論と実践を試すことができます。

主にふたつの課程を開講しています。ひとつは、生産技術科。修業期間2年間で、農業の基礎から専門までの知識・技術を学びます。

学びを生かして、いつかガーデンファームを

技術専修科独立就農チャレンジ専攻 川村絵美子
川村絵美子さんは、技術専修科の独立就農チャレンジ専攻に通っています。この専攻は、農業後継者以外の人を対象としており、卒業後に神奈川県内で露地野菜を主とした独立就農をめざす人が通っています。この専攻で学ぶ人は、一人当たり4aの畑を割り当てられ、1年間、責任をもって農作物の生産に臨みます。もちろん川村さんも、今は与えられた畑で生産に励む一人です。「みてください。きょうはサトイモをこんなに収穫出来ました。ころころしていてかわいいですよね」と屈託のない笑顔を浮かべています。

技術専修科独立就農チャレンジ専攻 川村絵美子

川村さんは、歌手でCDデビューもしたことがある異色の経歴の持ち主。農業に関わる前は、マンションの営業をしていたとのことですが、「お客様に部屋の紹介をしていた時に、そのマンションの窓から大きな畑をみたんです。その時に、農業に挑戦したいとひらめきました」ときっかけを語ります。そこから藤沢市の農園に弟子入りをしようと行動しますが、その園主から勧められたのが、かながわ農業アカデミーへの入学でした。

川村さんは、歌手でCDデビューもしたことがある異色の経歴の持ち主。

「農薬を使わない農業に取り組みたいと思っていましたが、園主から『まずは基本の農業を学んで損はないよ』との話があり、入学しました。実際、入って良かった。基本から丁寧に教えてくれますし、たくさんの機材に触れる機会があるから、学ぶことがいっぱいです」

「農薬を使わない農業に取り組みたいと思っていましたが、園主から『まずは基本の農業を学んで損はないよ』との話があり、入学しました。

将来は、藤沢で就農したいと夢を膨らませています。「来年3月にはここを卒業して、就農をする予定ですが、いつか、畑に小川が流れていて、蝶々も飛んでいて、そこに色々な野菜や果物が育っていて、栽培や収穫の体験に訪れる人がたのしく癒やされる環境のあるガーデンファームを作りたいです」

売るまでが、農業

実家の後継者として

技術専修科果樹専攻 井上千尋
井上千尋さんは、技術専修科の果樹専攻の生徒です。果樹専攻は主にナシやブドウ、キウイフルーツなどの落葉果樹を学び、枝を整えたり、剪定したり受粉したりと、その理論を学ぶと共に実践しています。

技術専修科果樹専攻 井上千尋

井上さんの家系は、藤沢市で代々続く果樹農家。大学を卒業して社会人を3年経験した後、実家に就農するためにアカデミーの門を叩きました。これまでに実家で受粉作業などを手伝うことがあっても、その具体的な理由までは知らずに行ってきたものが分かるようになってきたと、井上さんは喜びます。

井上さんの家系は、藤沢市で代々続く果樹農家。

「実家での農作業で、どうしてこれをするのか説明してもらっても正直よく分からなかったところが、アカデミーでの体系的な学びを通して理解できるようになりました。父親に『ブドウの摘粒作業って、こういう意味があったんだね』と話すと、特に返事はありませんが、その背中はなんだかうれしそうに感じます」と、入学を機に父からプレゼントしてもらった剪定ノコギリに目を向けていました。

実家での農作業で、どうしてこれをするのか説明してもらっても正直よく分からなかったところが、アカデミーでの体系的な学びを通して理解できるようになりました。

卒業後、井上さんは、実家の農作業に本格的に参加することとなります。「実家は直売所があって、買いに来てくれるお客様と顔の見える関係があります。その分、買いに来てくれる方一人一人が、どうしてうちの果実を買っていってくれるのかとの視点を大切にしながら、販売を続けていって、将来は贈答用や、6次産業化にも取り組んでみたい」と将来を見据えていました。

卒業後、井上さんは、実家の農作業に本格的に参加することとなります。

神奈川の農業を盛り上げる

かながわ農業アカデミー 松田広子さん
「特別、男性や女性で支援の内容を変えている訳ではありませんが、年間で300件以上の相談を受ける中で、川村さんや井上さんのような女性の相談の比率は増えているように感じます」と語るのは、かながわ農業アカデミーの松田広子さんです。

かながわ農業アカデミー 松田広子さん

女性の相談が増える遠因のひとつは、毎年1回開催している「新規就農者育成研修 女性農業体験コース」です。広大なほ場を活用して、初めて土に触れるような女性でも体験しやすいように、基本のキを詰め込んだカリキュラムでは、野菜の作付や収穫体験に加え、刈払機や歩行型トラクターといった農業機材の使い方を教えています。

こうした手厚いサポートの結果、アカデミーの入学者は女性の入学者比率も増えてきていると言い、令和5年度の技術専修科の女性の比率は3割弱となりました。

売るまでが、農業

「かながわ農業アカデミーでは、就農後に売上を確保していく経営計画を示す『営農計画』を立てるところまで行います。それでも卒業後にこの計画通りに進めることは難しい。そうならないようにアカデミーでは県の技術職員による指導や農業経験のある講師を招くことで、実習効果を高めています。農業は、食べ物を生産して、それの対価にお金を得る経営の側面があることを忘れてはいけません。それでも、かながわ農業アカデミーは広く門戸を開いており、神奈川の農業を盛り上げたいという方の入学を心待ちにしています。ぜひお気軽にご相談ください」

売るまでが、農業